窓から差す光に、反応して目が覚める。掛け布団を蹴り飛ばし、飛び起きて窓の外を眺める。
「……うん、今日も変わらず晴天だね」
もう夏だということを考えれば曇ってくれてた方がありがたいけど、洗濯物が乾きにくくなるから晴れてる方が良いかな。
「さてと、今日の朝ご飯はどーしよっかなー……」
いや悩んだところでどうせご飯と味噌汁と鮭とかになるんだけど、考えることは有意義なことだってきっと誰かが言ってた。居間へと向かう。
「与えられた名前に疑いは持たず、追想してゆく深い闇の隙間ー♪」
上機嫌なようで、歌を歌いながら歩いてきたのは藍さん。
「あ、藍さんおはようです」
「おはよう玲亞。相変わらず起きるの早いな」
「なんというか、癖みたいな物なんですよ。起きたくなくても目覚めちゃうっていうか………あ、そんなことより。藍さんご機嫌みたいですけど、何かありました?」
「え、いや別に特に無いよ?」
「あ、そうっすか……」
何と無く意味深な笑みを浮かべてるのは気のせいだよね、そうだよね……?
なんて雑談をしていたせいで、背後に意識がいってなかったのは失態だった。
「だーれだ?」
「「ゆ、紫様!?」」
温かい指の感触に視界を覆われる。紫様、スキマを使って無駄なイタズラとかしてくるんだよなあ……こういうの心臓に悪いからやめてほしい。
「おはようございます、紫様。……今日は洗濯物を中に干さなきゃ」
「ちょっと藍、それどういう意味よ?」
不満そうに言う紫様。いや、そのままの意味ですよ。
「でも、紫様が早起きするって珍しいですよね、大丈夫ですか?」
「あーうん、大丈夫よ。だって昨日一日寝てたじゃない」
宴は三日三晩続けられた。そしてその宴会中、ただの少しも眠らなかった紫様は、終わった後倒れる様に眠った。何故そこまで宴会で張り切るんだろう……?とか思ったけど、紫様の寝顔が見れたので良かった。いやごめん何でもないです。
「……で、なんで早起きしたかって話よね?」
「はい」
「それはね……朝ご飯を作る為よ!」
ビッ、と人差し指を立てて紫様は宣言した。
「……玲、避難の準備をしよう。今日は嵐だ。少なくとも私達の腹の中がそうなる」
「ですね……」
「……なんで私の式達は、こんなに主に失礼なのかしら………?」
そりゃあもう、主様のおかげでとしか言えない。
「あのねえ、こう見えても私は料理上手いのよ?」
「でも、私と暮らし始めてからは一度も料理なんて作ってないですよね?」
「ほらそれはあれよ、藍が作ってくれるからいいかなーって」
「それなら私と玲で作るので、間に合ってます」
「嫌。私が作りたいの!」
「……藍さん、紫様に作らせてあげてください」
「玲……」
「僕も、紫様の手料理食べてみたいですし」
「……玲がそこまで言うなら、もういいです」
渋々、藍さんが折れた。
「ありがとう。それじゃ、作ってくるわね」
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一言で表すなら、美味しい。二言で表すなら、とっても美味しい。いやなにいってんだよ結局一言じゃん。
……まあとりあえず、美味でした。
「紫様、疑ってすいませんでした。とっても美味しいです……!」
「いいのよ、喜んでもらえた様で何よりだわ」
紫様は優しく微笑む。
ご飯に味噌汁に回鍋肉。それだけ見たらほとんど普通の朝食だが、味噌汁は出汁の味が良く染み込んでいて、味が濃くて美味しい。回鍋肉の味付けはご飯のおかずに丁度よく、具材も何だか一回り美味しく感じる。
「紫様、おかわり頂けます?」
「紫様、もう一杯下さい」
「玲亞の分はあるけど、藍の分は無いわ」
「ええっ!?そんな、なんでですか!?」
「当たり前じゃない。主に暴言吐いといて……ショックだったわよ?」
「あれは失言でした」
「本当にね」
紫様、大分ご立腹のご様子。
「……じゃあ紫様、僕の分を半分藍さんにあげてください」
「……ふふっ、玲亞は優しいわね。藍、玲亞に感謝するのよ?」
「はいっ!玲、ありがとう!」
「いえいえ」
ご飯を盛り付ける紫様を見ながら、こんな日々をずっと過ごしていければいいな。なんてふと思った。
続かない筈なんて、ないけれど。