春雪の一。クッションにもなってフワフワとしてて柔らかくて暖かい温もりのある例のアレ
冬って、あったかいよね。
いやいや皆さん矛盾してることを言ってるつもりは無いんです。ほらほら冬って暖房器具とかで心地よーい感じの気温で過ごせるじゃないですか。特にアレ、冬場の寝起きの布団の気持ちよさ。ポカポカとした温もり。出来ることならいつまでも入って居たいと思う。思っちゃう。
……でも、状況によってはそれも困り物だよね。
「…………」
「zzzzzzz………」
状況説明というか、把握というか、言い訳。いつも通り起床は六時。朝起きて窓開けてうわ雪積もってる遊ばなきゃとか思った後に、衝動的に何と無く再び布団にIN。で、うとうとしてきてる時に思わず『あったかいなぁ……ぬくぬくしてていいんだけど、抱き枕とかあればもっと良いんだよなぁ。丁度人肌ぐらいの温もりの』とか考えちゃって、意識が消える直前に能力が暴発。スキマから飛び出た先が問題で……
「……藍様マジすいません」
藍さんの尻尾の中であった。いや、普段からそんな埋れたいとか思ってた訳じゃ無いんです。ただ寒くなってくるとなんとなーくあったかそうに見えちゃうよね、あの尻尾は。埋まりたい。もふもふしたい。とかそういう欲求が芽生えるのも仕方が無いことだと思うんです。
「……………」
仮にも九尾なんだから尻尾に異物が埋れてたら気づくだろ、と思ってたんだけど案外そうでも無いようで。むしろ大きいからこそ意識が届いてないのかもしれない。いや知らないけど。もふもふもふもふ。
「……ふう」
ってな感じでかれこれ一時間。尻尾から出られてません。
そろそろマズイだろ、という気持ちもあるんです。でもそれが届かないっていうかー、なんというかー……うん名残惜しいだけだね。
「……もういいか」
だんだん瞼が重くなる。ダメだという気持ちもあるんだけど本能に抗えない。
「………おやすみ」
もう諦めた。諦めたので、寝ることにした。寝ることにした時に、またふと思ってしまった。ああ、いつか紫様と同じ布団でぬくぬく眠りたいなぁ、みたいな純粋な欲求。思った瞬間にあれこれはまさか、って思ったときにはまたスキマに飲み込まれてーーーー
「……これはマジでマズイ奴だよダメだよ僕早く帰ろうよ」
自分を鼓舞し、自分に言い聞かせる為に声に出す。目の前には心地良い寝息を立てる紫様の端正な横顔。
今の季節は冬。紫様は冬場は冬眠するので、つまりもう冬眠中らしいんです。いや端から見たらただ寝てるだけみたいに見えるけど、人間でいうノンレム睡眠に近い状態らしいんです。深い眠りですね。ってことは要するに……
「……ゆっかりっさまー」
頬っぺたをつんつんしてみる。特にリアクションは無し。本当に深い眠りに入ってるんだなぁ、って改めて確認。
「……いやマズイマズイ本当にマズイ」
主になにやってんだよ僕。っていうかそもそも寝てる無防備な女性に何てことをしてるんだ僕。下種だなぁ。
「……よし帰ろう」
胸に仄かな罪悪感を抱えながら、帰る決意をした。いやまあ紫様が起きた後に謝ればいいか。うんそれがいいそれでいい。
さて帰ろうーーと今度こそスキマを開こうとしたのだが。
「……あ…………れ…………?」
スキマが開けない。指も重いし体も動かない。だがそれでも力を振り絞って宙に裂け目を描いたのだが、
「むぎゅっ!?」
寝返りをうった紫様に捕まる。おい深い眠りじゃなかったのかよ。抱き枕の様に抱き締められた態勢で、眠気もエスカレートする。すごい気持ちいい。うわ、これ本当にダメなや………つ……………………