BRAVE10S   作:花札

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『殺ろうぜ殺ろうぜ言う割には、まるで相手にならねぇじゃねぇか。


面白くねぇよ……鎌之介』


ちくしょう……

ち……くしょ……


決別

鳥の鳴き声の共に、足音が止まった。眠る鎌之介を眺めていた男は、彼の頭を思いっ切り蹴った。

蹴られたことにキレた鎌之介は、鎖鎌を振り回し蹴った者に攻撃した。その攻撃を男は素早く避けた。

 

 

「何だ?藪から棒に」

 

「テメェ、今俺の顔を蹴っただろ!!死ね!!」

 

 

鎖鎌を振り回し、風を起こして攻撃した。男はすぐに風を避けた。

 

 

「『風』ね」

 

「かわしたと思うなよコラ!!」

 

 

鎌を振り翳した途端、男は飛び上がり鎌之介の顔面に蹴りを入れた。鎌之介は蹴られた勢いで、崖付近まで飛ばされた。

 

 

「ちょっとは腕に覚えがある、山賊崩れってとこかね。

 

 

ほら、退いた退いた。ここは私の寝床なんだ」

 

「……こんなもんじゃねぇ」

 

「ん?」

 

「俺はこんなもんじゃねぇんだ!!

 

もっともっとやれんだよ!!(会った時は同等だったじゃねぇか。

 

お互い殺り合って最高によくなれるはずだろ!?

 

俺とじゃイケねぇってのか?才蔵……

 

 

テメェが遠い……)」

 

「君は桶の中で、グルグル回る鮒か?」

 

「!」

 

「自分超凄ぇ……最高って思い込んでる阿呆って事だよ。

 

今ので自分の力量、推し量れなかったかい?」

 

「今のは偶々だ!!俺は強ぇ!!」

 

「アイタタタタタ。

 

まるでガキだね。俺は強ぇとか……うわぁ、サムイ」

 

「テメェ、ぶっ殺す!!」

 

 

飛び掛かってきた鎌之介を、男は担いでいた刀の束で腹を突いた。

 

 

「ぶっ殺す何て、出来もしないこと言うのも、凄く格好悪い」

 

 

崖から落ちる寸前、鎌之介の服を刀に掛け宙吊りにした。

 

 

「君さ、一回死んで来なよ」

 

 

そう言うと、男は刀から鎌之介を落とした。

 

 

「馬鹿は死ななきゃ治らないってね」

 

 

 

 

「本当に行方が掴めぬ」

 

 

竹水筒に入っている水を飲みながら、十蔵は木に凭り掛かり座り休んでいた。

 

 

(なぜ姿を消したのだ、鎌之介……明日花。

 

 

いいや……そもそも鎌之介は、才蔵に固執していただけだからな。その執着が崩れれば、いなくなるのも分かる。

 

……しかし、いつの間にか鎌之介がおるのが当たり前になっておったな)

 

 

才蔵にじゃれつく鎌之介の姿を思い出す十蔵……彼等の姿を見て、鼻で笑う明日花の姿を思い出した。

 

 

(……明日花。

 

甚八の元へ戻っていたかと思っていたが……

 

 

今度はどこに行ってしまったのだ)

 

 

“バーン”

 

 

明日花が母親の紫苑と上田に着たばかりの頃。射撃をする十蔵の姿を紫苑と明日花は見ていた。

 

 

『さすが、射撃の名人』

 

『これくらいしなければ、いつ何時幸村様をお守りすることは出来ぬからな』

 

『幸村を守るねぇ』

 

『お主……少しは言葉遣いを改めよ!!

 

子供の前だぞ!!優助を見習え!!』

 

『敬語を使うのは、武田一族の者だけ。

 

それ以外の者に、使いたくないわ。それに優は小さい頃からあの口調よ?今頃見習えっつったって』

 

『お主ぃ!!母親という自覚を持て!!』

 

『うるさいわね……この頑固爺』

 

『紫苑!!』

 

『ねぇ、十蔵!』

 

『ほら見よ!!

 

明日花が口真似をしてるではないか!!』

 

(本当にうるさいわねぇ……このオッサン)

 

『十蔵!』

 

『……(紫苑ではなく、優助の口調を真似て欲しかった……)何用だ?明日花』

 

『火縄銃、使わせて!明日花も撃ちたい!』

 

『お主ではまだ小さ過ぎる。もう少し大きくなってからの方が』

『明日花ぁ、撃ちなさーい』

 

『はーい!』

 

 

いつの間にか持っていた火縄銃を構えた明日花は、紫苑の許可を得て、的目掛けて銃弾を撃ち放った。

 

 

“バーン”

 

 

『……?!』

 

『フフ……さすが我が娘』

 

 

明日花が放った銃弾は、的のど真ん中を貫通していた。

 

 

『やりぃ!!見たか、十蔵!』

 

『……し、信じられん。

 

あんな子供が……某を見てただけなのに』

 

『今の世の中、子供を余り甘く見ない方がいいわよ?

 

特に、私達の娘はね』

 

 

笑顔で言いながら、紫苑は明日花の元へと行き褒めた。褒められた明日花は満面な笑みを浮かべて喜んだ。

 

 

だが二年後、紫苑の死を境に明日花は変わってしまった。感情を表に出すことも無くなり、あの笑顔も自分達の前で見せなくなった。

 

 

(……某が甚八と会い、船の中にあった槍を見た時は驚いた……

 

幼き頃、明日花が使っていた槍が、まさか甚八の船にあり行方を眩ませた日から二年もの間、ずっと彼の元にいたとは……)

 

 

甚八の船に乗った時、倉庫の壁に立て掛けていた明日花の槍を見て、呆気にとられていた十蔵に甚八は話した。

 

 

『それは、俺様の右腕が使ってた槍だ』

 

『右腕?

 

一つ聞くが、これ光坂明日花という子供の槍なのでは?』

 

『あぁ?そうだが……

 

 

何でアンタが、明日花を知ってんだ?』

 

『知るも何も、明日花は某と同様幸村様に仕えている、光坂一族のくノ一だ』

 

『何だ?じゃあ、紫苑のことも知ってんのか?お前』

 

『紫苑は明日花の母親だ』

 

 

不思議に思った甚八は、紫苑と義兄弟の契りを交わしたこと、そして明日花を二年間見ていたことを話した。

 

 

『……あの不良娘!!』

 

『怒るな怒るな。

 

明日花は好きで俺様の所に来たんだ。それでいいだろ?』

 

『よくない!!某達は、明日花がいなくなって一週間も捜索したのだぞ!!』

 

『それはお前等の勝手だろ?

 

明日花はそんなこと、望んじゃあいねぇよ。紫苑が死んでお前等とこの先どう関わればいいか、分からなくなったんだ。だから俺様の元に来て力を付けた……そんで、お前等の元に帰った。

 

それでいいじゃねぇか』

 

 

「十蔵」

 

 

その声に気付いた十蔵は、木の上を見上げた。いつの間にか枝に座り彼を見下ろす佐助がいた。

 

 

「調子はどうだ?」

 

「まずまず」

 

「こちらはまだ、何の成果も無い。

 

すまんな……他の者は?」

 

「九度山変わりなし。

 

才蔵は伊佐那海追ってる。

半蔵、未だに伊賀」

 

「……アナスタシアか」

 

「あの時、我等庇った。熱傷深い」

 

「……正直、どうだ?」

 

「……

 

 

不明」

 

 

 

伊賀……

 

 

とある建物の地下へ降りてきたくノ一は、階段に腰掛ける半蔵に話し掛けた。

 

 

「どうよ?」

 

「んー……何とも」

 

 

地下の部屋に置かれた氷風呂に浸かるアナスタシアを見て、半蔵は答えた。

 

 

「この人のお師匠、どこ行ってんの?

 

アイツなら、何とか出来るでしょうに」

 

「あの人はいつ帰ってくるか分かんないわよ。

 

今、里に弟子がいるわけじゃないし」

 

「あー、そうですか」

 

「……

 

 

アンタ達、何に関わってんのよ。

 

 

いつもなら、手負いの同僚なんて捨て置くでしょうに」

 

「……何でしょうね。

 

この世の運命とでも、言うんでしょうかねぇ。

 

どうやら、欠けるわけにいかねぇんで。目覚めて貰わなきゃ困る訳よ……

 

 

それに、こんな冷えてたんじゃ突っ込む気にもなれんでしょう」

 

「……アンタ、相変わらず下衆いわね」

 

「自分に正直なだけですよぉ(あ~でも、冷たいのも一回くらいいいかも!)」

 

 

 

森を駆ける才蔵……

 

 

『伊達とやり合ってた上杉残党の拠城が、一瞬でやられたらしい』

 

『何でもいきなり、デケェ雲が湧いて中から女が現れたっつうじゃねぇか!』

 

『その女が笑いながら、ズドンだとよ!

 

周りの村も全滅だと』

 

(伊佐那海!!)

 

 

 

奥州、政宗の城を見る伊佐那美……

 

 

「何とも、面白味の無い城だのう……しかも何だ?作り途中か?

 

 

妾に相応しくない。

 

少し……弄らせて貰おう」

 

 

壁に手をかけると、そこから黒い霧が浮き出て、それは形を変え階段を作り禍々しい社を作った。

 

 

「これで……少しは良くなった。

 

 

?」

 

 

何かの気配に気付いた伊佐那美は、後ろを振り返った。そこにいたのは才蔵だった。

 

 

「伊佐那海……」

 

「……才蔵」

 

「捜した……

 

帰るぞ、伊佐那海!

 

 

俺はもう……お前を離さねぇ!」

 

「才蔵!」

 

 

手を差し伸ばしてきた才蔵に伊佐那海は、涙を流して飛び付いた。

 

 

「……才蔵、来てくれたの!

 

才蔵……」

 

「伊佐那海」

 

「ありがとう……本当にありがとう!

 

 

わざわざ、殺しに行かなくて済んだ」

 

「!!」

 

 

伊佐那美の攻撃を食らい、腹に傷を負った才蔵は、すぐに彼女から離れた。

 

 

「貴様は邪魔だ、光の者よ!

 

これからこの世を面白可笑しく、滅ぼそうという時に……

 

お前は絶対に邪魔になる!!お前がいなければ、何の枷も無い!!

妾は命あるもの、全てを殺して闇へ還す!!至福の時が訪れるのだ!!

 

 

伊佐那海……そんな女はもういない。

 

この世を絶望の淵に落とすのだ」

 

(……テメェ!)




“ピチャン”


天井から落ちる一滴の雫が、洞窟内に堪った水溜まりに落ちた。
その水溜まりにの中に横になっていた明日花は、雫が落ちた音で目をゆっくりと開けた。


「……」

「どうかしたか?」

「……何でも無い」

「そうか……ならまだ寝とけ。

もう少し、時間が掛かる。お前と奴が融合するのには」

「……うん」
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