「筧さん!!」
「馬鹿な!!なぜ根の国の者を傷付けられる!?
黄泉の向こうの者は既に亡者!!殺すことは出来ぬはず!!
それを滅ぼすことが出来るとはその銃!!」
飛び掛かってきたくノ一を、十蔵は銃口を向け引き金を引いた。くノ一は体を撃ち抜かれそこからボロボロと崩れていった。
(女が復活しねぇ……何だ!?)
「十蔵の出身は淡路国……」
(経津主神(フツヌシノカミ)の力を宿した銃か!!)
「女とて、容赦はせん!!」
「(ここぞという時によくぞ!!)大した男(侍)よ!」
「クソが!!何でこっちは死なねぇんだよ!!」
「伏せろ!!才蔵!!」
才蔵に突っ込んできたくノ一を、十蔵は叫びながら銃口を向け弾を撃ち放ちくノ一を倒した。
「お前は下がっておれ!!
佐助は!?他の者はどうした!?」
「っっ……」
「……そう……か……」
何も答えない才蔵を見た十蔵は、地面に転がっていた半蔵の刀と佐助の爪を見て察した。
「忌々しい……
先に飲み込まれた二人の様に、大人しく死すればよいものを!」
伊佐那美の声に気付いた十蔵は彼女の方を向いた。そして笑っていた頃の伊佐那海の姿を思い出すかの様にして、一瞬目を閉じた。
「しつこい男は嫌いじゃ!!」
手から黒い球を出した伊佐那美は、才蔵達に投げつけた。球は二人を囲うようにして飛び回り、そして球から太極図が描かれた扉が出てきた。
「染みよ……
染みて開けよ、黄泉の門」
その声に応えるかのようにして、扉が開き中から無数のくノ一が飛び出し才蔵達に飛び掛かってきた。
才蔵はすぐに剣を振り回し、くノ一を追い払い、十蔵は火縄銃を向けたが、彼の前には多数のくノ一が飛び交い、そして飛び付いてきた。
「筧さん!!」
「火縄など、間を詰めてしまえば脆い物じゃ」
「堕ちろ……堕ちろ」
(手が……出せねぇ)
「筧のオッチャン!!」
心配した大輔は、才蔵達の元へ行こうとした。その時六郎は行こうとした彼の服の襟を掴み引っ張り後ろへ下げ、口を開け術を唱え襲って来ていたくノ一を倒した。そして右眼を光らせ術を唱えた。
「水術水鏡胞!!」
幸村を中心に覆う様にして、突如水が三人を包み込み、襲って来ていたくノ一を倒した。
「私達の使命は、若をお守りすること!!違えてはなりません、大助様!!」
「でも!!このままじゃ、筧のオッチャンが!!才蔵が!!
佐助も半蔵もやられたんだ……オイラも!」
「ならん」
「!」
「将が動いてはならん」
(真田……幸村!!)
黒い池に引きずり込まれようとしている十蔵……その時、彼の頭に足音が聞こえた。
「女の下になるのが趣味なのか?兄弟」
「じ」
「下でも上でもいいけどよぉ、精々喘がせてやんな」
雷を放ち、十蔵の上に乗っていたくノ一を一斉に倒した。
「あー……んな声じゃ、勃(タ)ちゃしねぇなぁ」
口に煙草を銜え、コートを広げ右腕を上げる甚八……
「やっぱ鳴かせるなら、美人だな!!金髪碧眼だと尚も良しだ!」
「遅いぞ甚八!!貴様、某と一緒に来ておいて、何をしておったのだ!!」
「何をしてッて……先に走って行ったのは、テメェじゃねぇか十蔵」
「甚八……」
「海賊のオッチャン!!」
「甚八!」
「殿様の為じゃねぇよ。俺様はいつだって、アナスタシア……そして義理兄弟交わした紫苑達の味方なのよ。
で、アイツ等は?」
「いや……見当たらんが」
「んだよ、せっかくカッコよく登場したってのによ!」
(筧さんに甚八まで!
どうやってあの力を……)
「もうもうもう忌々しい!!染みて染みて染みて、全て闇へ!!」
「全て闇に染みてしまえ!!」
伊佐那美が手から黒いオーラを出し、くノ一たちに与えた。するとくノ一たちの体は二つに分かれて行った。
「なりは女でも、コイツ等が増えても嬉しくねぇなぁ」
「来るぞ甚八!!」
二人に襲ってくるくノ一を、十蔵と甚八は攻撃を放ち倒していった。その様子に、伊佐那美は驚きの顔を隠せないでいた。
「なぜだ……なぜ神の力が使えるのだ!!」
(神の力!?)
「黄泉の力が、現世に覆う時……それを鎮める神の力を宿した者達、そして彼等を支える者が、この世に生を受ける」
(あの出雲の地下の)
「その者達は、闇の周りに渦巻いて和で持って、それを制する。即ち、お主がこの世に仇なすのを止めるのさ。儂の『勇士』が。
十蔵は経津主神……
甚八は建御雷之男神(タケミカヅチノオノカミ)をその身に宿し……
そして才蔵!お前もだ!」
「!」
「お前のその剣、その技にも神の力が宿っている」
(極光神威(キョッコウシンイ)……
摩利包丁)
『私の技は、神々から力を借りて技となす……神々は雄大にここに在る。感じてごらん、才蔵……光を!』
「……阿呆師匠」
才蔵に迫りくるくノ一立……才蔵はスッと目を開け、剣の束を強く握り締めた。
「今、解った……これで斬れる!」
突然県が光り出し、才蔵は剣を持ち上げ襲ってきたくノ一を切り裂き倒した。
「忌々しい!!」
「うぅるっせぇ!!
テメェ等、さっさとあの世へ帰りやがれ!!」
剣を振り回し、くノ一達をどんどん倒していく才蔵……そんな彼女達の憐れな姿に、伊佐那美は手で顔を覆った。
「ああ!!妾の可愛い醜女(シコメ)達!!」
才蔵に続くかのようにして、甚八と十蔵は各々の技でくノ一達を倒していった。伊佐那美は地面に膝を付き嘆いた。
「ああ……そんな馬鹿な……」
「もう、テメェの闇は通じねぇんだよ」
「凄いや皆!!」
悔しがる伊佐那美……だがその時、彼女は顔から手を離し不敵な笑みを浮かべた。
「構わぬわ」
その声に応じるかのようにして、バラバラになったくノ一の欠片が一斉に動き出し才蔵達の体に張り付いた。
「何だこれは!」
「体が下に!」
「ベッタリと張り付いたぞ……それではもう、斬れはしまい。
さぁ、大人しく膝を折れ」
「クッ!!」
「甚八!!」
「俺様の『雷』じゃ、お前等諸共焼いちまうぜ!!(明日花がいてくれれば、話は別だがな……どこにいんだ明日花!!)」
「ククク……
詰んだな。テメェの手駒はもう、その小姓だけ……さぁ、どうする真田」
「若!!私が……」
「!!?六郎!?」
「来ます」
「由利式風術天照神風!!」
突然大風が吹き荒れた。風は才蔵達の体に張り付いていた欠片を振り払った。
「こ、この風は!?」
「これでテメェに貸一つな!!やっとやっとやっと、殺り合えるぜ才蔵!!」
地面に降り立つ足……鎌を持ち指差し、背後に風を起こす鎌之介がそこに立っていた。