一ヶ月ぶりですね。久々過ぎて文章ががばがばです(平常運転)
「ん……っ」
頭に感じた鈍い痛みで目を覚ました。鈍器で殴られた後の様にズキンズキンと痛むこの感覚。ああ、これが二日酔いって奴なのかなと思った。
――ん、なんで二日酔いになってるんだっけ……?
「あ、萃香さん!?」
かけられていた布団をはね除け周囲を見渡す。とりあえずここは僕の部屋だ。運んでくれたのは紫様だろうか。
そしてふと振り返ると、畳の上で気持ち良さそうに眠る萃香さんの顔があった。
「……………」
もしかして萃香さん、僕のことを気にしてくれていたのだろうか。だとしたら大変ご迷惑をおかけしまった。僕にかけられていた布団を萃香さんにかけてあげた。
「ふふ、優しいわね」
「あ、紫様」
振り返るとそこには紫様が壁に寄りかかるように立っていた。軽く嘆息しながらやれやれと言いたげな表情で微笑んでいる。
「全くもう萃香ったらあんな度の強いお酒を玲亞に飲ませるなんて……普通の人間ならアル中で死んでもおかしくなかったわ」
「マジすか!?」
そこまで言われると度数が少し気になったがひとまず会話に戻る。
「えーっと、今回の異変って結局なんで起きたんです?萃香さんが黒幕なんですよね?」
「そうよ。この子ね、意外と寂しがり屋なの。気の強い鬼なんだけど賑やかな宴会とお酒が大好きで、皆がワイワイ騒いでるのに惹かれたんでしょうね。この子の"密と疎を操る程度の能力"の力であんなことやこんなことをして宴会を開いたのよ」
「あんなことやこんなことの部分をキチンと説明しましょうよ」
「……で、あれやこれやあったけど玲亞が萃香を見つけて、そのおかげで多分萃香も救われたと思うわよ?」
「え?」
「だってほら、楽しい宴会の脇で誰にも気づかれずに一人で酒盛りなんてつまらないでしょう?」
「あっ……」
そんなの絶対辛いだろう。僕なら堪えられない。影の中の影よりも、光の中の影の方がより濃く浮かび上がるように、周りが騒いでるのに自分が騒げないなんて辛いよね。
……別に経験者ではないよ、本当に。
「ぼっちって悲しいわよね」
「ですね」
思い当たる節があったのか紫様が悲しそうな表情で呟いた。紫様なら優しいし可愛いし美しいしぼっちになることはないと思うんだけどなあ。だからこそ敵を作っちゃうのだろうか。気紛れだしなあ。面倒だしなあ。胡散臭いしなあ。
「……そのため息は何かしら?」
「ベツニナンデモナイデスヨー」
これでもそこそこ紫様との付き合いも長くなってきたので、紫様が結構怒ってるときは逆にニコニコしてるってことは既に学習しました。襟元掴みながら凄い力で壁にドンって叩きつけられた。これが噂の壁ドンってやつか……痛い。
「……ドタバタと五月蝿いなあ」
「あら萃香おはよう」
「…おはようございます」
何故か気まずさを感じて、目を合わせずに挨拶した。それは萃香さんも同じだったようで髪を弄りながら恥ずかしそうに僕に頭を下げた。
「…なんか色々と悪かったね」
「え、いやいやそんな…」
「言い過ぎちゃったし、飲ませ過ぎちゃったし……体の方は大丈夫?」
「二日酔いが残ってるくらいですかね」
お酒には強い自信があったんだけどなあ、と軽く笑うと萃香さんも微笑み返してくれた。紫様が貴方全然強くないでしょって言いたげな顔でこちらを見つめているけどそれは気にしない。
「……あ、そうだ」
「ん?」
丁度良いタイミングなので少し考えてた事を提案してみる。
「萃香さん、折角ですし宴会しません?今度は、皆で一緒に」
「……いや、いいよ。私は一人で飲んでる方が楽だし、案外それも悪くないもんだよ?人を観察するっていうのも色々面白い。そうだ、それなら玲亞や紫も一緒に」「萃香さん」
もういいんです、そう呟いた。異変はもう終わったのだ。人の気持ちを歪めて開催する宴会なんて所詮は偽物で紛い物だった。本人達に自覚は無かったけれど(いやそれどころか結構楽しんでたと思うけど)、あれは間違いだと思う。
自然と人が集まって始まるのが幻想郷の宴であって、誰かがそれを歪めて起こすのは違うよね(普段の宴会も魔理沙さんが幻想郷を飛び回って人を集めてるらしいけどそれはそれということで)
「でも私は、正直このままじゃ駄目だと思うんだよねえ」
「?」
どういうことだろう。駄目だと思うなら参加すれば良いんじゃないだろうか。宴会に。素直に。
「いやいやそうじゃなくってね、玲亞と紫くらいしか私に気づかないんであれば今の幻想郷は不味いってこと」
「……あー、そんなこと気に病んでたんですか」
「…………」
紫様は口元を扇子で隠し微笑んでいる。僕も自然と口角がつり上がるのを感じた。
「杞憂ですよ。絶対に誰かが貴女の存在に気づく。いや、本当は皆気づいてるかもしれない」
「そんなことはないと思うけどなー」
「三日後。もし三日後の宴会までに誰も貴女の存在に気がつかなかったら、何でも一つ言うことを聞いてあげるわ」
「お、言ったね?鬼は嘘が嫌いだからね。もし逃げたら……」
「分かってるわ。その代わり、私が勝ったら大人しく宴会に参加よ?」
不敵に笑う紫様と自信ありげな萃香さん。どうやら僕の三日間なんて前座に過ぎなかったようで、ここからが真の異変のようだ。窓越しに見る空には、晴天に照らされる幻想郷が見えた。