BRAVE10S   作:花札

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木の上で、見張りをする才蔵……


後継者

才蔵の後ろに姿を現したアナスタシア……

 

 

「お疲れ。どーよ?」

 

「会津と奥州が睨み合って、佐和山も駿河も騒がしいわ」

 

「だろうな……

 

ここんとこ、領内に入り込む間者の数が半端ねぇ」

 

「えぇ、ここに来るまでもいたわ。

 

佐助は?」

 

「見回り警戒中」

 

 

答えると、才蔵は深く息を吐いた。そんな才蔵に、アナスタシアは不思議そうに質問した。

 

 

「何よ、どうしたの?」

 

「……

 

 

十番勝負って、何だったんだろうな?」

 

「……疲れてんじゃない?

 

三日くらい、寝てないでしょ」

 

「あぁ……」

 

「何か納得いかない事でもあるの?」

 

「別にねぇよ」

 

「あらそう……なら、いいけど。

 

 

十番勝負の後から、一気に動き出したわ。

 

さすがの幸村様も、腰を上げるでしょうね……

 

 

来るわよ?朱い世界が」

 

 

そう言いながら、アナスタシアは空を見上げた。

 

 

 

 

一方、上田では……

 

 

国の戦支度の手伝いをする清海……

 

 

「重い物は拙僧に任せよ!」

 

「おお!凄い怪力!」

 

「頼りになるねぇ、あの御坊さん」

 

「ホントホント」

 

 

「清海!」

 

 

国の様子を見に来た幸村は、木材を運ぶ清海を呼んだ。

 

 

「お主のお陰で、力仕事が捗るわ」

 

「おお!幸村様!

 

十番勝負では、不覚を取った故もっともっと、修行せねばと!

 

 

ウォォォオオ!!

 

心頭滅却すれば、火もまた涼し」

 

 

叫びながら、清海は木材を運んで走って行った。

 

 

「修行って……

 

戦支度だってこと、分かってんのかな……清海のオッチャン」

 

 

弁丸の声に気付いた幸村は、振り返り丘の上にいた弁丸を見た。

 

 

「大手門の補強……

物見櫓の新造……

 

堀も深くしてる。

 

城が囲まれた時の、備えでしょ」

 

「聡いのう、弁丸分かるのか」

 

「この城の事は、頭に入ってるからね」

 

「ではもし……

 

徳川が、軍動かすならどう来る?」

 

 

その質問に答えるかのように、弁丸は幸村の傍へと行き座り込み、地面に落ちていた枝で図面を書き出した。

 

 

「中山道を西へ……

 

その道中、ここ(上田)を攻めるだろうね。目障りな真田を無視して通るとは、思えないもん」

 

「おお、正解だ。

 

敵はここで迎え撃つ!

 

上田とその民を守らねばならんからな」

 

「……

 

でも、城を守り切っても……稲は全部刈られちゃうんだ……」

 

「……」

 

「籠る兵を誘い出す、常套手段さ。

 

そしたら、戦が終わっても百姓は飢え死にだよ。

 

 

オイラみたいな、親のない子供がまたいっぱい増えるんだ。

 

オイラだったら……

 

 

オイラだったら、城だけじゃなく田も守って見せる。

 

敵なんて、国境で全滅させればいい」

 

「それが出来たらのう」

「出来るさ!!

 

敵の足元を、すくえばいいんだ!!

 

やり片なら、いくらでもオイラの頭の中にある!!」

 

 

真剣な目で、幸村を見ながら弁丸は言い切った。そんな弁丸を呆気に見る幸村の目に、言い過ぎたと思った弁丸……

 

すると、幸村は弁丸の頭に手を乗せた。

 

 

「……お主には、畏れ入ったのう。

 

 

お主の言う通り、城だけでなく田も守らねば!食いっぱぐれるのは、ごめんだからのう。」

 

「幸村様……」

 

「そなたの知恵、上田のために貸してくれんか!

 

儂は大事な事を忘れておった」

 

「うん!」

 

 

 

 

「急な呼び出し……

 

何か大きな動きが?」

 

 

幸村の部屋に呼ばれた才蔵達……

 

 

「……とうとう……か」

 

「……」

 

 

「よーし、集まっておるな!」

 

 

襖を開け、入ってきた幸村は、部屋に集まっている皆を見ながら言った。入ってきた幸村は、座りながら話し出した。

 

 

「今日は、皆に大事な報せがある!」

 

「報せ?」

 

「何れ国中に、触れることになるが……

 

お主達には、先に伝えておこうと思ってな。

 

 

皆、知っての通り儂には子がおらん!ゆえにこの度、養子を取ることにした」

 

「……」

 

「で、いつ、デートする?

 

俺様はいつでもいいぜ」

 

「懲りない男ね……

 

明日花、何とかして頂戴」

 

「知らない」

 

「ハァ!?」

「ハァ!?」

 

 

一瞬言葉を失った才蔵達は、声を上げて驚いた。そんな才蔵達にお構いなしに、幸村は持っていた扇でその人物を指した。

 

 

「では、紹介しよう。

 

 

弁丸。

 

お主は今日から、望月弁丸を改め、真田大助だ!」

 

「え!?」

 

「お主は、勇士ではなく、儂の跡継ぎとなる!」

 

「えぇええ!!」

 

 

 

 

物見櫓で、作戦を練る弁丸……

 

そこへ、才蔵が姿を現した。

 

 

「よ!ガキ!精が出るな!

 

良かったじゃねぇか!侍になりたかったんだろ?

 

 

いきなり、跡継ぎが出来たって、国中大騒ぎだぜ。

 

全く、いつも突然すぎんだよな、あのオッサン。

 

 

……オイ」

「幸村様!」

 

「いっちょ前に、もう跡継ぎ気取りか、ガキ」

 

「真田大助!」

 

「こんのガキ……

 

もともと、可愛げのねぇのが、ますます憎たらしくなりやがって……」

 

 

その時、持っていた筆を床に叩き付けながら、大助は才蔵を睨んだ。

 

 

「オイラ、仕事してるんだ!

 

才蔵には、才蔵の仕事があるだろ!

 

 

油売ってないで、ちゃんとしろよ!」

 

「……

 

 

あーハイハイ!

 

ちゃんとしますよ!若様!」

 

 

そう言い放ちながら、才蔵はその場を去って行った。

 

 

 

 

縁側で柱に背凭れながら座る明日花……

 

 

「あの弁丸が……まさか幸村の、跡継ぎになるなんて」

 

「弁丸?

 

その名は確か、幸村様の御幼少時代の」

 

「幸村が付けたんだ。

 

六郎と同じ名前だったから、それで」

 

「そうだったんですか……

 

 

 

どうしたんです?浮かない顔をして」

 

「……

 

 

今まで、同じ勇士だったのに……

 

いきなり、跡継ぎになって……この先、どう接すればいいのかなって」

 

「……

 

今まで通りで、いいんじゃないんですか?」

 

「?」

 

「幸村様に仕えていた時の紫苑はどうでしたか?

 

神社にいた時と何か変わっていましたか?」

 

 

優助の質問に、明日花は首を左右に振った。その答えを見た彼は、笑みを溢し話を続けた。

 

 

「なら、明日花もそうしてみては?」

 

「今まで通りに、接すればいいってこと?」

 

「えぇ。

 

名前が変わったところで、人は変わりません。ただ地位が変わるだけのこと。

 

 

その方が大助様も、安心なさると思いますよ」

 

「……」

 

「明日花」

 

「?」

 

「あなたは、いずれその大助様に仕えるでしょう。」

 

「私が?」

 

「紫苑と僕が、幸村様と信幸様に仕えているように……

 

あなたもいつかは、真田家の者に仕えます。」

 

「じゃあ、新しい主が」

 

「大助様になると思いますよ」

 

「……」

 

 

優助の話を聞いた明日花は、顔を上げ朱く染まった空を見上げた。




森へ来た才蔵……


「才蔵!」


そこへ、見張りをしていた佐助が、才蔵の前に姿を現した。


「おう、佐助か。

いや、弁丸のガキがさ」
「間者多い!

警戒、怠るな!」

「会ってすぐ、テメェもそれか!!」

「シッ!」

「?」


突然、静かにするよう才蔵に命じる佐助……




「才蔵!」


大輔が自分を呼ぶ声が聞こえ、二人はすぐに声がした方へ向かった。


向っていると、その先に袋を抱えた忍が一人は知っていた。


(あのガキ!!さらわれてやがる!!)


前を走る忍を追い駆けるも、相手に追いつけずその差はどんどん広がって行った。


(チ!!速ぇ!!)


すると、木の葉の中からもう一人の忍が姿を現し、才蔵達にクナイを投げ放った。投げてきたクナイを、才蔵はクナイを投げ放ち弾き返した。すると、弾いたクナイから煙が上がってきた。


(仕込み毒!!)

「あばよ!!」

(しまった!!逃がしちま……!!)


逃したと思った瞬間、大助を抱えた忍の体が上下真っ二つに斬れた。その光景に驚いていた仲間の背後から、後頭部を切り裂き顔を真っ二つに斬った。

それに驚いた佐助と才蔵は、すぐにその場に駆け付けた。同時に忍を斬った者もそこへ、刀を持って降り立った。


「何ですか?あなた達」

「!!」

「腕落ちたんじゃないんですか?」
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