BRAVE10S   作:花札

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優助が目覚めて数分後……

別の部屋で目を覚ます七隈……


気持ち

(ああ、そうだ……

 

ここは、上田だった)

 

 

そこへ、障子を開ける音と共にやってきた六郎……

 

 

「起きていましたか」

 

「……」

 

 

目覚めた七隈は、起き上がり服を脱いだ。体には、左肩から腰まで斜めに斬られた傷跡が残っていた。

 

 

「傷は大きく残ってしまいましたけれど、もう命の心配はないでしょう」

 

「あれからもう半月……

 

何故上田に、留まらねばならぬのか……心外だ」

 

「信幸様が、そうお命じになられたのです。仕方ありません」

 

 

 

 

半月前……

 

 

『俺は、沼田に戻らねばならん。

 

が、あの状態の七隈は動かせん。かといって、優助もまだ目覚めてはおらん』

 

『分かっておる、心配するな』

 

 

信幸は七隈の治療をする、佐助とアナスタシアを見た。

 

 

『手を煩わせるな』

 

『七隈と優助の事、お願いね』

 

 

小松はそう二人にお願いすると、信幸と共に上田を後にした。

 

 

 

 

その時の事を思い出す七隈……

 

 

「あの時、よく退きましたね……

 

 

風魔の一撃、咄嗟に半歩下がったでしょう。そのおかげで、一命を取り留めたとアナが言っていましたよ」

 

「……それくらい、できて当然のこと」

 

「そうですね」

 

 

七隈の体に包帯を巻く六郎の話に、答える七隈……

 

 

「私のことより、あなたのその右眼」

 

「?」

 

「多くは使わぬ方が良いでしょう。

 

そこまでして、あの自堕落な主に尽くすなど、犬の様に」

「犬の様なのは、あなたでしょう」

 

「……」

 

「ハイ、できました」

 

 

「二人共、幸村様と信幸さんが大好きなんだね!はい、お菓子の差し入れ!」

 

 

お菓子が入った皿を持って部屋へと入ってきた伊佐那海……

 

伊佐那海の言葉に、引っ掛かった六郎は質問した。

 

 

「伊佐那海、誰が誰の事を大好きですって?」

 

「六郎さんが幸村様のこと」

「断じて違います!訂正なさい!」

 

「えー?何で?」

 

「訂正しなさい」

 

 

自分を睨む六郎の眼に、伊佐那海は異様な恐怖を感じ訂正した。

 

 

「六郎さんは……幸村様の事、好きじゃないです」

 

「ハイ、その通りです」

 

「耳が痛いわ、六郎」

 

 

六郎の答えを聞いていた幸村は、部屋へと入ってきながらそう言った。

 

 

「幸村様!」

 

「おや、おいででしたか」

 

「体はもう大丈夫か?七隈」

 

「あなたに心配頂かなくとも、御覧の通りです」

 

「そうか!

 

うちの忍たちは、優秀だからのう!大事なくて、本当によかったな!

 

それから、優助も心配いらんぞ。今は明日花が、傍についておる。

 

多分、もう目が覚めておるだろう。

 

 

二人共、ゆっくり養生するがいい」

 

 

そう言うと、幸村は部屋を出て行った。幸村に続き、六郎も部屋を出て行った。

 

七隈の部屋に残った伊佐那海は、二人が出て行った後七隈を見た。

 

 

「七隈さん、淋しい?」

 

「馴れ馴れしいぞ、貴様!」

 

「貴様じゃないもん!伊佐那海だもん!」

 

「下がれ!

 

私はもう休む!」

 

 

布団を頭から被り、横になった七隈……

 

 

「……早く信幸さんの所に、戻れるといいね!

 

離れているの、淋しいもんね!

 

 

私もね……

 

才蔵がいないと、淋しいからその気持ち、よく分かるよ!

 

明日花ちゃんと優助さんも多分、離れていた時同じ気持ちだったと思うよ。

 

 

でもね……淋しいけど、強くなるために我慢しなくちゃね」

 

「女子と一緒にするな!!出て行け!!」

 

 

怒鳴られた七隈に、伊佐那海はびっくりして驚き慌てて部屋を出てた。出た伊佐那海は縁側歩き、ふと足を止め空を見上げた。

 

 

(淋しくても……一人でも……強くなるんだ!!)

 

 

 

 

「体は、もう大丈夫の様だな」

 

 

優助の部屋へと来た幸村……

 

 

優助は、自身が持っていた本を読んでいた。優助の膝の上には、気持ちよさそうに眠る明日花が頭を乗せ横になっていた。彼女の頬には泣いた後であろう、涙が流れた跡があった。

 

 

「幸村様……」

 

「やはり、父親の膝枕の方が、安心して眠れるようだな。

 

久しぶりだわ、明日花のこんな寝顔を見たのは」

 

「甚八さんから聞きました……

 

紫苑が亡くなった後、明日花はずっと甚八さんのもとにいたと」

 

「まぁな。

 

儂の所より、紫苑が頼りにしていた甚八の所を選んだのだろう」

 

「……」

 

「兄に代わって、謝る。

 

すまんなぁ……お主と明日花を会わせてしまって」

 

「いえ……

 

多分、紫苑が引き寄せたのでしょう。僕と明日花の互いに会いたいという思いが強くなって……」

 

 

そう答えながら、優助は眠る明日花の頭を撫でた。

 

 

「それにあの竜(伊達政宗)が、あの会場にいたとは誰も予想が付きません。僕もあの時、信幸様に怒鳴ってしまったことを、凄く後悔しています」

 

「そうか……なら、儂が後で兄上にそう手紙で伝えとこう」

 

「ありがとうございます」

 

「しかし、お主は抜け目が無いのう……

 

明日花に、技を使わせぬとは」

 

「彼女の技をご存じなのは、あなただけです。

 

信幸様には、何も伝えておりません」

 

「だから、技を使わせなかったのか……」

 

「あの時にも言いましたが……

 

徳川の様な者に、明日花の力を知られたくはないのです。

 

 

何に利用されるか、分かりません」

 

「そうだな……

 

ま、しっかり体を休めるがよい。明日花にも、甘えられなかった分、思いっきり甘えさせろ。この子は、ここへ帰って来てから、誰にも甘えようとはしなかったからのう」

 

「明日花は、背伸びをしたがるような子です。

 

ずっと、背伸びをしていたのでしょう」

 

「そうだな。

 

他の者には、ここへ余り近付かぬよう言っておく。親子水入らず、別れの時が来るまで、一緒にいろ」

 

「……ありがとうございます」

 

「では……六郎」

 

 

部屋を出て行きながら、幸村は六郎の名を叫び六郎を呼び叫んだ。幸村が去った後、自分の膝の上で眠る明日花に目を向け、頭を撫でながら空を見た。

 

 

(ここへ行かせて、正解の様でしたよ……紫苑)

 

 

心地い風が吹き、優助と明日花の髪を靡かせた。

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