「霊夢さん、お風呂上がりましたよー」
「んー」
霊夢さんが聞いているのかいないのか適当な声で返事をした。え? 入浴シーン? そんな需要の無いものはカット。
「もう布団は敷いてあるから寝たくなったら勝手に寝ていいわよ」
「分かりました。ありがとうございますー」
ごろごろと床を転げ回ったあと、大きな欠伸をした霊夢さんは、立ち上がり風呂場へ向かった。
風呂場に向かった霊夢さんを見送った後、喉が渇いたので台所に向かい、水を飲んだ。
「……してもらってばかりじゃ悪いな」
汚れた食器を洗うぐらいは僕がやるべきだろう。明日の朝ごはんも出来れば作ろう。
ーーーーー
食器を洗い終わり、することが無くなってしまった。
「……まだ眠くはないんだよなぁ」
昼寝したおかげか、眠気は全く無い。
「……ちょっと夜風に当たりに行くか」
空に浮かぶ三日月が、神社の境内を優しく照らしている。鳴り止まない蝉の声も、こういう時は雅に感じる。
「……気持ちいいな」
時折吹く風がまだ渇ききっていない髪に当たって心地良い。
「……はいお茶」
「あ、ありがとうございます」
霊夢さんがお茶とお茶請けを持ってきてくれた。風呂上がりだからか、さっきまでと違い巫女服ではなく普通に桃色の女の子らしい寝間着を着ていた。
……なんだろう、すごく印象が変わる。というか、霊夢さんも普通に美少女だね。
「なんか失礼なこと考えてるでしょ?」
「そんなことないですよー?」
「顔に滲み出てるのよね、感情が」
そんなに気持ちを表情に出してるつもりは無いんだけどなぁ……
なんて考えていると、不意に霊夢さんがぼそりと呟く。
「……敬語はもう良いわよ。堅苦しいし、なんかこっちも疲れちゃうわ」
「いや、でも……」
「昼間の弾幕ごっこで私に勝ったんだし、もう私達は対等な関係でしょ?言い方を変えれば、友達ね」
友達……か。
「そうですね……いや、そうだよね。改めてよろしくね、霊夢」
右手を霊夢の前に差し出す。
「ええ」
霊夢はそれをしっかり握り返してくれた。
…友達……初めて出来た気がする―――
「さーてと。折角だし、玲亞の過去とかを根掘り葉掘り聞かせて貰いたいわね」
「いやー……それはちょっと…」
トラウマ、という程では無くともそれなりに話すのは辛い。
「なによ。友達の頼みが聞けないの?」
「そういう脅迫をする人を友達とは呼びません」
「また敬語使ったわね。ワンペナよワンペナ」
「あ……ていうかワンペナってなに!?」
「ワンペナルティよワンペナルティ。ということで喋りなさい」
「だから嫌だって言ってるじゃないですかー!」
「敬語使うなって言ってるでしょうがー!」
「今それ関係ないよね!?」
「大いに関係あるわ!敬語を使うとワンペナって言ったでしょ!つまり今ツーペナなのよ!」
「理不尽過ぎる!?」
「……まあ冗談は置いといて」
「冗談だったの!?」
駄目だ、敬語とタメ口が混ざってなんか気持ち悪い……
「ご主人様には話してあげた方が良いわよ? あいつ、ああ見えて心配性だから」
「……話す必要が、あるのかな」
「そりゃああるでしょう。就職するときだって、履歴書を見せるでしょう?」
「それはなんか違う……」
「あーもう一々焦れったいわね! 紫だって言ってたでしょ! 幻想郷は全てを受け入れるとか何とか! 過去なんて気にする物じゃないのよ!!」
「うー……まあ、いつか話しますよ……」
全くもう、と呟いて霊夢さんはどこか不満そうにお茶を啜った。別に僕、特に怒らせるようなこと言ってない気がするんだけど……
「……ん、そんなことより」
「はい?」
結論、話し方は敬語に戻そう(なんか気持ち悪かったから)。ということで今まで通り敬語でいきます。
「結局、紫のことはどう思ってるの?」
「……優しいお姉さん?」
「……あんた、人を見る目が無いのね………」
霊夢さんが何処か憐れむようなドン引きするような目で僕のことを見つめた。え、どうしたんだろう。
「えー、そうですか?」
「大体の奴は胡散臭いとかめんどくさいとか年増とか言うんだけど……かくいう私もめんどくさいと思う」
「そうですかね?優しい人だと思いますけどね?確かにちょっぴりめんどくさいですけど」
……年増ってなんだろう、と思ったけど口には出さない。
「ふーん……まあ面白い情報を聞かせて貰ったわね。もうちょっと踏み込んだ質問はしなくてもいいかな。これでバイト代もたんまりね……」
「霊夢さん?どうかしました?」
「や、なんでもないのよ♪そんなことより、もうそろそろ寝ない?」
「そうですね……じゃあ寝ましょうか」
「……あ、そのお茶とお茶請け」
「はい?」
「いらないなら頂戴?」
「……いいですよ」
食い意地じゃなくて、勿体無い精神で貰ってくれてたらいいけど…なんてことをふと思った。
「無論その両者よ?」
「読心術、ダメ。絶対」