BRAVE10S   作:花札

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ついに始まった上田城十番勝負……

一回戦目は、三好清海入道対本多平八郎忠勝。


信幸の本気

舞台へ上がった忠勝のもとへ、長槍を持った数人の家来がやって来て、彼に差し出した。忠勝は差し出された槍を受け取り、一振りした。

 

 

「……あれが、本多殿の蜻蛉切……

 

噂に聞く、名槍だが何ともデカい!」

 

「あんなデカい槍、初めて見た」

 

「あんなので突かれたら、いくらお兄ちゃんでも……」

 

「槍の間合いを掴めれば、何とか……」

 

「案ずるな!!我が妹よ!!

 

あのような槍、拙僧の肉体に傷一つ、付けることはできん!!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「オホ!面白い!」

 

「世迷い言を!!

 

我が槍に、突き通せぬものはない!!」

 

「第一死合い、始め!!」

 

 

審判の声と共に、太鼓が鳴り響き始まりの合図が送られた。

 

合図の音に合わせて、忠勝は清海の腹目掛けて槍を突いた。清海は避ける余裕などなく、その突きをもろに喰らってしまった。

 

 

(速ぇ!!)

(速!!)

 

「きゃあ!!」

 

「うわ!諸……」

 

 

だが、忠勝は槍に手応えが無くふと顔を上げると、鼻で笑い余裕の顔を浮かべる清海が立っていた。

 

 

「(我は神仏の使い!!信ずれば必ず救われる!!)

 

フハハハ!!槍の穂など、通さぬ!!」

 

 

腹に刺さらなかった槍を、手で払いのけ高笑いをする清海に、見ていた幸村達は一息つき安心した。

 

 

「見せてくれるわ、清海!」

 

「さっすが、筋肉馬鹿……」

 

「あの槍を通さないなんて……」

 

「お兄ちゃん、凄ぉい!!」

 

「さぁ!!神の制裁を受けてみよ!!アーメン!!」

 

 

清海が攻撃しようとした時、忠勝は槍を振り回し、清海の頭へ激突させた。激突した清海は、そのまま気を失い舞台の上で倒れてしまった。

 

 

「え!?」

 

(油断禁物……)

 

「殴りましたね……」

 

「……」

 

「長槍とは本来、叩きつけるものなり!!」

 

「勝者、本多忠勝殿!!」

 

「何度も戦場に立った大物を相手に、筋肉一本じゃ無理か……」

 

「さすがは、徳川最強……」

 

 

闘いが終わり、舞台を降りる忠勝……

 

 

「これでよいな?」

 

「お見事です!!義父上!!」

 

「では儂はもう帰る」

 

「は!ありがとうございました!」

 

「あら?私の闘いは、見て行かれぬのですか?」

 

 

『弐』と書かれた紙が貼られた籠から、女性の声が忠勝を呼び止めた。忠勝は足を動かしながら、籠に目を向けて話した。

 

 

「お前なら楽勝であろう。見るまでもないわ」

 

「仰る通りですわ!お任せ下さいまし!!」

 

「い、今の声……まさか……」

 

 

籠から聞こえてきた声に、幸村の顔は青ざめた。

 

 

「第二戦!!両者前へ!!」

 

 

審判の声と共に、『弐』と書かれた紙が貼られた籠が中から八つ裂きにされ、中から女性が薙刀を構えて出てきた。

 

 

「さぁ!!参りますわよ!!」

 

「小松!!お主の薙刀は天下一だが、手加減無用だぞ!!」

 

「無論ですわ!!

 

信幸様のために、妻としてしっかり務めさせていただきますわ!!」

 

 

信幸にそう言うと、小松は舞台へ上がった。

 

 

「あ、義姉上(アネウエ)まで出してくるとは……

 

何としても、勝ちに来ておる!」

 

「い、いかに小松殿が薙刀の名手とは言えど、信幸様の御内儀を傷つけるわけには……」

 

(あれで妻?ガキくせぇ……)

 

(あの人苦手だわ……)

 

(参った……これは、やりにくい!!)

 

 

心配する幸村の目に、白いマントを頭から羽織った者が立ち上がり、舞台へ上がった。

 

 

「随分、可愛らしい奥方ね」

 

 

そう言いながら、その者は覆面とマントを取り、素顔を晒した。

 

 

「お手柔らかにどうぞ」

 

 

小松の対戦相手は、アナスタシアだった。彼女の姿を見た観客はざわついた。

 

 

(アナまで、素顔さらしやがった……)

 

「まぁ!」

 

 

アナスタシアの姿を見た小松は驚き声を上げた。

 

 

「その髪、その眼……

 

何と面妖な!!」

 

「そうね……面妖でしょうね……」

 

 

アナスタシアの体や顔を見た小松は、幸村の方へ顔を向き怒鳴った。

 

 

「こ、このような異人を抱えているなど……

 

 

あなた(幸村)の女癖には、呆れ果てますわ!!明日花という子供がいるというのに!!」

 

「え…えぇ!?」

 

(あのクソ妻……

 

誰が子供だ!?)

 

「私が、叩きのめして差し上げますわ!!」

 

 

薙刀をアナスタシア目掛けて、小松は振り下ろし攻撃した。アナスタシアは難なくその攻撃を避け、彼女に不敵な笑みを溢した。

 

 

「あら、おっかない」

 

「覚悟しなさい!!」

 

 

振り下ろした薙刀を、横へ振りアナスタシアに攻撃した。その攻撃を避けながら後ろへ下がったアナスタシアだが、舞台の縁へ足がついてしまった。

 

 

(取った!!)

 

「ああ!!」

 

「アナスタシア!!」

 

 

薙刀を横へ振ったが、そこにアナスタシアの姿は無く、ハッと上を見上げるとアナスタシアが飛び上がり、宙を舞っていた。

 

宙を舞ったアナスタシアは、クナイを引き抜き小松に投げ放った。だがそのクナイは、小松に届く前に小松が薙刀で振り払った。

 

 

「そのような飛び道具など、通じません!!

 

私の薙刀に、死角はない!!」

 

 

宙を舞っていたアナスタシアに、小松は薙刀を振り払った。薙刀は、アナスタシアの足に傷をつけ、小松は機転を変えアナスタシアを叩き落とした。

 

 

「何と弱い!!

 

さてはあなた、幸村の只の遊び女でしょ!!

 

このような者を、死合いに出すとは!!

 

 

幸村!!恥を知りなさい!!」

 

「待て、義姉上!

 

何か、勘違いを……」

 

「そうよ。

 

私、幸村様だけ、相手してるわけじゃないもの」

 

 

アナスタシアは、勘違いをしている小松に答えた。その答えを聞いた甚八は皆を覗き込むように見ながら質問した。

 

 

「誰か相手してもらったことあんのか?

 

俺様はいつも、フラれてるぜ?」

 

(アホ……)

 

「汚らわしい!!

 

同じ女として、許せませんわ!!」

 

 

アナスタシアの答えを聞いた小松は、怒りに満ち薙刀でアナスタシアを容赦なく叩いた。

 

叩かれていき、色気ついた格好をしてきたアナスタシアに、見ていた甚八は興奮していた。

 

「おお!こりゃスゲェ!」

 

「アナ……」

 

「あのお姉ちゃん、あんな弱かったっけ?」

 

「さぁ!!参ったとお言いなさいませ!!」

 

「……

 

 

参ったわ」

 

 

一瞬、幸村を見たアナスタシアは、何かを察したかのように降参した。

 

 

「男を、誑かすだけの女子は、真田に入りません!!」

 

「よくやったぞ!小松!!」

 

「当然ですわ!信幸様!

 

あのような遊び女と、一緒にしないでくださいませ!

 

 

しかし、実に手応えのない!

 

これなら、明日花の母である紫苑を相手にしたいくらいですわ!!」

 

(紫苑って……)

 

(対決したら、アンタは一発で負けだ)

 

「情婦を私に当ててくるなど……!?」

 

 

薙刀を地面へ着こうとした瞬間、何かが割れるような音が聞こえてきた。

 

音が聞こえた薙刀の方に目を向けると、薙刀の持ち手が凍り付にされ、凍り付にされた持ち手が粉々に割れ折れていた。

 

 

「な……」

 

「何だ、これは!」

 

「ひとつ言っておくわ。

 

私、幸村様の情婦なんかじゃないから」

 

 

ケロッとした顔で、起き上がりアナスタシアは小松にそう言うと、舞台を降りた。

 

 

「ご苦労」

 

「仕事はしたわよ」

 

「ハナっから、捨て死合いかよ」

 

「さぁね」

 

「アナスタシア!

 

お前、殿様以外の相手もするんなら、俺様ともいいだろ!?

 

 

いつも断りやがって!!」

 

「甚八!!」

 

(馬鹿……)

 

「用が済んだなら、行くわ」

 

 

近付いてくる甚八から逃げるようにして、アナスタシアはその場から立ち去った。

 

 

「しっかし……アナは仕方ねぇとしても、もう二敗かよ」

 

「この辺で勝たないと、ヤバいんじゃないの?」

 

「心配無用だ。

 

次は勝つ」

 

「第三戦!!両者前へ!!」

 

「行って参ります」

 

 

幸村の隣にいた六郎が、自信満々とした顔で舞台へと上がった。

 

 

「六郎様ぁ!!」

 

「頑張ってぇ!!」

 

 

舞台へ上がってきた六郎に、観客席にいた女性たちが声をあげて応援してきた。

 

 

「その余裕、いつまでもつやら」

 

 

覆面をしていた者は、そう言いながらその覆面を取り顔をさらした。六郎の対戦相手は信幸に仕えている七隈だった。

 

 

「澄まして、いられるのは今のうちですよ」

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