「お待たせしましたー」
「あ、ああ。わざわざすまないな……」
レンジでチンした冷凍食品(エビグラタン)を藍さんの元へ持ってきた。
僕が来た瞬間に何かを布団の中に隠したような気がするけど気にしない。
「お? 美味しそうだな」
「そ、そうですかね?」
それ冷凍食品なんですー、と言う暇もなく藍さんが一口食べた。
「……玲亞、料理上手いな」
「え!?あ……ありがとうございます」
ゴクンと飲み込んだ後、料理(冷凍食品)を褒めてくれた。
それ…チンしただけなんですけどね!と、訂正するタイミングを逃した。
「いやーこんなに料理が上手い玲亞が紫様の式だったらいいのになぁ」
藍さんがモグモグとグラタンを頬張りながらこちらをチラッと見た。
「もう藍ったらなにをいってるのよー玲亞に迷惑じゃない?」
「うわっ!?」
いきなりスキマが開き藍さんの隣に紫さんが現れた。紫さんもジーっと僕のことをみている。
「そうですよねーあーあ残念だなー」
「本当に残念よねー」
二人ともチラチラとこっちをみている。これは……そういうことなの、かな?
「あ、あのー……僕は構わない、というか……むしろ置いてほしいなー、ってぐらいなんですけど、その……」
「「はっきり言ってくれないか(かしら)?」」
紫さんと藍さんが二人揃って素敵な笑顔を浮かべている。謎の威圧感を感じる……
「……式として、この家に置いて下さい」
「……勿論、大歓迎よ」
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後日談、もとい状況整理。
紫様(呼び方は式になるので変えた。なんかこっちの方がしっくり来る)の式となるための契約の準備をしなきゃいけない、ということで紫さんが何処かに出かけていき、藍さんも急に腰痛が治ったー、とかいって何処かに行ってしまった。で、残された僕はというと、八雲邸を探検している最中です。
「和洋折衷というかなんというか、色々面白い家だなぁ……」
デスクトップパソコンや家庭用ゲーム機がたくさん置いてある部屋があるかと思えば、ブラウン管テレビが置いてある部屋もあり、どこかの民族の儀式に使用しそうな怪しげな仮面の部屋とか拷問部屋みたいなところもあった。
「次の部屋はなにかなーっと……」
ドアを開けた瞬間、ん?という違和感を覚えた。全体的にピンクを基調とした可愛らしい部屋だった。
「……藍さんの部屋かな?」
なんとなく、紫様の部屋っぽくはない気がする。紫様はシンプルな大人っぽい部屋なイメージがある。
「…ちょっと確かめてみるか……」
若干罪悪感を感じながらも、部屋を物色し始めた。
「……お?」
子供っぽい勉強机の上に、ノートが乗っていた。表紙には……
「……『ゆかりんの日記☆』?」
見たい、という衝動に駆られる。だが理性は勝手に見るなんて最低だ!やめろ!という警鐘を鳴らしている。
「……やっぱり勝手に見るのは良くないよね、うん」
一度手にとったノートを机の上におき直す。
そしてスタスタと部屋の外に出た。
「れーいあ君?」
「ちょ、驚かさないで下さいっ!」
いきなり前方にスキマが開き、紫様が現れた。
「何してたのかしら、ねえ?」
ニコニコと素敵な笑顔で聞いてくる紫様。どうしよう答えられない。
「い、色々部屋があるので、どんな部屋があるのかなぁ、と探索してました」
あながち嘘はついてない。うん、大丈夫大丈夫。
「へーそうだったの。てっきり人の部屋に勝手に入ってプライバシーを侵害してたのかなー、って思ったのよ。疑ってごめんなさいね?」
どこも大丈夫じゃない!?明らかに見てたでしょこのお方!?
「えっと……すいませんちょっと気になって……その、少し入ってしまいました…」
「日記は見てない?」
「あ、それは見てないです…」
「……ならいいわ。今度からは勝手に入らないでよ?」
「はい。すいませんでした…
……あ、紫様」
「なーに?」
「紫様の部屋、可愛くて僕は好きですよ?」
「……そう。ありがとう」
紫様が少し俯いて、小声で言った。どうしたんだろう?
「それじゃあ準備も出来たし契約を始めましょうか」
「よろしくお願いします」
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「さて、それじゃあ儀式を始めるのだけれども」
「はい」
場所は変わって、中央に魔方陣が描かれているような明らかに儀式を行うための部屋。
「ここでいきなり契約の為にキス、とかいうベタベタな黒歴史的展開は無いわ」
「は、はい」
紫様がスキマを開き、その先をニコニコと見つめながら言った。
…ていうかなんだよ、その黒歴史的展開………
「じゃあ契約を始めましょうか」
そう言って、紫様は魔方陣の中央で、何やらぶつぶつと呪文を唱えだした。
「――はい、終わったわよ」
「え、契約早っ!?」
まだ一分もかかってないんだけど…
「後は誓いの言葉を言うだけよ」
「誓いの言葉?」
「そうね、折角だから格好つけて、心に残る契約にしましょうか」
ふふふ、と微笑む紫様。きっと後の黒歴史になるんだろうなぁ。
「どんなことを言えばいいんですか?」
「それはもうあれよ、フィーリングよ。適当で大丈夫じゃない?」
「適当ですね……」
紫様は、んー、と顎に手を当て言葉を考えているようだった。
「……こんなのでいいかしら」
そして紫様は大きく息を吸って、言葉を紡いだ。
「――私は、汝の主となる者。我が命が尽きるまで、汝を見守り、共に歩むことを誓いましょう」
格好つけているのか、若干声色を変えて言う紫様。
でも、その言葉に嘘も偽りもないように感じた。なら、僕もそれに答えよう。応えよう。
「誓いましょう――僕の命がある限り、貴女に寄り添い、貴女に尽くし。貴女に着いていくことを」
――そう言った瞬間、魔方陣が輝き、僕達は、優しい光に包まれた。