BRAVE10S   作:花札

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もう何年も昔の話だ……


木から生まれた子供

武田軍隊長山本優助、副隊長光坂紫苑、そして光坂一族は武田が滅んだ直後、彼等は大名達の前から姿を消した……

 

優助と紫苑は、一族が世話になっていた神社……公智神社で巫女と巫覡となり、静かに暮らしていた。

 

 

そんなある日……優助が境内で何かの音を耳にした。それは紫苑も同じだった。

 

風は吹いていないのに、木の葉がざわめく音……

 

 

その音は何日も続いた……

そして運命の出会いがあの日に訪れた……二人の元へ。

 

 

ざわめく音の中から、泣き声が聞こえた。

赤ん坊が泣く声……二人はその声を頼りに、境内を探し回った。そして見つけた……

 

境内の片隅に生えた神木……その木の前に、小さな声で泣く赤ん坊が木の籠の中にいた。

 

 

「……!

 

紫苑!来てくれ!」

 

 

優助の呼ぶ声に、紫苑は彼の元へと駆け寄った。優助は慣れない手付きで、木の籠から赤ん坊を抱き上げ、駆け寄ってくる紫苑に見せた。

 

 

「この子……」

 

「この木の籠の中に……

 

恐らく、捨て子です」

 

「……」

 

 

優助に抱かれた赤ん坊は、涙は出ているものの泣き止み紫苑の方をずっと見詰めていた。見詰めていた赤ん坊を、紫苑は彼から取り抱いた。

赤ん坊は彼女に抱かれると、笑みを見せた。

 

 

「笑った……」

 

「どうやら、君のこと母親だと思ってるみたいだね」

 

「そんじゃあ、父親は優ってことかしら?」

 

「え…」

 

「何てね。それより早くこの子を、神主様の所に連れて行きましょう」

 

 

赤ん坊を神主の所へ連れて来た紫苑と優助……紫苑に抱かれた赤ん坊はご機嫌なのか、笑い声を上げながら紫苑の手を握ったり、優助の方に手を伸ばしたりしていた。

 

 

「その子が、あの隅の神木に捨てられていたのか……」

 

「神主様、この子はこれから……」

 

「……仕方あるまい。これも何かの縁かもしれない。

 

ここに置き皆で育てよう」

 

 

神主の言葉に、紫苑は優助と顔を見合わせ微笑んだ。

 

 

「けど、皆で育てようにも……

 

その子は既に、自身を育ててくれる親を決めているみたいですね」

 

「え?」

 

「紫苑、優助。

 

二人は、これからこの子の親となりなさい。その子もそれを望んでいる。見てみなさい……その子の笑顔を。

 

 

その笑顔は、二人を親として見ている証拠です」

 

「けど、我々は一度も子育てを」

 

「助け合い育てるのが子育て……

 

困った事があれば、周りに相談しなさい」

 

 

話を終え縁側に座る紫苑達……するとそこへ、赤ん坊の話を聞きつけた巫女達が彼女達の元へやって来た。

 

 

「わー!可愛い!」

 

「この子でしょ?紫苑達が見つけた赤ちゃん」

 

「うん」

 

「何か、二人の子供みたい」

 

「え?」

 

「何で?」

 

「だってこの子、紫苑と同じ様な髪の色してるし、顔立ちなんて優助にそっくりじゃん!」

 

 

巫女達の言う通りだった……赤ん坊は、紫苑と似た白髪に優助と同じ透き通った青い目をしていた。

 

 

「不思議よねぇ。捨て子がここまで二人に似るなんて」

 

「もしかして、本当に二人の」

 

「違います……断じて違います」

 

「そうよ。

 

前にも言ったけど私、子供作れない体なんだから」

 

「あ……」

 

「人が言ったことくらい、覚えといてよ」

 

「アハハ……」

 

「ねぇ、抱かせて!

 

赤ちゃん、抱いてみたい!」

 

「あ!ズルイ!私も」

 

「私も」

 

「ハイハイ、順番ね」

 

 

そう言いながら、紫苑は傍にいた巫女に赤ん坊を手渡した。巫女は嬉しそうに笑い赤ん坊の頬を撫でた。すると赤ん坊は、泣きそうな表情になりそして泣き出してしまった。

 

 

「わわわ!

 

ど、どうしよう!」

 

「貸して」

 

 

紫苑は慌てて赤ん坊を抱きあやした。すると赤ん坊は、紫苑の顔を見ると泣き止み笑った。

 

 

「やっぱり、神主様が言った通り」

 

「この子は紫苑と優助が育てないといけないみたいね」

 

「そうよねぇ」

 

「そういえば紫苑」

 

「ん?」

 

「この子の名前、どうするの?」

 

「名前?」

 

「育てるなら、やっぱり名前がなきゃ」

 

「そうねぇ……」

 

 

考える紫苑……ふと赤ん坊に目を向けると、赤ん坊は優助の方に手を伸ばしており、彼は伸ばしてきた手に自身の小指を持っていき掴ませた。赤ん坊は嬉しそうにその小指を握った。

 

 

「紫苑の次は優助に懐いてる!」

 

「あらあら……優、今度はアンタが抱いてあげなさい」

 

 

そう言うと、紫苑は優助に赤ん坊を渡した。彼は慣れない手付きで赤ん坊を抱き、赤ん坊は笑った顔のまま優助の服を掴みんだ。

 

 

「この子、笑い顔が可愛いですね!」

 

「何か、こっちまで癒される」

 

「僕が抱いた時も紫苑が抱いた時も、この子は泣き顔からすぐに笑い顔になります」

 

「へ~」

 

「二人の事本当の親だと思ってるんだね」

 

「で、紫苑。

 

名前は?この子の」

 

「……明日花(アスカ)」

 

「明日花?」

 

「そう……

 

今日が辛くとも、この子の笑顔を見れば明日はいい日になる……」

 

「おぉ」

 

「何てね。

 

子供が出来たら、この名前を付けようって優と約束してたの。ね」

 

 

紫苑の問いに優助は頷いた。

 

優助は抱いていた明日花を、紫苑に渡し紫苑は受け取った明日花の頭を撫で愛おしそうに、頬擦りした。




神木の傍に木の籠の中に捨てられていた赤ん坊……

その赤ん坊の名は……明日花
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