佐助が作り上げた屋根を見上げる伊佐那美……
「これは出雲の……!!」
『伊佐那海、いつでも笑って闇を撥ね退けなさい』
『伊佐那海!』
『伊佐那海……』
「嫌!!嫌じゃあ!!
妾は伊佐那美!!滅びの母よ!!この世を全て無に帰すのが、妾の願いよ!!」
黒いオーラを出し、伊佐那美は近くにいた政宗を取り込もうと、背後から抱きついた。
「来よ、政宗!!
お前のどす黒い野望をよこせ!!この世を滅ぼし、その上に君臨したいというお主の心を!!」
「政宗!!」
「やらせるか!!」
黒いオーラに雷を放った明日花は、政宗の手を掴み伊佐那美から彼を離した。
「己ぇ!!久久能智神!!」
無数の黒い槍が、明日花目掛けて突進していった。腰に着けていたケースから、短剣を取り出した明日花は、突っ込んできた槍を短剣で防いだ。だが短剣は、槍を防いだ瞬間力に耐えきれず刃が粉々に砕けた。それでも尚、槍の勢いは緩めること無く迫っていった。
(ヤバい……こいつ抱えてちゃ、技が出せない!!)
攻撃に当たろうとした瞬間、目の前に木の根が生え槍を防ぎ、その直後才蔵達が槍を次々に跳ね返していった。
「後は俺等に任せとけ!!」
「そのつもり!!」
「テメェの大事なトコに、焼き入れんぞ!!」
炎を放ち、半蔵は伊佐那美に攻撃した。半蔵達が攻撃を続けている中、佐助は力を振り絞り大社を造り続けた。
幸村達の元へ着いた明日花は、政宗を投げ飛ばし近くに刺していた刀を抜き、才蔵達の元へ急いだ
造り続けている大社の中、才蔵達は手を緩めることなく闘い続けた。
「(伊佐那海……)
伊佐那海!」
迫ってくる才蔵に、伊佐那美は黒い槍を放った。才蔵は剣を振り回し槍を防ぎ彼女に迫った。
才蔵達が戦っている中、六郎は膝を付き口と鼻から血を流し息を切らしていた。何とか立ち上がろうとするが、膝はがくがくに震え限界を超えていた。
「(乱れるな呼吸!!今が真田に仕える術士『海野』の大舞台!!
今、お役に立てずして)何とするのか!」
立ち上がる六郎だが、足がふら付きまたしても膝を付きそうになった……その時、彼の手を七隈が掴み支えた。
「七」
「私の力もあれば……何とかしなさい兄上!!」
「ありがとう、七隈」
「貴方に礼を言われる事ではありません!!
これは退いては、信之様を助けることに!」
「行くぞ」
顔を真っ赤にしていた七隈の手を六郎は掴んだ。その瞬間、彼の体に激痛が走り鼻から血を流した。
(体中の気が根こそぎ持っていかれる!!
骨が……内臓が……肉が軋む!!
これが兄上の力!!いつもこの様な痛みの中で戦っていたのか!!)
さらに気を送られた瞬間、目に映る暗い空……その中に浮かぶ丸い月。
(夜だ!夜が来る!!)
「私が寄るは『月読命』(夜を喚び、封印の岩戸を今ここに!!)」
六郎の眼に埋め込まれていた蒼玉髄が光った……
「封神岩召喚!!」
その時、伊佐那美の背後にあの出雲の地下にあった岩で塞がれた扉が現れた。
「ヒィィイイ!!」
「何!?」
「何で!?」
「封印の扉が開かねぇ!?」
(この力……人が耐えられるものではない!!術を保てな……い)
「っ」
「フ……ハハ。
開かなければ、恐ろしくはないわ!」
「何笑ってんだよ、クソ女」
そう言いながら、鎌之介は前に立つ才蔵の背中に立ち、彼の背中を自身の背中を合わせ立った。
「やっと追いついたぜ……才蔵!」
「鎌之介!!」
「これでマジにテメェに、一つ貸しな!俺に感謝しな!
俺はこんなのさっさと終わらせて、テメェと遊ぶんだからよ!」
傷口から血を流し、息を切らしながら鎌之介は嬉しそうにそう言った。そんな彼に、才蔵は笑みを浮かべて答えた。
「ああ!泣くまで、イカせてやる!!」
「ハッハァァアアア!!こりゃ、上げかねぇとな!!」
風を起す鎌之介……だが、その瞬間彼の体に激しい激痛が走り、力に押し負けようとしていた。
「才蔵とヤるんでしょ!!
ここでくたばったりしたら、承知しないよ!!」
鎌之介の肩に手を置き、明日花は彼に力を与えた。鎌之介は持ち応えそして、巨大な風を起し岩に向かって放った。
「天照開闢斬!!」
風の技が当たり、黄泉の扉が開いた……
風の衝撃波が、鎌之介の体を傷付けた……傷付いた彼は、才蔵に寄り掛かる様にして倒れた。
「お前と遊ぶのは、お預けだ……俺には今、やることがある。あとでな、鎌之介!」
「あああああ!!黄泉に引き込まれる!!
己!!己!!覚えておれよ!!妾はまた必ず!!」
「止めろ!!あの女は大事な手駒なんだよ!!」
「殿!!」
「目を覚ませ阿呆が!!」
堪忍袋の緒が切れた幸村は、政宗の胸倉を掴み怒鳴った。
「奥州を束ねるお主が、人外の力を得てして何となる!!
民の事を思えばこそ、『人』として天下を取らんか!!」
「……」
「この状況を見ても、まだ人外の力が欲しいか?」
そう言いながら、明日花は政宗の元に降り立った。政宗は、スッと明日花の方に目を向け彼女を見た。目に映る姿は、かつて自分がさらった時の幼い明日花の姿……そして、十番勝負で見た時の姿だった。
そしてフラッシュバックで、蘇る過去……政宗の手を握り歩く幼い少女。
(クッ……思い出したくもねぇ過去を思い出しちまった)
「……あの時のお前は、まだ『人』だった」
「何でお前が知ってんだ……」
「そいつから話を聞いたからだ。
その時のお前のことも」
「……
一つ聞く。
なぜ俺を助けた?」
「……声が聞こえた。それだけ」
「声?」
「……母さんと父さんの」
「……」
「無駄にすんじゃないよ……その命。
お前の力を必要としている奴等が、まだ大勢いる」