二人が互いに突いた鉄棍棒と槍は、互いの面を叩き割った。
「!?」
「面が!!」
互いが着けていた面が当たった攻撃により、同時に割れた。割れた音を合図に二人は互いの手首を、武器で攻撃した。攻撃が当たったせいで、手に握られていた武器が吹っ飛び、それと共に互いは一歩下がるかのように転がり座り込んだ。
吹っ飛んだ武器は、幸村側の方へ飛び地面へ突き刺さった。
「槍が!!」
「同時に二つの武器が、飛んでくるとは……」
「じゃあ、武器無で戦うって言うのか?二人は!」
「いや、明日花にはまだ武器はある」
「え?」
その時、観客席から声がざわつき始めてきた。その声に、才蔵達は舞台へ目を向けると、面を外す二人の姿と面を外しさらに頭に巻いていた黒い布を取る優助の姿があった。
「!?」
優助の姿……
肩まで伸ばした黒い髪を耳下で結い、開いた眼の色は明日花と同じ透き通った青色をしていた。
それだけではない、明日花と同じ顔立ちをしていた。
「そっくり!
あの人、明日花ちゃんと同じ顔立ちしてるよ!」
「髪の色が違うだけで、顔立ちが瓜二つだ!
あの二人もまさか、双子?」
「んなわけねぇだろ!!
あんな背丈が違う双子なんか、見たことねぇ!!」
「じゃあ、兄妹?」
「それもねぇだろ(まさか……)
どうなんだ?オッサン」
「似てて当然だ……(面を取ったせいで、ますますやりにくなった……)」
「?」
「武田軍隊長、山本優助……
武田軍副隊長、紫苑の夫になるはずであった男だ。だが夫になる前に、武田が滅びその約定は破棄になってしまった。
そんな時だ、明日花が二人のもとへ来たのは」
「まさか……あの男」
「え?何々?」
「……
明日花の、父親だ」
「!?」
幸村の言葉に、一同は驚き舞台へ上がっている二人を凝視した。
「じゃあ、明日花ちゃんはお父さんと戦ってるっていうの?」
「そうだ」
「そ、そんなぁ……」
「せっかく、父ちゃんと会えたのに……」
「立場上の関係で会えないか……
確かにそうだな」
「兄上は徳川に就いておる……
紫苑は、徳川をずっと嫌っておってな、儂等の元へ行くことになった時先に優助が兄のもとへ行くことにした。その際、明日花との関係を断ち切ると言って、八年前別れた」
「……」
「それから、四年後に明日花は紫苑と共に、儂のもとへと来た」
どこか悲しげな眼で、舞台に立つ二人を見る幸村……
面を捨て、立ち上がる明日花と優助……
すると二人は、腰に着けていた鞘から同時に刀を抜き取り振り下ろした。鉄と鉄がぶつかり合い、その衝撃で二人は後ろへ飛ばされ、距離を置いた。
距離を置いた優助の目に映る明日花の姿……
その姿は一瞬、幼い頃の明日花の姿を映した。
(……あの時)
息が整った明日花は、刀を振り下ろし攻撃したが、その攻撃を優助は軽々と避け、明日花の後ろへ回り刀を振りかざした。
(あの時……全てを捨てて、あの人(信幸)のもとへ行った。
紫苑も明日花も……何もかも捨てて……)
優助の攻撃を、明日花はすぐに刀でその攻撃を防ぐかのように振り回し、振り回した刀は優助の腕を斬り、優助は後ろへ引いた。ふと明日花の手を見ると、刀が握られていた手が少し震えているように見えた。
(……明日花)
『刀を握らせて、約二年……
まさかここまで、成長するとは思いませんでしたよ』
目の前にはいくつもの斬れた据え物が、倒れ転がっていた。その中心に、刀を握り、息を切らしながら立つ幼い明日花……
『当たり前でしょ?優』
『紫苑』
『この子は、私とアンタの子なのよ?
出来て当然!』
『あのね……』
『父さん!』
二人の会話に割り込んでくる幼い明日花は、刀を持ちながら駆け寄り優助の顔を見上げた。
『ねぇねぇ!見てた?明日花の、刀捌き!』
『えぇ、凄かったですよ』
しゃがみ込み、駆け寄ってきた明日花の頭を撫でながら、優助は微笑みそう言った。
優助に続いて、紫苑もしゃがみ込み明日花の頭を撫でながら言った。
『槍も鉄扇も、使いこなせちゃって、さすが私と優の子供!』
『ヒヒ!』
『全く、紫苑の明日花へ対する溺愛は、呆れてものも言えません』
『あら、いいじゃない。
それとも何?我が子を溺愛しちゃいけないっていうの?』
『そう意味じゃ……
ハァ……全く』
呆れる優助を前に、明日花を抱き上げて、紫苑は笑みを溢しながら頬ずりをした。
刀を握り直し、明日花の空いた足へ足を踏み込んだ。
(ヤバい!!)
「剣術隼斬!」
一瞬何が起こったか分からぬような刀を振り回し、優助は明日花から離れ、後ろへ引いた。その瞬間、明日花の体は刀に斬られたように、ズタズタに斬られ明日花はその痛みで、その場に膝を付いた。
「明日花ちゃん!」
「何が起きたんだ?!」
「あの男、有り得ねぇ速さで刀を振って、明日花の体中に傷を負わせたんだ。(相当、叩きこまれているな……本当に、侍か?)」
刀を握り直し、明日花を見る優助に才蔵は凝視した。