カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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皆さん新年を迎えましたね。別の小説で語りましたが昨年母方の祖父が天寿を全うしているのであけおめは無しと言う事で・・・
では2025年もよろしくお願いします。・・・果たして今年は何章まで作れるのだろうか


67話

――――――国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。景色が変わるような展開などで使いたくなる。川端康成の小説雪国の冒頭とはきっとこう言った展開なのだろう。

 

「うわ――――――落ちる〜〜〜!!」

 まぁ、今の司郎達がいるのはビル十階ぐらいの高さで自由落下しており、尚且つ下には落ちれば火傷では済まないような音を立てて更には白い湯気がワンサカ登っている灼熱の熱湯。間違いなくそんな詩人的な言い回しを考えている場合では無いのは確かなのだが。

 

「女神フレイアよ!戦乙女たる我に白鳥の翼を与えたまえ!!皆手を!!」

 飛翔の術をかけたアリサが全員を捕まえグツクツと音を立てる大鍋のような湖に衝突するのを阻止する。

 

「たっ、助かった〜〜ありがとうアリサちゃん」

 危うく鍋の具材の気分を味わうところだったのを救ってくれたアリサに一同は感謝し、ゆっくりと降下していく。

 

「――――――アリサ、あの植物に近づいてくれない?僕の術で船に加工する」

「良いわよ。飛翔術を維持するのも嫌な予感がしそうなのよね」

 ウィンの頼みを聞いて蔓状の一軒家サイズはあろう巨大植物いや、あえて言おう巨大ガガイモだ、それにアリサは近づく。

 

「工芸の神ゴヴニュよ、この植物をリルの領域に渡れる船に作り我らに授けたまえ」

 呪文を唱えオークで出来たの杖が巨大ガガイモに触れると葉っぱは船となり一同はガガイモの葉っぱの船に乗り込んだ。断熱の術もかけてこの暑い熱湯の湖でも問題なくなった。

 

「・・・やっと一息ついたぁ。いきなりこんなところに落とされてどうなるかって思ったよ」

 スクナビコナがいつ仕掛けているか分からない戦場、それでも一難は去った事にホッとしている亜衣だが、その目は落とされた神との決戦となるだろう異界を注意深く観察していた。

 

「―――なんて言うのかしら異界なのだから当たり前なのだけど・・・」

「――――――まるで自分達が小さくなったような世界と思いました?」

 アリサは船に推進の術をかけ恐らく何らかの術がかけられた操縦桿の舵輪を取り付けて操縦しながらこの異界の考察を早苗と始めようとしていた。

「・・・ええ、何となく予想は出来るのだけど流石に東方文化は明るくなくて、サナエ貴方ならこの世界の事を説明できる?恐らくこの異界は」

「ええ、アリサさんの推測は概ね間違い無いでしょう。・・まず、スクナビコナという神は司郎さんが語ったように歴史の闇によって書き換えられた創世神の二柱の一柱です。司郎さんが倒したまつろわぬ大国主と同じく魔術の神でありその堪能は多岐に渡りますが、その一つに常世の神という側面を待ちます。常世とは海の彼方にある異世界であり、不老不死や若返りなどと関わりが強い異界であり冥界とも同一視されるつまり―――」

「――――――アストラル界、古今東西、理想郷と呼ばれるような異界は妖精と強い繋がりがある。妖精は歴史によって他の宗教によって信仰を奪われ追いやられそうして、零落していった神々の末路と言う説もあるし、そう言う意味ではドラゴンや魔女と言った零落して行った地母神達に近い存在でもあるわね。・・・そう考えると皮肉ね。東も西も追放された神は生と死を司るというのは・・・」

 

「はい。・・・司郎さん、今更かも知れませんがスクナビコナの権能はご存知でしょうか?」

 ここに来てからずっと司郎は鞘に納められている生太刀を握りながら禁厭でスクナビコナの気配を調べるために集中していた。

 

「・・・流石にな、奴の権能は俺と同じく禁厭。それだけではなく医薬に温泉に穀物と知識と酒造と石・・・まぁ、主神の右腕には相応しい権能の数だよな―――なぁ、スクナビコナ!!」

 そう司郎が吐き捨てると。

 

「――――――作用、如何かな我が領地を酔いしれる程に素晴らしいだろう!特にこの酒温泉に入れば身も心も極楽へと行くだろうな!!」

 上空に司郎達が乗っているのと同じく巨大ガガイモで出来た船に乗っているスクナビコナがそう返す。

 

「ほざけ!酒鍋の具材にでもする気だっただろうが!馬鹿みたいな硫黄と酒の匂いで鼻が曲がりそうなんでな!!吹き飛ばせてもらうぞ!!」

 そう言い雷の禁厭をスクナビコナに向けて放つが雷が当たった瞬間スクナビコナの姿は消える。

 

 

 

『ハハハハハ!!楽しんでくれないのは残念だが、貴様を早く始末したいのは同意だ。では心ゆくまで闘いを楽しみながら手早く貴様を殺すとしよう!!』

 巨大植物の影か、湯気の雲の上か、はたまたこの高温の酒温泉湖の何処かなのだろうか先ほどのスクナビコナは分身か幻影なのだろう。一体本体は何処で喋ってるのだろうか。

 

「―――!全員何処かをしっかり掴んで離さないで!!デカいのが来るわよ!!」

 スクナビコナ本体を探そうと呪力を練ろうする直後、膨大な呪力の気配を司郎達は察知しその正体が今司郎達がいるこの湖が動きだし巨大な津波が司郎達に襲いかかる!!

 

「――――――クッ!この程度!!航海者ブレンダン!聖ニコラウス!船乗り達の守護聖人達よ!我らにこの航海を無事に切り抜ける加護をお与えください!!」

 揺れ動く小さな小舟をであっても操縦士であるアリサは片方の手で操舵手を握りもう片方の手を使い二人の守護聖人に祈る。船に襲いかかるあらゆる艱難辛苦を乗り越える魔術を行使して。己の持つ魔術と技量で津波を乗り越えようと必死で動く。

 

「ッ!流石に魔術の神名だけはあるよ!僕の探知魔術が全然引っかからない!!」

 船の方はアリサに任せてウィンはスクナビコナの位置を探ろうとしているがウィンの探知魔術はスクナビコナの権能の影響で本来の精度を大きく削がれていた。

 

「ッ、この領域に漂うお酒の臭い。これが協力な酩酊効果をもっていて私たちの思考にも影響が出ている可能性があります。私の方も式神達の動きが普段と比べで落ちています」

 同じく早苗もまたスクナビコナを探すために動いていた。彼女の媛巫女として優れているのは霊視だけ、精神感応の類は高くなくそれ故に他の高い霊視能力を持つ万里谷 祐理やプリンセス・アリスのような身体の脆弱性は無い。

 だからと言って東屋早苗は自身を高める努力を怠うような怠慢な性格ではない。自身の気配探知の術を込めた式神をばら撒いてスクナビコナの居場所を探す。

 

・・・しかし、それでも、重ねて言うように二人のトップ級の術師による索敵でさえもスクナビコナの姿を捕える事は出来ない。相手が小さい姿であることと禁厭の神にして酒の神。日本固有の魔術と動物系の魔術を得意とする二人にはかなりキツイ手合いだ。

 

「―――しまっ!?」

 人間風情でよく頑張っているなスクナビコナはアリサ達の頑張りを認めるがそれはそれ、これはこれ容赦無く片手で権能を行使して巨大な落石を土砂降りで落とす。

 

「させないよ!!アリサちゃん!!何処に飛ばせばいい!!」

「―――星座・・・把握・・・測定・・・此処で!!」

 絶体絶命のさなか、ドーパミンやアドレナリンのおかげかアリサは船を操りながらも高度な占い術と霊視による複合で飛ばすべき場所を言い放ちそこへ向けて亜衣が縮地の術で転移させる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅっっ・・・・・司郎!!早く何とかして!!」

 明らかに重量オーバーの転移に亜衣の体力は早々にそこを尽きかけていた。故に愛する少年に全てを賭けるのだ―――!

 

「・・・ああ、此処までみんながやってくれたんだやって見せてやるよ」

 布津御霊に呪力を注ぎ込んで武御雷の『鋼』制圧者としての側面を使ってスクナビコナの領域に解き放つ!!

 

『ッ!?やってくれるな神殺し!!』

 自身のアストラル界の支配権を根こそぎねじ伏せる。誰のものでも無くなったスクナビコナのアストラル界の支配権を再び取り戻そうとスクナビコナは呪力を練るが。

 

「――――――見つけたよそこだ!」

 その隙を突いてウィンはスクナビコナが居る場所にボウガンの矢を放つ。

 

「ッ!?」

 正確な射撃はスクナビコナの膝に突き刺さる。この程度のダメージ医学神の側面を持つスクナビコナにとって蚊に刺されたでいどでしか無い。だが、その一瞬の隙があの神殺しが突かないはずが無いとスクナビコナは確信をしていた!

 

「―――――スクナビコナが常世の神たらしめているキーワードは『船』だ。古事記によればガガイモで出来た船で大国主と出会う。この手の小人のポジションを持っている神にはとある存在を示している―――土地の領主とは異なる地の生まれ渡来人だ」

 そして、再び布津御霊に新たに呪力を込めてスクナビコナに迫る。

 

「スクナビコナの逸話には酒造があり酒造りの技術を広めたとされて神功皇妃が現在の福井県から送られたという歌にスクナビコナの名があったそして、神功皇妃が歌った相手は応神天皇後の八幡神であり渡来人を徴用して国家を発展させた人物とされている。それとは別に4世紀後半から大和朝廷は百済との同面の為に大陸に侵略を行う事が多いその影響で大陸の技術や知識の持ち主が日本に渡来した。そんな自分達とは異なる異国の人物を当時の日本人はこう思ったのだろう。こことは異なる異界から技術を持ち込んだ人外であると」

 迫る司郎を相手にスクナビコナは小さい姿から司郎と同じサイズにまで大きくなり英雄神としての武芸で迎え撃つ。

 

「司郎さん!!後ろです!!」

・・・・・と言う訳じゃない。勿論スクナビコナの戦闘技術は確かなものだろう。だが、スクナビコナは直接戦闘を好むのではなく少ないリスクで最良の一手を打つ策略家。自分の分身に司郎の相手をさせ瞬時に背後に周り奇襲を仕掛けようとするのを早苗は霊視によって察知される。

 

「――――――セイヤァァァァァァ!!」

 遅れてやって来た亜衣が分身を切り付け両方のスクナビコナの動揺している隙に司郎が本体のスクナビコナに向き直る。

 

「――――――スクナビコナの持つ常世のと言う属性は日本に船で渡来した渡来人という属性が起因したものなんだ!!」

 そして、スクナビコナの体に布津御霊が突き刺さる。

 

「――――――日ノ本を揺らす鯰を沈める如く定められし異能に冬の眠りを!!」

 これこそ布津御霊の『鋼』の本質。呪力を抑え込み一点に絞り込めば権能さえ一時的に封印する事が出来るのだ。




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