「そっくり!
ねぇねぇ!あの人、六郎さんにそっくりだよ!」
「あ、ホントだぁ!」
(今頃気づいたのか、コイツら)
「七隈……信幸様の小姓」
「確か、六郎の双子の弟……だったよね?佐助」
振り向いて再確認しながら、明日花は佐助の方に振り向いた。佐助は彼女の質問に、頷き答えた。
「双子!?
初めて見たぁ!」
「服が同じだったら、どっちがどっちか分かんないね!」
「どちらも、真田に使える術士の家系ってことは……」
「七隈も六郎と同じ能力を持ってるかもね」
「そんなんで、決着つくのかよ」
「一つ……提案があります」
七隈は六郎を指差しながら、そう言い出した。
「この死合いでは、お互いの術を禁じ手としましょう。
容易く想像、出来ますよね?」
「分かりました」
「(やっぱり同じ能力か……
確かにここじゃ、観客も巻き込むだろうが……)
じゃあ、それ使わねぇで、どう戦うんだ?」
「どうするであろうなぁ?」
「勝算あんじゃ、なかったのかよ!!オッサン!!」
「ああ!あるさ!
うちの六郎は、七隈如きには負けん!」
「如き、ですと!?」
幸村の言葉が癇に障った七隈は、六郎を睨んだ。六郎は澄ました顔で、七隈を見ていた。
「いつまでも、澄ました顔を……」
「第三死合い、始め!!」
審判の声と共に、太鼓が鳴り響き始まりの合図が送られた。
合図の音と共に、七隈は六郎に攻撃をした。六郎はその攻撃を難なく避け、それと共に六郎の服の裾が切れた。避けた六郎は、背中がガラ空きになった七隈の背に攻撃をした。攻撃を喰らった彼の背には、何かで斬られたかのような切り傷が出来た。
その攻撃をした六郎は一歩引き、七隈もまた一歩引いた。
そんな六郎達の攻撃を見た伊佐那海は、驚いた表情を浮かべながら才蔵に質問した。
「何で服が切れるの!?
触っただけなのに!」
「あー、お前には見えねぇのか。
六郎さんの手元、よく見て見ろ」
「手元?」
才蔵に言われた通りに、伊佐那海は六郎の手元を見た。手には鋭い針のようなクナイが仕込まれていた。
「小さな剣みたいなものがある」
「あれは、隠し武器の一つ寸鉄だ」
「意外だな。六郎さんは、接近戦タイプには見えねぇんだが」
「その通りだ才蔵」
「六郎の技は、確か寸鉄だけじゃないはずだよね?」
「明日花の言う通りだ。
まぁ、見ておれ」
さらに攻撃をしてきた七隈に、六郎は服についていた鎖の様なものを手に取り、突進してきた七隈に振り回した。七隈はその攻撃を避け、危うくバランスを崩しかけたが、何とか持ち応え立った。
その時六郎は、服の中から次々に鎖の一部一部を取り出し、それを繋げていき、鎖の鞭を作り上げ七隈に攻撃した。
「どうしたのです?
私の表情を崩すのでは?」
「!!
いちいち、癇に障る!!」
「何をしておる、七隈!!」
信幸の大声に、六郎はビクつき信幸の方に顔を向けた。
「早々に片をつけよ!!
我が陣営は、十勇士とやらに、一勝も許してはならんのだぞ!!」
「承知しております!!」
答えると七隈は、服に仕込んでいた布を引っ張り出し、鎖を繋ぎ合せ鞭を作り出した。
取り出した鞭を、七隈は容赦なく六郎に攻撃をした。
「す、凄いなぁ……」
「あの二人、長得物の間合いが、よく分かってやがる」
「じゃあ、長期戦?」
「いや……
必ず、どちらかが相手の得物に捕まる時が来る……
一瞬の隙が、勝負を分けるだろう」
(早く、早く終わらせねば!!
信幸様に、恥をかかせてしまう!!
小姓としてこの死合い、万が一にも負けられぬ!!
でなければ、私は!!)
『六郎に『水紋』が出たか!』
二人がまだ、信幸と幸村に出会う前……
『おお……これは確かに、海野家の『水紋の眼』。
そうかそうか……
どちらに出る者か分からぬゆえ、双子をどちらも生かしておいたが……
これより六郎が、海野家の後継ぎとなる!』
六郎に差し出された、一つの箱……
中には、青い球が一つ入っていた。
『これを六郎……お前に授ける』
それは!!
『海野家一子相伝、神玉……蒼玉髄』
(同じ双子なのに!!なぜ、私ではなく、兄上が!!)
『七隈』
?
『これよりお前は、六郎の『影』として生きよ。よいな?』
……はい(なぜ!!なぜ私が影なのだ!!なぜ兄が、全てを持っていくのだ!!)
『六郎、七隈よ。このお二人が、真田家の若さまであられる』
六郎と七隈を初めて見る信幸と幸村……
『へぇ、面白い』
『どちらが優れておるのだ?
私は、優れておる方を召し抱えよう』
『それでは、兄の方の……』
『あー、待った待った!
それはズルい!』
『ズルい!?』
『いつも兄上が先に選ぶ!
紫苑と優助の時も、兄上が先に選んだではないか!
たまには儂にも、選ばせてくれ!』
『二人には既に子供がいたであろう!お主あの時、紫苑と子供は自分が引き取ると言い出したではないか!!だから俺は優助を選んだのだ!それで、何を申すか!』
『それくらい、よいではないか。それに兄上が先に優助を選んだのではないか』
『……』
『懐が狭いぞ?』
『……良かろう』
『それでは、この二人に選ばせようではないか!
兄か弟、どちらに仕えるのが良いか!』
(そんなの……
兄の方に、仕えたいに決まってる!)
『恐れながら……
わたくし、六郎は幸村様に仕えとうございます』
六郎の発言に、その場にいた者皆が驚いていた。六郎はそんな皆に構わず、話を続けた。
『見たところ信幸様は、しっかりなさっていて、大変ご立派な方とお見受けいたします……
が、幸村様は全く違っていらっしゃる!
まずはその髪!どういう結わえ方をしたら、そうなるのですか!
そのお召し物も、崩し過ぎです!何ともだらしない!
私がお仕えしたなら、キチンと直して差し上げます』
『プッ……ワハハハハ!!こりゃ参った!
そうかそうか!この幸村の様が、見ておれぬから仕えて正すと!』
『はい』
『面っ白い!気に入った!
六郎は儂が貰う!異論はないな、兄上!』
『う……うむ…』
では……私は!
信幸の使いとなった七隈……しかし信幸の顔は、納得のいかないような表情を浮かべていた。
(あぁ……私は『優れて』いないから……)
(だから!!)
攻撃の手を止めない七隈と六郎……
(私は今まで、信幸様の恥にならぬよう励んできたのだ!!
絶対に負けるわけにはいかぬ!!)
針が付いた先端を、六郎の右眼目掛けて投げつけた。
(そっちは、六郎さんの死角!!)
その攻撃を、六郎が咄嗟に手で針を防いだ。それを狙ってか、七隈は振り回していた六郎の鞭を引っ張った。引っ張られた拍子に、六郎はその場に倒されてしまった。
「ズルいぞ!右眼が見えないからって!!」
「戦闘にズルいは関係ない。ましてや、ルールが無ければね。
いかに、そこを庇いながら攻撃して相手にばれぬ様にするかだ」
「けど!」
「負ければ(死ねば)、それで終わり。己がいかに弱かったかだ(激しい兄弟喧嘩……)」
倒れた六郎に、七隈は寸鉄を投げつけ動けなくした。
「勝負あったな!」
二人の戦闘を見ながら、信幸は勝ち誇ったかのような笑みで幸村を見た。
舞台の上で倒れ、動けなくなった六郎を見下ろすかのように見る七隈……
「過日、右眼を潰したそうですね。
そちらは見えぬのでしょう。
あらゆる物事を記憶する眼……それを失くしたあなたは、もう優れてはいない」
「何を」
「だってそうでしょう?
水紋の眼のおかげで、蒼玉髄を手に入れたのですから……
しかし、その眼がない今、あなたは私と同じ……
なれば、私が継いでもいいはず!!」
七隈は腰から、小太刀を抜き取り六郎に向けた。
「この死合いに勝って、蒼玉髄をいただきます!!
蒼玉髄があれば、私こそ海野家が正統!!
信幸様により相応しい小姓となれる!!」
獲物を捕らえたかのように、七隈は倒れている六郎目掛けて振り下ろそうとした。
その時、六郎から只ならぬオーラが発動した。
「何だ!?」
「残念ながら、渡せません……
これはもう、私のものですから」
(右眼に、蒼玉髄!!)
右眼に巻いていた包帯を取りながら、立ち上がる六郎の右眼には、蒼玉髄が入れられていた。
城下町……
町の一角に民が集っていた。
「うわ……こりゃ酷いな……」
「追い剥ぎかい?」
「それにしちゃ、随分やり方が……」
「刀持ってるよ、この人たち。
お武家さんじゃないかい」
「ホントだ」
「誰がこんなことを……」
(何かしら?)
騒ぎに気付いたアナスタシアは、屋根から飛び降り民が集っている所へ向かった。
(こんな時に、城下で刃傷沙汰?)
「ズタズタじゃねぇか」
「誰か早く、お医者を!」
「一、二……全部で六人だ」
「六人も!?」
「ちょっとごめんなさいね」
集まる人混みの中を、アナスタシアは通りその現場を目にした。
そこは、血だらけになった武士が虫の息で、何とか生き延びている状況だった。
「(このやり口……
肩や腕の剣を斬って、相手を動けなくしている……
それも一瞬で、全員を……)
何か、入り込んだわね」