赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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助けた見返り

デュエル終了と同時に、俺が表へと出てアテムは引っ込む。

交渉とかの普通のときは俺がやるほうがいいだろうしな。

 

「さあメイ、お前が負けたんだ。約束は守ってもらうぞ?」

「キィィィ! 庶民如きに負けるなんて……」

「庶民だろうと負けたんだから約束守りなさいよ!」

「そ、そーだそーだー」

 

悔しがるメイに、ツァンが言ってゆまは……なにあれ煽りか?チンピラ集団の真っ先にやられるやつみたいな。

 

「どうしたメイ? まさかデュエリストともあろう者が約束を反故にするなんてことはないよな?」

「っ……わかりましたわ。約束どおり、この店は諦めますわ……行きますわよ。こんなところ、長居する必要はないわ」

 

二人の黒服を引き連れて、メイが俺たちの前から立ち去る。

ふぅ……何とかこの店は守れたか。全部アテムのおかげだが。

 

「いやー赤帽子君、助かったよ! ありがとう……君のおかげで店を守ることができた」

「いいってことよ」

 

店長さんが俺に握手しながら感謝の気持ちを伝えてくる。実は何もしてない俺からしたら複雑だけど。

 

「すごかったですよコナミさん! 最後のあの連撃カッコよかったですよぉ!」

「ふん、少しはやるじゃないの。ちょっとぐらい認めてやってもいいわよ」

「何でお前はそんな上から目線なんだ」

 

ゆまはまたあのキラキラした瞳で言ってくれているが、ツァンは少し上から目線……というかこれはあれか。あの……ツンデレ?とかいうやつか。

 

「なんか今失礼なこと考えてない?」

「い、いやそんなことないぞー?」

 

元から少し不機嫌そうな顔をしてるのが、今は完璧に俺をにらんでる。なんだこいつエスパーかよ……。

 

「まったく……けどあんた強いのね。シンクロも無しに、しかも使うのは結構昔のカード……おまけに伝説といってもいいぐらいのレアカードの《ブラック・マジシャン》まで持ってるなんて」

「あっ、そうですよぉ。それ気になってました。なんで持ってるんですか?」

「拾った」

「え?」

「カードは拾った」

 

ポーズを決めながら横ピース付きでドヤ顔で言う。

昔から持ってましたーって言おうにも20歳の俺が言っても、20年前でも高いこのカードを持ってるんじゃ説明にならない。

 

「うわぁ……」

「ちょっと、それ本気で傷つくからやめようか」

 

キメてる俺を、ツァンが痛いものを見るような目で見てくる。

ちょっとふざけただけなのにここまで変な目で見られるなんて。

 

「あんたが気持ち悪いポーズするからでしょ。けど、説明する気はないってことね」

「気持ちわ……まあな、訳ありってやつだ、そのうち話してやるよ」

「じゃあ、そのときを待ってますよぉ!」

 

ツァンさんが俺のライフを確実に削ってくる。生ける刃物だよこの子。

 

「あー、コナミくんだっけ?」

「そうっすけど……」

「この店を助けてもらったんだ、何かお礼をさせてくれないか?」

「お礼……別にそういうの目当てでやったんじゃ……あっ」

 

俺たち三人の話も一段落したところで、店長さんが俺に話しかけてくる。

お礼したいといっても、別にそれ目的でもないし断ろうと思ったが、ひとつ思い出した。確かこの人副業的なものとして……。

 

「確か店長さん、マンション経営してるよな?」

「ああ、してるよ。まだまだ住居人は少ないがね」

「そこで店長さん……一部屋俺に貸してくれないか?」

「……もしかしてコナミさん」

「住むとこないの?」

 

部屋を貸してほしいの一言だけで、2人になぜか住むところがないのがバレた。なぜだ、解せぬ。

 

「……ない。昨日こっちに来たからな」

 

まさかサテライトから来たなんて口が裂けても言えないからこれは隠すが。

 

「うわぁ……あんなレアカード持ってるのに住むとこないって、あんた何者よほんと」

「部屋を貸してくれか……ちょっと待っててくれよ」

 

店長さんが店の中へ戻る。一体何しにいったんだ?

 

「コナミさん家ないなんて昨日大丈夫だったんですかぁ?」

「昨日は近くのホテルに泊まったんだ、お金は少しならあるしな」

「お待たせお待たせ、ほら」

 

ゆまと喋ってると、店長が駆け足で戻ってきた。

その手には何かを持っていて、それを俺に渡してくる。

 

「これは……?」

「鍵だよ、マンションのね」

「えっ、いいのかこんな簡単に!」

「当然、本当ならいろいろと手続きしてもらうが……俺からしたら店を助けてもらって職も失わずにすんだんだ。これぐらいさせてもらうよ」

 

なにこの店長さん、見た目変なのに超優しい……けどこれは助かるな、手続きなんてことになったら俺に住民票なんかないからな。

 

「すまないな店長さん……助かるよ」

「気にしなさんな。ただ、少しは安くするけど家賃はよろしく頼むよ?」

「それは当然だ、きっちり払わせてもらうよ」

 

鍵を受け取りながら頭を下げる。家賃を払うのは当然だが……そうなると仕事を見つけないとな。

 

「じゃあ、すぐそこの建物が俺のマンションだから。部屋は2階の202号室だから、後で見に行くといいよ」

「了解。ほんとありがとう店長さん」

 

もう一度頭を下げる。店長さんは「ハッハッハ」なんて笑いながら、店へと戻って商売を始めていた。

 

「よし、保管庫行く前に部屋見に行こうかな」

「保管庫?」

「あっ……」

 

しくった。近くにツァンとゆまがいるの忘れてた。

間違えても保管庫にD・ホイールを奪いに行くなんて言えねぇ。

ここはどうするか……。

 

「いやー……そのぉ…」

「保管庫に行くなんて、何かあったんですかぁ?」

「うー……あっ、なんだあれはー!」

「えっ、なんですかっ!?」

 

ここは逃げるしかない、そう決めて古典的だがゆまたちの後ろを指差す。

それに釣られて、ゆまが後ろを振り返る……その瞬間に、走る!

 

「って! ゆまちゃん、そんなの嘘に決まってるでしょ!」

「あうっ!? あっ、コナミさぁん!」

「悪いな2人ともー! またどっかで会ったらよろしくなー!」

 

走って2人から離れながら大きな声で言う。まるで雑魚キャラの捨て台詞みたいな状態になってるけど……しょうがない。

 

「逃げられたか、くそー」

「あぅぅ……何か知られたくないことだったんでしょうか?」

 

悔しがるゆまと心配そうな顔をしたゆま。その2人をおいて、俺は予定を変更して先に保管庫のほうへと走った。

2人にはすまないけど、こっちの事情はまだ知られるわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 

 

「ここが保管庫か……ほぉ、無駄にでっかい建物だことで」

『それに、入り口には見張りが2人いるな……普通に正面からは無理か』

「だな……ん? あの蟹みたいな頭の男は……」

 

保管庫の様子を見ていると、物陰から俺のように保管庫を見ている男の存在に気づいた。

すぐにその場から離れたから一瞬しか見えなかったが、あの姿は……。

 

「……これは、面白いことになるかもな」

『……?』

「よし、裏へ回ってみるか」

 

さっきの男が誰か、確かなことは分からないが、予想はできてるしこんな昼間にコソコソと様子を伺いながらすぐに立ち去る。恐らくあいつも、ここに何かを奪われて、それを取り戻そうとしてるんだろうな。

さて、正面からの突入が厳しいなら裏口やら換気口とかから侵入すればいい。

とりあえずはそういうとこがないか探さないとな。

 

「ふぅむ……っと、あった」

『換気口か……人一人は楽に通れそうだな』

「ああ、後はこの建物の見取り図でもあればいいんだが……ハッキングしようにもパソコンがないとな」

『なら、ネカフェに行くぜ』

 

……なぜだろうか。今のアテムにその昔の1コマ……「なら、サ店に行くぜ!」が思い出された。あのときのアテムには噴いたなぁ、遠目から見てたけど。

 

「ネカフェは……さっきのカードショップの近くにあるな」

 

まだシティの建物の位置が分からないから、地図を頼りに近場のネットカフェを探すと、さっきのカードショップの近くにある。丁度いいし先に部屋がどんなのか見てみるか。

こうして、ここに来てまだ少しだというのに、俺とアテムは新たに生まれた目的地へと向けて歩き出した。

 

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