赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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蘇りし王の魂

「……」

 

ガサゴソと、コナミは廃材の山を漁る。D・ホイールを強化するのに使える物は無いかと、毎日たいした収穫も無いがやってるのだ。

が、やはりいいものなど見つからない。

 

「……ん?」

 

今日はもう切り上げようかと思ったとき、廃材の隙間から金色の光が漏れているのに気づいた。

その光の発生源を求めて、さらにコナミは廃材をどけていく。段々と強さを増してくる光。太陽の光がうまく反射してるのだろうか。

 

「……!」

 

そしてついに、指先がその何かを捉えた。掴み心地からして鎖だろうか。そんなことを思いながら、コナミは無理矢理それを引っ張り上げた。

 

「これは……」

 

ようやく取り出せたその物は、昔よく見たことのある、かのデュエルキング武藤遊戯が肌身離さず持っていた──

 

「──千年パズル、か…?」

 

あのアテムの魂が封印されていた、千年パズルだった。

だがあれは、アテムと他の千年アイテムと共に眠ったはず。それがなぜこんなところにあるのか…コナミは不審に思いながらも、しかしその懐かしさを覚える千年パズルを、首にかけた。

 

「……ふっ、遊戯は、これをいつもつけてたのか」

 

手で持って感触を確かめながら、少し昔のことを思い出す。

 

「……っ!?」

 

だが、急に頭に痛みが走り、いくつもの映像が流れ込んでくる。

 

『羽賀、お前弱いだろ?』

『ブラック・マジシャン!』

『オシリスの効果発動! 召雷弾!』

『相棒!』

『憎しみはいくら束ねても……脆い!』

『バーサーカーソウル!』

『いくぜマハード! ブラックマジック!』

 

誰かの視点で、緑の髪をした変な奴がフルボッコにされる映像、魔法使いが攻撃する映像、白い龍と男を前にしている映像……いくつもの映像がコナミの頭を流れては消えていく。

そして──

 

『不思議な事に、お前とはまた出会える気がするぜ──コナミ』

 

懐かしい声を最後に、コナミの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『─ナ──!─コナ────コナミ!』

「っ…ん……?」

 

どこからか自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。しかも懐かしい声で。

その声に起こされるように、コナミはゆっくりと目を開けた。

 

『目覚めたかコナミ。倒れてるからびっくりしたぜ』

「……! お、お前は……」

 

そんなバカな。今のコナミは、その思いでいっぱいだった。

今目の前にいて、自分の名を呼んでいてその正体は──

 

「──ア、テ…ム?」

『ああ、そうだが…って、そりゃ驚くに決まってるか。まさか、消えたはずの人間が目の前にいるんだからな』

「ああ…ちょ、ちょっと待ってくれ。状況を整理したい」

 

そう言ってコナミは、倒れた際にずれた帽子を直しながら、頭の中で状況を整理する。

・まず自分は千年パズルを拾った。

・頭にアテムの視点からの思い出が流れてきた

・頭の痛みに耐えれず気絶

・目覚めたら目の前にアテム

 

「……なるほど分からん! なんでここにいるんだよアテム!?」

『そう言われてもな…オレだって、なんでまた蘇ったのか分からないんだ』

「そ、そうか…そうだよな。ふぅ…でもとりあえずは」

 

残念ながらどちらにも原因は分からない。そうなると考えても無駄であろうと考え、一旦コナミはアテム復活の理由を考えるのをやめる。

そして、アテムの前に手を出し──

 

「おかえり、アテム」

『……ああ、ただいまコナミ』

 

アテムも手を出し、お互いに握手する。

 

「相変わらずコナミ、お前は不思議な奴だな。物や人に干渉できない、精霊の状態みたいな俺に触れるんだからな」

「あっ、その理由が分かったんだけどな…どうやら、俺の中にいる精霊の力のおかげみたいなんだ。これのおかげで、カードを実体化できるし、今みたいに精霊への干渉もできるんだ」

『なるほどな…じゃあ相棒たちといたときから、コナミの中に精霊はいたんだな』

「そういうことみたいだな。でも、あんな精霊ならいらねーって…」

『…?』

 

心底嫌そうな顔をしているコナミに、アテムは不思議そうな顔をするが、今はその話はする時じゃないと判断し、次の話に移る。

 

 

 

 

 

 

ここで少し、数十年経っても20歳というコナミについて説明しておこう。

コナミは遊戯たちが活躍した時代に、彼らと共にペガサスとの戦い・バトルシティでの三幻神を巡る戦い・奪われた三幻神を取り戻すためのドーマとの戦い・アテムの記憶を求めての三千年前のエジプトでの戦いなどを戦ってきた。ずば抜けた身体能力を武器に、城之内以上に肉弾戦要員でもあった。

そしてアテムの去った後は、双六の店でバイト。遊戯たちと一緒にのんびりとした生活を送っていく。

数年後、遊戯と共に旅をしていて精霊が自分の中にいることを知り、己の身体の秘密を知る──精霊の力により身体能力が上がっている・不老不死である、と。

不老不死は20歳の誕生日から始まるため、その日よりずっと20歳である。

その後、日本に帰るとコナミの事情を知った海馬の命令によりデュエルアカデミアへ入学する。入学させた目的は、デュエルアカデミアの実態調査だが。そこで遊城十代たちとの学園生活を送り、アカデミアでもいくつもの事件に巻き込まれるが解決へと導いた。

卒業後は十代と共に旅に出る。また自分が寝てる間に十代がパラドックスを倒しに行ったため十代の時代のコナミはいなかった。

旅の後は童実野町に帰り、双六の店でバイト。双六から店長の座を引き継いだ。

それから数十年…ゼロ・リバースによりネオ童実野シティとサテライトに分断されたが、コナミはサテライト側に店を構えていたためサテライトでの生活を送っている。精霊の力を使えばいつでもシティに行けるが、双六より受け継いだ店をおいていけないと思いサテライトに残っている。

その他にもチーム・サティスファクションの一員であるなど色々とあるが、それはまた別の機会に語ることにしよう。

 

 

 

 

「──って感じだな。アテムがいなくなってからだいぶ経つが、色々あったぞ」

 

場所を亀のゲーム屋─元双六の店─に移し、コナミはアテムに時代の流れを説明していた。

 

『みたいだな…だが、町がこんなに荒れるような事件が起きてるなんて……胸が痛むぜ』

「そうだよな…双六さんの店は、ミラフォで守ったから無傷だけど、逆に被害増やしちまったしな」

『他にいいカードがあったんじゃないか…』

「急だからしょうがねぇだろ?」

『そうだな…ところでコナミ。お前のデュエルディスクはどうしたんだ?』

「デュエルか……もう、十年以上やってないよ」

『なんだと…』

 

コナミはアテムから視線を外し、懐かしむようにショーケースのカードを眺めた。当然アテムは、コナミの発言に驚きを隠せない。

アテムの中でのコナミというのは、三度の飯よりデュエルが好きな生粋のデュエリストという認識なのだ。デュエルができれば何でもすると言うところがあるのが恐ろしいところだが、善悪の区別はつく奴だから不安視はしていないが。

そんなコナミが、まさか十年以上デュエルをしていない……アテムからすれば自分の復活よりあり得ないとしか思えない。

 

『どうしてやらないんだ、コナミ程のデュエリストが…』

「……アテムや遊戯たちや十代たちと一緒の時は最高だった。心が燃えるような、楽しいデュエルがいっぱいできた」

 

昔を懐かしむような声音で、呟くように言葉を紡いでいくコナミ。それをアテムは、静かに聞いていた。

 

「でも、三十年くらい前からかな…遊戯や十代ぐらいしか楽しくなるデュエルができなくなってな。他の奴らとはデュエルしてても圧勝、言っちゃ悪いが弱い。しのぎを削るようなデュエルができないと、やってても虚しさに襲われてな…。そんな状態でデュエルするのは、俺のデッキ……それに、こいつにも失礼だ」

『そいつは…?』

 

コナミがデッキを二つ取り出した。一つは長く使っていたと一目で分かる年季の入ったデッキ。もう一つは、一度か二度しか使っていないと思うぐらい綺麗なデッキ。

 

「お前から預かったあのデッキさ…基本はあの時のままだがいつも持ってた。でも、ふわふわした気持ちで、気持ちの入ってないデュエルを続けるのはダメだと思ってな…だから俺は、デュエルはやめたんだよ」

『……コナミ』

 

言うことは言ったのか、コナミはそれっきり俯いて黙ってしまった。

アテムもまた、無言でコナミを見ていた。

 

「……アテム?」

 

いきなり昔の自分のデッキを取ったかと思えば立ち上がるアテム。コナミの力で精霊と同じ状態のアテムは、現実世界に干渉できるのだ。

アテムの眼は、何かを決意したかのように鋭かった。

 

『デュエルしようぜ、コナミ。オレとなら、燃えるようなデュエルができるんじゃないか?』

「アテム……でも、今の俺じゃ……」

「おらぁぁコナミ! いい加減金払えやああ!」

「またお前か…」

 

いきなり店のドアが開き、男が怒鳴り声と共に入ってくる。

 

『コナミ、こいつは?』

「高橋秀行っていう、簡単に言えば土地代の金払えってしつこいんだよ」

「何をごちゃごちゃ言っとるんじゃあ! さっさと金を出すか、レアカードを出せやおらあ!」

「……」

 

アテムの見えない高橋からすれば、コナミは一人でブツブツと何かを言う奴にしか見えない。

右手の金属バットを向けながら脅してくるが、コナミやアテムからすればそんな物何ともない。冷静な顔色で高橋を見ている。

 

「ほおー、また無視するつもりか…それやったら、こうするだけじゃボケェ!」

「なっ!?」

 

入り口近くのショーケースに金属バットを振り下ろす。力任せに振り下ろされた金属バットの威力に耐えきれずショーケースはいとも簡単に割れてしまう。カードの上に散らばった破片が、カードに傷をつける。

 

「どうじゃあ、これでもまだださんつもりか!?」

『……コナミ、オレにお前の身体を貸してくれないか?』

「…! アテム…ああ、よろしく頼む」

 

アテムの表情からも声からも、怒りが見てとれる。そこから彼が何をするのか分かっているコナミは、彼に自分の身体を貸す。

デュエルのできない今の自分に変わってデュエルをし、高橋秀行に──罰ゲームを下さすため。

 

「っ!? なんじゃあ?!」

 

コナミの首から下げている千年パズルが突然輝き出す。コナミの額にはウジャト眼が浮かび上がり、表情が段々と鋭くなる。

そして──

 

「──おい、デュエルしろよ。カードを傷つけるような奴は、オレが許さないぜ!」

『そのセリフはヤバい気が…』

 

今ここに、伝説のキングオブデュエリストが、蘇ったのだ。




タッグフォースシリーズより、高橋秀行を登場させました。実際の高橋はこのような行為はしていない…はずですが、この小説内での話の展開上、高橋というキャラに作中のような行動を取らせました。
ゲーム内での高橋秀行はいいキャラなのでぜひタッグパートナーにどうぞ。

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