赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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2/21追記
途中でアテムの手札にミスがあったため、一部変更しました。大まかな流れは変わりませんが、ミスをしてしまい申し訳ありませんでした。


VSメイ喜多嬉(後編)

「オレのターンだ」

 

今メイの場には《ブラック・マジシャン》と戦闘には無敵の《マジカル・コンダクター》か。 ……コンダクターは《魔力掌握》も切れたしあまり警戒する必要ないが、問題はもう1体か。ここであのカードを引ければ……!

 

「ドロー!」

 

引いたカードにチラッと目をみやる。……引けたぜ、今オレの求めていた最高のカードが!

 

「ゆま!」

「は、はいっ!?」

 

ここまで静かにオレとメイのデュエルを見守っていたゆまへとオレは声をかける。

 

「お前からもらったこのカード……力を貸してもらうぜ!」

「あっ……はいっ!」

「ふん、何を引いたかは知りませんが庶民に逆転できるとでも?」

「できるぜ! オレは手札から《E・HERO プリズマー》を召喚する!」

「E・HERO……ゆまちゃんと同じカテゴリーのカード」

 

オレの場に現れたE・HERO。そのカードを見たツァンが少し驚きの声を上げるが……このカードならオレのデッキとの相性は抜群だ。

 

「プリズマーの効果発動! 融合デッキのモンスターを1枚見せることで、そのカードに記されている素材モンスターを1体墓地に送るぜ! 俺が選ぶのは《超魔導剣士ーブラック・パラディン》。このカードに記されている素材モンスター──《ブラック・マジシャン》を墓地へ!」

「っ!? 庶民が《ブラック・マジシャン》のようなレアカードを持ってると!?」

「はん、真に《ブラック・マジシャン》を使いこなすのはオレだ……その事を思い知らせてやるぜ! 永続トラップ発動!」

 

1ターン目から伏せられていたオレのカード。それが表になりその正体が明らかになる。

コナミが、オレが戦いの儀で旅立ってから数年後にペガサスに頼んで作ってもらったという世界に1枚しかないこのカード……ここが使い時だ。

 

「《永遠の魂》!」

 

オレのフィールドに、1枚の巨大な石版が現れる。

それは、遙か昔幾度となく見た決闘の時に使う石版とよく似ていた。

 

「永遠の……魂?」

「あの石版に描かれてるのって……」

「《ブラック・マジシャン》ですっ!」

『おぉー、ここで俺の作ってもらったカードか』

 

オレがいた証を──そのためにとコナミが作ってもらったらしいこのカード。他にもあるが、そのほとんどがオレのファラオとして起きた事件や事柄がモチーフになっていて、マハードやマナのサポートカードが多かった。そのどれも強力だが、これはその中でも効果は便利だ。

 

「《永遠の魂》は1ターンに一度、墓地の《ブラック・マジシャン》を復活させる!」

 

石版から淡く光がこぼれだし、段々とその光が強さを増してくる。そして光と共に石版から描かれた《ブラック・マジシャン》が浮き出してくる。

 

「現れろ、我が最強のしもべ《ブラック・マジシャン》!」

 

光に包まれていた絵から光が失われていく。光が晴れた時にそこにいたのは、腕を組み己と同じ姿をした相手の場の《ブラック・マジシャン》を鋭い目で見つめる、オレのエース《ブラック・マジシャン》。

バトルシティのパンドラの時以来の対ブラックマジシャンだ……必ず勝つぜ。

 

「すごい、あの《ブラック・マジシャン》が2体も揃うなんて」

「あなたもそのカードの使い手ということかしら」

「そうだ、オレの魂ともいえるこのカードで、お前を倒す! いけ、《ブラック・マジシャン》!」

『ファラオのためならば、我が命……!』

 

オレの場のマハードがメイの場の《ブラック・マジシャン》へと杖から魔力の塊を撃つ。……でかい口を叩いたが、すぐに破壊されてしまうのは申し訳ないが、次のターンには。

 

「ブラック・マジック!」

「迎え撃ちなさい《ブラック・マジシャン》! ブラック・マジック!」

 

メイの《ブラック・マジシャン》もまた、手の平を向けて衝撃波を飛ばす。

お互いの《ブラック・マジシャン》の攻撃がフィールドの中心でぶつかり合い、凄まじい衝撃がフィールドを襲う。

 

「……これで、オレたちの場から《ブラック・マジシャン》は消えたぜ」

「っ……けれど、私の場には戦闘では無敵の《マジカル・コンダクター》がいますわ」

「そいつを倒す手は俺にはない……ターンエンドだ」

 

メイの手札は一枚。今のオレの場なら簡単に覆されることはないはずだ……どう出てくる?

 

「私のターン、ドロー! ……オホホホホ!」

「あわわ、メイさんが壊れましたよぉ」

 

ドローしたカードを見た瞬間、メイが高笑いを始める。

この状況をひっくり返すカードを引いたというのか?

 

「私が引いたのは、《天よりの宝札》!」

「《天よりの宝札》か……ここでそのカードを引くなんてな」

「なんであんたはそんな冷静なのよ!? 宝札シリーズと言えば、強力だからずっと昔に生産中止になったインチキカードじゃないの!」

「……そうなのか?」

『そうなんだよ……ドロー枚数が多すぎて強力だからと、宝札シリーズは生産中止。手に入れるのは容易じゃなくなってるんだ。そのおかげか、禁止ではなく制限に留まっているが……お金持ちのお嬢さんとなるとそれも持ってるってか』

 

なるほどな。確かにオレの時代ではこういったカードがあってもまだ接戦となっていたが、今の環境を見てみれば昔よりデュエルに速効性がでている。こんな大量ドローカードが横行してたらデュエルが一方的になりそうだ。

 

「このカードで私の手札は一気に回復しますわ!」

「だがそれじゃあ、オレの手札も回復させることになるぜ?」

「使わないと、私の手札では逆転できないのよ……では、手札が6枚になるように引きなさい。そして魔力カウンターがさらに2つ乗りますわ」

 

天から降り注ぐ光が、お互いの手札にカードをもたらす。俺は6枚ドロー、メイは5枚ドローだ。

 

《マジカル・コンダクター》魔力カウンター:3→5

 

「ふふっ、これだけあれば間単にいけますわ……手札から魔法カード《ライトニング・ボルテックス》を発動! 手札を一枚捨てて、庶民のモンスターは全滅ですわ!」

「なにっ!?」

 

メイのフィールドに出てきたカードから、稲妻がオレの場のモンスターたちを襲う。

今のオレの場じゃ防ぐ手立てはない、オレのモンスター達は全滅した。

 

「そして魔法カード発動により、魔力カウンターが二つ乗りますわ」

 

《マジカル・コンダクター》魔力カウンター:5→7

 

「さらに魔法カード《魔法石の採掘》を発動しますわ。手札を二枚捨てて、墓地の魔法カードを手札に加えますわ……《天よりの宝札》を手札に」

「7つを超えてる……《ブラック・マジシャン》を出せるまでになったか」

 

《マジカル・コンダクター》魔力カウンター:7→9

 

「ついでに、その厄介な永続トラップは破壊しますわ……手札から速攻魔法、《サイクロン》で《永遠の魂》を破壊しますわ! そして《マジカル・コンダクター》の効果を発動しますわ! 7つ取り除き、墓地の《ブラック・マジシャン》を復活させますわ」

 

《マジカル・コンダクター》魔力カウンター:9→11→4

 

《永遠の魂》は場を離れたらオレのモンスターを全滅させる効果があるから、メイはライボルを使う必要はなかったが……効果を知らないんじゃ、仕方ないか。オレとしては助かったがな。

そして再び場に舞い戻る《ブラック・マジシャン》。これでメイの場にはモンスターが2体……攻撃力はオレのライフを超えている。

 

「オホホホ! ここまでよくやりましたけど、これであなたは終わりですわ! 《マジカル・コンダクター》を攻撃表示に!」

「フッ、まだそうとは限らないぜ?」

「無理だよ……手札が6枚あっても、コナミの場はがら空きなのに……あの2体の攻撃を受けたら負けるよ!」

「あぅぅ……コナミさん頑張ってくださーいっ!」

「バトル! まずは《マジカル・コンダクター》でダイレクトアタックですわ」

「ぐっ……」

 

アテムLP:4000→2300

 

「これでとどめですわ……《ブラック・マジシャン》! ブラック・マジック!」

 

オレに手の平を向けて、今日何度目かの衝撃波を飛ばしてくる。

これを食らえばオレのライフは0……だが!

 

「それはどうかな! 手札から《クリボー》の効果発動!」

「《クリボー》ですって!?」

「あ、可愛いですぅ」

 

オレの目の前に茶色い毛玉のようなモンスターが壁として現れる。

《ブラック・マジシャン》が飛ばしてきた衝撃波を、その体がすべて受けてくれる。

 

「《クリボー》を墓地に送ることで、オレの戦闘ダメージを一度だけ0にする!」

「キィィィー! この攻撃を退けるなんて」

「ふぅ……なんとか耐えたわね」

「メインフェイズ2で《天よりの宝札》を発動しますわ。くっ、引きが悪いですわ……ターンを終了しますわ」

 

《マジカル・コンダクター》魔力カウンター:4→6

 

アテム

LP:2300 手札:6

場:なし

 

メイ

LP:4000 手札:6

場:《マジカル・コンダクター》《ブラック・マジシャン》《ミスト・ボディ》(マジカル・コンダクターに装備中)

  伏せカード:1枚

 

よし、このターンは凌いだ。後は……手札的に、もう一ターン凌がないとな。トラップカードを使おうとすれば嫌でも1ターン必要になる。だがこいつがあれば、何とか耐えれるか……。

 

「オレのターン、ドロー! 感謝するぜメイ。お前のおかげで、策がいくつも用意できてるぜ!」

「くっ……さっきのターンで倒せなかったことが悔しすぎますわ」

 

と言っても……このターンは準備。大して大きな動きはできないがな。

 

「カードを3枚伏せて、ターンエンドだ」

「ちょっと、モンスターを出さないの!?」

「あぅ……手札に魔法とかしかないんでしょうか」

 

今のオレの手札にあるモンスターは残念ながらレベル6と1……このレベル1のモンスターで次のメイの攻撃は凌げるぜ。

 

「ふふっ、三枚の伏せカード如きに臆する私ではありませんわ。制限カードのミラーフォースも既に使っている……総攻撃で勝ちですわ! 私のターン!」

「ならかかってこいよ? オレは、このターンを乗り切るぜ!」

「お望み通り……《マジカル・コンダクター》、《ブラック・マジシャン》! 庶民に一斉攻撃ですわ!」

 

メイの言葉と同時に、2体のモンスターが動き出す。

コンダクターは周りに浮いている透明な塊を飛ばし、《ブラック・マジシャン》はまた衝撃波を飛ばしてくる。

これを喰らえば負ける……だが!

 

「この瞬間、手札の《バトルフェーダー》の効果発動! オレがダイレクトアタックされるとき、手札からこのカードを特殊召喚できる! 来い《バトルフェーダー》!」

 

《バトルフェーダー》DEF:0

 

「たかが攻守共に0のモンスター、壁にしかなりませんわ。コンダクター、あのモンスターを破壊するのよ!」

 

メイが攻撃を指示するが、《マジカル・コンダクター》は攻撃する素振りすら見せない。

 

「どういうこと……なぜ攻撃しないの」

「フッ、《バトルフェーダー》のもう一つの効果さ。この効果で特殊召喚した時、バトルフェイズは終了される!」

「そんな効果が……キィィィ! モンスターをセットして、ターンエンド!」

「あんなカードを握ってるならさっさと言いなさいよねコナミ」

「ツァンさん、それ言っちゃうと相手にバレちゃいますよぉ」

 

2ターン続けてとどめを刺し損なった。その事にメイがイライラしてるが……このデュエルも、もう終わりだ。

 

「オレのターン、ドロー! ……メイ!」

「何かしら庶民。先ほどから気になってましたがあまり気安く名前を呼ばないでいただきたいわ」

「このターンで、お前を倒すぜ!」

「オホホホ! 私のライフを1も削れてないくせに……できるものならやってみなさい」

 

確かにまだダメージは与えられてないが……このターンで、4000のダメージを与えればいい話だ。

さっきのターンで準備は整った、さあ……反撃開始だ!

 

「まずは伏せカード《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地より蘇れ……《ブラック・マジシャン》!」

「またしてもそのカードを……」

「まだまだいくぜ! 手札を2枚捨てて魔法カード《魔法大学》を発動! 手札から魔法使い族モンスターを特殊召喚できる! 《バトルフェーダー》を生け贄とし──」

 

オレの場の《バトルフェーダー》が、フィールドに出現した大きな建物に吸い込まれる。

魔法を発動したことでコンダクターにさらにカウンターが乗るが……もはや関係ないぜ。

そして力を得た建物から、一人の女の子が出てくる。

 

「現れよ、《ブラック・マジシャン・ガール》!」

「うそっ、ブラマジガールまで持ってるの!? コナミってお金持ちなの……?」

『お師匠様、あっちにもお師匠様がいるんですけど』

『あれは私であって私でない……戦闘するときは気にせずやれ』

『はい!』

 

《魔法大学》(アニメオリジナル)

速攻魔法

手札を2枚捨てて発動する。手札から魔法使い族モンスター一体を特殊召喚する(リリースが必要なモンスターは適する数をリリースして特殊召喚)。この効果で特殊召喚したモンスターはレベルが2上がり、攻撃力が500アップする。

 

オレのフィールドに揃った師弟コンビ。やはりこの二人がいると心強いぜ……よし、これで場は整った。

 

「そして《魔法大学》の効果により、《ブラック・マジシャン・ガール》のレベルは2つ上がり、攻撃力も500ポイントアップするぜ!」

 

《ブラック・マジシャン・ガール》ATK:2000→2500 レベル:6→8

 

「一気に2500もの攻撃力のモンスターを並べたのは評価できますが、それでは私を倒せませんわよ」

「焦るなよ……まだ手札には1枚カードが残ってるぜ! ライフを1000支払いマジックカード《拡散する波動》を発動! これにより、オレの場のレベル7以上の魔法使い族一体は、相手の全てのモンスターを攻撃できる!」

 

マナが自分の持つ杖を頭上に掲げる。すると杖に段々と魔力が宿っていっているのか黒い光を放ちだしている。

 

「《ブラック・マジシャン・ガール》に全体攻撃……けれど私の《ブラック・マジシャン》とは相打ちですわ」

「フッ……バトルだ! 《ブラック・マジシャン・ガール》で《ブラック・マジシャン》を攻撃!」

「コナミバカなの!? それじゃあ相打ちになって攻撃の回数が一回減るじゃないの!」

「そんなプレイングミスをするとは、所詮庶民ですわね」

 

先に《マジカル・コンダクター》を攻撃せず、同じ攻撃力の《ブラック・マジシャン》を攻撃したことに、ツァンは起こった様な声で、メイは嘲笑うかのように言ってくる……だが。

 

「それはどうかな?」

「どういうことかしら?」

「おかしいと思わないか? オレはまず、《ブラック・マジシャン》を墓地から出しているが……《ブラック・マジシャン・ガール》の効果を思い出してみな?」

 

オレに言われて、ゆまもツァンもメイも、マナの効果を思い出している。

 

「あっ! 確か墓地の《ブラック・マジシャン》の数だけ攻撃力が300ポイント上がりますよっ!」

「そうだった! でもそれだと……」

「なぜ先に《リビングデッドの呼び声》を使ったというのかしら……?」

 

3人ともマナの効果を思い出して、オレのプレイングに疑問を覚えている。

墓地にマハードがいればマナの攻撃力は2800、相手の《ブラック・マジシャン》を倒しつつさらに攻撃力は300上がり大きくアドバンテージをとることができた。

だがそれをしなかった……その答えは、今から教えてやるぜ!

 

「このカードを使うために、オレは先に《ブラック・マジシャン》を蘇らせたのさ。リバースカードオープン! 《ブラック・スパイラル・フォース》!」

「ブラック……なにあのカード」

「このカードは、オレの場に《ブラック・マジシャン》が存在するとき、そのカード以外のオレのモンスター1体の攻撃力を2倍にする!」

「に、2倍ですって!?」

 

《ブラック・マジシャン・ガール》ATK:2500→5000

 

「攻撃力5000……すごいですよぉ!」

「攻撃力5000で全体攻撃……そんなことが」

「さあいけ、《ブラック・マジシャン・ガール》! 《ブラック・マジシャン》を撃ち砕け、ブラック・バーニング!」

『お師匠様を攻撃するのは申し訳ないけど、本物のお師匠様の力を込めて……ブラック・スパイラル・バーニング!!』

 

マハードから力をもらい、いつも以上の魔力のこもった魔力弾をメイの《ブラック・マジシャン》へと放つ。

その巨大な力に耐え切れず、《ブラック・マジシャン》は跡形もなく消え去った。

 

「きゃああぁ!!」

 

メイLP:4000→1500

 

「そんな……こんな庶民に私が……?」

「これが最後だ……《ブラック・マジシャン・ガール》! 追加攻撃!」

『とどめのー……ブラック・スパイラル・バーニング!』

「っぅ……きゃあああぁ!!!」

 

メイLP:1500→0

 

マナの攻撃が通って、ライフが0になったことを表すピィーという機械音が響き渡る。

 

「オレの勝ちだぜ、メイ喜多嬉!」

 

この店を賭けた一戦は、オレの勝利という店側には最高の結末を迎えた。




ということで、《ブラック・マジシャン》が大活躍、ネオス並みの過労死をしそうなぐらい登場しました。

途中登場した《天よりの宝札》。こちらはアニメ効果となっております。
また本作品での、《天よりの宝札》・《運命の宝札》などの大量ドローカードを有する宝札シリーズは一部カードを除き、途中で解説したとおり、この時代には既に生産中止していて入手は困難となっており、持っているのはほんの一握りという設定です。そしてそのために制限止まりというご都合主義となっています。
アテムがシンクロを使わず当時のデッキを使うという設定上、こうしました。遊星たちに使わせたらいとも簡単に大量展開からのワンキルされそうですし……これに関しては、ご理解いただければと思います。

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