東方界縫伝(旧)   作:織葉 黎旺

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ほぼ8000文字、だと……!?


紅の八。悪魔の妹がこんなに可愛い訳が無いっ!

「あ、玲亞。レミリアが呼んでたわよ?」

 

「え、そうなんですか?」

 

 あれから数日。と見せかけて数十時間。昼間はたっぷりゴロゴロと過ごして、夜ご飯の直前に紫様と雑談してたらそんなことを言われた。

 

「吸血鬼的には丁度いい時間ですし、じゃあちょっと行ってきますね」

 

「うん。気をつけて行ってらっしゃい」

 

 レミリアさんのことを意識して、スキマに飛び込む。今日は何して遊ぶのかな、と無邪気に考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、気をつけて」

 

 紫様のそんな呟きは、しかし僕には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「夜ご飯をあげるから、夜ご飯をくれない?」

 

「嫌です」

 

 紅魔館に着いた。門番の美鈴さんに顔パス(なんかいい響きだよね)で通してもらい、咲夜さんに案内して貰って着いたレミリアさんの部屋での第一言目がそれだった。

 

「え、ていうかその為に僕を呼んだの?」

 

「うん。だって貴方の血、なんかおいしいんだもの」

 

 ちろりと舌を出して言うレミリア。何だろう、喜べることじゃないよね……

 

「まあ、それは冗談よ冗談」

 

「結構ガチだった気がするけどなぁ……」

 

「で、貴方を呼んだ理由っていうのは……」

 

 と、ここでレミリアは一呼吸置いた。迷っていたのか、言いづらかったのかは定かじゃないけど。

 

「……私と一緒に、私の妹と遊んで欲しいのよ」

 

「ああ、いいけど……」

 

 いいんだけど、ただ遊ぶだけなのにレミリアの表情が沈んでるのはなんでなんだろう?

 

「……命懸けで」

 

「え………?」

 

 レミリアが唐突に発した言葉に、戸惑う。命懸け……?それってどういう意味だっけ………?

 

「え、あの……どういうこと?ていうかどんな遊びをするの?ロシアンルーレット?」

 

「あ、いやゴメン嘘。さすがに命の危険とかは無いわよ。多分」

 

「あー、そう………多分!?」

 

「まあ、どうせすることはあれだし」

 

 そういってスペルカードを手に取ったレミリアは、立ち上がり、歩き出した。そして彼女は説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の妹……フランドール・スカーレットは、見た目は金髪で可愛らしい、七色の綺麗な羽を持った吸血鬼なんだけど」

 

「うん」

 

 スタスタと階段を下りながら、話は進められていく。

 

「その能力と性格に問題があって……能力は、『あらゆる物を破壊する程度の能力』」

 

「……わ、やっぱりチート来たよ………」

 

 あらゆる物を破壊する、とか名前からしてヤバイじゃん。どうすんだよ僕壊されちゃうよ。

 ていうか本当に死なないんだよね……?

 

 そこまで言ったところで、到着。目の前の鉄製の大きな扉からガン!と大きな音が聞こえてきた。まさか扉を壊そうとしてるのかな、とも思ったけど、開けてみると事実とは反していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……誰………?」

 

 扉の先にあったのは、無駄に広い地下室。庭ぐらいあるんじゃないか、とも思えるその空間の中央でちょこんと座っている金髪の少女が首を傾げた。

 

「……レミリアさん、あの子が………?」

 

「……そうよ、フランドールよ」

 

 対してフランドール……フランちゃんは、未だに此方が誰だか分かってないようで、僕たち二人の顔を何回も見返している。

 

「……フラン、私よ。レミリア・スカーレットよ」

 

 と、ここで気づいてしまった。フランちゃんの奥……そこに、牢屋の様な場所があり……その中に、何かの骨が転がっていることに。

 

「あー、お姉様かー、珍しいね」

 

 気づいてしまうと、思考は止められない。更に目を凝らすと、それが頭蓋骨や右腕や左腕や左脚や右脚や……数々の骨が見えた。それも、何体分も。

 

「……で、何しに来たの?私と遊んでくれるの?私のオモチャになってくれるの?」

 

 笑顔でそう聞く彼女が、こうなると恐怖の対象にしか見えない。今すぐにでも、飛びかかられて殺されそうな気がする。

 

「生憎、そういう為に来たわけじゃないから。ただ、遊びに来ただけよ」

 

「へー……じゃあ、隣のがオモチャ?」

 

 指差された瞬間に、体が硬直した。純粋な狂気、というのはこういう物のことを指すのだろう。

 

「隣のは、友達。っていうか血液タンク」

 

「ええっ!?」

 

「あー、人間なの?初めて見たわ!」

 

 興味津々、という風に目を輝かせてこちらを見つめてくるフランちゃん。え、ていうか人間は初見っていうのが本当なら転がってる骨は何……?

 

「え、血液タンクなら、私も一台欲しいわ。お姉様のを頂戴」

 

「ダメよ。これは私のだもん」

 

「僕は僕のだよ。誰にもあげない」

 

「へー、スキマにも?」

 

「……それは…」

 

「ねえ、そんなことよりもお姉様。遊びましょう?」

 

 おお、フランちゃんナイスタイミング。危うく変な質問に変な回答するとこだった……

 そして、いつの間にか緊張が解けていることに気づいた。……もしかして、レミリアはその為にくだらない話をしてくれたのかな……?あ、いやそれは無い絶対に無い。うん。

 

「んー、どーしよっかなー……」

 

 ニヤニヤしながら答えを焦らすレミリア。変な提案してきそうな気が………

 

「そうね……この玲亞って血液タンクが」

 

「違います」

 

「玲亞ってお兄ちゃんが遊んでくれるわ♪」

 

「えっ」

 

「あ、そうなの?じゃあ、遊びましょう?」

 

 満面の笑みを浮かべて、スペルカードを取り出したフランちゃん。やるのか……嫌だなぁ………

 

「じゃあ玲亞お兄様、簡単には……壊れないでね?」

 

 そういってフランちゃんが指をくいっと動かすと、弾幕が生まれ、円形に広がっていく。

 

「あ、でもこれくらいなら隙間も広いし……」

 

「ふふふ、じゃあこれはどう?禁忌『クランベリートラップ』」

 

 禁忌……? おい、まさかそれヤバイ奴なんじゃ、とか思った瞬間に、クランベリーの様な真紅の弾が僕を挟み込む様に……もとい、僕を狙い撃つ様に飛んできた。少し動いてかわすと、今度は青い弾が僕を挟み込む様に。次は赤弾、青弾……と、交互に忙しなく飛んでくる。

 

 

「玲亞ー!通常弾幕使いなさいよー!」

 

 と、ここでレミリアの声が響く。あ、あれか。スペカ発動前に使う奴か……そういえば全然使ってなかった。霊力の消費が激しいんだよね。

 

「えいっ」

 

 隙を見て、お札を投げる。このお札は今までと違い特別製で、弾幕を“すり抜ける“。消す訳では無いのでルール違反ではなく、適度に……というか、紫様のチューニングのおかげで相手によっては大ダメージを与えられる。陰陽道がどうこう言ってたけど、紫様が眼鏡をかけた姿が新鮮過ぎてそっちにしか目が言ってなくて詳しく聞いてない。

 と、ここで弾幕の雨が一瞬止んだ。

 

「うー、中々やるなぁ……禁忌『レーヴァテイン』」

 

 宣言と同時に、フランちゃんは妖力で弾幕を剣の様に細長く伸ばし、それを振り回す。それを避けて安心したのも束の間、剣の通った後を小型弾幕が追いかける。何とかかわすと、再びフランちゃんは剣を握り、僕の体を両断するかの様に、まっすぐ直進する。

 と、この時に避けるのに間に合わず小型弾幕に被弾した。

 

「痛っ!?」

 

「あ、なーんだ。呆気ないの」

 

 フランちゃんがつまらなそうにそう呟くが、まだ一度当たっただけ。終わった訳では無い。

 撃つなら今だ、そう思いスペカを宣言する。

 

「境符『泡と飛沫の境界』!」

 

 何も僕だって、ただだらけていた訳ではない。少しは弾幕のことを考えていたのだ。

 スペカの発動と共に、フランちゃんの周りにランダムにシャボン玉の様な弾幕が幾つも出現した、子供一人入れそうなそのシャボン玉は、これまたランダムに動き続ける。ただ、当たり判定が広い分そのダメージは小さく、三発当てて通常弾幕一発分のダメージってところだろうか。

 

「でもこれなら、簡単に避けれるよ?」

 

 軽々と飛び回るフランちゃんは、まだスペカ発動時に一発当たっただけで、ほとんどダメージは受けていない。避けるのが上手いということもあるが、このスペカのシャボン玉は、ぶつかると簡単に割れるので少しバラして放たなきゃいけないデメリットがあるのだ。難易度としては、通常弾幕よりイージー。

 

「……なら、これで詰めかな。レッツ、拡散!」

 

 ここで指パッチン。指パッチン。大事なことなので二回言って二回やりました。練習して出来る様になったのさ!

 そしてその指パッチンを合図に、バラけていたシャボン玉が全てその場で破裂。しかも、その中からさっきのシャボン玉が泡の様に細かくなってたくさん出てくる。今度はさっきのと違い、泡なのでぶつかり合っても割れない。しかも、ぶつかり合うとくっつく。固まっているので、その分ぶつかった時のダメージが大きい。

 

「……綺麗ね」

 

 レミリアの呟きが僕の耳に偶々届き、少し嬉しくなる。やっぱり、綺麗に見せる演出って大切だね。紫様も見てるかな?

 ――だが、僕は忘れていた。弾幕ごっこに置いて、一瞬の油断が命取りだと。

 

「避けられないなら、食らえばいいよね?禁忌『フォーオブアカインド』!」

 

 発動の宣言とともに、フランちゃんが四人に増えた。いやいや、目の錯覚とか残像とかそんなちゃちなもんじゃない。本当に、分身しているようだった。そしてそのうちの一人が固まって襲い来るシャボン玉と共に消え、残りの三人が通常弾幕を打ってくる。さっに見た時は、「通常弾幕だしそんなに難しくないな」とか思ったけど、それが三倍になると話は別。あちらこちらから弾幕が飛び交う。しかも、急に大きな光球も放ち始めた。これは……キツイっ!

 

「雷符『カーテンコールサンダー』!」

 

 レミリアの時と同じ様に、その名の通り一つのスペカを終わらせる……つもりだったのだが、しかし撃ち落としたのは弾幕だけで、スペカに幕を引くことは無かった。

 

「……へ?」

 

 よく見ると、フランちゃんの周りの魔法陣がスペカの発動の瞬間にフランちゃんを覆い、フランちゃんが蝙蝠の様な姿になり、スペカの攻撃から守っていた。……え、もしかしてチート?

 

「安心しなさい、通常弾幕なら当たるわ」

 

「まあそれならっ!」

 

 再びフランちゃんは弾幕を放ち始めていたが、そこにお札を投げ、一人、二人と分身が消えていった。レミリア、マジGJ。

 

「……ふうん………禁忌『カゴメカゴメ』」

 

 宣言と同時に、網状に弾幕が張り巡らされた。それが急に拡散し、今度は光球と共に再び網状に。今度は素早くお札を投げまくったおかげで、危ういところでスペルカードを終了させられた。

 

「……禁忌『恋の迷路』」

 

 中々僕を仕留められないことにイライラしてきたのか、フランちゃんは淡々とスペルカードを発動した。

 今度のスペカは、宣言とともに完全に隙間が無さそうな高速弾幕が展開された。最初は焦ったが、よく見ると一箇所だけ隙間が開いている。そこをうまく狙い、飛び込む。が、まだまだ迷路は抜けられない。ので、強行突破を決行した。スキマに飛び込み、フランちゃんの頭上へお札を何枚か同時に投げる。大丈夫、大ダメージではあるだろうが、きっと帽子が守ってくれてる筈だ。多分。

 

「うー……良くもやったな!禁忌『スターボウブレイク』!!」

 

 痛かったのか、涙目になって叫ぶフランちゃん。ちょっと罪悪感が生まれた。

 宣言とともに色とりどりの光球が広がる。速度的にも見極めるのが難しく、被弾しそうになる。だがここで、一箇所だけほとんど弾幕が来ていない場所があることに気づいた。このままだとジリ貧になるのは目に見えているので、一か八かスキマでそこへ飛んだ。飛び出すと、至近距離に弾幕が迫って来るものの、その恐怖に耐えている間にスペカが終わった。安全地帯が生まれるスペカもあるんだね。

 

「……もういいや、飽きた」

 

 ーー禁弾『カタディオブトリック』その宣言とともに、大小様々な青弾が不規則な動きをしながら飛んでくる。

 避けながらお札を投げ応戦し、何とかスペカを終わらせたが、ここで気づく。お札の残量が0になった。つまりここからは、通常弾幕も無しで戦わなければならない。……ヤバくない?

 

「禁弾『過去を刻む時計』」

 

 今度はさっきと打って変わり、無表情で淡々と宣言された。

 そして、発動と同時に大きな光球が二つ、打ち出された。更に、その光球からレーザーが四方向に放射され、光球は回転しながら右へ左へ移動する。それと同時に、バラバラと広範囲に発射される弾幕。さてどうしたものか、と考える暇も無いので一先ずスペカ。

 

「境符『八雲式二重結界』!」

 

 発動と同時にフランちゃんに弾幕が当たらなくなるが、それはそれ。結果的に弾幕は結界の中で跳ね返り続けるので、何とかなる……かと楽観視してたのだが、量が量なので結界は破られた。

 

「ちょ、まずいっ!?」

 

 慌てて避けようとするが、そこでギリギリスペルカードの時間切れ。

 

「…………うふふふふふふふふふふふふふふ……あはははははははははは!!!」

 

 狂った様に笑い、彼女はスペルカードの発動を宣言した。

 

 

 

 ――秘弾『そして誰もいなくなるか?』

 

「えっ……?」

 

 発動と同時に、フランちゃんの姿が消えた。そして、四方八方から僕を囲む様に展開されていく弾幕。それは徐々に不規則に、展開されていく。だが誰かを狙おうにも、相手が居ないから意味が無い。つまり、時間切れを待つしか無いのだ。

 

「くっ……」

 

 かろうじて避け続けるが、そろそろ限界だ。残るスペルカードは、二枚。恐らく相手もあと一、二枚だろう。ここは、出来れば一枚でくぐり抜けたい……!

 

 

 

「境符『アメジストスパーク』!」

 

 この前怠った分の説明をさせてもらうと、このスペカはまず僕がスキマで上空など、背後に弾幕が無い空間に移動する所から始まる。そして、予め用意しておいた霊力と妖力を均等に混ぜ込んだお札を、相手に向かって翳す。すると、魔理沙さんの八卦炉の様に、お札から紫色の光線が出てくる。だが、それ自体の威力は微々たる物だ。なので、相手の弾幕の“所有者の境界“と、“弾幕の境界“を越えさせて、威力を上乗せするのだ。

 

「いっけえええぇぇぇぇえええぇえ!!!」

 

 相手は居ないが、敵の弾幕を全て纏めて蹴散らせるこのスペカは、この状況には好都合。一気に紅魔館の壁が蹴散らされ、それと同時に弾幕も止んだ。

 

「あーあ、壁が……」

 

 レミリアが思わず溜息を吐く。しかし、その表情は何処か嬉しそうだった。

 

「……外と中との、境界は壊されたわ」

 

 見ると、空には何故か満月が浮かんでいた。狂おしい程の、緋色の月。

 

「さあ……後は、貴方次第よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「QED『495年の波紋』」

 

 何処からか聞こえてきた気がした、そんな宣言。

 それと同時に、水に小石を投げ入れ、波紋が広がっていく様にーー弾幕の波紋が、四方八方から、縦横無尽に拡散していく。

 

「…………」

 

 もう、通常弾幕は無い。つまり、制限時間耐え切らなければならない。

 

「……………」

 

 495年。それはきっと、彼女の生きてきた人生なのだろう。QED――――彼女自身が、求めているんじゃないだろうか?

 自分の存在の証明を。自分の生まれてきた意味を。

 

「……………」

 

 ただただ、無心で避け続けられた。その時間は永遠にも、数十秒にも思えたが、それにも終わりは来る。

 

「くっ…………」

 

 不意に、脇腹を弾幕が掠めた。 その瞬間、バランスを崩し地面へと落下していく――――

 

「………玲亞」

 

「……あーあ」

 

 目を閉じる前に聞こえたのは、レミリアの声。見えたのは、フランちゃんの“結局壊れちゃうのか“とでも言いたげなつまらなそうな表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――夢と現の境界

 

 

「……ねえ?」

 

「はい?」

 

「楽しかった?」

 

「はい」

 

「面白かった?」

 

「はい」

 

「幻想郷に来れて、良かった?」

 

「はい」

 

「私に出会えて、良かった?」

 

「言うまでもないでしょう?」

 

「じゃあ……これで、満足?」

 

「…………」

 

「覆水盆に返らず。零れ落ちた魂が、肉体に戻ることは無い。過ぎてしまった時が、巻き戻ることもまた無いのですわ」

 

「……はい」

 

「妖怪の寿命は長い。でも、人間の一生も短い訳では無い。まだ数十年の命、ここで散らしたくはないでしょう?」

 

「……でも………僕は…………」

 

「?」

 

「僕は――〈 〉」

 

「……そんなこと、分かってるわよ」

 

 不意に抱き締められた。柔らかく、暖かい感触。出来ることならずっとこうしていたいと、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――幻想郷は、全てを受け入れる。それはそれは、残酷なことですわ。でも、貴方が幻想を無理に受け入れる必要なんて、無いのよ」

 

 今は、おやすみなさい。次に目覚めたら、帰れるわ。出来ることなら――

 

 

「――また、会いましょう?」

 

 

 

 そう呟いた彼女の微笑みに、吸い込まれる様に眠りへと誘われた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

「!?」

 

「玲亞っ!」

 

「うらああぁぁぁぁああぁ!!」

 

 空中で無理やり体を捻って、態勢を立て直す。何を諦めようとしていたんだよ、僕。ここで終わるわけになんて、いかないだろ?

 ふと、懐に暖かい感触を感じた。その熱源を探し、手に取ると、それは光り輝くスペルカードだった。

 

「境符『陽だまりと月明かりの境界』!!」

 

 宣言と共に、スペルカードは圧倒的熱量を帯びながら空へと上がっていく。それは月と向かい合うように天空に届き、輝きを放つ。その様は、太陽の様にも見えた。

 

「……綺麗」

 

 何処からか、フランちゃんのそんな声が聞こえた。いつの間にかスペルカードは終わっていて、弾幕は止んでいる。

 月と太陽、対となる物が擬似的に並び、正に幻想に相応しい光景だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、玲亞?」

 

「え、何?」

 

 いつの間にか隣にいたレミリアが、僕に問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗なのは分かったけど、弾幕はいつ出るの?」

 

「え………?」

 

 言われてみると、太陽が浮かんだだけで、そこから弾幕が出るとかそういうこともない。ただただ本当に、“綺麗“なだけのスペルカードだ。

 

 

「……えーっと………どうしよう?」

 

 お札はもうないしスペルカードも今度こそ全部使ってしまった。もう降参かな、と思った時にフランちゃんが不満そうにつぶやく。

 

「……私の負けでいいよ」

 

「え……? いいの?」

 

「うん。私が貴方を壊すことは出来なかったし、それに………弾幕ごっこは、相手を魅了した方が勝ちでしょう?」

 

「……いや、でも………」

 

「うん、そうね。玲亞、素直に勝利を受け取りなさいな。どうしても納得出来ないなら……また今度やればいいじゃない♪」

 

「もう嫌です☆」

 

「え……お兄様、もう私とは遊んでくれないの……?」

 

 瞳を少し潤ませながら、そう問いかけてくるフランちゃん。それは反則です。

 

「……また今度ね?」

 

「わーい、やったー!」

 

 無邪気にはしゃぐフランちゃんを見て、少し心が安らいだ。

 ……疲れたけど、結構楽しかったなぁ。

 

「フラン、お腹空いたでしょう?そろそろご飯にしない?」

 

「うん、そうだね!」

 

「あのー……ご飯なのは良いんだけど、なんで二人して僕を押さえつけるの……?」

 

 とっても良い笑顔を浮かべる二人と、恐らく引きつった笑みの僕。だってこれ、絶対に……

 

「がぶっ」

 

「気張っていくわ!」

 

「ちょ、キバじゃんそれ、っていうか痛ぁああぁぁぁぁあ!?」

 

 夜の静寂の中に、僕の絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「只今帰りました……」

 

 その後、約束通り豪華な晩餐をたっぷり頂き午前二時帰宅。草木も眠る丑三つ時、しかしそれは妖怪の時間なので………

 

「お帰りなさい♪」

 

「お、やっと帰ってきたか」

 

「お帰りなさい、玲亞」

 

 玄関を開けると、みんな勢揃いでお出迎えしてくれた。

 そして、紫様が心配そうに駆け寄ってきた。

 

「大丈夫? 怪我してない?」

 

「あ、はい。ほとんど大丈夫でした」

 

 結構被弾していた筈なのだが、目に見える傷はほとんど無かった。フランちゃんが加減してくれてたとは思えないんだけど……まあ考えても仕方が無いので思考を放棄。

 

「あの……紫様」

 

「何かしら?」

 

 何か言うことがあった筈なんだけど、それが何なのか思い出せない。

 

「……何でもないです」

 

 改めて三人の顔を見て、気づいた。やっぱり、ここが僕の居場所なんだな、と。













遂に長かった紅魔郷編も完結です。いやー、紆余曲折ありましたが最後はまあ、何とかまとまった感じですかね?


……っと、次は一度日常編を挟んでから、妖々夢に入る予定です。この話でも、色々と伏線を張っておいたので、今後もどうかお楽しみ下さい。
















うん、なんかすごい真面目な後書き書いちゃった☆←

紫「そういうのがいらないのよねぇ……」
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