BRAVE10S   作:花札

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『あなたは山本勘助の血を引いています。父上の様に、立派な人になりなさい』


生まれた時から、父の話を聞かされた。色々な人から、父の武勇伝を聞かされた。


(そんな話を聞いても……僕は父上の様になれないよ)


幼い自分の心に、穴が開き始めた……成長につれ、どんどん大きくなっていった。さらに自由自在に、水が出せるようになっていた。

誰にも相談が出来ず、一人で抱え込んでいた……無口無表情。その雰囲気から、やがて軍の中から孤立していった。


(このまま、孤独に戦場で死ぬのか……父上の様に、名を上げることなく……)

『名前なんて言うの?』


一人でいた時、声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのは真っ白な髪を伸ばした自分と同い年の少女だった。


『名前!教えてよ!』

『……山本…優助』

『優助……へ~、いい名前ね。

私、光阪紫苑!よろしくね!』


紫苑は笑顔で、僕に手を差し伸べてきた……その手はとても暖かった。

彼女は、僕の能力を見てもチッとも怖がらなかった。それどころか、とても喜んでいた。


『もしかしたら、優って私達と同じかもね!』

『え?同じって?』

『私達光坂一族は、特殊な能力を持っているの!

火の能力、水の能力、土の能力、氷の能力、雷の能力、草の能力、風の能力、金の能力って全部で八つのあるの!

因みに、金の能力は、あらゆる銃を使いこなせるのよ!カッコイイでしょ!』

『え、えぇ。

紫苑はどの技が得意なんですか?』

『それがねぇ、私の能力は結構特殊なのよ』

『特殊?』

『この八つの力に無い力……木の能力なの』

『木?

その辺に生えてる、木の事ですか?』

『そう!

でも、一族の皆私の術のおかげで、スッゴイ大助かりしてるって感謝されてるんだ!』


笑顔で紫苑は嬉しそうにそう言った。その時思った……この人は、僕が守って行こうって……


月日は流れて行き、僕等は結婚を約束した……一族のお頭も、晃三も、僕等のお頭も、皆……祝福してくれた。


だが、運命は残酷でした……


闘いの中、紫苑は僕を庇いお腹に敵の矢を受けた。急いで彼女を連れて、アジトへと戻った。

どうにか命は助かった……けど。


『……産めない?』


医療班に回っていた一族のくノ一から、お腹にいた子供は亡くなり、さらにもう子供は産めないと紫苑は聞かされた。その時、僕も一緒に聞いていた。くノ一が去った後、紫苑は体に掛けていた羽織を強く握った。


『……紫苑』

『何で……何で……』

『紫苑……』

『ゴメン、優……あなたの子供……私達の子供……産めなくなっちゃった』


手で顔を覆い、紫苑は泣いた。決して人に涙を見せない紫苑が……悔しそうにして泣いていた。

それからしばらくして武田は滅んだ……


僕等の約定は破棄……光阪一族が世話になっていたという、神社へ僕と紫苑は移った。


そこから、僕等の体には硬い……硬い鎖が絡み付いた。



けど……あの子が来てくれたから……鎖は解かれた。


明日花……僕と紫苑の……


別の勇士達

額から血を流し、息を切らす優助……目の前には不敵な笑みを浮かべる紫苑が槍を構え立っていた。

 

 

「しぶといわね……」

 

「あなたのお陰で、随分としぶとくなりましたから」

 

「父さん!」

 

「余所見しない!!」

 

 

額を抑える優助を心配した明日花は彼の方に目を向け呼び叫んだ。そんな彼女の隙を狙い、晃三は刀を振り下ろし攻撃した。彼の攻撃を、明日花はすぐに槍で抑え槍を台にし、飛び蹴りを晃三に喰らわせた。

 

 

『明日花!!』

 

「!!(甚の声?!)」

 

「仲間の声が聞こえるか?」

 

「?!」

 

「早く行かねぇと、せっかく揃えた勇士達が死んじまうぜ?」

 

「アンタ達を倒さない限り、アイツ等の所へなんか行けない」

 

「そうかい……そんじゃあ、ここで親子揃って死にな!!」

 

 

明日花に向かって、晃三は飛び上がり刀を振り下ろした。明日花は槍で彼の刀を振り払い地面に手を付けた。手におおじるかのようにして、地面から鋭く尖った木の根が生え晃三の胸を貫いた。晃三は口から血を吐き出し、顔を上げ明日花を睨んだ。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「いつまでも、弱い明日花じゃない」

 

「?」

 

「アンタは、弱い私しか見えてなかった……

 

その代償が今だ」

 

「明日花……お前……」

 

「……」

 

「ここで……死ぬわけにはいかねぇんだ!!」

 

 

木の根を無理矢理引き抜いた晃三は、明日花をなぎ倒し彼女の首を絞めた。

 

 

「俺はな!!生まれて間もなく、母親に捨てられた!!

 

蛭子もそうだ!!未完成だからという理由で、神の地位を与えられずそのまま死に絶えた!!

 

 

今でも覚えてんだよ……男作って、俺捨て去って行く女の姿がな!!

 

 

捨てられてから数日後、俺は光坂一族のお頭に拾われた。だが成長した時、俺の目に映ったのは……真っ暗な世界だ。

光りが消え、真っ暗な世界に俺は一人取り残されたんだよ……孤独だった……

 

 

何も無かったんだからな……そんな時、アイツが現れた」

 

「アイツって……ガハ……母さん…の事?」

 

「そうだ……紫苑を抱いた時、声が聞こえた。

 

『光が欲しいか?』って……俺は欲しいと答えた……声は『一族を全員、殺しなさい』って言った」

 

「じゃあ……母さんが……やろうとしてた……事って……一族の殲滅……」

 

「死ぬ前に教えてやるよ……

 

 

光坂一族は、八つの力……神の力を受け継いだ者が、十勇士となる言い伝えがあった。

 

その勇士が見つかるまでのガラクタだ……一族の中で、勇士になった奴はいなかった。

 

 

お前が生まれたせいでな」

 

「……」

 

「それからもう一つ教えてやるよ……

 

優助はな……海の神の力の持ち主なんだ」

 

「海の……神?」

 

「海神だ……あいつの水は、海神の力なんだ」

 

 

晃三の声が遠退いて行く……

 

意識も遠退いて行く中、明日花は目から涙を流し思い出していた。

 

 

暗い空間……明日花は一人、そこを泣きながら歩んでいた。

 

その時、背後から肩を叩かれ振り返った。そこにいたのは、人の姿をした白い靄だった。すると靄から声が聞こえた。

 

 

『望は何だ?』

 

『……傍にいたい』

 

『誰の?』

 

『母さんと父さんの……』

 

 

靄の背後から突如、閃光弾の様にして眩しく光った。

 

 

それと共に、明日花は意識を取り戻した。自分を抱き、晃三の目に短刀を突き刺す優助の姿が目に映った。

 

 

「個人の恨みを、他人に向けるなど外道がやる事」

 

「あ……ああ……目がぁああああああああ!!」

 

「今すぐ死になさい!!

 

 

山本流水術黄泉送り」

 

 

晃三の足元に、光り輝く水溜りが浮き出し、そこから白い手がいくつも伸び晃三を掴み引き摺り込んでいった。

 

 

「止めろ!!俺はまだ!!

 

助けてくれ!!明日花!!明日花ぁぁあああ!!」

 

 

手を伸ばす晃三……明日花は、優助に抱き着き彼の胸に顔を埋め目を塞いだ。優助は抱き着いてきた彼女を抱き締め、晃三を見つめた。彼と目が合った晃三の心に、声が届いた。

 

 

『もう一度、人として生きたいのなら、願いなさい……

 

願いが届けば、お前はまた人として生きられる』

 

 

その時晃三の目に、青い空が映った。

 

 

『悩んだり、生き辛くなった空を見ろ。

 

な~に、見えなくともお前の心の目にはしっかり見えとる。空はな、誰の目にも見えるんだ。

 

目が不自由でも、どんなにくすんだ目を持っている奴でも……空は、青く見えるんだよ』

 

 

(……お頭……

 

 

俺にも……やっと空が見えたよ)

 

 

晃三を飲み込んだ池は跡形も無く消えた……明日花は、池があった場所へ駆け寄り地面を見た。そこには彼岸花が咲いていた。

 

 

 

「蛭子を……晃三まで殺すとは……」

 

 

背後から怒りに満ちた声が聞こえ、二人はすぐに後ろを振り返った。次の瞬間、優助の腹部を木の槍が貫きその勢いのまま、近くの木に突き刺さった。

 

 

「父さん!!」




陽の光が顔に当たった……


恐る恐る目を開けた……見た事ない景色。どこに父さんと母さんはいるのだろうか……





足音?


『紫苑!来てくれ!』


あ……父さんの声だ……

父さんの温もり……母さんは?母さんは……あ…母さんだ……


父さんと母さんに会えたんだ!


父さん……母さん……私の名前ね……
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