敷物を敷き、敷いた布の上にお菓子とお茶を並べた。
「さぁ―……遊ぶぞぉ!!」
手を叩き、満面な笑みで叫ぶ伊佐那海……
「コラァ!!」
川へ飛び込もうとした時、突然十蔵が怒鳴った。
「いきなり川に入ってはいかん!!
まず体を慣らせ!!
水中で足攣ったら、溺れてしまうぞ!!楽しい時間を台無しにしてしまっていいのか!!」
「はぁーい!」
「じゃ、脚の腱伸ばす運動!」
「フンフン」
そんな光景を見る才蔵……
ふと、空を見上げた。
「晴れたなぁ……」
同じ頃、城の中から空を見上げる明日花……
すると、優助は刀を持って立ち上がり、明日花の前に立った。
「別れる前に、一つ手合わせお願いします」
「……体、大丈夫なの?」
「えぇ。もう平気です。
後は、七隈が信幸様のもとへ帰ると言い出すまでです」
「……」
刀を鞘から抜き構える明日花……優助も持っていた鞘から刀を抜き取り構え、明日花を見た。
「本当に、良い目付きになりましたね」
「当然。私は母さんと父さんの子なんでしょ?」
「フッ……(紫苑……僕らの望み通り、明日花は育っているみたいですよ)」
一瞬目を閉じ、意識を集中させた優助は目付きを代え明日花に刀を振り上げた。その攻撃を明日花は防いだ。
ボーっと空を見る才蔵……
「才蔵、行ったよぉ!!」
伊佐那海の声に、ハッと我に返ると、目の前に動物の腹があり、その腹は才蔵の顔に当たった。
才蔵の顔に当たったのは、鼬の腹であり、鼬は才蔵の肩に乗るなり、威嚇の声を上げた。
威嚇の声を上げた鼬は、才蔵の服の中へと入り動きまわった。
「げっ!!どこ入ってやがる!!
やめ…コイツ!!俺の服で、濡れた毛を拭くな!!」
「才蔵!!
厘に乱暴、止める!!動くな!!
ジッとしてる!!厘、我が取る!!」
「ジッとしてろったって、擽った……あひゃっ!!」
前で動き回っていた厘は、移動し才蔵の背中へと移った。
「あ―――!!
背中!!背中はやめろ!!」
「脱げ!!才蔵!!」
「バカ!!引っ張んな!!」
すると佐助は、才蔵の服を掴んだまま、才蔵を川へと投げた。才蔵は宙を舞い川へと落ちてしまった。
「厘、無事!?」
服を探りながら、厘を捜していると、厘がひょっこりと顔を上げて佐助にまるで拭いてサッパリしたのとでも、言うかのような表情をした。
「よかった!」
「よかったじゃねぇよ!!」
「よし!
ついでだ才蔵!魚獲りは任せた!」
「何のついでだよ!?
しょうがねぇなぁ……!」
何かに気付いたのか、才蔵は突然川から飛び上がり、近くの木の枝へと着地した。
「お前も手伝え、アナ!」
枝に座っていたアナスタシアに声を掛ける才蔵……
「え!?アナ、いるの!?」
「私はいいわ。
皆で楽しんで」
その返事を聞いた才蔵は、アナスタシアに飛び掛かり蹴り落とした。
「!?才蔵!?」
「道連れだ!」
アナスタシアを押さえて、共に川へとダイブした才蔵……
川に入ったアナスタシアは、すぐに起き上がり才蔵を睨んだ。
「才蔵!!
何すんのよ、もう!!」
「久しぶりに見たよ、お前のそういう顔」
「!?」
「いつまでもスカしてるより、そっちの方が良い。
色々カッコ悪いのよ、お前も俺も!」
「……
何よ!!アンタと一緒にしないで!!」
川から立ち上がり、才蔵に指差すアナスタシア……
川から上がった衝撃か、それとも才蔵に落とされた衝撃か、アナスタシアの服が脱げ胸が丸出しになってしまった。
(アナ!!)
(デカい!!)
「ぅあ―――!!」
ハッとした才蔵は、慌ててアナスタシアの胸を手でつかみ、隠そうとした。
(あ――……
何だ、この弾力……)
「何してんの、アンタ……」
「あ!いや、これは……見えちゃいけないと思って……
不可抗力だ!!」
「さーいーぞー!!」
才蔵に怒鳴る伊佐那海……
「何だその手の形は!!」
「手の形?」
「まずは手を離さんか!!」
「離すと、見えちまうだろう!!」
「お前、外道!!」
「げっ……ハァ!?
テメェ、佐助!!」
「何、やってるんでしょうね」
遠くから才蔵達を見る、六郎と幸村……
「全くだ、ハハハ!
ホント……楽しそう」
「雨降って地固まる、とか思ってませんよね」
「……
おーい!伊佐那海ぃ!!
菓子を馳走して貰いに参ったぞぉ!」
「あ!幸村様ぁ!!
じゃあ、皆でお菓子を食べよう!」
幸村と伊佐那海の会話で、喧嘩は一時中断する佐助と才蔵……
十蔵は、隙を狙いアナスタシアの胸をタオルで隠した。
「幸村様に見せたら、大変な事になる!早くしまえ」
「才蔵は、おやつ抜きね!」
「ハァ!?何で!?」
「何なのです、こいつ等……」
寝ていた七隈は起き上がり、部屋の外でふて寝する大助と清海を見た。
さらに、横には団子が山盛りになった皿がそこに置かれていた。
「そして、この山の様な団子の差し入れ……」
地面に尻を突き、息を整える明日花と優助……
「どうやら、引き分けのようですね」
「……だね」
立ち上がり、刀をしまいながら明日花は答えた。優助も服に付いた土を払いながら、立ち上がり刀をしまった。
「……
父さん」
「?」
「これ……」
優助に何かを差し出す明日花……
それを受け取った優助は、手を開き見た。
「……」
明日花が渡した物……
それは、紫苑が生前着けていた二つの桜の花びらのピアスだった。
「明日花……」
「だって……父さん、母さんの形見……何も持ってなかったから……」
顔を少し赤くして、そっぽを向きながら明日花は話した。そんな明日花を見た優助は、微笑み明日花の頭を撫でた。
「確かに、受け取りました。
ありがとうございます」
「……」
そっぽを向いていた明日花は、優助の方を向き抱きついた。優助は抱き着いてきた明日花を、抱き締め頭を撫でながら優しく話した。
「別れが辛いのは分かります。僕も辛いですから」
「……また、会える?」
「それは分かりません。
次会う時は、下手したら敵同士……」
「……」
「さ、もう行きなさい。
益々、辛くなりますよ」
そう言いながら、優助は自分から明日花を離した。明日花は顔を下に向けながら、優助から離れ後ろを振り返った。
「明日花」
優助の呼ぶ声に、足を止める明日花……
「元気で、しっかり」
「……うん。
じゃあね、父さん」
涙を浮かべ、優助の方に振り向きながら明日花は笑顔で、別れを告げ城から出て行き、森の方へと行ってしまった。
見送った優助は、手に持っていたピアスを見た。すると、手に一滴の雫が落ち、優助は空を見上げた。
(あなたの涙……ですか、紫苑……
いや違う……
僕の、涙みたいですね……)
夕方……
「もう夕暮れだねぇ。
楽しい時間は、あっという間だね!」
「おう」
城へと帰る伊佐那海達……
すると伊佐那海は、一つの団子を才蔵に差し出した。
「はいコレ。
一個、とっておいたの、どうぞ!」
伊佐那海から団子を素直に受け取った才蔵……
「このまま、ずっと皆と楽しく過ごしたいね。
何があっても……こうやって仲直りして……
ずっと……ずっと」
「ああ……」
「だな」
前を歩く幸村達を見ながら、才蔵はそう答えた。
「それにしても、可愛い髪型だね、才蔵!」
「!
あっ……
鎌之介は、どうした?
いの一番に、騒ぎそうなのに……」