カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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皆さん訳一月ぐらいですかね。今回は大分長めですが第六章の終盤をどうぞ楽しんでください。ではどうぞ。


68話

「ガッ、ぐゥゥゥゥッ!お、おのれ神殺し!!」

  スクナビコナの小柄な体に刻まれた五芒星。スクナビコナのアストラル界を操る常世の権能を封じる証だ。これで厄介なフィールドを操るような事も減る。・・・そして。

 

「――――――射程距離だぜスクナビコナ!!」

 権能封じで大きく消耗した神剣を地面に沈ませ生太刀を引き抜き上段の構えのまま司郎はスクナビコナとの距離を詰め振り下ろす。

 

「―――舐めるな!!」

 アストラル界の支配権を失おうがスクナビコナの権能は多岐に渡る。司郎に向けて石のナイフを五本呼び出し射出し対象するために足を止めている間にガガイモの船を呼び寄せ距離を取る。

 

「逃げるんじゃねぇ!大地よ!!」

 距離を取られてイタチごっこをして封印を解除する時間を作らせてたまるかと禁厭で地面を隆起させ軽自動車並みの速度で疾走する空を走るガガイモの船を潰そうとする。

 

「―――愚かだな、禁厭如きで我に挑むなど!!」

 振り返り司郎の顔を見ながらスクナビコナは司郎の禁厭を解除してしまう。

 

「―――――ッ!風よ、刃となれ!!」

 生太刀を振るい風の禁厭を唱えれば幾つもの鎌鼬がスクナビコナの行先にある巨大植物を伐採しようとする。倒れれば神とてタダでは済まないだろう。

 

「―――言ったはずだぞ禁厭で我に敵うなど魚を相手に泳ぎを挑む程に無謀だと!!」

 スクナビコナの体から緑色のオーラが溢れ巨大植物に纏わりつき断ち切ろうとした鎌鼬がぶつかっても断つことが出来ず大きな音を立てた程度で植物には僅かな傷しか付かなかった。

 

「嘘、司郎の攻撃が効いてない!?」

 へたり込んで呪力の自然回復に専念している亜衣が二人の攻防を唖然とした表情で見ていた。早苗達もまた同じ顔をしていた。これまで高橋司郎の戦いを見てきた。だからこそ、彼女達からすれば大国主の禁厭が効かないなど、想像できなかった。

 

「くっ、これじゃあキリがねぇ」

 無論司郎もまた、戦術の主軸である禁厭が通用しない事で少し焦っている。今の手札では足りない―――ならば。

 

「――――――上等だ。テメェでアレの試し撃ちさせてもらうぞ!」

 新しい手札を切るしかない。呪力を練り新たな権能を行使する。

 

「―――偉大なる師より託されし魔槍よ」

 司郎の手から骨でできた幾重の返しがついた禍々しい赤い槍が現れる。

 

「その獰猛な獣性を持って敵を穿て!!」

 詠唱によって露になる獰猛な魔槍を構えスクナビコナに狙いを定め。

 

「―――喰らいなァ!!」

 投擲する。投擲された魔槍は赫い閃光となり空を駆けスクナビコナへと迫る。

 

 

 

「くっ!随分と厄介な権能を持っているな神殺し!!」

 魔槍から逃げるためにスクナビコナは必死に船を走らせる。・・・だが、それよりも魔槍の追尾性能はそれを上回る。

 

 空からスクナビコナを追いかける魔槍は空を飛びながら槍の返しを新たな魔槍に作り替えてスクナビコナに飛ばしスクナビコナの逃げ道を防いでいく。

 

 スクナビコナが植物で防いでも別方向から新しい魔槍が飛び出し、石柱を飛ばして撃ち落としても再び飛翔し追いかけ、大地の壁を作り上げ閉じめても壁を突き抜けてスクナビコナに迫る。

 まさに猟犬、恐るべき猟犬は獲物であるスクナビコナの喉笛を食い千切るために迫り着弾したのか土埃をあげる。

 

 

 

「・・・た、倒したの?」 

 あれは効いただろうと亜衣は呟く。クーフーリンから簒奪しただろう新しい権能の詳細を一同は分からないが槍に込められた協力な呪力を考えれば間違いなく大地の精を取り込んだ布津御霊を除けばかなりの火力のはずだ。

 

「・・・どうやらそうでは無い様ね」

 アリサがそう呟くとスクナビコナがいた場所の砂煙が晴れスクナビコナの姿が露になる。

 

「・・・無傷じゃないね。どうやったのか分からないけど防ぎ切ったようだ」

 乗っていた船が無く大した負傷はしていないが狩人の勘かスクナビコナの体力のようなものが大きく減っていることをウィンには見抜いていた。

 スクナビコナがゲイボルクを捌き切ったカラクリは禁厭の権能で作り上げた分身に自身の莫大な呪力を移して避けたのだ。熱探知で飛んでくるミサイルにフレアを焚いて逃げるように。

 

「・・・随分とお疲れじゃないか。鬼ごっこはもう飽きたなら次はチャンバラごっこをしようぜ。本物(真剣)でな」

 当然ながら逃げ切るための呪力消費量は少なくなくスクナビコナの呪力量は4割にも減っていた。

 

「・・・確かに。このまま遠距離戦を続けても仕方ない。元より神殺しの獣にこのような戦いをするのも限界といえよう。来い、ここから先は英雄の戦いをしてやろう!」

 そういった瞬間、スクナビコナの姿が一瞬で消える。

 

『消えた!?』

 すぐに一同は探知魔術を使って消えたスクナビコナの居場所を探ろうとするがいた一人最もスクナビコナの殺意の対象である司郎だけはただ飛び。

 

「―――ハッ!この程度では裏はかけんか!!」

 背後に生太刀を振るい地面を潜って司郎の背中に奇襲をかけようとしていたスクナビコナの禁厭で日本刀サイズにまで大きくなった刀を弾く。

 

「忘れたのかよ不意打ち、暗殺。騙し討ち。日本神話で英雄の戦いなんて後ろから刺してナンボだろうが誉れはどうした?何言ってやがる勝者が正義だろうがよ!!」

 ヤマトタケル、スサノオ、源雷光。日本神話やそれに類似ずる英雄の戦いには華やかさは無かった。寧ろ逆、陰湿な戦いや一見華やかに見えたその戦いも悍ましい謀略を美化したものという学者も多い。司郎は知らないが元寇における戦を原作とし誉れをテーマにしたとあるゲームなど鼻で笑うほどに元寇の戦いの鎌倉武士達の戦い方は誉を便所で流したと言ってしまう程に凄惨かつ酷いものだった。

 

「―――セイ!」

 返し刀でスクナビコナに切りかかるがそんなことはとっくに理解していたからか既にスクナビコナの姿は無かった。

 

「ハハッ!そのような単純な太刀筋で捉えられるものか!!」

 小さくなり司郎の足元を走るスクナビコナ。

 

「それ!捌き切って見せろ!!」

 石の権能が切られたのか司郎の足元から石柱が突き上げ現れる。

 

「ちっ、面倒な!」

 恐ろしいほどの速度で突き上げられたら激痛で悶えるのもそうだが吹き飛ばされた姿勢を間違いなくスクナビコナは狙うと理解していた。故に、禁厭で空気のクッションを作りあげて衝撃を無効にして慣性で無防備になっている司郎の体を狙って放たれた殺意高めの植物の矢を生太刀で切り落とした。

 

『それはこっちのセリフだ。何故そこまでしぶとく生きれる事に呆れるぞ神殺し』

 その声が聞こえた瞬間上空から灼熱の水が司郎の頭に降り注いだ。

 

「ッ!?」 

 瞬時に禁厭で耐熱性の高い植物の傘を展開して防ぐ。バチバチジュウジュウと傘の上では明らかに熱湯が立てるような音ではない音が聞こえる。

 

「クソッ、・・・亜衣!お前の術借りるぞ!!良いな!」

 降り注ぐ熱湯の雨は勢いを弱めずケツアルカトルの神速の権能を行使できるような生贄が近くにない今逃げ切る方法は一つしかないと新たな禁厭の行使する判断をさせた。

 

「・・・紡げ縁結び、対象選択(ステータス)交霊(ダウンロード)

 亜衣の許可など聞くこともなく禁厭で繋がっている亜衣の縁を辿り亜衣の魂を体に卸し亜衣の魔術技術を卸し縮地術で一同の場所までワープする。

 

「へっ!?嘘っ!どうやってここまで来たの司郎!?」

 驚愕する亜衣を尻目に司郎はすぐさま一同に距離を取り獲物を戻して目を瞑る。

 

『―――勝負を捨てたでは無さそうだな』

 スクナビコナの声が聞こえる。何処から話しているのか分からないがしかし、奴とて分かっているはずだ。カンピオーネの魔術耐性は自分たち神々と同等、その上高橋司郎が最初に簒奪した権能はスクナビコナの親友である大国主の禁厭。並大抵の権能による遠距離戦は捌き切ってしまう。アストラル界の支配権を奪われた今、恐ろしいほどの野生の勘を持ってあらゆる困難を切り抜ける神殺しを仕留めれるのは自分が直接赴かないと自分の針の刀でしか出来ないと。

 

「・・・」

 司郎は何も答えない。ただじっとスクナビコナが仕掛けてくるのを待つのみ。

 

『―――――行くぞ!』

 再びスクナビコナの声が響く。瞬時に巨大な石柱が飛んでくる。

「1つ!」

 石柱を軽やかに躱す。

 

「二つ!」

 躱した即座に射出された植物の矢をネットになる種ごと鎌鼬で切り落とす。

 

 

「三つ!」

 そして、大規模の熱湯が落ちてきた瞬間、縮地術で飛ばした鎌鼬をアンカーに範囲外へと逃げる。

 

「4つ!」

 逃げた所を先読みしたのか着地した場所が崩壊し剣山の穴が開くが瞬時に飛翔の術を使って駆け上がろうとする。

 

「ッ!?」

 そして、剣山の穴から脱出した瞬間を狙い放たれた三本の石柱を捌き切った瞬間に石柱の一つに仕込まれていた植物の矢が司郎の肩を貫く。

 

 

 

「―――――貰ったぞ神殺し!!」

 そして、大きく乱気流のように墜落していく司郎を千載一遇のチャンスと判断したスクナビコナが何処からか現れ司郎と同じぐらいのサイズになり針の刀を司郎の心臓に向けて刺突しようと仕掛けてくる。

 

「――――――」

 刹那、二人の攻防の終焉を迎える。

 

「がっ・・・がはっ・・・・・」

 司郎の胸に針の刀の切っ先が突き刺さり衝撃で真ん中が折れ、右腕の指の幾つかはあらぬ方向に折れ血を流しながらゆっくりと落下していく。

 

「くっ、浅かったか」

 一方スクナビコナは交差するその一瞬に司郎に禁厭が籠った貫手を喰らっていた。常人であれば骨ごとやられていただろうが神であるスクナビコナにとって大した痛みでは無い。

 

「――――――紡げ、縁結び」

 だが、司郎を相手にする時においてそれは致命的である。縁結びの禁厭がスクナビコナを捉える。

 

「!?」

 瞬時に禁厭を解除しようと動くスクナビコナだが、それよりも早く司郎の手に再び魔槍が現れる!

 

「――――――紡ぐ縁が汝を穿つ」

 瞬時に幾つもの返しが生み出される魔槍それを折れた利き腕で握りしめる。

 

「穿つは心臓、当たるは必中!!」

 左手で空気の壁を作り蹴りスクナビコナに向けて必中の魔槍を突き立てる!!

 

「「ウォォォォォォォォッッ!!!」」

 必殺の魔槍を防ぐために防壁を使うが瞬時に防ぐほどクーフーリンの魔槍は止められない!

 

 

 

 

「「―――――――――」」

 

 

 

――――――――落ちる。――――――落ちる。

 

 

 

 神殺しの獣とまつろわぬ神は地面に落ちる瞬間―――両者は地面を蹴り体勢を立て直す。

 

「司郎!!」

 司郎に駆け寄ろうとする亜衣達だが。

「油断するな!まだ終わっちゃいない!!!」

 その言葉に一同はスクナビコナを見る。

 

「ウォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」

 そして、スクナビコナのクーフーリンの魔槍によって抉られた胸元から血が溢れ魔法陣が現れる。

 

「我、この命を持って神殺しに最後の戦を挑まん!!神殺しよ最後の戦いだ。我が友大国主のように愛する者を守り切って見せよ!!」

 誰もが見ても分かるほどに致命傷な体を引きずってスクナビコナは光さえ飲み込むほどの漆黒の球体を展開する。

 

「・・・死なばもろとも、日本のカミカゼ精神は神でさえも同じということかしら」

 冷静に言っているように見えるアリサだがその整った顔に流れる幾つもの汗が目の前に起ころうとしている事の規模を理解していた。

 

 スクナビコナの霊核は魔槍で半分近く撃ち抜かれもはやスクナビコナの命は風前の灯火だ。・・・しかし、スクナビコナが展開した球体は周囲の様々な物質を集め肥大化していく。誰が見ても分かるほどの脅威――――ブラックホールだ。

 

「・・・お前ら、やるぞ」

 流石は魔術の神にして国造りの片割れなんの手本も要らずに天地開闢の黒の剱作り上げてやがると心の中で称賛しながら司郎は皆に禁厭の強化をしてアストラル界の地面に生太刀を突き刺し呪力の根を張ろうとする。

 

「・・・分かった。行けるよ司郎」

 権能の封印の役割を終えたのか布津御霊が亜衣の前に地面から生えてくる。

「勿論、今回そんなに活躍していなかったからね」

 その言葉を聞いたウィンは地面に種をばら撒き大地に根を張りテントを作り上げる。

「ウィンと同じ気持ちよ。ここが腕の見せ所ね」

 アリサもまた魔法陣を展開し構える。

 

「―――――司郎さん」

「・・・なんだ早苗」

 早苗は司郎に向き直り司郎の顔を掴んで引き寄せる。

 

「・・・力をください。そして、無事に作りましょう私たちの魔術結社()を」

 その言葉に司郎は優しく唇を塞ぎ大国主の禁厭を早苗に流し込む。

 

「―――――来い。お前らにも」

 代わる代わるに司郎は彼女たちの唇を奪う。流し込まれる司郎の呪力によって一同の姿が変わる。

 

 亜衣の姿は胴丸の武者娘にアリサの姿は戦早乙女の姿にウィンの姿が真っ白いローブの姿に変わり早苗の姿もまた12単衣の媛巫女姿になった。

 

「さぁ、大戦のフィナーレだ。・・・来やがれスクナビコナ!!!」

 その声が聞こえた瞬間疑似ブラックホールが最大吸引力で司郎達を引き込もうとする!!

 

「船乗りたちの神ニョルズよ!我らに嵐を乗り越える加護を与えくださいませ!!」

 引力の触手に対応するために風を和らげる呪文が一同を包む。

 

「お願い布津御霊!!」

 地面に突き刺さった布津御霊を使って地面とのつながりを強くして引っ張られないようにする。

 

「っ、ま、負けない!!」

 ヤドリギの小屋が引力の暴力によって吹き飛ばされないように必死で呪力を流して小屋を維持しようとする。

 

「―――――」

 そんな中必死に自分の中に眠る媛巫女としての力を解放しようとする早苗。媛巫女の秘奥、それを使えばこの戦いを大きく動かせると願い必死に細い精神感応の触手を疑似ブラックホールの中心であるスクナビコナに向けて伸ばすがスクナビコナを掴む感覚が無い。

 

「っ、こ、このままじゃあ!!」

 ウィンの悲鳴が聞こえる。アリサや亜衣の頑張りがあってもヤドリギが一本、また一本と千切れていく。

 

 

 

(ッ!私には何もできない―――――)

 自身の求めている力の才能の無さを絶望する早苗悲嘆にくれそうになる―――――

 

 

 

(―――――早苗)

「え?」

 早苗の頭に司郎の声が聞こえる。振り向くと司郎が信じているといった表情をしていた。

 

―――――その瞬間歯車が噛み合う音がした。

 

「ッ!―――御巫の八神よ。和合の鎮めに応えて、静謐を顕し給え」

 開花した御霊鎮めの触手がスクナビコナを捉え疑似ブラックホールの勢いが大きく削がれる。

 

 

 

「―――――我は国生みの王、我が禁厭は森羅万象に轟くと知れ!!」

 ここでやらねば男が廃ると司郎は大国主の禁厭の聖句を唱え全員の力を強化しすべての呪力を出し切りスクナビコナの疑似ブラックホールを耐え抜く。

 

 

 

 そして、疑似ブラックホールの維持も限界が来たのか勢いが衰え消えていく。

「ハハハハハハハ・・・・・良くぞ守り切って見せた。これは褒美だ。勝者にふさわしいものだろう」

 崩れ行くスクナビコナから呪力が司郎の体に集まって来る。

 

「・・・覚えておけ我が宿敵高橋司郎、我らはまた現世にやって来る。今度こそ新たな葦原の中つ国を作るためになその時までその命ちゃんと・・・とっておくのだ・・・ぞ・・・」

 

 スクナビコナの体が消えたその瞬間司郎の体にスンと重いものが掛かった感触を覚え戦いと新たな権能を得たのだと理解したのであった。




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