BRAVE10S   作:花札

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(一歩も動けなかった……

誰を止めればいいのか、分からなかった……)

「アンタ、与頭向いてないんじゃないすか?」

(この野郎……ニヤニヤしやがって!!

全てはテメェが、引き金だろうが!!)


才蔵の帰還

泣き叫ぶ伊佐那海……

 

 

そんな伊佐那海に、アナスタシアは近寄り優しく声を掛けた。

 

 

「泣くのはやめなさい。

 

分かってるでしょ、伊佐那海」

 

「う……うん……

 

うん……」

 

 

涙を拭きながら、泣き止む伊佐那海……

 

アナスタシアは、屋根の上にいる才蔵を見た。アナスタシアに続き伊佐那海も、涙目で才蔵を見た。

 

才蔵は、二人から逃げるようにして、その場を去った。

 

 

逃げて行く才蔵の背を見た明日花は、振り返りその場を去ろうとした。

 

 

「明日花、待て!!」

 

 

行こうとした明日花の手を、起き上がった十蔵は握り引き留めた。すると明日花は、十蔵の手を振り払い、振り返り十蔵を睨んだ。

 

 

「これ以上、私に何をしろと言うの」

 

「……」

 

「何が勇士だ……何が仲間だ……

 

 

こんなの……

 

こんなの、単なる幸村のわがままに過ぎない!!」

 

「明日花!!お主」

「私は、アンタ達みたいな、主に忠実な犬じゃない!!」

 

「お主!!」

 

 

十蔵の手が、明日花に触れようとした時だった。

 

 

「!!?」

 

「!?」

 

 

十蔵の手に、明日花を守るかのように、鋭い木の根が十蔵の手を斬り付けた。腕から血を流した十蔵は、手を引き明日花を見た。

 

 

「明日花……」

 

「……がう」

 

「?」

 

「違う……私は、何も……」

 

 

怯えきった顔で、そう訴えると明日花は、その場から立ち去った。

 

 

(何で……どうして…

 

何もやってない!!十蔵を傷付けようなんて、思ってなかったのに!!)

 

 

城を出た明日花は、涙を流しながら森の方へと行った。

 

 

 

 

森へ来た才蔵……

 

半蔵の言葉を思い返しながら、森を歩いていた。

 

 

(……半蔵の奴、最初からこれが狙いで!?

 

上田にい突くことで、勇士の間に溝を作り……

 

俺達が互いに、争うように仕向けたんじゃねぇか!?)

 

 

その時、才蔵の目に前に突如現れた忍……忍は持っていたクナイを才蔵に振り下ろした。

 

才蔵は、その攻撃を避け忍を睨んだ。

 

 

(忍!?

 

こんなところまで、侵入を許して!!

 

何やってるんだ、うちの忍隊は!!)

 

「真田の霧隠だな?

 

その首、俺が頂く!!」

 

「うるせぇ、とっとと失せろ」

 

 

攻撃してきた忍を、才蔵は蹴り飛ばした。だが忍は、体勢を崩さず立ち尽くし、才蔵にクナイを振り上げ攻撃した。その攻撃を才蔵は避けたが、その隙を狙われ足を掴み、転ばせ才蔵を、気に叩き付け才蔵の腕から流れ出た血で術式を書いた。

 

 

(しまった!!縛術か!!)

 

「フフ……

 

フハハハハ!!見事捕らえたぞ、霧隠才蔵!!

 

この、服部半蔵様がな!!」

 

「半蔵?お前が?

 

 

俺が知ってる服部半蔵は、もっと気色悪い奴だ。騙ってんじゃねぇよ」

 

「それは任務に失敗した、愚かな忍の事だろう!」

 

(ちっくしょう、抜けられねぇ!!)

 

「徳川殿は、失敗を決して許さぬ!!

 

『服部半蔵』とは、最も優れた忍だけが、名乗りを許される名跡!!

 

すなわち俺が現、服部半蔵である!!」

 

 

才蔵の首目掛けて、クナイを突き付けてくる忍……

 

その攻撃を、上から降りてきた半蔵が刀で防いだ。

 

 

「趣味悪い、武器ですね」

 

「!……」

 

「こんなのが、半蔵ですか?

 

いやいや、ホントに勘弁してくださいよ」

 

 

止めたくないを払い、半蔵は忍の体を八つ裂きにした。

 

目の前の状況に驚いた才蔵は、半蔵を見ながら口を開いた。

 

 

「テメェ、何で……」

 

「ねぇ!ちょっと今の見ました!?

 

あんなのが俺の代わりだなんて、あんまりじゃないですか!?」

 

「……」

 

「ホンット、あの狸爺(徳川家康)……

 

人を見る目ないっつーか、アホっつーか……救えないっすね!!

 

 

これが半蔵とか……何それ、信じられない!

 

 

服部半蔵を、ナメんじゃないですよ……」

 

「……」

 

「で?あなた、縛られる趣味がおありですか?

 

 

そういえば、俺とやった時も赤毛と縛られてましたもんね。仰ってくだされば、俺がいくらでも……」

「阿呆か!!」

 

「好きなんでしょ!?」

 

「違うわ!!」

 

「だって負けそうだったじゃないですか……

 

何、やけっぱちになってたんです?」

 

「もとはと言えば、テメェのせいじゃねぇか!!

 

テメェが引っ掻き回すから!!」

 

 

顔色を変え、半蔵は才蔵の後ろの木を叩いた。

 

 

「同じこと言わすんじゃねぇよ……

 

俺を雇ったのは殿様だ。それでアンタらがどうなろうが、知らねぇっつーの。

 

まとめ役のテメェが、勝手に臍曲げてるだけなのに、何言ってんだ?

 

 

テメェの仕事は、殿様疑って仲間ほっぽって……ねぇ頭で自問自答することかよ」

 

「!?」

 

「『答え』なんて、出ねぇだろ?テメェ一人じゃ」

 

(……俺は……

 

俺は……!)

 

 

半蔵に術を解かれた才蔵は、そこから飛びあがり木の枝に上り、半蔵を見下ろした。

 

 

「気持ち悪いんだよ!!」

 

「そこは素直に『ありがとう』でしょうよ」

 

 

鼻で笑い、才蔵はその場を立ち去った。

 

 

(……悔しいが、奴の言う通りだ……

 

俺は、何一人で……独りで!!

 

 

皆を独りにさせてた……

 

アナも甚八も明日花も伊佐那海も……)

 

木々を飛び移りながら、移動していると佐助の姿を見つけ才蔵は足を止め佐助を見た。

 

 

「……賊、倒したか。

 

頭……冷えたか」

 

「(俺を見てたのか、佐助も……)テメェはいつも、揺るがねぇな」

 

「真田の地、守る。

 

生涯、違えることなし」

 

「……スゲェよ、佐助」

 

 

肩を叩き、才蔵はその場から立ち去った。

 

 

ふと下を見ると、紫苑が眠る樹の前に明日花の姿を見つけ、才蔵はそこに降り立った。

 

 

「悩みが無くなったみたいだね」

 

 

才蔵の気配に気づいているのか、明日花は振り返らず口を開いた。

 

 

「まぁな」

 

「そう……なら、いいけど」

 

 

顔を伏せたまま振り返り、明日花は才蔵を通り過ぎ城へと戻って行った。

 

しばらくして、才蔵も城へと戻って行った。




場内の庭を掃く伊佐那海……


「?」


戻ってきた才蔵に気付いた伊佐那海は、手を止め才蔵を見た。


「あ……」


近付いてくる才蔵……

伊佐那海は、無理に笑顔を作った。


「お……お帰り、才蔵……

!?」


手を上げるなり、才蔵は伊佐那海の頭に乗せ雑に撫でた。


「もう大丈夫だ。

色々と」

「えへへへぇ!」

「くっ付くなって!!」

「才蔵、その髪どうしたの!?可愛い!」

「うっせぇ!!」
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