BRAVE10S   作:花札

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上田で働く民……


その指示を出す六郎……


新たな勇士

「それは城の倉に。

 

そちらのは二の丸に、運びなさい」

 

「おお、六郎。

 

某も手伝おう」

 

 

そこへ手伝いにやってきた十蔵……

 

 

「ありがとうございます」

 

 

手伝いに来た十蔵だが、少し浮かない顔を浮かべていた。

 

 

「どうしました?」

 

「正直、意外であった。弁丸の件……」

 

「若はいつも、唐突にお決めになりますから。

 

十蔵もよくご存じでしょう」

 

「それはそうだが……」

 

「どこからも不満の声は、上がっておりません。問題ないでしょう……

 

これで、若がいつくたばっても、真田は安泰です」

「勝手に人を殺すな!」

 

 

六郎の放った言葉に、文句を言いつけるかのように表れた幸村……六郎は、平気な顔で幸村に振り向き続けた。

 

 

「事実です。

 

その覚悟の上で、若は弁丸を養子にしたのでしょう」

 

「それだけではない。

 

弁丸……大助は、儂以上の器を持っておる。あ奴は化けるぞ」

 

「それでは、紫苑と同様、明日花は大助様に?」

 

「まぁ、そのつもりだ。

 

大助も大助で、あ奴に懐いておるしのう」

 

「しかし『十勇士』は、一人欠けてしまいましたな」

 

「うむ……

 

そのことであるが」

 

 

「うわっっ!!凄ーい!!」

 

 

近くにいた伊佐那海は、住民が持ってきた物に喜び燥いでいた。

 

 

「幸村様!

 

里で蕎麦を打ったんで、城の皆様に食べていただこうと、参りました!」

 

「ほほう。これはこれは」

 

「早速、皆を呼んでいただきましょう」

 

「わーい!!」

 

「皆で、食べるのだぞ?」

 

「はーい!」

 

 

 

 

「オイラ、一人で歩けるよ!」

 

 

佐助に抱えられていた大助は、佐助の腕の中で暴れながら訴えた。

 

 

「しかし……」

 

「大丈夫だって!

 

どこも怪我してないし!」

 

「大助様、守る、我の仕事!」

 

「っ……

 

佐助」

 

「?」

 

「オイラ、もう十勇士じゃないのかな……

 

侍にはずっと、なりたかったけど……

 

でも……」

 

「??」

 

「何でもないや!早く帰ろう。

 

まだ、色々やんなきゃいけないことあるもんね!」

 

 

そう言いながら、佐助に下ろされた大助は佐助の手を引っ張って、上田城へと戻って行った。

 

 

 

 

「何だそれは?」

 

 

仕事が終わり、幸村の部屋へと戻ってきた清海は、部屋にあるものに驚いていた。

 

 

蕎麦が大盛りに盛られた桶を真ん中に、伊佐那海達は周りに座り、その傍にはたくさんのお膳が積み重なれていた。

 

 

「お兄ちゃん、お帰り!

 

今日ね、上田の皆にお蕎麦いっぱい貰ったのぉ!」

 

「おお、清海!座れ座れ!」

 

「力仕事で、腹も空いておろう」

 

「ほう!美味そうだな!」

 

「領内の実りと、検分するのも、領主の役目……

 

いたただきます!」

「いっただきまーす!」

 

 

傍を口へと運ぶ幸村達……

 

 

「これは……」

 

「うっまーい!!」

 

「ホホ!この香り、この喉越し……箸が止まらんわ!」

 

「方々で、蕎麦を食してきたが、これが一番の美味!!」

 

「疲れた体に、沁みたわる……」

 

「いくらでも入っちゃう!」

 

「これは名物になるだろう。

 

ほかの皆にも、早く食わせたいのう」

 

「声をかけて回ったのですが、他の者は城外にいるらしく……

 

 

伏せっている七隈と優助達には、部屋まで持って行かせました。」

 

 

七隈の部屋では……

 

 

「何だ、そなたは?」

 

 

キレ気味の七隈は、目の前で蕎麦を食べる鎌之介に質問した。

 

 

「あ?小姓に、蕎麦持ってけって言われたから来ただけだ。

 

んじゃなきゃ、テメェのとこなんか来るかってんだ」

 

「何故、ここで食べている?」

 

「テメェもムカつくから大嫌いだけど、クソ女と一緒の方がもっとムカつくから。

 

明日花はあの青二才の所にいるし、才蔵はいないし、暇だしよぉ……」

 

 

そう言いながら、蕎麦を頬張る鎌之介……

 

 

「解せぬ」

 

 

 

一方優助の部屋では……

 

 

「蕎麦、ですか?」

 

 

明日花が持ってきた蕎麦を見る優助……

 

 

「住民が打った蕎麦だって。

 

食えって、幸村が」

「コラッ!」

 

「痛っ!」

 

 

注意を出しながら、優助は明日花の額にデコピンをした。当てられた額を手で撫でながら、明日花は優助を見た。

 

 

「幸村様でしょ。

 

ちゃんと、敬語を使いなさい」

 

「けど、母さんはそれでいいって言ってたよ!

 

それに、幸村も気にしないって…」

 

(紫苑……)

 

 

そっぽを向きながら、額を撫でる明日花……そんな明日花に、優助はため息をつき言った。

 

 

「いただきましょう、蕎麦」

 

 

優助の言葉に明日花は頷き、二人は食べ始めた。

 

 

 

 

幸村の部屋で蕎麦を食べている伊佐那海は、汁入れに黄色掛かった茶色い塊を入れ混ぜた。

 

 

「伊佐那海、何だそれは?」

 

「お台所の姐様たちに聞いたの!

 

胡桃を磨り潰したのを練って、蕎麦汁に混ぜて……」

 

 

清海に説明しながら、伊佐那海は蕎麦を汁に着け食べた。

 

よほど美味しかったのか、微笑みながら蕎麦を次々に食べて行った。

 

 

「そんなに美味いのか?

 

ならば、拙僧も一口!」

 

「儂にもくれ!」

 

 

「皆、何してるの?」

 

 

そこへ、森から帰ってきた佐助と大助……

 

大助が、部屋へ入って来るなり伊佐那海は顔を上げた。

 

 

「あ!弁ちゃ……じゃなかった。

 

大助様、お帰り!

 

一緒にお蕎麦食べよぉ!」

 

「うん!丁度、お腹空いてたんだぁ!」

 

 

騒ぐ大助……

 

 

そんな中、佐助は幸村の傍へ行き耳元で、先程の事を伝えた。その事を聞いた幸村は、動かしていた箸を止めた、立ち上がった。

 

 

「皆の者、ゆっくり蕎麦を楽しんでくれ」

 

 

そう言うと、幸村は六郎と共に部屋を出て行った。

 

 

「どうしたんだろう」

 

「お姉ちゃん、お蕎麦もうないんだけど!」

 

 

大助の言葉に、ハッとした伊佐那海は桶を見た。桶に山盛りに盛られていた蕎麦は、跡形なく消えていた。

 

 

「いっけない!食べ過ぎちゃった!

 

もっと、茹でて貰ってくるね!」

 

 

そう言うと伊佐那海は、桶を持って部屋を出て行った。




木の上で、空を見上げるアナスタシア……


「おーい、アナ!

もう暗いし、帰ろうぜ!」

「……

どうしようも、ないわ……


どうしようも」



空が暗くなるにつれ、居心地悪い風が吹き荒れた。


その風に少し恐怖を感じた明日花は、蕎麦を食べていた箸を置き縁側へ出て、空を見上げた。


「また、嫌な気配が感じますか?」

「……

何だろう」

「?」

「さっきまで、遠くに感じてた……

でも今は、なんか近くにいるような気が……」

「……」


優助は、箸を置き立ち上がり、縁側に立っている明日花の傍に寄った。明日花は寄ってきた優助の肩に掛けていた黒い羽織の裾を震えている手で握った。




羽織を肩に掛け、風に靡かせながら外へと出てきた幸村……


「待っておったぞ」


(あれ?幸村様、何をしてるんだろ?)


城外に出ていた幸村を、縁側を歩いていた伊佐那海は気になり、目を凝らして幸村の方を見た。


「!!」


「服部半蔵……

『火の勇士』」


突然言い放った幸村……


「おや、俺はそういう位置付けっすか」
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