BRAVE10S   作:花札

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出雲の踊り巫女と名乗る、阿国……


そんな阿国に、伊佐那海は舞の勝負を申し込んできた。


歌舞伎舞

「アンタも巫女なら、舞ってみなさいよ!!」

 

 

しつこく要求する伊佐那海……

 

そんな伊佐那海に、阿国は呆れた表情を浮かべていた。

 

 

「は?

 

これは死合いでしょ?何を言って」

「なーに、よいではないか!

 

 

互いに巫女というのなら、舞で死合いというのもまた一興!」

 

「何を勝手な!!」

 

「ここで場に、花を添えるのも良かろう!

 

皆も舞いを見たいよな!」

 

 

幸村の質問に、観客席はまた一斉に盛り上がり、歓声の声を上げた。

 

 

(舞なら、然程危険な目にはあわねぇか……

 

死合いに、出るっつった時はどうなることかと思ったが……

 

 

だが万が一……何かあれば……

 

止めなきゃなんねぇ)

「分かりましたわ!」

 

 

幸村の提案に、阿国は快く引き受け返事をした。

 

 

「私こそが、真の出雲の踊り巫女!!

 

舞で勝負いたします!!」

 

「(可愛いな……)それでじゃ、始め!!」

 

 

いざ始まった勝負……

 

 

先に舞を披露した阿国……

 

阿国の舞は、体を売るような行為を見せるといった、舞だった。その舞に観客席から、歓声の声が響いた。

 

そんな阿国の舞に、十蔵と幸村は呆れていた。

 

 

「ふしだらな!」

 

「艶というものは、もっと秘めた感じをそそるのだがのう……」

 

「誰も若のエロ講釈を、聞いてませんよ」

 

 

阿国に続いて、伊佐那海も舞を始めた。その舞は阿国とは違く、一度飛び上がり舞台へ着地と共に、下駄を鳴らし手に持っている二本の鉄扇を振るわせ、一本の鉄扇を自分の顔を隠すように持っていき、鉄扇の隙間から、怪しげな眼の光を漂わせた。

 

 

(な、何なのこの娘!!)

 

 

そんな舞を見た阿国は、焦りを感じ伊佐那海と同じような舞を披露した。

 

 

(私にだって、あれくらいできるわ!!)

 

 

交互に見せて行く舞……

 

伊佐那海の圧倒的な舞に、阿国の焦りはどんどん積もって行った。

 

 

(私だって!!)

 

 

鉄扇を上へと上げ、優雅に舞う伊佐那海……

 

 

(アイツ……)

 

(アタシは大丈夫……

 

皆のおかげで強くなれたの。前に進める力を貰ったの……

 

 

だから、ありがとうって全てのものに感謝するの!!)

 

 

花弁のように飛び上がり、水面に着地するかのように降り立つ伊佐那海……

 

 

「出雲の踊りはね……

 

 

全ての神々に感謝する踊りなの。

 

アンタみたいに、人を媚びる踊りなんかじゃない……

 

(もう、失ってしまった……アタシの大切な場所……)

 

 

出雲を馬鹿にするのも、いい加減にしなさいよ!!」

 

 

伊佐那海に言われた阿国は、顔を赤くしその瞬間、紐の着いたクナイを取り出した。

 

 

「バカバカしい!!

 

もう舞なんて、やってられっか!!

 

オラァ!!」

 

 

紐の着いたクナイを、伊佐那海に投げつけた。そのクナイを伊佐那海は腕を掠り、阿国の手元へ戻った。

 

 

「これは死合いなのよ!!倒れた方が負けよ!!」

 

「伊佐那海、棄権しろ!!

 

そいつ(阿国)には、殺しの心得がある!!戦いになったら、テメェは死んじまう!!」

 

「嫌!!」

 

 

阿国はまた攻撃をし、伊佐那海はその攻撃を鉄扇で避けながら、何とか耐えていた。

 

そんな伊佐那海を見た才蔵が手を出そうとした時だった。

 

 

「手を出さない、才蔵」

 

「?!」

 

 

伊佐那海の死合いを見ていた明日花が、止めに入ろうとした才蔵を止めた。そんな明日花の言葉に続くかのように、伊佐那海が才蔵に向かって言った。

 

 

「明日花ちゃんの言う通り!!

 

才蔵は手を出さないで!!

 

 

アタシ、大丈夫だから!!

 

(もう頼ってばっかりじゃ、いられない!!

 

いられないって決めたんだ!!そのために、明日花ちゃんから自分を守ることを教わったんだから)」

 

 

「フン!!

 

男に頼って、降参すればいいものを!!」

 

「バカなこと言わないで!!アンタはアタシが倒すんだから!!」

 

「できるわけないでしょ!!」

 

「伊佐那海!!」

 

 

攻撃を放ってきた阿国に、伊佐那海は足に力を入れて前へ出た。投げてきたクナイを前に、伊佐那海は自分の顔を防御するかのように、鉄扇を前に出した。

 

 

「そんな扇など、盾になるもんですか!!」

 

(それは、どうかな?)

 

 

近付いてくるクナイ……

 

 

“パァン”

 

 

目の前に来たクナイを、伊佐那海は鉄扇で払い避けた。その瞬間、次の攻撃をしようとした阿国の首へ、鉄扇を向け止めた。

 

 

「あ……」

 

「アンタの舞は、神々を愚弄している……

 

もう二度と、出雲を騙るのはやめなさい」

 

 

阿国を見つめる伊佐那海の眼に、一瞬不気味な光が輝いた。そんな伊佐那海を見た阿国は伊佐那海の真後ろに、何か途轍もない恐怖があるという気配に捉われ、勝ち目がないと悟り、そのまま腰が抜け座り込んでしまった。

 

 

「ま、参りました……」

 

「お姉ちゃん、やったぁ!!」

 

「勝者、伊佐那海!!」




伊佐那海の死合いが終わった頃……

信幸のもとへ近づいてくる一人の男……


その男は、武田の家紋が入った黒い羽織の腕を通し、顔に鳥の面を着けていた。

男に気付いた七隈は、信幸を呼び男を見た。男は、信幸の前へ来ると、膝を付き頭を下げた。


「ただ今戻りました。信幸様」

「戻ったか……」

「はい……」


顔を上げ、幸村達の方を見る男……

目に映るのは、甚八の隣にいる狐の面を着けた明日花だった。
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