東方界縫伝(旧)   作:織葉 黎旺

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ー夢と現の境界ー

 

 

 

「……ん」

 

目が覚めた。何故だか分からないけど異様な程清々しい気分。例えるならずっと戦っていた何かを倒した後の様な、やり残していた物を全て終えた後の様な……そんな何か。

見渡すと、周りは只々白が続くだけの良く分からない空間だった。何処まで広がっているのかも良く分からない。ただ、そんな世界にいつの間にか彼女がいた。

 

 

 

 

 

「え、紫様?」

 

 

そう、紫様だった。いつから居たのか分からないけどいつの間にか居た。太陽なんて無いのに白いフリフリな日傘を差し、何処か遠くを見つめている。風なんて無いのにその長いブロンドの髪はゆらゆらと揺れているし、しかも何かおかしい様な……?

 

 

 

「ーーあら?」

 

僕の存在に気づいた様で、紫様が振り返ったーーが、そこで違和感の正体に気づく。

 

 

 

「……小ちゃい?」

 

そう、紫様が小さくなっていた。身長は僕より少し小さいし、声もいつもより少し高い。服はいつもに増してフリフリとかリボンとかが着いてて、しかもなんか……すごい可愛い。大事なことなのでもう一回。紫様可愛い。っていうか紫ちゃんって感じ。

 

 

 

「ここに来るのは初めてね……玲亞君」

 

「ゆかり……さま?」

 

 

やっぱり何かが違う。違うんだけど、顔が同じで中身が違う別人ーーという訳でも無さそうだ。

 

 

 

 

 

「ーーふうん、境界を見ることに慣れてきた様ね……洞察力は大分上がってきている。ただ物事を少し偏見的に見過ぎかしら?自分の価値観でしか測れていないというのは、勿体無いわね」

 

「……あの、紫様………ですよね?」

 

「いいえ、貴方の知っている八雲紫ではありませんわ?紫様というよりは紫ちゃんで構いませんわよ?」

 

 

胡散臭い、茶化す様なその口調は正に紫様そのものだったがーー本人が違うと言っているし、僕もなんか違う気がする。……結局、どういうこと?

 

 

 

 

 

「じゃあ紫ちゃん、君は一体何?」

 

失礼な質問だとは重々承知だが、的を射ているとは思う。

しかしこの質問を聞いた途端、ニヤリとはぐらかす様に微笑みーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今はダメですわ♪」

 

「ええっ!?」

 

 

拍子抜けする答えだったが、まあ教えてくれないだろうとは思っていたので大してショックは無い。うん。無い無い。

 

 

 

 

「今はってことはいつか教えてくれるんですか?」

 

「まあその時が来たら……ね。っと、そんなことよりも話すことが他にあるでしょう?」

 

「他に………?」

 

「あら、あまりのショックに忘れちゃいました?自分が死にかけてるということを」

 

「…………あっ!」

 

 

思い出した!西行妖とかいうアレに攻撃してたら大変なことになったんだった!!

 

 

 

 

「死にかけてる、っていうか本来なら死ぬところをギリギリつなぎとめてる感じだからほとんど八割ぐらい死んでるんだけれどね」

 

「は、八割死んでるって……それ大丈夫何ですか?」

 

「んー、どうかしらね」

 

悪戯な微笑みを浮かべる紫ちゃん。まあでも何となく大丈夫な気がする。

 

 

 

「まあただ単純に西行妖の妖気にあてられて命が吸い取られそうになってただけだから、ひとまず西行妖から離れれば大丈夫よ」

 

「……っていうか、そういえばここは何処ですか?」

 

話の腰を折ってしまうが、どうしてもこれだけは聞いておきたい。少なくとも幻想郷の中では無くて、スキマの中でも無いことはわかる。

 

 

 

「ここは貴方の深層心理。そして私はいつでもここにいるのです」

 

「深層心理……?」

 

これが?この真っ白な空間が?何物にも染まらず、かといって己の色があるわけでもない。

ーーでも、妙なことにあっさり納得できた。色々と。

 

 

 

 

「さて、そろそろ時間がきますわ。目覚めた時には貴方は桜の木の根元で一人佇んでいるでしょう。その時に絶対に妖気に呑まれないで。前を見据えて。まずあの子……西行寺幽々子を止めて」

 

「……あの人ーー西行寺幽々子さんって、どういう人なんですか?それと西行妖って何ですか?」

 

「西行妖……あれは人の命を吸う妖怪桜。そして西行妖に封印しているのはーーいえ、西行妖を封印しているのが西行寺幽々子本人」

 

「え、じゃあ幽々子さんは自分が封印している物を解き放とうとしているーーってことですか?」

 

「……まあそういうことよ。最も彼女はそれを覚えてはいないのだけれど」

 

と、そこまで話したところで徐々に空間が狭くなってくるーー黒で塗り潰されてくる。闇なのか何なのか、その黒は徐々に僕達に近づいてくる。しかし不思議と恐怖も何も感じなかった。

 

 

 

 

「……ん」

 

「……紫ちゃん?」

 

闇が近づいてくるのをぼんやりと眺めていると、急に紫ちゃんに抱き締められた。まるでもう二度と離さないかの様にぎゅーっと。

っていうか顔が近いです、紫ちゃん。息がかかりそうで怖い。

 

 

 

 

 

 

「……玲亞君、悪いけど今は私のことを知られるわけにはいかないのよ。少し記憶を頂くわ」

 

「え、記おぅふっ!??」

 

いきなり強引に唇を奪われるーーと同時に、何かが吸い取られていく様な感覚。それと同時に強烈な眠気。驚きよりも恥じらいよりも喜びよりも、何より強く感じたのが睡眠欲だった。

 

 

 

 

「……ぅあ…………」

 

「大丈夫よ、次期に思い出す筈ですわ。

そうそう、これは餞別ですわ。とりあえずこれで何とかなーーーー」

 

もう声は耳には届かない。意識はここよりも深い闇へと沈んでいった。

 












なんでゆかりんが二人居るの!?幸せ!!

霊夢「増やしたのあんたでしょうが」
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