「右眼に蒼玉髄?
あなたは、水紋の眼を失ったのです!!
本来であれば、小姓を辞さねばならぬほどの、失態!!
失くした眼の代わりに、それを入れたとしてなんになると!?」
「何になる?知れたこと。
幸村のお役に立つ、私は水の勇士ですから」
「目を失くしたからと言って、若のお傍を離れるわけにはいきません。
もちろん、あなたに負けません」
「それはこちらも同じ!!」
再び攻撃をする七隈……
その攻撃を、六郎はまるで見えているかのように、軽々と避けた。
「!?」
(何だ!?今の動き……)
避けられた腹癒せで、七隈は隙を与えぬよう次々と攻撃をしていった。だが六郎は攻撃全てを、避けて行った。
(何故当たらぬ!?
まるで、こちらの動きが、読まれているような……)
「あなたの考えている通りです。
全て、見えています。
この眼(蒼玉髄)にかかれば、あなたの攻撃など止まって見えます。
大人しく、降参しなさい!」
「ふざけるな!!」
声を上げた七隈に、六郎は鞭を振り攻撃した。その攻撃を受けた七隈は、肩を斬り攻撃の手を止めた。
「二度は言いません」
肩を押さえながら、七隈はふと信幸の顔を見た。
(このままでは、駄目だ……
このままでは!!
信幸様をこれ以上、失望させるのは……嫌だ!!)
七隈は、突然六郎に禁じていたはずの技を、六郎に掛けた。
その技に、六郎は一瞬耳を塞ぎふら付いた。
「あぁ!!」
「六郎さん!!」
「約定違反であろう!!」
「何が何でも勝ちたい思いが、強くなったか……(哀れな弟だ)」
「私は、負けるわけにはいかぬのだ!!
あなたを殺してでも、蒼玉髄は貰う!!」
小太刀の先端を、ふら付いている六郎の右眼を刺そうとした。
「六郎!!」
貰ったと思った瞬間、六郎の眼が光りその途端七隈の鼻から血が流れ出てきた。出てきたとともに、七隈は苦しみ出しその場に倒れてしまった。
「言ったでしょう……降参しなさいと。
私は水を統べる者……
この蒼玉髄は、水を意のままに操る。あなたの体を巡っている血……それもまた水。
それを操り、心の臓を止めることなど、造作もなのですよ」
「あ……かっ……」
「参ったと、宣言しなさい」
「……断る……」
苦しみながら、七隈は体を起こして答えた。
「七隈!!」
そんな七隈に、六郎は容赦なくまた術を掛けた。その反動で七隈はまた倒れててしまった。倒れた七隈は、苦しみ今にもあの世へ逝きそうな目をしていた。
「ヤベェぞあれ!おい!」
「心……停止!!」
「七隈!!」
「参った。
六郎の負けだ」
二人の闘いを止めるかのように、幸村が言った。幸村は舞台へ上がり、六郎のもとへ寄った。
「もうよい、止めよ六郎!」
「……分かりました」
幸村に言われた通り、六郎は七隈に掛けていた術を解いた。その瞬間、七隈の血は流れだし、それと共に苦しんでいた七隈は、深く息をし出した。
「兄弟揃って、意地の悪い事よ……
ここで、命を落としてなんとする。
それでは、この先兄上に仕えられぬだろう。
それが本望か?七隈」
「……」
「勝利は大事だが、弟を殺してまで得るべきものでない、六郎よ」
「若!」
「そんなことも、分からぬのではお前の負けだ!」
「勝者、七隈!」
審判の声で、二人は舞台から降りて行った。七隈はフラフラな足取りで、信幸のもとへ行き目の前で、土下座をした。
「申し訳、ございません!!
このような無様な死合い……
私に、信幸にお仕えする資格はありません!!」
「……
全くだ。
よりによって、幸村に救われるとはな」
「……」
「が、アイツ(幸村)の言うことも、一理ある。
命を捨ててはこの先、私に仕えることはできん。
お前はずっと、私の傍で精進していけばよいのだ」
「……はっ」
「お優しいことで」
「お前こそ、向きになりおって!」
「『七隈如きに負けぬ』と仰った、若の言葉に答えたまでです。」
「ほーう」
「第四死合い、両者前へ!!」
「はいはい、ハーイ!!」
審判の声に、元気良く返事をする伊佐那海……
「勇士三連敗だよ!
頑張ってお姉ちゃん!!」
「大丈夫なのか?伊佐那海」
「大丈夫!負けた皆の分も頑張るよ!任せといて!」
そう言いながら、舞台へと上がる伊佐那海……
「危なくなったら、降参しろよ!」
「ハーイ!(大丈夫だよ、才蔵。アタシ決めたんだ……
強くなるって!)」
舞台へ上がってきた、伊佐那海に観客席はざわついた。
「子供?」
「女の子だ!」
「そういや……」
「あの子、いつぞやの神楽舞の……」
舞台へ上がった伊佐那海……その時
「ハアァア!!」
気合の様な声と共に、舞台へ飛び降りてきた一人の女の子……
「出雲の踊り巫女、阿国!!
出雲大社復興の御為、此度は真田信幸様のお招きに応じ、剣技をご披露仕るぅ!!」
「出雲?」
(出雲だと?)
「オイ!!ありゃ、出雲の阿国だ!!」
「出雲大社復興の為に、全国行脚してるっていう、偉い巫女さんだろ!?」
阿国の登場で、観客席から歓声が響き渡った。
「阿国ー!!阿国ー!!」
「スゲェ!!」
「よく上田に来てくれたなぁ!!」
「有名人!!」
「こっち向いてぇ!!」
観客席から響く声に、阿国は手を上げながら答えて行った。
「皆、ありがとー!!」
「知らない……」
阿国を見ていた伊佐那海は、突如そう言い放った。
「アタシ、アンタなんか知らない!!
出雲の踊り巫女に、アンタなんかいなかったじゃない!!」
「……」
「アタシ、出雲の巫女だったんだから!!
嘘ついても、ダメよ!!」
「嘘?私が?
そんな……酷いわ!!
私は!!
出雲大社、再建のために命をかけて、戦いまーす!!
応援、よろしくお願いしまーす!!」
さも当たり前のように、阿国は手を上げて宣言した。その阿国に、観客は皆声援を上げた。そんな阿国の人気振りに、幸村は少々呆れていた。
「凄い人気だのう(この手の女子は、好みではないのか……)」
「伊佐那海……」
心配する才蔵……
(許さない!!
出雲大社が焼かれたのをいいことに、巫女だなんて嘘ついて)
下駄を鳴らし、二つの鉄扇を広げる伊佐那海……
「(アタシ、許さないんだから!!)
アンタが出雲の踊り巫女というなら、舞ってみなさいよ!!」