東方界縫伝(旧)   作:織葉 黎旺

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春雪の六。咲く妖怪桜、裂くは思いと重い過去。

「……はっ」

 

目覚めると大木の根元で寝ていた。咄嗟に逃げる様にそこから離れる。一瞬だけすごく死にたくなる衝動に駆られたが、今はもう大丈夫だ。

 

 

「てっきり死んじゃったかと思ったのだけれど……凄いわね。この西行妖に一度死に誘われたのに、まだ生きてるなんて」

 

「あはは、まあ僕にも生と死の境界を越えるくらいは出来るので……」

 

そう言いつつ思わず首を傾げる。あれ、僕はいつ境界を越えた?一瞬で死に誘われてそんな暇は無かった筈だ。無意識の内に発動していたのかな……?

 

 

 

「それにしてもこれじゃあ勝ち目なんて無いんじゃないかしら?」

 

「え?」

 

そこで幽々子さんの服が若干焦げていたり破れていたりすることに気づいた。だがしかしまだまだ余裕あり気に、僕の背後を睨んでいる。

 

 

 

「一体誰が……?」

 

振り返ると、そこにいたのは異変解決のスペシャリスト達。

 

 

「遅ればせながら参上しましたわ」

 

「あー?別にお前一人くらい来なくても良かったぜ」

 

「しかも六面ボスっていう美味しいところだけ持ってってたからね。まあ私は五人も倒したし?別に良いんだけど」

 

「霊夢、強がらなくて良いぞ?」

 

「うっさい」

 

 

そこにいたのは霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さん。

その様子から見ると幽々子さんと咲夜さんで戦っていて、その途中で二人と合流したーーというところか。

 

 

 

「別に四人まとめてかかって来ても良いわよ?ただし、死んでも良いのなら……ね」

 

そう言って幽々子さんは飛び上がり、西行妖の後ろに回った。

ーーヤバイ、凄く嫌な予感がする……!

 

 

「霊夢さん魔理沙さん咲夜さん離れて!!これに近づいたら多分本当に死ぬ!!!」

 

次の瞬間、眩い紫色の光が西行妖から放たれる。咲夜さんはそれを避けたが、霊夢さんと魔理沙さんはかわしきれず少しグレイズしてしまった。

 

 

「…ッ……本当にそうみたいね、私は一度離れるわ」

 

「私みたいな軟弱魔法使いに生きてる資格なんか無いんださっさと死んだ方が……」

 

「私みたいなのが巫女をやってて本当に良いのかしら欲望に正直で薄汚くて全然巫女らしくない私が……」

 

「……咲夜さん、二人を連れてってあげてください」

 

「言われなくとも」

 

瞬きした瞬間、咲夜さんは魔理沙さんと霊夢さんを連れ少し離れた場所にいた。

そしてなんとか復活した霊夢さんと魔理沙さんと何かを相談しあっている様だったが、やがて意見がまとまったのか静かになった。

 

「ここからならギリギリ弾幕も届くだろうし、私達は援護に回るわ」

 

「……咲夜、玲亞にこれを渡してくれない?」

 

「……私のもお願いするぜ」

 

「分かったわ」

 

すると一瞬で咲夜さんが目の前に。やだこれ心臓に悪い。

 

 

 

「玲亞、私達からこれを貴方に託すわ」

 

「……これは」

 

桜の花弁……様するに春度だった。霊夢さんと魔理沙さんの方を見ると、もう症状はおさまった様でこちらをじっと見つめている。

 

 

 

「……玲亞、あの桜を止められるのは恐らく貴方しかいないわ。少し癪だけど、しっかりやって来なさい」

 

「はい!」

 

「って霊夢が言ってたわ」

 

「まさかの伝言!?」

 

「あ、魔理沙は何か『これが終わったら絶対に皆で宴会するんだからな。約束だぜ?』とか言ってたかしら」

 

「だからそれフラグだって!?」

 

「あと私からも一言。頑張りなさい」

 

「頑張る!!」

 

 

そして目の前の西行妖と対峙する。

ーーよく見ると西行妖の周りには霊が一人もいない。ここ以外であればどこにでもいるのに、ここには一人もいない。危険だから近づかないのかーー近づいたからいないのか。

その後ろでは幽々子さんが扇子で口元を隠しながらこちらに鋭い視線を向けていた。

 

 

 

 

「……一回本気で死に誘ってみようかしら?」

 

「え?なんか言いました?」

 

「いや、なんでもないわよ?」

 

うふふ、とお上品に微笑む幽々子さん。しかし殺気が隠せていない。

 

 

 

「ああ、もう少しでこの桜も満開になるわ……何者かのオマケ付きで」

 

「……とりあえず、僕らに被害が及びそうなので止めさせてもらいますよ?死にたくなるなんて嫌な気分なので」

 

「……私はどうだったのかしら。死にたかったから死んだのか、死にたくないのに死んだのか……」

 

「……?」

 

何を言っているのか良く聞こえなかったが、とりあえずその表情から察せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーこの人にも、異変を起こすに足る理由があるのだ、と。

 

 

 

「いや、私のは唯の暇潰しよ?」

 

「折角作ったシリアスな雰囲気をブレイクしないで下さい」

 

「どうでも良いじゃない、そんな物」

 

呆れる様にそんなことを言われた。まあ分からなくはない。

 

 

 

 

 

 

「寝坊助さんな主様に永眠されても困るし、お花見が出来ないのも困る。ということで、のどかな春を返してもらいますよ?」

 

「最初っからそう言えば良いのに」

 

「いやめちゃくちゃ言ってましたからね!?茶化されて嫌な気分になったのを僕は忘れない!」

 

「最後の詰めが肝心なのよ。何事もね?」

 

 

ふう、と幽々子さんが一呼吸吐いた。僕も言いたいことは後一つしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「地上でお花見しながらゴロゴロお昼寝するため……幻想郷の春は返してもらいます、桜の亡霊姫!!」

 

「越えられないその境界の狭間で彷徨い続けるがいいわ、八雲の一閃!!」

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