BRAVE10S   作:花札

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―――――いつからかしら……

鋭い棘が身に食い込むようになった。
その棘はこの男(幸村)の『優しさ』だ。

彼の暗殺にしくじった私を城に置き、何事もなかったかのように笑い掛ける……

仕事をするたびにその棘(優しさ)が深く突き刺さる。


もう辛い……


彼の一言、断罪してくれたなら……私は救われる。




『今まで通り、真田の勇士として生きよ』


痛い……痛い!!


『酷い男!!』


また棘(優しさ)が突き刺さる。これを終わらせてくれない……


『あんまりだわ……』

『他の連中とは、これまで通りとはいかぬかもしれぬ……

だが……ここ(上田)におれ。

おれよ、アナ』

『それが私への、罰だというの』

『そうだ……生きて儂に仕えると、約束しろ』

『……違えたら?』

『お前は、そんな女じゃないさ』


笑いながら、幸村はそう答えた。


―――――ああ……

私はしくじった……

もう、逃れることも自ら命を絶つこともできない……

深く刺さったとげによって、ずっとここに縫い付けられた。




『『自由』だっつったのによぉ……


可哀想な女だ』


勇士瓦解

思い出すアナスタシア……

 

 

「どうした?」

 

「……

 

 

幸村様はね……

 

異形衆との戦いの後こう言ったの。

 

 

 

 

『今まで通り、真田の勇士として生きよ』って……」

 

「それ……だけ?」

 

「そうよ、それだけ」

 

「全っ然分かんねぇ……

 

あのオッサン、何考えてんのか……分っかんねぇ」

 

「そ、じゃあね」

 

 

笑みを浮かべ、アナスタシアはその場から立ち去った。

 

 

一人になった才蔵は、その場に座り込み仰向けに倒れた。

 

 

(何か……疲れた……

 

もう……どうにでも……)

 

 

目を閉じ、才蔵はそのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

木の枝の上で座り見張りをする佐助……

 

 

すると、佐助の膝の上で寝ていた鼬が何かに気付いたのか起き上がった。その様子に、佐助は鼬が向いている方に目を向けると、鎖を引きずりながらトボトボと歩く鎌之介が姿があった。

 

 

「鎌之介?」

 

 

様子がおかしい事に気付いた佐助は、枝から飛び降り鎌之介の顔を覗き込んだ。

 

 

「何してる?」

 

 

鎌之介の顔には、涙が浮かんでおりまるで魂が抜けたかのような表情になっていた。

 

 

「鎌……」

 

 

呼びかけた佐助だが、鎌之介は何も答えず、歩みも止めずどこかへと行ってしまった。

 

 

 

 

目を覚ます才蔵……

 

 

「寝てた……のか」

 

 

起き上がりしばらくすると、風が吹き森の木々がざわついた。

 

 

「何だ?」

 

 

 

 

上田城……

 

 

「キャア!!

 

誰か!!誰か!!」

 

 

叫ぶ侍女たち……

 

 

「ふ―――――う……」

 

 

深く息を吐く甚八……

 

 

目の前には、殴られたのか口から血を流し、殴られた箇所を擦る幸村がいた。

 

 

「痛いのう」

 

「ムカつくなぁ……

 

その飄々とした面」

 

「突然やってきて、何ということを!!

 

下がりなさい、甚八!!」

 

「アンタにゃ、用はねぇよ!」

 

「これ以上の狼藉を、働くなら容赦しませんよ!!」

「六郎!」

 

「若は黙っててください!!」

 

 

後ろを向き、幸村に怒鳴る六郎の頭を、甚八は鷲掴みにし、技を出そうとした瞬間口に自分の親指を入れ防いだ。

 

 

「アンタが、黙ってな!」

 

 

右手でつかんでいた六郎の頭に、甚八は雷を放った。

 

 

(あ、頭が……痺れ……)

 

 

六郎は力なく、そのまま倒れてしまった。六郎を倒した甚八は、幸村の胸元を掴み殴りかかった。

 

 

「若……」

 

「一発ぐらいじゃ、アイツらの痛みにゃほど遠いんだよ!!」

 

 

「幸村様!!」

 

 

騒ぎに気付いて飛んで帰ってきた佐助は、甚八の右手に踵落としを喰らわせた。その痛みで甚八は幸村から離れ、それを見た佐助は甚八に蹴りを入れようとした。

 

だが、甚八はその蹴ってきた足を受け止め、佐助を投げ飛ばした。

 

 

「テメェも、すっこんでろ!!」

 

 

投げ飛ばされた佐助は、障子を壊し部屋の中へと飛ばされてしまった。

 

 

「じ、甚八!!

 

どういうことだ、これは!!」

 

「どうしたの?」

 

 

その騒ぎに、十蔵は慌てて甚八のもとへと駆けつけてきた。十蔵と同時に、伊佐那海もその場にやって来た。

 

森から帰ってきた才蔵は、屋根の上から騒ぎを見て驚いていた。

 

 

(何してやがるんだ……)

 

 

殴られ、頬を擦る幸村の様子を見た十蔵は、甚八を睨み怒鳴った。

 

 

「甚八、お主!!」

「うるっせぇ!!

 

 

俺様はコイツ(幸村)と、男同士の話をしてんだよ!!」

 

「何が気に入らぬ?」

 

「ああ!?

 

 

何がじゃねぇよ!!どういうつもりだ!!

 

あの半蔵を、ここ(上田)に迎えるだと!?

 

 

アナスタシアと明日花はどうすんだ!!」

 

「っ……」

 

「知ってんだろうが!!

 

半蔵がここにいたら、アナスタシアは今までよりもっと苦しむんだ!!

 

明日花にとっちゃあ、アイツ(半蔵)は母親の紫苑を殺った目の敵だ!!

 

 

何もかも飲み込んで、それでもここに仕えろって言うのか!!二人に!!」

 

「……そうだ」

 

「テメェ……ふざけんなよ!!」

 

 

右手から雷を放ち、幸村に殴りかかろうとした時、後ろから十蔵がその手を止めた。

 

 

「下がれ甚八!!それ以上はならん!!

 

幸村様がいかに、寛容なお方だろうと、踏み越えてはならん一線がある!!」

 

「……一線だと?

 

 

んなも、知るか!!」

 

 

十蔵の手を振り払った甚八は、雷をさらに強く放ちだした。

 

 

「甚八!!」

 

「殿様だろうが何だろうが、許せねぇもんは許せねぇんだよ!!」

 

 

その言葉にキレた十蔵は、甚八の顔を容赦なく殴った。

 

 

「頭を冷やせ馬鹿者が!!

 

たかが女子の事で、幸村様に手を上げるなど、言語道断!!」

 

「たかが女子だと!?」

 

 

甚八は、隙が出来た十蔵の顔面を殴った。殴られた箇所を押さえながら十蔵は、甚八を睨んだ。

 

 

「そ、それでも武士か……兄弟!!」

 

「じ、甚八さんも筧さんも、止めようよ」

 

 

怯えながら、伊佐那海は二人の喧嘩を止めようとした。

 

 

「ガキは口挟むな!!」

 

「で、でも……喧嘩はよくないよ……」

 

「伊佐那海は下がっておれ!!

 

子供が口を出すことではない!!」

 

「……ヤダぁ」

 

 

二人に怒鳴られた伊佐那海は、涙を出しながら訴えた。

 

 

「皆のこんな姿……見たくないよぅ……

 

笑っていようよ、いつも通り。こんなの違うでしょ……」

 

「テメェ等が笑ってる時に、ただ一人笑えねぇ女と、いつまでも我慢してる女のために、俺様は今ここに立ってんだ。」

 

「お主、伊佐那海の訴えも聞かず……そこに直れ!!」

 

 

甚八に殴りかかろうとする清海……

 

 

その時、甚八の前に明日花が降り立ち、清海の足を蹴り体制を崩した隙を狙い、清海の手を掴み背負い投げた。清海は地面へと、投げつけられ伸びてしまった。

 

 

「あ、明日花……」

 

「……」

 

「明日花、下がれ」

 

「……けど」

 

「下がれと言ってんだ」

 

「!?」

 

 

甚八の怒りに満ちた顔を見た明日花は、何も言い返すことができず、その場から下がった。

 

 

「甚八!!いい加減にせんか!!」

 

「甚!!」

 

 

後ろから甚八を押さえる十蔵だが、甚八は十蔵の腕を掴み地面へと叩き付けた。

 

 

気を失った二人……

 

 

幸村の方へ振り返った甚八は、再び殴りかかろうとした時、部屋に飛ばされていた佐助が爪を構えて、甚八に攻撃してきた。佐助の攻撃を、甚八は難なく避け佐助は幸村の前に立ち、爪を構えた。

 

 

「退け、甚八!!」

 

「しつけぇな!!」

 

 

迫ってくる甚八……

 

近くで止まり、右手に雷を起こし攻撃を構える甚八……

 

 

地面を蹴り、甚八に突進する佐助……

 

振り払った刃は、甚八の頬を斬り付けた。

 

 

「佐助、止めて!!」

 

「明日花は黙ってろ!!」

 

「!!」

 

 

 

 

二人の争いを見る才蔵……

 

 

(止めねぇと……

 

 

どっちを!?)

 

 

 

 

「大人しく、退いてやがれ!!」

 

 

佐助を攻撃し、雷を起し幸村に攻撃をしようとした。

 

 

悩む才蔵の横を、誰かが横ぎり、その争いを止めに入った。

 

 

「絶海!!」

 

「!!」

 

 

幸村の前に降り立ったアナスタシアは、甚八に向かって氷を放った。アナスタシアが放った氷は、雷を起していた甚八の右手に当たり粉々に砕かれた。

 

 

幸村の前に立つアナスタシア……

 

 

「何してんのよ、アンタ……

 

 

私のことは、アンタがとやかく言う筋合いじゃないわ。余計なお世話って言葉、知らないの?」

 

「余計なお世話……ね。

 

本当は奴(半蔵)が怖くて、震えてるくせによ。

 

 

素直に言えばいいじゃねぇか。『アイツが怖い』『アイツが嫌いだ』って……」

 

「生憎、そんな弱い女じゃないの」

 

「弱い女だろ。

 

 

今でも逃げてるじゃねぇか。殿様からも俺様達からも……

 

変に距離置いて、何だありゃ。

 

 

自分を気にしてくれって、誘い受けか?あん?」

 

「……」

 

 

何も答えないアナスタシア……

 

 

「……船へ帰る」

 

「!?」

 

「いつまでも、そうしてりゃあいいさ」

 

 

振り返り、歩み出す甚八……

 

すると甚八は、明日花を見ながら口を動かし何かを伝え、その場を立ち去った。何かを聞いた明日花は、去っていく甚八を追い駆けようとはせず、その後ろ姿を見つめた。

 

 

「若……」

 

「ハハハハ……」

 

「……」

 

「甚八……」

 

「う……うう…

 

うわぁああん」

 

 

泣き出す伊佐那海……

 

 

「あーらら、何ですかこれ?」

 

 

才蔵のもとへとやってきた半蔵……

 

 

「あっと言う間に、バラバラじゃないですか」

 

「誰のせいだと、思ってやがる!!」

 

「俺のせいじゃないですよ。

 

俺はここに雇われただけで、雇ったのは殿様ですし……

 

それでアンタらが、どう揉めようが知らねぇですよ」

 

(この野郎……)

 

「しかしまぁ、アンタ与頭でしたっけ?

 

まとめ役が、不甲斐無いとこうなりますよねぇ……

 

 

こんな連中に、俺の異形衆が負けたのは、納得がいかねぇですね……

 

あの時はアンタら、まとまり合ってやり辛かったっすよ。

 

 

アンタ、与頭向いてないんじゃないすか?」




甚八の背を見る明日花……


(どうして……どうしてこうなるの……)


顔を下に向かせ、明日花は声を堪えて涙を流した。


(何で……何で……

もう、分からない……


どうすればいいか、もう分からない……もう)
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