東方界縫伝(旧)   作:織葉 黎旺

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急にシリアスになることもあるよ。だって人間だもの。


春雪の五。舞い落ちる花弁、舞い散るは儚き……?

それはどこかデジャヴを感じる光景だった。飛ぶ光球、飛ばされる斬撃。交差する剣とお祓い棒。何故か分からないけど、僕はこの光景を知っている。

 

 

「……行かなきゃ」

 

振り返っている暇はない。今は前へ。

長かった階段を上がり切ると、大きな和風のお屋敷が見えた。そして至る所に桜が見える。

 

その中でも最も大きく存在感を放つ大木の脇に、舞う桜の花弁よりも艶やかな色の髪ををなびかせる女性が佇んでいた。

 

 

「………」

 

実体はあるようだが、恐らくここの住人であることに代わりは無いだろう。

ーーどうする、話しかけるか?

 

 

 

「あら、お客様?」

 

「!?」

 

振り返った女性は此方を向くと微笑み、ドレスの裾を掴み丁寧にお辞儀した。その様は誰かを彷彿とさせる様だったが、とりあえず今はそんなことを考えている暇は無い。

ーー間違いなくこの人は死んでいて、この異変の首謀者だ。死んでいなきゃこんなに白く儚く折れそうな印象を持てない筈だし、そこはかとなく殺気に似た何かが滲み出てる気がする。

彼女はゆっくりとその口を開くと信じられない言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「ふうん。良い洞察力ね、名雲玲亞君」

 

「…!何故、僕の名前を?」

 

「名雲ーー縛られた雲。揺蕩いただよう物である雲が縛られている。そりゃあ自由な雲を羨み、ああなりたいと求めるわよね」

 

「……はい?」

 

「それを縛ったのは貴方自身なのかそれとも彼女なのかーー気になる所ではあるけれど、今はどうでも良いかしら」

 

 

何だ……彼女は何を言っている?僕を惑わそうとしているだけか?

そう信じたかったが、一つ一つの言葉が妙に耳に残り、響いていた。

 

 

 

「ようこそ、冥界・白玉楼へ。私は西行寺幽々子。一応ここの管理人よ」

 

「名雲玲亞です」

 

「……不思議ね」

 

「……え?」

 

「貴方は確かに実体を持ってそこにいるーーいるのだけれど、それは境界の境目。一歩踏み外せば一気に天国か地獄。死に近く、生に遠い。しかし死んでいるわけてはない」

 

「は、はあ」

 

「貴方は人間の境界をとうに越えているーーしかし人外というわけでもない」

 

「どこまでいっても半端、ってことですか?」

 

「ええ、うちの庭師みたいに」

 

チラリと少女が視線を階段の方に移した。つられて振り返ると、今だに白熱した弾幕ごっこが続いてるようで二人が飛び回っていた。

 

 

 

「さて、貴方は何故ここに?」

 

「幻想郷の春を取り返すため。平和にゴロゴロするため」

 

「そして主を目覚めさせるためーーと。目覚めないなら、王子様のキスでもあげればいいんじゃないのかしら?」

 

「な、なななな何を言ってるんですか!?」

 

「あら、案外最適な方法だと思ったんだけど」

 

扇子で口元を隠し、上品に微笑む。

ーーそうか、紫様に似てるんだ……この人。

 

 

 

「もう少し、もう少しなのよ。貴方が持っているなけなしの春を貰えれば、それでこの西行妖が満開になる」

 

「……西行妖っていうのは?」

 

「この桜のことよ」

 

「いやそれは聞いてましたから!」

 

 

とぼけているのか素でやっているのか。まあとぼけてるだけだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実のところ私にも良くわかんないんだけどーーこの桜を満開にすれば、何者かの封印が解けるとかなんとか」

 

「封印……?」

 

何だろう、悪い妖怪でも封じてるんだろうか。いやでもこの桜自体が妖怪桜何だったっけ……?

 

 

 

「さて、大人しく春を渡してもらえると嬉しいんだけど……持ってないのよね、貴方は」

 

「あ、はい」

 

「……どうしようかしら?」

 

がくっ、と思わずこけそうになる。

 

 

「は、春は持ってませんけど妨害に来たんですよ僕!?弾幕ごっことかで消さなきゃ不味くないですか!?」

 

「いやそうは言ってもねぇ……だって妨害する手段も貴方には分からないでしょう?」

 

「さ、桜を傷つけるとか切り倒すとか……?」

 

「お勧めはしないけど、やってみたらどう?」

 

 

釈然としないけどやらせてもらえるならそうしよう。

そう思いスペルカードを取り出した。

 

 

「雷符『カーテンコールサンダー』!」

 

降り注ぐ雷は全て木に落ちた。焦げたり倒れたりするかとも思ったが、少しもダメージを受けていない様に見えた。

 

 

「なら直接…!境符『八雲式二重結界』!」

 

桜の木を囲む様にお札を投下。霊力を流し結界を張ると、もう一枚のスペルカードを取り出す。

 

 

「境符『疾風迅雷の電光石火』!!」

 

通常弾幕の雷撃を放ち、境界を越えるーーが、越えたタイミングで気づく。相手は動かないんだからわざわざこのアクションする意味ないじゃん、と。

ということで、普通に雷撃を放ちまくってみる。が特に効果なし。

 

 

 

「……うーん、新しい奴試してみるか」

 

取り出すのは新たなスペルカード。これで倒せると良いなぁ。

 

 

 

「結界『熱気と寒気の狭間』!」

 

発動と共に、辺りの気温が下がる。が、一歩前に歩くと今度は暑くなる。まあこの温度調整はただの演出なんだけど。

少しすると雪玉を模した小型弾幕が大量に寒い所から襲いかかる。そこに挟み込む様に太陽光を模したレーザーが何本か照射される。本来なら隙間が広くレーザー自体は避けやすいのだが、相手は動かない樹木なので全部直撃。

衝撃で舞っていた煙が晴れ、再び桜が見えるーーが、先程までとは違い変化が生じていた。

 

 

 

 

「……あら、花が」

 

そう。西行妖の先程まで何もついていなかった枝には蕾が付き、所々花が咲いていた。

ーー何だろう、すごく嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

 

「これは……マズイわね」

 

「……え?」

 

「この桜、無闇に近づくと危ないわよ?」

 

「えっ!?」

 

 

時既に遅し。西行妖は目の前。急いで離れようとしたが途中で足から力が抜け、視界がチカチカした。気がついた時には既に倒れ込んでいて、体の何処にも力が入らない。

苦しみは無く、痛みもなかったけど。何となく、全てが夢の様に儚く消えていく気がしたーーーーー






やっと原作と違う展開になったけど、さてこれからどうするか……
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