某所……
慰霊碑が建つ場所に、花束を置く一人の男……
「珍しいのう……
そんな慰霊碑に、花束を置く者がおるとは」
「……」
「その慰霊碑は……昔、この向こうの広場である一族を滅ぼさせた場所なんじゃ。
主犯は未だに捕まってなくてのう……じゃがどういうわけか、一族の死体は皆埋められておった。
余程の理由があったのじゃろうのう……一族を全員殺さなくてはならなかった理由が……
滅んだ一族を憐れに思ったのか、どっかの殿様が、その慰霊碑を建てたんじゃよ……一族全員を供養するために」
「……そうですか」
「そう言えば、お前さん……
確か、そこの鍛冶屋の」
「蘭丸……鈴木蘭丸と言います」
振り向いた男の顔には大きな傷跡があった。そして、着物から見えていた胸にも大きな傷跡があった。
「おーい!蘭丸ぅ!
早く店手伝ってくれぇ!!人手が足りねぇんだ!」
「分かりました」
立ち上がり、蘭丸は途中まで迎えに来ていた仲間の元へ急いだ。彼の後を、一匹のキツネが追いかけて行くのを老人は見た。
「白いキツネか……珍しいのう」
白いキツネは、蘭丸に追い付くとその勢いのまま飛び彼の肩に乗った。乗ってきたキツネを見た蘭丸は、笑みを溢しながらキツネの頭を撫でた。
慰霊碑に置かれていた花束の花弁が、風に乗り宙を舞った。花弁は人気のない森の奥へと行き、ある場所へとたどり着いた。
そこには小さな木が生えていた……
その木の根元には、錆びついた桜の花弁のピアスと粉々になった簪、そして古い狐の面と鳥の面が置かれていた。傍には刀と折れた槍が地面に突き刺さっていた。二つの刃には黒い羽織と、元は白かったであろう土で茶色くなった羽織が止められ、風に揺られていた。
そこへ片目に傷を負い笠を被った男がやって来た。男は手に持っていた数本の花を置いた。
「旦那、そこに何かあるんですか?」
離れた場所に立っていた、口に小枝を銜えた男が彼に話し掛けた。男は袖から煙管を取り出し、それを口に銜え煙を出しながら話した。
「さぁなぁ……
ただ、供えなきゃなぁって思っただけだ」
「フーン……!」
ふと辺りを見回すと、小さな木の近くに一輪の彼岸花が咲いていた。
(彼岸花?
珍しい……こんな所に、しかも一輪だけだなんて)
「前世で罪を犯した人間は、来世ではどんなものに生まれ変わるんだか」
「?何言ってるんです?」
「単なる戯言だ……
空が青いなぁ」
「おぉ、ホントっすねぇ」
二人が見上げた空は、青くどこまでも広がっていた。
「さ、行くぞ」
「オッス!」
とある戦地……
「何で真田丸を、取り壊されてんだよ!!アホか!!オッサン!!」
「オッサンがオッサン言うな!!お主だって、いい歳だろうが!!」
「家康は、茶臼山に陣張ってるらしいですよ」
「おお!そうか!
あの狸、一発打ん殴って」
「その様な、策でないような策、おやめなさい」
「キツイのう……歳を取って、さらにキツイのう」
「その口、糸で縫い合わせましょうか?」
「アラ~、皆さんどうも~」
「敵方が気安くこっち来んじゃねぇよ!!」
「いやいや~、どう見ても徳川が有利じゃねぇっスかぁ。
『服部半蔵』に返り咲いといて良かったぁ。俺、先見の明ありまくり!
おっと!」
「去れ」
「お~怖。じゃあね皆さん!
後で戦場で、会いましょう!
あ、才蔵は俺がぶっ殺すんで!」
「お主はいつもモテるのう」
「嬉しくねぇっつの」
「そろそろ刻限」
「さーて、やるかぁ」
「戦の世を終わらせるのが、今地上にいる我等の役目よのう。
あの竜も、今度は間違う巻いて」
「その竜なら、血気盛んに最前にいるようで」
「……あ奴らしいのう」
「では、参りますか」
「おう」
「おーい!
俺も交ぜろって、才蔵!!」
「遅せぇよ!オメェ(鎌之介)」
(完)