赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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対戦相手は誰なのか、タイトルバレです。


実技面接 VSゆま(前編)

「――では、これで面接を終わります」

「ありがとうございました」

 

昨日ゆまに教師の仕事を紹介され、彼女を送ってからアカデミアに電話したところ、

 

「あっ、それでは明日の朝9時に、アカデミアの方にお越しください。その際履歴書と……」

 

などといろいろ言われてあっさりと面接が決まり、朝から面接を受けてたった今終わった。

教師に面接なんてあるのかとかなんか複雑なシステムなんじゃないかとか思ったが、何でも今このアカデミアは絶望的に人員不足らしく、やむを得ず面接で臨時の教師を求めているらしい。

まあそのおかげであっさりと俺の仕事が決まりそうなんだが。

 

「では、続いては実技の試験となりますので、デュエルフィールドの方へ案内します」

「……ひょ?」

 

えー、面接だけで「ちょろいぜ」とか思ってたのに実技もあるのかよ……まあデュエリスト養成学校だから仕方ないか。

でも結構大事なデュエルがあれか、アテムのデッキを組みなおしての初陣か。

 

「こちらになります」

「はい……」

 

面接官の人先導の下、このアカデミアにあるデュエルフィールドへと連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしてこうなった……」

「えへへ、コナミさん、よろしくお願いしますっ!」

 

場所はデュエルフィールド。昔のアカデミアと同じように、中央にデュエルリングで周りを囲うように椅子がある。そこには大量の生徒がいるし……なにこれ、俺のデュエルは見世物ですか?

というか一番謎なのはデュエルリングにディスクを構えて立っているアカデミア生の一人・・・…ゆまである。

どう見てもデュエルする準備が整っていて、デュエルする流れである。

 

「アカデミアの教師になる以上、本校生徒よりは強くあらねば困ります。まだまだ発展途上の生徒に負けるようなクズは本校には必要ないのです」

「……なるほど、分かりました」

 

俺の近くに来た変なおっさん。名札を見ればハイトマンと書いていて教頭のようだ。

しかし負ければクズなどと……気に食わないな。

 

「本校はエリートの集まりを目指しているのです。せっかく前飛ばしたのに、クズはこれ以上増やしたくありませんのでね……」

「あー、確かにそうですねぇ。クズよりもエリートの方がいいですもんねぇ」

「よく分かってますねぇ」

 

とりあえずは今は合わせておくが……こいつ、エリート思考だな。まさに出会った頃のクロノス先生だ。

しかも今ポロッと信じられないことを言ったな……「せっかく飛ばしたのに」か。どうやら俺の前にいた先生はゆまが言っていた家庭の事情か何かじゃないようだな。

……許すまじ。

 

「ハイトマン教頭……で、よろしいんですかね?」

「そのとおり、私が本校の教頭ハイトマンであります」

「ここの世話になる前に言わせてもらうよ……お前は、いつか俺が倒す」

「は?」

 

まだデュエルはできないが……いつかまたやるときがくれば、こいつは必ず俺が、コナミとして潰す。

一瞬呆けたハイトマンをおいて、俺はリングにあがる。

リングに上がる数段の階段の一歩目に足を触れた瞬間、俺の人格は入れ替わる。

 

「さあゆま、やろうぜ! オレとお前の初デュエルだ!」

「はいっ!」

 

ゆまと約束した今度デュエルしてくださいというのは奇しくもこういう展開で叶ったんだが……本当の俺じゃなくてアテムだから少し申し訳ないな。あっ、でも彼女が見たのはアテムのデュエルだけか……なら俺が…いやでもなあ、約束したときは俺だし……ま、まあ俺がまたデュエルするようになったなら真っ先に彼女と戦おう。……こんなプラスに考えるようになったのは、こいつのおかげか。

 

「デュエル!」

 

ゆまと同時に高らかに宣言するアテムの後ろ姿を、俺は少しの懐かしさと共に見た。その昔アテムや海馬たちの激戦をこうやって後ろから見てたときは単純にワクワクしてたなぁ……今じゃ心から楽しめないのに。

でも、アテムが来てから日に日にデュエルを楽しめてる気がする。いや、元々見る分にはそれなりに楽しんでたか……けど心の底からワクワクするようなことはなかった。プロデュエリストばっか見てた所為もあるかもだが。

それが今じゃアテムのデュエルの度にどうなるのかワクワクさせられてるんだ。少しづつ、俺も昔に戻ってきてるのかもしれない。

 

『アテム、ゆま……俺を楽しませくれるような激戦を期待してるぜ』

 

小さく呟いた俺の言葉は、アテムの「ドロー!」と言うセリフにかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

「手札から魔法カード、《予想GUY》を発動! 俺の場にモンスターが存在しないとき、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚できる! 現れろ、《クイーンズ・ナイト》!」

 

《クイーンズ・ナイト》DEF:1600

 

「そのカードはこの前のメイさんの……!」

「そしてオレは、まだ通常召喚を行っていない。《キングス・ナイト》を召喚」

 

《キングス・ナイト》ATK:1600

 

オレの場に前回のように2人の騎士が揃う。こうなれば、次に出るのは当然――

 

「――クイーンとキングが揃ったからジャックが出ます」

「その通りだぜ、来い、《ジャックス・ナイト》!」

 

前と同じくオレの場に集う絵札の三銃士。しかし今回は融合はない……

 

「オレはターンを終了するぜ」

 

このターンはゆまがどう出るかの小手調べの場は作れた……手札には《クリボー》があるから1ターンでとどめを刺されることはないはずだ。

 

「私のターンです、ドロー! 手札から《E・HERO エアーマン》を召喚します」

 

《E・HERO エアーマン》ATK:1800

 

「プリズマーから予想はできたが……やはりヒーローデッキか!」

「はいっ! 私のヒーローさんです! エアーマンの効果でデッキからHEROと名のついたモンスターカード、《E・HERO バブルマン》を手札に加えます」

 

召喚時にヒーローを持ってくるカードか……あれ1枚で融合素材モンスターは手札に揃うってことか。

後は融合がなければ助かるが……。

 

「さらに手札からマジックカード《融合》を発動します!」

「チッ、握っていたか」

「場の《E・HERO エアーマン》と水属性の《E・HERO バブルマン》を融合して」

 

ゆまのフィールドに現れた大きな渦が、手札から出てきた2体のモンスターを吸い込む、渦の中で混ざり合った2体が、1体の融合モンスターとして現れる。

 

「《E・HERO アブソルートZero》を融合召喚します!」

 

《E・HERO アブソルートZero》ATK:2500

 

「アブソルートゼロ……?」

『これはまた……初っ端から厄介なのが出てきたぞアテム』

 

コナミがそう言ってくるが……あのモンスターには強力な効果があるというのか?

 

「バトルです! アブソルートゼロで《キングス・ナイト》に攻撃です! 瞬間氷結―Freezing at moment―!」

「っ……この程度じゃ何ともないぜ」

 

アテムLP:4000→3100

 

「うふふっ、まだありますよっ! 速攻魔法《マスク・チェンジ》!」

『あのカードまで握ってやがったのかよ……』

 

コナミの声音が、少し余裕のないものに変わる。あの速攻魔法……チェンジということは他のモンスターに変えることでバトルを行えるようにする魔法か?

 

「このカードは私のフィールドのHEROと名のついたモンスターを墓地に送って、そのカードと同じ属性のM・HEROカードを特殊召喚します!」

「M・HERO? まだ他にもヒーローのシリーズがあるのか!」

「そうです! 私の場のアブソルートゼロをリリースして、水属性のM・HERO、《M・HERO ヴェイパー》を変身召喚!」

 

ゆまの場のアブソルートゼロの姿が光に包まれて新たなヒーローへと変身する。

 

《M・HERO ヴェイパー》ATK:2400

 

そのヒーローの姿を見たゆまが嬉しそうに声を弾ませる。

 

「カッコいいですよっ!」

「ハッ、オレからしたらまだまだ地味だぜ! もっと腕にシルバーでも巻いてみな!」

『ちょ……っぷ……くくっ……』

 

コナミが笑いをこらえてるが……やはりコナミもあのヒーローはあまりカッコいいと思ってないということか。むしろあの程度じゃまだまだ地味だな。

 

「むっ、カッコいいんですからねっ! ここでフィールドを離れたアブソルートゼロの効果が発動します! このカードがフィールドを離れたとき、コナミさんのモンスターを全滅させます!」

「なにっ!? 《サンダー・ボルト》の効果と同じだというのか!?」

 

オレの場に突然水が噴き上がり、その水圧にオレの場の残った2体の騎士たちが流されてしまった。

コナミが警戒していたのはこういうことか……発動条件は簡単なのにその効果は禁止カードの《サンダー・ボルト》。しかも今回の場合はバトルフェイズ中に《マスク・チェンジ》を使って新たなモンスターを出しているからバトルは続行されるのにオレのフィールドはガラ空き。

……これは、厄介な相手だぜ!

 

「まだ私のバトルフェイズは続いてます! ヴェイパーでコナミさんにダイレクトアタックします!」

「……ライフで受けるぜ!」

「……えっ!?」

 

ゆまのモンスターの攻撃を、オレは《クリボー》を使わずそのまま受ける。

 

アテムLP:3100→700

 

ライフが一気に1000を下回った。ゆまからすれば過去2回の戦いを考えればまさかこんな簡単に攻撃が通ると思わなかったのか驚きの攻撃をあげる。

 

「《クリボー》や《バトルフェーダー》はなかったんですか」

「いや……オレはコイツを呼ぶためにあえてダメージを受けたのさ! オレの場にカードが存在しない場合に直接攻撃を受けたとき、このカードを特殊召喚できる! 我が痛みを糧に現れろ、《冥府の使者ゴーズ》!」

 

オレの目の前に禍々しい黒い渦が発生する。そしてその中から、1人の男が出てきた。

 

《冥府の使者ゴーズ》ATK:2700

 

「そんな条件で出てくるモンスターが……!」

「勉強不足だぜゆま。さらにゴーズの効果は続く! オレが受けたダメージと同じ分の攻撃力を持つカイエントークンを特殊召喚する!」

 

ゴーズの隣にまたさっきのような渦が起きる。

ゴーズの力により生まれた新たなトークンによりオレの場には一気に高攻撃力のモンスターが2体並ぶ。

 

カイエントークンATK:2400

 

「うぅっ、一気に私が不利ですよぉ……カードを1枚伏せてターンエンドです」

「オレのターンだ、ドロー!」

 

ゆまのフィールドには攻撃力2400のモンスターが1体。オレのゴーズで倒せる。それに手札からモンスターを出せば一気にとどめまでいける。

だが……

 

『あの伏せカード、気になるよな』

「ああ……《激流葬》のような召喚反応型だと、オレに防御策は用意できない。攻撃反応型なら、モンスターを出して一斉攻撃をすれば、またオレに防御策は用意できない」

『それならここは、モンスター出さずの様子見の攻撃にするか?』

「それがいいな……ここは、石橋を叩いて渡るぜ。バトル!」

「っ!」

 

バトルの宣言をするとゆまの表情が少し歪む。あの伏せは召喚反応型だったのか?

だが、どれにせよ今取れる行動は1つ!

 

「ゴーズで《M・HERO ヴェイパー》を攻撃する!」

 

ゴーズの攻撃をゆまは何もせずただ受けた。あのカードは攻撃反応型でもなかったのか?

 

ゆまLP:4000→3700

 

「カイエントークン、ダイレクトアタックだ!」

「あうぅぅっ!」

 

ゆまLP:3700→1400

 

この攻撃もやはり通した。ならあのカードは……

 

『ブラフだったか、警戒しすぎたなアテム』

「そのようだな……だが、あっさり決まったんじゃ面白くないだろ?」

『まあな。けど、警戒しすぎてとどめを刺せなかったのが次のターンでどう返ってくるか』

「……オレはカードを伏せて、ターンエンドだ」

 

次のゆまのターンでいかにオレの今の場を消してくるのか……それを楽しみにしながら、オレとコナミは、ゆまがカードを引く姿を見つめた。




次回でゆまとアテムのデュエル決着となります。今のヒーローは簡単にワンキルしそうだから怖いorz

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