BRAVE10S   作:花札

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才蔵が上田へ帰って翌日……

才蔵は、幸村の部屋で他愛のない話をしていた。


「久々の伊賀、どうであった?」

「ああ?」

「懐かしかったであろう」

「……別に。

刀を新調しに、行ってきただけだからな」

「そうか?

里に昔の女の一人や二人いて、楽しくやってきたものかと」

「オッサン!!アンタの基準に、俺をはめ込むな!!」

「何をぉ!?

それでは儂が、女たらしみたいではないか!?」

「その通りだろ!!」

「ゴホン!!」


二人の口喧嘩を仲裁するかのように、六郎が席をして喧嘩を止めた。


「ま、何はともあれ、無事に帰ってこられて何よりだ。

勇士が一人欠けると、なんだか居心地が悪くていかんのう」

「最終的に四人も欠けてただろうに!!

誰だよ、奴らを外に離したのは!?」

「楽しい道中であったろ?」

「!?」

「それの、試し斬りはどうであったか?」

「!」

「使う羽目になったろう?」


笑みを溢しながら、幸村は全てを見通すかのような言い方をした。


「(このオッサン(真田幸村)……

どこまで、見透かしてやがんだが……


ったく、相変わらず、飄々として、食えねぇ男だ。

この世に、何一つ怖いもんなんかねぇ様な、顔しやがって……)


そういや、明日花が刀を扱えるってこと、オッサンは知ってたのか?」

「まぁな……

明日花の父親が刀の名人で、その父親から直々に稽古してもらってたみたいだったしのう」

「フゥ~ン……




あれ?明日花に父親なんて、いたのか?」

「いるぞ。

今は、立場上の関係で会えないがな」


「幸村様」


侍女の声と共に、襖が少し開き、紙が差し出された。


「書状が届いております」

「ご苦労」


差し出されてきた書状を、六郎は受け取り幸村に手渡した。幸村は書状を開き、内容を読んでいると、突然その書状を勢いよく閉じ、驚いた表情を浮かべた。


「若、いかがいたしました?」

「な、何でもないわい……」

(……なんだぁ!?)


面会謝絶

数日後……

 

 

縁側で寝そべり、いびきをかきながら気持ちよく寝る鎌之介……

 

 

「コラァ!!」

 

 

そこへやってきた一人の男が、鎌之介を見るなり突然大声を上げて怒鳴った。

 

その大声に驚いた鎌之介は、飛び起き男を睨んだ。

 

 

「んだぁ!?誰だ、デケェ声出しやがって!!」

 

「貴様!!どこで寝ておる!!」

 

「ハァア!?

 

俺の、昼寝の邪魔しやがって、やんのかコラ!!」

 

「この、無礼者!!

 

そこに、直れい!!」

 

 

男は鎌之介に近付き、頭を掴み鎌之介を無理矢理跪かせた。

 

鎌之介は、何の抵抗もなくその場に跪くされ、それとともに意識が無くなってしまった。

 

 

 

 

その頃、別の部屋では伊佐那海達が、楽しく笑い声を上げながら話していた。

 

 

「でねでね!佐助が、狼の子供抱かせてくれてね!」

 

「いいなぁ、オイラも見たかったなぁ!」

 

「今度一緒に行こうね!」

 

「伊佐那海!お兄ちゃんも一緒に……」

「それは嫌!!」

 

「何故に―!?」

 

 

「静かにせんか!!」

 

 

突然障子が開くなり、外から男が現れ伊佐那海達を大声で怒鳴った。

 

 

「昼日中から、お前ら何様だ!?」

 

「……

 

えぇっと……こんにちは?」

 

「……それが、礼儀のつもりか……

 

 

平伏せよ!!」

 

「何でだよ!!」

 

「押し入って来ておいて、人に礼を求めるとは烏滸がましい!!」

 

「……平伏?

 

ねぇ、筧さん!平伏ってなーに?」

 

 

意味が分からなかった伊佐那海は、後ろにいた十蔵に質問しようと後ろを振り返った。

 

ところが、十蔵は佐助と共にいつの間にか頭を下げ平伏せていた。

 

 

「皆!!平伏せよ!!頭が高い!!」

 

「えぇえ!!何でだよぉ!?」

 

「いいから、早くせんか!!」

 

「チェー」

 

 

十蔵に言われ、伊佐那海達は渋々頭を下げ平伏せた。

 

 

「筧!!

 

お主が供にいながら、この輩共無礼にもほどがあるぞ!!」

 

「申し訳ございませぬ!!」

 

「誰だよ、あのオッサン」

「黙!!」

 

「ひょっとして、偉い人なの?」

「口を慎め、伊佐那海!!

 

 

このお方は、幸村様の兄上でいらっしゃる」

 

(兄?)

(お兄ちゃん?)

 

「真田信幸様だ!!」

 

(真田信幸!!?)

 

(上田を出て、今は沼田城の城主の?

 

確か、徳川派だろ?)

 

(誰?)

 

「……して、幸村は?」

 

「お、奥の自室に……」

 

(か、顔ちゃんと見ればよかったぁ……)

 

 

「信幸さん!」

 

 

その声と共に、庭へやって来て、膝を付き頭を下げる明日花がやってきた。顔には狐の面が着いていた。

 

 

「お久しぶりです。信幸さん」

 

(あの明日花が、敬語使っている!?)

 

「明日花か……

 

随分と、口の訊き方がよくなったな」

 

「おかげさまで」

 

「どれ、その面を取り、顔を見せろ」

 

「主の命が無い限り、この面を取ることはできません」

 

「……」

 

「信幸様!」

 

 

そこへ、膝を付き頭を下げる六郎が現れた。

 

 

「お久しゅうございます!」

 

「六郎か!」

 

「事前に、お知らせくだされば、お迎えに上がりましたのに……

 

此度の急なご来訪、何様でございましょうか」

 

「お知らせ下さればだと!?」

 

 

信幸は六郎の横へ立ち、目の前で床を強く叩き、幸村の部屋へ向かった。

 

 

「の、信幸様!!」

 

 

部屋にいた伊佐那海達は障子から覗くようにして、信幸を見た。

 

 

「ふぇー……」

 

「あれが、幸村様のお兄さん……」

 

 

去っていく信幸の背を見ながら、庭にいた明日花は面を取りながら一息ついた。

 

 

「あのクソ兄貴、いきなり着やがって……」

 

「お前に敬語を使わせるとは……」

 

「明日花ちゃん、幸村様のお兄さんに会ったことあるの?」

 

「昔に何度かね……

 

会う度に、しょっちゅう私の口の訊き方を注意しては、母さんに『躾がなってない!!』って怒鳴ってたからなぁ……」

 

「そ、そうだったのか」

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