BRAVE10S   作:花札

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「服部半蔵……

火の勇士よ」

「俺はそういう位置付けっすか」

(何だと!?)


突然言い放った幸村……

その言葉に、才蔵は驚きを隠せないでいた。


微風

半蔵を見ていた伊佐那海は、幸村の言葉にショックを受けていた。

 

 

(な…何で……

 

アイツのせいで、皆酷い目にあったのに!!

 

 

お兄ちゃんも弁ちゃんも、佐助も筧さんも皆……

 

それに、六郎さんの……)

 

 

あの時の事を思い出していた伊佐那海……

 

怒りの感情が襲い、首が徐々に黒い痣に覆われてきていた。それに、気付いたのか一端足を止め、深呼吸をし心を落ち着かせた。

 

 

(落ちつけ……落ち着けアタシ……

 

幸村様がああ言うのには、何か深い訳があるんだ。

 

悪く……悪く考えちゃだめだ)

 

 

 

 

「ふっざけんな!!」

 

 

声を荒げる才蔵……

 

 

「何でこいつが、勇士なんだよ!!」

 

(主君に、酷い悪態ですね……)

 

「いつも言っているであろう。

 

全ての出会いは必然であると」

 

「必然?

 

明日花の母親が殺されたのも!?こいつが俺達を襲ったのも!?

 

六郎さんの右眼だって」

「才蔵!」

 

「!?」

 

「それ以上は、いらぬことです」

 

 

殺気立ち、苛立つ才蔵……

 

そんな才蔵に、半蔵は肩に縛られている手を置いた。

 

 

「まあまあ、そう殺気立たずに!

 

君の主が、火の勇士っだっつーんだから信じましょ。

 

 

いやぁ、勤め先が早く決まって安心しましたよ。

 

あ、これ……もう解いてもいいですか?」

 

 

縛られた手を上げながら、半蔵は笑い才蔵を見た。

 

怒りに満ちていた才蔵は、半蔵を無視して城の中へと入って行った。

 

 

 

 

その様子を、部屋から見ていた優助……

 

 

手の平には、水の塊が浮いており、そこに映る半蔵と幸村達……

 

 

(……やはり、家康の手下でしたか……)

 

 

 

 

城に入り、縁側を苛立ちからか、づかづかと歩く才蔵……

 

角を曲がろうとした時、蕎麦を持った桶を手に、伊佐那海が現れ才蔵に危うくぶつかりそうになった。

 

 

「お、お蕎麦あるよ?」

 

「いらねぇ」

 

「あ、あの」

 

「あ?」

 

 

鋭い目付きで、才蔵は伊佐那海の方を振り向いた。その視線に、ビクついた伊佐那海は、恐る恐る口を開いた。

 

 

「これ、スッゴク美味しいんだよ!

 

の、残しておくからね!食べたくなったら」

「いらねぇっつってんだろ」

 

 

そう言い放つと、才蔵はそのまま自分の部屋へと行ってしまった。

 

 

部屋に入った才蔵……

 

 

障子を閉めると共に、深く息を吐いた。

 

 

「(アイツが、火の勇士だと!?

 

アイツが……)

 

あぁ……くそ!」

 

 

 

 

「アナがなびいてくんねぇ!!」

 

 

城へ戻り、十蔵に愚痴を漏らす甚八……

 

十蔵は、呆れ顔で甚八に言った。

 

 

「今に始まったことではないではないか」

 

「今日なんか、デカイ氷まで出して……

 

スッゲェ不機嫌みてぇだったし……

 

どうすりゃいいんだが」

 

「お主、またアナをからかっておったのだろう」

 

「からかってねぇよ。

 

俺様はいつだって本気だ」

 

「まぁ、蕎麦でも食べて落ち着け。

 

余りに美味でな、これはお主の分だ」

 

 

そう言いながら、十蔵は蕎麦が乗ったお膳を甚八に出した。

 

 

「……酒はあるか?」

 

 

出された酒を飲みながら、甚八は蕎麦を口へ運んだ。

 

 

「!

 

うめぇな!」

 

「であろう」

 

「ここにアナがいて、酌の一つでもしてくれりゃあもっとうめぇのに……

 

あいつ、変に距離を置きやがって……

 

 

見てて、歯痒いったらありゃしねぇ」

 

「仕方あるまい。あれほどの事をしたのだ。

 

アナも以前の様には、振る舞えぬだろうな」

 

「そうさせたのは、誰だろうな」

 

「それは無論、服部半蔵であろう。

 

アナに反間(二重スパイ)をさせていた……」

 

「……

 

 

 

 

分かってねぇな」

 

「しかしお主、アナスタシアの事、本当に気に入っておるのだな。」

 

「おお!気に入ってるぜ!

 

初めて会った時に、強烈にきた!まるで、紫苑と会った時みてぇにな……

 

 

氷の上に悠然と佇んでよ、カッコイイったらありゃしねぇ。

 

あの眼、あの胸、腰も尻も、申し分ねぇ」

 

「お主が嫌われる理由が、何となく分かったぞ」

 

「嫌われてねぇっての!

 

アイツは怖がってんだよ」

 

「は?」

 

「色々慣れてなくて……」

 

「……」

 

「可哀想な女だよ」

 

「甚八……」

 

「あの体を、利用しねぇなんて、宝の持ち腐れだ!」

 

「お主、そこに直れぇ!!

 

ここに、明日花が居たらどうするんだ!!」

 

「何で、そこで明日花が出てくんだよ!!

 

俺様は、アイツの保護者じゃねぇ!!」

 

「全く……

 

 

お主、淋しいのではないのか?」

 

「あ?」

 

「優助がここに滞在してから、明日花はずっと彼の傍におる。

 

少しは淋しいのでは?」

 

「全然……

 

アイツには俺様なんかより、父親の優助の傍にいた方が良い。

 

 

色々我慢し過ぎなんだよ、アイツは……

 

紫苑が死んでから、ずっとな」




森を歩く明日花と優助……彼女の手には、森で摘んだ花が握られていた。


「父さん、こっち!」


優助を連れて着た場所……そこは、紫苑が眠っている木の所だった。


「この木の下に、母さんが眠ってるんだ……」

「そうですか……(紫苑)」


花を添えながら、明日花は手を合わせた。彼女に続いて優助も手を合わせた。


(紫苑……明日花の元へ連れて着てくれて、ありがとうございます)


ふと目を開けた明日花は、優助の方を見た。彼の目からは一筋の涙が流れ出ていた。


(母さん、私父さんに会えたよ。

限られた時間の中、父さんに母さんと過ごした日々の事、たくさん話すからね)
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