もう第一章を公開してから一か月程度が経とうとしておりました…
第一章の続きを描くだけでここまで時間がかかり、内容を決めるのに時間がかかるとは思っていませんでした。
次話はもう少し、早くできたらなっと思っています。
「それについては……黙秘権を行使させていただきます…」
土下座をする事で深い謝罪を体で示しているものの、なんだか軽視されている気がした珀は、自分と対して年齢が変わらないであろう紫眼の少女に謝罪の意を感じさせない言葉を一言。
そのまま顔を見上げると、和ベンチに座っていた紫眼の少女が珀と同様に土下座をするモーションに入ろうとしているのが見える。
夜の冷気に冷やされたコンクリートの床に、まず始めにひざまづくと、
その土下座は、もしこの世界に土下座検定なるものが存在するならば、最上級が無難に取れてしまう程の美しさ、俊敏さが出ており、日本人でもここまで完璧に土下座を使いこなす事が出来るのか、と思う程であった。
その光景を黙視し暫くの間言葉を失い白くなっていた珀だったが、はっと我に返るとおどけた様子で。
「えっと、なにしていらっしゃるのですか」
と、何気ない質問を口にする。
それに対する紫眼の少女の答えは、何ら曇りのない様子で。
「…日本では互いにこうするのがマナーだと聞いたのだけれど、間違っていたかしら?」
と、自信満々に返答する。
珀の記憶通りなら、本来土下座は、日本礼式の一つで、極度に
珀は、自分の知っている知識を軽くわかりやすいように説明すると、話を逸らすために最初に感じていた疑問を問いにだす。説明している最中恥ずかしさからなのか、横髪に隠れている右耳のあたりを何やら探り、ボソッと呟いたが特に気にも止めず質問を続ける。
「…はぁ、それでこんなとこで何を。世は夜刻誰かと待ち合わせでもしてた訳じゃないだろ?」
足を崩しながら
紫眼の少女には食うか? と言わんばかりに袋の口を向ける。一瞬頭の上にハテナを浮かべ、不思議そうに覗き込むと同じように手に取り、少し間眺め、終えると普通に頬張った。
「……美味しい。適度な噛み応えに、噛めば噛むほどこの溢れ出てくる甘味、ちょっとこの白い粉みたいなのが気になるけれど、そこもアクセントと考えるとまた違った味に変わる気がする。デリシャスね」
言いながら更に袋から追加で取り出すとパクパク、パクパクと袋の中に入っていた干しイモを全て綺麗に平らげた。食べ終えると手をパンパンと二回叩き合掌、ご馳走様でしたと。
珀は、その姿を見るや否や再び白くなる。今度はさっきに比べ大分口が大きく空いていた。確かに美味しいのは分かったのだが、あそこまで速く食べ終えるとなるとなかなかできない。思考が戻るとただ一つの言葉が泉の聖霊の様に湧き上がってきた。
――ワーオ。
自分でも何を考えているか意味が分からなかったたがこれだけは言える、オレは驚愕していた驚いていたんだと。
紫眼の少女は見るに見かね珀の肩をポンっと一回弾くように叩く。
叩かれ色が染まった様に戻ると、冷静さを無理やりにでも前面に出す。
「そ、それで結局何してたんだ?」
「…待ち合わせよ」
「待ち合わせ?」
聞き返すと、肯定するように頷いた。
こんな時間に待ち合わせなんて、常識のある奴なんだろうか。それとも何か大事な事?
「噂をすればなんとやらね……」
紫眼の少女が指さすほうを見ると、一人の小太り気味の男が、髪を武士の様に結い、白と黒で作られた『日』の印の着いた紋を全体的に黒基調とした和服に付け、息を切らしながら走ってきた。手を縦に勢い良く振るうが、運動不足の肥満体質か鈍足で近づいてくる。傍まで来ると膝に手を置き、ガーハーガーハーと大きく息を吸い、息を整え終わるまでにかなりの時間を有した。
「校長?」
明るみに現れたので、誰だかをすぐに判断することが出来た。
校長は、エクスギア学園の創設者の友人とのことで、数年前に二代目の校長に就任なされた日本を支える、日本柱の一人とまでうたわれる程偉大な人間だと聞く。
槍の名手で、日本との交渉決裂で始まった合衆国との『ヴァリアブル大戦』では地上部隊の下っ端的地位だったのにも関わらず、戦場では敵を木の葉を裂くかの如く、瞬裂していったとか。真実かどうかは定かではないが、それを聞くだけだと日本の中では最強に近い人間であろう。
そんな方が何故だろう?
「…ふぅ、大変お待たせいたしました、シグエル・ユーフィリア様。してもなぜ故この様な場を指定なされたのでしょうか?」
校長の良く分からない発言が、頭の中をよぎる。
しぐえる、ゆーふいりあ? それが彼女の名前か? 日本ではかなり珍しい名前だな。漢字ではどう書くんだろう。四愚画留?まさかな……
考えれば考えるほどなんだか馬鹿らしく、笑いが込み上げてくる様だった。
「何を言っているの、貴方は大層なぼんくらでどうやら与太郎ね。まぁいいわ、それでもそんな事を聞くという事は今回の事、密談だと理解していなかったのかしら?」
「いえいえ!滅相も御座いませぬ!重々承知しております、理解したうえで愚問を発したこと深く、深くお詫び申し上げます!」
校長は謝罪をしながらコンクリートの床の上で拳を、グッと握った。
――怒ってるのか?
珀の隣に土下座する校長は珀の事を見つけるや、頭を掴み、
「こ、これ!貴様も頭を上げとらんで、共に謝罪せい!」
と無理やり床にに下げた。
珀は、日本の偉人なら仕方がないと自分に言い聞かせ、土下座をした。
それを見てシグエルは、校長に怒号とも言える一喝を浴びせ効かせた。
「何をしている!誰が貴様以外を巻き込めて良いと言ったの!!このすかたん!!!」
「ははぁー!!」
奇妙な一喝を受けた校長は、慌てて珀から手を離し、指先から揃えるように床に突っ伏せた。
「あなた大丈夫?ケガはないわよね?」
シグエルは心配そうに珀を見ると、ニッコリと笑いながら白いレースのハンカチを持った手を差し伸べてきた。
珀はしばらく、差し出された右手を見ながら、差し伸べられた手を握手するように握る。
でも、何故か不穏な空気を感じ取った気がした。
珀の父親を死に至らしめた者の名ガレオス・ユーフィリアに無残にもシグエル・ユーフィリアの名は酷似していたから。
本当にこの手を取って良いのか、いや考えるだけ無駄か、だってガレオスは合衆国にいるんだ、この娘は関係ない。
珀が立ち上がると、シグエルは校長の方を振り向き、
「場所を変えましょう」
と言って校長と共に学園本校舎の方の闇に消えていった。
残されたのは、額をレースのハンカチで抑えた珀だけだった。
最後まで読んでいただけた方、先に後書きに見に来ていただけた方、どうもありがとうございます。今回はキリが良いのでこの辺とさせていただきますが、次回はもう少しだけ長めにしようかと思っています。(だから、更新速度が遅くなると思います)
オリジナル作品ってやっぱり難しいですね、描いていると痛感させられます。一つの場を構築するだけで、誰が居るとか、どんなことをしているとか、自分なりに考えるのはとても楽しい反面、相手にちゃんと伝わっているか心配になります。やっぱり何か元のある作品で書いてみようかな?
まだまだ至らない部分があると思うので、暖かい目で見ていただくと共に、何かダメな所があれば指摘していただけると勉強になります。
そして、この場を借りまして名前を出して良いのかどうかわからないので控えさせていただきますが、お気に入りしていただいた方にお礼申し上げます。