BRAVE10S   作:花札

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包帯が取れた六郎の右眼には、蒼玉髄が入っていた。


「右眼に蒼玉髄?

あなたは、水紋の眼を失ったのです!!


本来であれば、小姓を辞さねばならぬほどの、失態!!

失くした眼の代わりに、それを入れたとしてなんになると!?」

「何になる?知れたこと。


幸村のお役に立つ、私は水の勇士ですから」


水を統べる者

「目を失くしたからと言って、若のお傍を離れるわけにはいきません。

 

もちろん、あなたに負けません」

 

「それはこちらも同じ!!」

 

 

再び攻撃をする七隈……

 

その攻撃を、六郎はまるで見えているかのように、軽々と避けた。

 

 

「!?」

 

(何だ!?今の動き……)

 

 

避けられた腹癒せで、七隈は隙を与えぬよう次々と攻撃をしていった。だが六郎は攻撃全てを、避けて行った。

 

 

(何故当たらぬ!?

 

まるで、こちらの動きが、読まれているような……)

「あなたの考えている通りです。

 

 

全て、見えています。

 

この眼(蒼玉髄)にかかれば、あなたの攻撃など止まって見えます。

 

大人しく、降参しなさい!」

 

「ふざけるな!!」

 

 

声を上げた七隈に、六郎は鞭を振り攻撃した。その攻撃を受けた七隈は、肩を斬り攻撃の手を止めた。

 

 

「二度は言いません」

 

 

肩を押さえながら、七隈はふと信幸の顔を見た。

 

 

(このままでは、駄目だ……

 

このままでは!!

 

 

信幸様をこれ以上、失望させるのは……嫌だ!!)

 

 

七隈は、突然六郎に禁じていたはずの技を、六郎に掛けた。

 

その技に、六郎は一瞬耳を塞ぎふら付いた。

 

 

「あぁ!!」

 

「六郎さん!!」

 

「約定違反であろう!!」

 

「何が何でも勝ちたい思いが、強くなったか……(哀れな弟だ)」

 

「私は、負けるわけにはいかぬのだ!!

 

あなたを殺してでも、蒼玉髄は貰う!!」

 

 

小太刀の先端を、ふら付いている六郎の右眼を刺そうとした。

 

 

「六郎!!」

 

 

貰ったと思った瞬間、六郎の眼が光りその途端七隈の鼻から血が流れ出てきた。出てきたとともに、七隈は苦しみ出しその場に倒れてしまった。

 

 

「言ったでしょう……降参しなさいと。

 

 

私は水を統べる者……

 

この蒼玉髄は、水を意のままに操る。あなたの体を巡っている血……それもまた水。

 

それを操り、心の臓を止めることなど、造作もなのですよ」

 

「あ……かっ……」

 

「参ったと、宣言しなさい」

 

「……断る……」

 

 

苦しみながら、七隈は体を起こして答えた。

 

 

「七隈!!」

 

 

そんな七隈に、六郎は容赦なくまた術を掛けた。その反動で七隈はまた倒れててしまった。倒れた七隈は、苦しみ今にもあの世へ逝きそうな目をしていた。

 

 

「ヤベェぞあれ!おい!」

 

「心……停止!!」

 

「七隈!!」

 

 

「参った。

 

六郎の負けだ」

 

 

二人の闘いを止めるかのように、幸村が言った。幸村は舞台へ上がり、六郎のもとへ寄った。

 

 

「もうよい、止めよ六郎!」

 

「……分かりました」

 

 

幸村に言われた通り、六郎は七隈に掛けていた術を解いた。その瞬間、七隈の血は流れだし、それと共に苦しんでいた七隈は、深く息をし出した。

 

 

「兄弟揃って、意地の悪い事よ……

 

 

ここで、命を落としてなんとする。

 

それでは、この先兄上に仕えられぬだろう。

 

 

それが本望か?七隈」

 

「……」

 

「勝利は大事だが、弟を殺してまで得るべきものでない、六郎よ」

 

「若!」

 

「そんなことも、分からぬのではお前の負けだ!」

 

「勝者、七隈!」

 

 

審判の声で、二人は舞台から降りて行った。七隈はフラフラな足取りで、信幸のもとへ行き目の前で、土下座をした。

 

 

「申し訳、ございません!!

 

 

このような無様な死合い……

 

私に、信幸にお仕えする資格はありません!!」

 

「……

 

全くだ。

 

よりによって、幸村に救われるとはな」

 

「……」

 

「が、アイツ(幸村)の言うことも、一理ある。

 

 

命を捨ててはこの先、私に仕えることはできん。

 

お前はずっと、私の傍で精進していけばよいのだ」

 

「……はっ」

 

 

 

「お優しいことで」

 

「お前こそ、向きになりおって!」

 

「『七隈如きに負けぬ』と仰った、若の言葉に答えたまでです。」

 

「ほーう」




「第四死合い、両者前へ!!」

「はいはい、ハーイ!!」


審判の声に、元気良く返事をする伊佐那海……


「勇士三連敗だよ!

頑張ってお姉ちゃん!!」

「大丈夫なのか?伊佐那海」

「大丈夫!負けた皆の分も頑張るよ!任せといて!」


そう言いながら、舞台へと上がる伊佐那海……


「危なくなったら、降参しろよ!」

「ハーイ!(大丈夫だよ、才蔵。アタシ決めたんだ……

強くなるって!)」


舞台へ上がってきた、伊佐那海に観客席はざわついた。


「子供?」

「女の子だ!」

「そういや……」

「あの子、いつぞやの神楽舞の……」


舞台へ上がった伊佐那海……その時


「ハアァア!!」


気合の様な声と共に、舞台へ飛び降りてきた一人の女の子……


「出雲の踊り巫女、阿国!!

出雲大社復興の御為、此度は真田信幸様のお招きに応じ、剣技をご披露仕るぅ!!」

「出雲?」
(出雲だと?)

「オイ!!ありゃ、出雲の阿国だ!!」

「出雲大社復興の為に、全国行脚してるっていう、偉い巫女さんだろ!?」


阿国の登場で、観客席から歓声が響き渡った。


「阿国ー!!阿国ー!!」

「スゲェ!!」

「よく上田に来てくれたなぁ!!」

「有名人!!」

「こっち向いてぇ!!」


観客席から響く声に、阿国は手を上げながら答えて行った。


「皆、ありがとー!!」

「知らない……」


阿国を見ていた伊佐那海は、突如そう言い放った。


「アタシ、アンタなんか知らない!!

出雲の踊り巫女に、アンタなんかいなかったじゃない!!」

「……」

「アタシ、出雲の巫女だったんだから!!

嘘ついても、ダメよ!!」

「嘘?私が?

そんな……酷いわ!!


私は!!

出雲大社、再建のために命をかけて、戦いまーす!!

応援、よろしくお願いしまーす!!」


さも当たり前のように、阿国は手を上げて宣言した。その阿国に、観客は皆声援を上げた。そんな阿国の人気振りに、幸村は少々呆れていた。


「凄い人気だのう(この手の女子は、好みではないのか……)」

「伊佐那海……」


心配する才蔵……


(許さない!!

出雲大社が焼かれたのをいいことに、巫女だなんて嘘ついて)


下駄を鳴らし、二つの鉄扇を広げる伊佐那海……


「(アタシ、許さないんだから!!)

アンタが出雲の踊り巫女というなら、舞ってみなさいよ!!」
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