どうぞ!
日本という何の変哲もない小国が他の国よりも機械技術が大きく進んでいた時代、日本がまだ和を完全に失っていなかった時期がある。
オレは、どこにでもあるような山と森に囲まれた田舎の一軒家で生を受け、家族四人、不自由がないといえば大嘘付の称号を一番にでも貰う事が出来るぐらい困窮していた。
困窮していたといっても、地に這いつくばり道行くに人に食や居服を求めるような事はなく、雨風をしのぐ程度の壁や天井のあるオンボロの平屋に住んでおり、運動全般にはまるで縁がないが血を分けた二つ下の妹もいた。
家族と共に生き、友達といえる存在が少なからずいたことにオレは満足していた。
しかし、その頃他国との戦争が激化し、父親は戦争に狩り出され、昼夜問わず毎日のように日本各地に空爆が落とされ、オレの住んでいた村も空襲の被害を被った。
都会とは違い、対空爆用の設備などもたかが知れていて、手動で敵機を迎撃するターレットが一機。それと男二人係でやっと持ち上げ発射することの出来るスティンガーミサイルが二基。しかし、村の男たちは殆どが出兵中、誰も打てるはずがない。
馬鹿げてるやふざけてるといった負の感情を自分の中で噛み殺し、日々を過ごしていたある日の朝、そいつらは突然やって来た。
囚人を移送するためのトラック二台と、それを護衛する日本軍兵士を乗せた車両一台の編成で、その日村には朝靄が出ており、連日の空爆監視の疲労のせいもあってか、誰一人として村への侵入に気づくことが出来なかった。
それでも通常の村なら何の問題もないはずだったのだが、裏で村の長をしていた者が村民からの税を全て滞納しており、それに腹を立てた軍の最高機関どもが日本にあるそんな村や町の人々を次々と連行、射殺、殺害していった。
村の子供たち、オレら兄妹を含めた七人の少年少女は都心に連行され無理やり軍の兵士新設校”エクスギア学園”に入学させられた。
その一週間後だった、オレの母親の死亡知らせが一通の手紙としてオレの所に届いたのは。
* * *
小鳥のさえずりと、
あの後、すぐに自分の寮に帰寮すると村で一緒だったメンバーと香、それとオレ達八人をいつもまとめあげる相当な苦労人室長にして最年長の、
この学校では十八歳に届こうとしてる人は、戦争に狩り出される不安と、死ぬではないという恐怖を抱えており他人にはやけに突っかかって来る傾向がある。最初オレたちも気難しい部屋の中無言で食事をしたり、露骨に先輩を避けていた。
それでもオレは人間だ。稀に見せる先輩のなんだが寂しげな横顔が、孤独の辛さをわかって欲しがっている様に見えた時があった。
そんな時、表向きに入学式となりゆる儀式が終わり、四月が終わってすぐ十八歳になった先輩がいて、月の終わりに全校生徒の約半数で初陣会が行われた。
名前、人柄、出身地、何一つと知りえない方々だったが、オレは周りの奴らに準じて敬意を表した敬礼をした。
桐裏先輩もこんな気持ちになってるのかと思うと、少し胸が痛くなるような気がしてその日の夜、オレの方から話しかけた時の先輩の満面の笑顔は今でも頭に中に残ってる。もっと、人と話す機会が増えれば心の病も解消される。そう、思ったから話しかけたんだ。
話を戻そう、オレらの敬礼に対し、なんとも思ってない奴もいたようで、在校生の中にはケラケラと笑いながら、送り出す人害な連中もいた。在校生だから、まだ俺たちの番じゃないから大丈夫、余裕だろと思っていたんだろうな。
無様だよ、あんた。
自分の番じゃないから関係ない訳じゃない。”今”がその時じゃないだけで、いつか”必ず”その順番がやってくる。その危機に瀕した時、あんたがどんな顔してるかと思うと、きっと愚かで泣き喚いているんだろうな。
考えるだけで最高の快楽を感じられる。それ故、人って奴はそれぞれ違う考え方を持って生きている。オレみたいに思う奴もいれば、そんなオレの事を狂ってるという奴もいる。
オレもいつからだったか、こんな捻くれた性格になっちまったのか……
「…は………は…さ…………はくさ………珀さん!!」
「おわっ!?急にどうした
「ん?なぜにフルネーム?まぁ、いいか優志おにいちゃんたち先に行きましたよ?残ってるのはいつもの通り寝坊屋の香さんと、桐裏さんと珀さんの妹の
そうか、香の奴は寝坊か、まったく毎晩毎晩夜遅くにどこに出かけてるんだか。ドアをバタバタ開け閉めされて起きるこっちの身にもなって欲しいもんだよ。夜の外出バレたら連帯責任だからな、トイレ掃除一週間分男子女子両方お前にやらせるから覚悟しときやがれ。
「なぁ優愛、雪姫はなにしてんだ?寝坊…って事はないだろうから、やっぱり…」
「どこかのダメお兄のためにエクスギアの修理中と言いたいんですか?それはないですね。忘れましたか?昨日から茜さんが同居してるのでそれはないですよ」
「あぁ、そういやそうだったな、わりぃ寝ぼけてた」
完全に寝ぼけていた。昨日から茜の奴もこの寮にきたんだった。
「それじゃ、今から起こしてくるか。」
「ふふっ、朝ごはんを置いてでも妹を気に掛ける。妹思いの良いお兄ちゃんですね~」
「ふざけんな、雪姫じゃねーよ、香の方だバカ」
吐き捨てるように言うと珀は食事の席を立ちあがる。正座で食を摂るのが日本の伝統的文化の一統なので、足を崩す際に流れる電流のような痛みにはもうとっくに慣れっこだった珀はすんなり立ちあがることが出来た。
どうして香を起こしに行く気になったのか自分ではまるでわからないが、なんとなく叩き起こしに行きたくなった。
さてどう起こしてやろうか。
木枠に和紙の張り付いた障子紙を開け、日本庭園の見える縁側を歩いていると、太陽の日差しが目に染みる。今日も良い天気だ。
暫くの間、太陽の日差しを一身に浴びていると不意に声をかけられる。
「おはよう岩動くん。今日も良いお天気だね」
誰かと思い声の主を見ると、心臓の鼓動が若干速くなるの感じる。
「お、おはようございます。桐裏先輩。と、とても良いお天気ですね」
「うん、そうだね。今日は気温が三十五度を超える猛暑日になるから、水分補給をこまめに摂るんだよ。いいね?」
「はい!わかりました。ご忠告痛み入ります」
この人との何気ない会話には、少々気を使わなければならない。
特段、嫌という訳ではないが、自然とこういう一方的になり、すぐに会話の糸は切れてしまう。会話はできるものの、それでいて相手が何を考えているいるかわからない。おいそれと、むやみやたらに口走り先輩の地雷を踏めば、ここまで築き上げてきた関係が一瞬で音を立てながら崩壊する。オレはそれが怖かった。
まだ完全に確立できた関係じゃないから、だからと言って、それでも完成させようとも思わない。
これが今を保つ最善の策、それと同時に先輩を傷つけないために苦肉の策。そう自分に言い聞かせる他なかった。
先輩が通り過ぎるのを、横眼で確認すると大きく息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。その後大きく背伸びをして、雪姫の部屋の部屋の前を通過する。
雪姫の部屋は、雪姫と
村時代、毎日のようにオレんちに来ては今では黒歴史となる”おままごと”なる作業をさせられた。決まって茜が母親役、雪姫が父親役、そしてオレが愛犬のポチ兼雪姫の座布団。妹が自分の上に乗るくらいどうって事なかったが、ふざけて茜が背中の上に乗ってきた時には何故だか無償に腹が立った。
昔から”物理的”に人の下になるのが
それも、香に出会ってすぐに変わっていまったがな。
昔の懐かしい日々を思い返している内に例の部屋の前についた。
さて、どう起こしてやろうか。毎練の恨み此処で晴らしてやる。
区切りが良いのでここまでです。