東方界縫伝(旧)   作:織葉 黎旺

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永の二。電灯のない夜道って本気で暗くて怖いよ?

 月明かりを頼りに暗い夜道を進んでいく。頼りに、とは言っても正直人間の僕には目の前の道はほとんど見えない。隣をゆく紫様の顔は辛うじて見えるが、何かにぶつかったりしそうで怖い。

 

 「暗闇に恐怖を感じるのは、古来からの人間の本能。そして人はその闇の中に、恐怖の化身として妖怪を見出したのよ☆」

 「そーなのかー」

 胡散臭いことをいう主を適当に流す。ルーミアの口癖は汎用性が高いなあ。こういう時に便利だ。

 

 「紫様、一つ聞きたいんですけど」

 「どうぞ」

 「さっきから付いてきているのって何なんですかね?」

 「あら、貴方も気づいてたの」

 振り返ると紫様が指を鳴らすと、光が強まり辺り一帯が少し明るくなった。振り返ると、そこには例の黒光りする奴みたいな触覚に黒光りする奴みたいな羽根を持った緑髪ショートカットの少女と、鳥っぽい羽の生えた桃髪の少女のコンビがいた。さては僕のファンだろうか。最近幻想郷でも有名になってきたみたいだし。

 

 「それはないわね、私のファンかしら」

 「紫様を煽る人はいても崇める人はいないでしょう」

 「扇いでくれる式はいるけどね」

 「私達は貴方達のファンなんかじゃないけど?」

 「久しぶりのヒトネギー!」

 二人の少女は僕達を他所によく分からないことを言ってる。アホの子なのだろうか。例えアホの子でも僕のファンなら許してあげるが。

 

 「アホの子はお帰りください、僕達忙しいんで」

 「私達も忙しいのよ、久々のヒトネギだから」

 「……え?ヒトネギ?」

 「少々遅めの晩ご飯ってことね」

 紫様の解説で、自分達が餌として見られていることに気づく。全く、一面二面程度の敵に舐められたものだ。

 僕だけならまだしも、この大妖怪様まで舐めてかかるとは。

 

 「夜雀にヨロイモグラの妖怪ねえ……まあ、準備運動くらいにはなるでしょう。軽くいなしてあげるわ」

 「紫様、僕そのヨロイモグラっていう物が分からないんですけど」

 「世界最大のゴキブリのことよ♪」

 「私はゴキブリなんかじゃなああああい!」

 「あら、なんかとは酷いわねえ。ゴキブリだって必死に生きてるのに」

 「そうですね。っていうかゴキブリじゃないなら何の妖怪なんですか?」

 「……リグル、泣いていいと思うわ」

 夜雀の子が虫の子を慰めてる。言葉の弾幕だけでこの面突破できそうだな。

 

 「……蛍様が出て喜ばない人間なんて久しぶりに見たよ!」

 「え、蛍だったんですか?ごめんなさい気づかなかったです」

 「ほ、ほら!この触角とか羽とか!」

 「Gですね」

 「Gよねえ」

 「こ、この光りを見れば分かるでしょう!」

 そう言って蛍らしくお尻を光らせるリグルさん。しかし明るいせいでよく分からない。

 

 「あー、光が分かりづらいんでもうちょっとこの辺から離れてくれます?」

 「しょうがないなあ」

 リグルさんは渋々といった様子で徐々に離れていく。夜雀の子もリグルに着いていった。うん、丁度いいしここを戦わずに突破するか……

 

 「すいません!もうちょい離れてください」

 「えー、もう見えるでしょ……」

 「僕鳥目なんで見えないんですよー!」

 「私も鳥目」

 「鳥目ならしょうがないね」

 「しょうがないのかな……?」

 夜雀に便乗されたからか、またも不満げに離れていく。

 十メートルくらい離れたので問題ないだろう。暇そうに欠伸をしている紫様の手を取って、駆け出した。

 

 「Gじゃなくて蛍ってことが分かりましたありがとうございます!今度ゆっくり光を見せてくださいな!」

 「え、ええいいけど……って逃げるなぁぁ!?」

 「ヒトネギー!?」

 珍しく呆気に取られてる紫様を引っ張って逃げる。戦わずに勝つのが最善の勝利ってウェイバー君も言ってた。

 

 「……卑怯者に育ったわね」

 「怠け者なだけですよ多分」

 主の視線が冷たいけどまあ気にしない。しかしいつまでも睨まれるのは嫌なので、話題を変えることにする。

 

 「そういえば、紫様が自ら異変解決に参加するのって珍しいですね?」

 「月がおかしくなると妖怪も人間もおかしくなる。割と一大事なのよ」

 「うーん……でも相方が僕なんかで良かったんですか?霊夢さんとか、他にも誘えそうな人いそうですけど……」

 「霊夢には『はあ?月?別にいつも通りでしょ。寝る』って断られたわ」

 「霊夢さんらしい……」

 「だから、信用出来る自分の式に頼むことにしたのよ」

 「紫様………」

 フフフ。と胡散臭げに微笑む紫様だったが、嘘は言っていないように感じた。

 二番手だろうと何だろうと、この人に選ばれたというだけで何よりも満足だ。

 真上にぽっかりと、見下ろすように偽物の満月が浮いていた。

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