BRAVE10S   作:花札

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死合いから、半月後……


再会

目を覚ます優助……

 

 

起き上がろうと体に力を入れるが、なかなか入らずやっとの思いで、体を起こし辺りを見回した。

 

 

「……?」

 

 

自分が寝ていた場所から少し離れたところに、体中に包帯を巻き眠る明日花がいた。

 

 

「よう……

 

目ぇ覚めたか?」

 

 

その声の方に目を向けると、そこにいたのは縁側に腰掛けで煙草を吸う甚八だった。

 

 

「甚八さん……」

 

「お変わりねぇご様子で、優助」

 

「お久しぶりです。

 

驚きましたよ。まさかあなたが、幸村様に仕えていたとは……」

 

「仕えてねぇよ。暇潰しにここ(上田)にいるだけだ。」

 

「そうでしたか……

 

紫苑が亡くなった後、明日花はあなたが?」

 

「あぁ、まあな。

 

紫苑から、頼まれてたことだし、俺はそれをは守ったまでだ」

 

「縛られるのが嫌いなあなたが、よくもまぁ子供の面倒を見るなどといった約束事を」

 

「そいつは、一切俺に迷惑をかけなかったぜ?

 

だから、俺は好きなようにやらせて貰ってたぜ」

 

「おや、そうですか」

 

「お前と明日花の闘い見せてもらってたが、お前ら遊び過ぎだ。」

 

「久しぶりの再会でしたからね。

 

僕ら少々、燥いでいたのでしょう」

 

「そうかい。

 

 

それより、そいつに感謝しろよ」

 

「ハイ?」

 

「三日続けて、禁術とされていた回復術使って、お前を治したんだ」

 

「三日続けて!?」

 

「自分の体にできた傷も放置して、治療したんだ。アンタの傷、肺まで切られていたらしくて、相当ヤバかったみてぇだぜ?」

 

「……」

 

「禁じ手を使ってまで、お前を助けたかったんだろうな。」

 

「……

 

禁術は、例えどんなに体力のある者でも、使えば三日は動けないとされている術……

 

 

それを三日続けて使った……だとすると、明日花は」

 

「二週間近く寝込んでた。まぁ佐助が言うには、血の出し過ぎもあるだろうだとさ。」

 

「……」

 

「けど、覚めた後はお前の傍から、ずっと離れなかったぜ?

 

寝る間も惜しんで、ずっとお前の看病。

 

全く、父親想いのガキでよかったな」

 

「父親といっても、本当に父親ではありません……

 

それに、例え紫苑と結ばれていたとしても、僕等には子供などできませんでしたから」

 

「何でだ?」

 

 

突然言い出した優助に、甚八は煙草を口から取り煙を吐き出し、振り向き質問をした。

 

優助は眠る明日花の寝顔を見つめながら、話をし出した。

 

 

「ある戦乱中、紫苑は敵が放った矢を腹に喰らってしまいました。

 

命は何とか取り戻しましたが、それと引き換えに子供が産めない体になってしまったのです……

 

 

それから間もなくして、ずっと仕えていた武田氏が滅び、僕との約定も破棄……

 

あの時の紫苑は、おそらく不幸のどん底にいたでしょう……

 

 

そんな時でした……

 

紫苑が明日花を見つけたのは。拾ったこの子はなぜかは知りませんが、とても僕等二人に似ていました。神社にいた神主や姐さん達が、口を揃えて言っていましたから……

 

 

紫苑はよく言ってました……

 

『この子は、神様が私達のためにくれた、私と優の血を引いた子供』だと」

 

「……」

 

「……どうりで、紫苑が明日花をあそこまで、可愛がるわけだ」

 

 

甚八の言葉に、笑みを溢す優助……

 

 

「しかし、その子供は普通の子供ではなかったようですけどね」

 

「ま、そうみてぇだな」

 

 

甚八の声に反応するかのように、寝ていた明日花が目が覚めたのか、目を擦りながらゆっくりと起き上ってきた。

 

 

「じゃ、俺はここで。

 

優助」

 

「?」

 

「八年ぶりの再会だ。思いっきり甘えさせろ、明日花に。

 

それとそいつが背負ってる重荷、外してやれ。紫苑が死んでから、あんまり気ぃ緩めてなかったみてぇだし……」

 

「……」

 

「じゃあな」

 

 

手を上げながら、甚八は庭を通りその場から去って行った。

 

 

「甚?」

 

 

目を擦り、開けながら庭を見る明日花……

 

優助は、目覚めた明日花の頭に控えめに手を伸ばし乗せた。その感触に気付いた明日花は、すぐに振り返り優助を見た。

 

 

「……優」

 

「目が覚めましたか?明日花」

 

 

目覚めた優助を見ながら、明日花は体を優助の方へ向けた。優助は彼女の頭を撫でながら笑みを浮かべながら話し出した。

 

 

「とても強くなりましたね、明日花。

 

槍の腕も、刀の腕も、最後に見た時とは比べ物にならないくらい、とても上達していました」

 

「全然……強くなんか…」

 

「いいえ……

 

まるで、紫苑と戦っているようでしたよ」

 

 

その言葉を聞いた明日花は、顔を上げ優助を見た。

 

 

「……んで」

 

「?」

 

「何で、あの時……会ってくれなかったの?」

 

「……」

 

「来てたよね……徳川の手下と戦ってた時。

 

 

私が敵の攻撃に当たりかけた時、助けてくれたよね?」

 

「……」

 

 

その言葉を聞いた優助は申し訳なさそうな顔つきへと変わった。

 

 

「紫苑が亡くなった時……

 

傍にいてあげられなくて、すみませんでした」

 

「!?」

 

「亡くなったと聞いて、本当はあなたのもとへ駆けつけたかったんです……

 

あの日、信幸様の用で出掛けており、その帰りに君を見かけたんです……紫苑と同じ、狐の面を着けて槍を持った君に。

 

 

一目だけ見ようと思い、君に気付かれないように見ていました。

 

 

 

けど、君の事を徳川へ知られてはまずいと思い、君達二人と縁を切って別れたのに……

 

君の姿を見ただけで、もう満足だと自分に言い聞かせ、帰りました……

 

 

帰る際、どれだけ思いを抑えどれだけ我慢をしたか……

 

 

言い訳の様な言い分で、すみません……」

 

「……いいよ」

 

「……」

 

「だって……あの時、私も……私も、優の元へ行きたかった……

 

 

それに、あの日追い駆けたんだよ……優のこと。優に会いたくて……」

 

 

涙声で話す明日花……

 

優助は顔を上げ、明日花の顔を見た。彼女の目からは次々と滝の様に涙が溢れ出ていた。

 

 

「あの時……母さんが死んで……

 

ずっと……ずっと……!!」

 

 

何かを言い掛けた明日花の頭を、優しく撫でる優助……

 

優助の顔を見た明日花は、堪えていた涙が一気に溢れ出し、座っている優助に飛び付いた。優助は飛び付いてきた明日花を受け止め、頭を撫でてやった。

 

 

「ずっと……ずっと……

 

優に会いたかった……

 

 

母さんが死んで、これからどうすればいいのか分からなくなって……

 

それで、それで」

 

「もういいですよ、何も言わなくて……

 

辛い思いをさせましたね……明日花」

 

「もういいよね……もう、呼んでいいよね?

 

 

父さん」

 

「いいですよ……もう。

 

ここには、誰もいません……誰も」

 

 

そう言いながら、優助は泣く明日花を強く抱き締めた。それと共に彼の目から涙が流れた。

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