BRAVE10S   作:花札

43 / 64
「いねぇ?」

「えぇ、もう何年も姿を見てないって。

おかげさまで、アナもまだこの通り」

「使えねぇ!!あのアホ師匠!!使えねぇ!昔っからだけど!!」

「どっかで、野垂れ死にしましたかね」


嵐の中で

伊賀へ帰ってきた才蔵は、茶屋で半蔵と話をした。

 

 

「アンタは何でまた、百に会いに?」

 

「ああ……」

 

「半蔵様!才蔵様!

 

これ、よろしかったらお茶うけに……」

 

 

そう言いながら、少女は御饅頭の盛った皿を手に顔を赤くしていった。

 

 

「おう」

 

「悪いね」

 

 

二人に礼を言われた少女は、顔を赤くして悲鳴を上げながら、後ろで見ていた女友達の元へ駆け寄って行った。

 

 

「テメェ、変態のくせにモテんだな」

 

「あの「キャア」の半分は、あなた宛てでしょうよ」

 

「で?」

 

「……テメェ、、神は信じるか?」

 

「アンタの師匠の得意分野で「術」でしょうよ。それが今更なんですか?」

 

「俺はすっかり、忘れてたんだよ。

 

そもそも奴に教わった神ってのは、「自然」だったからな。

 

 

伊佐那美(イザナミ)とか素戔嗚尊(スサノオ)とか、物語の神様なんて、ピンとこねぇ」

 

「……あなた、馬鹿ですね。

 

その理論でいけば、伊佐那美なんてドンピシャじゃないですか」

 

「あ!?」

 

「「死」なんて、自然の摂理そのものでしょ?」

 

「っ……」

 

「あれ!?違ってました?伊佐那美は、死を司る女神。そして地上に出て来てはいけないシロモノ」

 

「それが……それが神だとしたら、じゃあ俺等は?

 

森羅万象に当て嵌められた俺等は何だ?

 

 

……最初は、オッサンが十勇士を集めるために、適当に水だ草だと言ってんのかと思ってた……

だが、陰陽太極図を囲むように書かれたあれ……そしてそれを更に囲むあれ……そう、アレはまるで……封じるように」

 

「伊佐那美とこの世を隔てたのは、出雲でしたねぇ」

 

「あ!?何それ」

 

「そんなことも知らなかったんですか?

 

地下の大岩。アレでしょうよ」

 

「ああ!?」

 

「アンタねぇ、神の成り立ちの本くらい読みなさいよ。

 

仮にも、百の弟子でしょうが」

 

「じゃあやっぱり、あの大岩の文字には意味があったのか」

 

「あん時は、バリバリ殺り合ってましたからねぇ……

 

アンタに一撃入れられて、ついマジんなっちゃって……

今考えるとお恥ずかしい……!

 

 

じゃあこうしましょ!も一回、見に行きましょうよ!二人で!」

 

「行ったって、意味ねぇよ。

 

あの文字が解読できる古文書は、オッサンが燃やしちまってもうねぇんだよ」

 

「古文書……」

 

「そ、出雲文字が書いてある古文書」

 

「それこそ、そういう類のはアンタの師匠がいっぱい持ってるでしょうよ」

 

「……あ!」

 

 

半蔵に言われ、才蔵は百の家へ行った。

 

 

「ねぇ!!」

 

 

文句を言いながら、才蔵は部屋に置かれていた書物を投げ捨てた。

 

 

「こりゃ、持ち歩いてますかねぇ」

 

「あんのアホ!!使えねぇにも程がある!!」

 

「やはりここは、百を捜しながら出雲旅行ですね」

 

「っっ!!」

 

「このまま奴を待ってても埒が明きませんよ。二人で捜せば楽勝でしょ?」

 

「……くそ!仕様がねぇな!」

 

「いつまでも、アナスタシアがあのままなのも、痛いですしねぇ。あの深傷は百がいないと治らない。

 

意識のない女を抱くのって、スッゴイつまんないんですよ!ヨガんないし、声出さないし。

 

 

俺もある意味、百には早く帰って来てもらいたいんですよ」

 

 

半蔵の言葉に、才蔵は殺気に満ちた目で睨んだ。

 

 

「冗談ですよ!冗ー談!

 

さあさ、とっとと行きましょう!」

 

 

 

その頃百は、木陰で横になり書物を読んでいた。

 

 

「……まだかねぇ」

 

 

遠くで横になっている鎌之介を気にしたようにして目を向けた。

 

 

(さっき何か、掴みかけたみたいだけど……)

 

 

「……グー!」

 

 

鼾をかき、眠っている彼に気付いた百は、起き上がり書物を鎌之介の顔上に落とし起した。

 

 

「痛ったぁ~~~」

 

「寝てどうすんの。何か見つけたんじゃないの?」

 

「だって、こんなに天気良くて、暖かけりゃ眠たく何だろ!普通!!」

 

「言い訳禁止!」

 

 

ふと百は、鎌之介の左目に刻まれていた刺青を見た。

 

 

「んだよ」

 

「これが、枷になってるのかな?」

 

「誰に入れられたの?」

 

「あ?知らねぇ」

 

「君、出身は?」

 

「それも知らねぇ。小さい頃から山賊やってて、あっちこっち行ってたからな」

 

「フーン……山賊なんかが、入れられる類じゃないんだけどねー」

 

「は!?」

 

「左目って、とある神様が生まれ出でたところなんだよねー」

 

「あ!?」

 

「どれ、少し辿ってみようか」

 

 

百の首近くに刻まれていた刺青が青く光り出した。百は指で鎌之介の刺青をなぞった。

 

すると、鎌之介の脳裏に見覚えのない記憶が蘇ってきた。

 

たくさんの巫女や巫覡に囲まれ、自分は台の上に拘束されていた。そして自身の目に、針を突き刺し刺青していった。

 

 

その記憶を見た鎌之介は、ポカーンとした表情で、その場に座り込みなぜか目から涙が流れていた。

 

 

「な、何だ?何だ?」

 

「なるほどねぇ……

 

君は小さい頃から、その力を使えちゃってて、憑き者扱いされちゃったのか。この刺青は封印として、入れられたんだね」

 

「あ?封印?でも」

 

「まあ、何とかなるかな」

 

 

腰から筆を出し、百は鎌之介を倒しそして目元の刺青に沿って筆をならした。

 

 

「冷て!」

 

「動かないでジッとして。こうして封印の流れを変えると、解放される」

 

 

書き終えると、空から雷の音が聞こえてきた。百は空を見上げ高く伸びていた岩の頂上に飛び乗った

 

 

「嵐が来るね。しかも大型だ。

 

 

じゃ、頑張って鎌之介」

 

「あん?一体何を……」

 

 

起き上がった鎌之介目掛けて、大型の嵐が彼を飲み込んだ。

 

 

「(何て…強さだ!これが自然!?「神」って奴か?

 

 

スゲェ……スゲェ…スゲェスゲェスゲェ!!これを自分のものにできたら!

 

才蔵!!オメェに近付ける!!きっと!!)

 

 

俺は才蔵に近付きてぇし!!追い越してぇ!!

 

才蔵と同じところまで!!あいつと対等であるために!!

 

 

風の神様!!アンタのその力!!俺に貸しやがれ下さいぃぃ!!お願いしまぁす!!」

 

 

呑み込まれていた風を、指に集め吸収した。

 

 

「何て頼み方だい」

 

「何か……良い感じ。

 

由利式風術天照神風!!」

 

 

巨大な竜巻を作り出し、技を出した。百は岩から眺める様にして、その技を見た。

 

 

「おおー」

 

「スゲェっスッゲェ!!

 

スゲェ俺!!

 

 

スゲェよ!くはぁ!!見たかぁ!!才蔵!!」

 

「やっぱり、才能あったじゃないの。

 

しかもとんでもない「神」を手に入れたね……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告