「あ、人里が見えてきましたね」
「そうね、まあこんな時間だし人間は寝静まっているでしょうけど」
丑の刻とか妖怪の活発になる時間帯に騒いでいると、それだけでそういう"よくないもの"を引き寄せる原因になるらしいのだ。妖は光には釣られないが、静かな中の音にはよく釣られる。まあそういう時に役立つのは、大抵酒だ。酔った時に感じた事の大半は、夢現の幻。それが認識と、妖の実在非実在の境界を曖昧にしてくれる。
――まあ、酒で酔ってるから幻覚が見えてる可能性もある……というか、大体は幻覚だろうけど。
「ん……?」
「あら?」
「人里が無い……?あれ?」
あ、ありのままに今起こったことを話すぜ……さっきまで人里が見えていたはずなのに、ちょっと目を離した隙にそこがただの森に変わっていた!何を言っているか分からないと思うけど、僕も何を言っているのか訳が分からない……幻覚なんてチャチなもんじゃねえ、もっと恐ろしい"程度の能力"の片鱗を味わ
「ネタはいいから集中しなさい」
「はい(´・ω・`)」
まあ大体こういうおかしな現象が起きた時、犯人はその辺に潜んでたりする。何処かなー何処かなーと細めで森の方を見回すが、特に誰も隠れている様子はない。
「どーこっかなーどーこっかなー」
「……お前達か、人里を襲おうとしてるのは」
「玲亞、正面よ」
「あらら、盲点でした」
言われて正面を向くと、羽っぽいヒラヒラの刺さった帽子を被った、青のメッシュの入った銀髪の女性が腕を組んで立っていた。って、お……?
「あ、けーね先生じゃないですか」
「玲亞君か?」
「そうですよー」
「知り合いなの?」
上白沢慧音先生。人里で寺子屋を開いている、少々お固いけど優しい良い先生である。前に人里で迷子になった時に道案内してくれたのだ。
「うちの子がお世話になったようで、ご迷惑おかけしましたわ」
「保護者!?」
「いえいえ、玲亞君はいい子ですしそんなことはないですよ」
「いやそれ完全にお母さんと担任教師の会話ですから!二人とも違うでしょ!」
「そうねえ、今度から貴方も寺子屋に通う?」
「いや僕十四歳ですし、来年で元服じゃないですか。ということで遠慮しときます」
「元服しようが学校に通う奴は通うだろ。私は別に構わないぞ?」
流れが僕によくない方向に向かっている。勉強なんか面倒臭いからしたくない。しかも、慧音先生の授業は大変眠くなることに定評のある授業だから、尚更嫌だ。しかも寝ると頭突きされるらしいし。めちゃくちゃ痛いらしいし。
「と……兎に角っ!人里を何処にやったんですか!返してください!」
「あー、違うぞ、お前達には見えないようにしてやっただけだ」
「私には普通に見えるわよ?」
「 ! お前達何もんだ?」
「え、僕には何も見えないんですけど」
「それが普通だから気にしなくていいわ」
「普通っぽい人間に、普通じゃない妖怪……悪いが、ちょっと試させてもらう!」
「普通っぽいってか僕は普通です!」
「「それはない」」
紫様と慧音先生の声がシンクロした。っていうか完全に弾幕ごっこの流れじゃないですかこれ。やだなあ、戦うのは六面とエクストラだけって決めてるのに。
――まあともあれ、紫様と一緒に弾幕ごっこするのは初めてだし、そのウォーミングアップってことで。