赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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黒薔薇の魔女

「うーん……目立った外傷はなさそうだな」

「はい、足元は熱かったですけど、火傷とかがなくてよかったです」

 

気絶している雪乃をベンチに寝かせ……おんぶして運んだらなぜかゆまにすごい顔をして見られたんだがあれか、「ちゃっかり女子高生の体を堪能する変態さん」とでも思われたのだろうか。だとすれば激しく遺憾である。

で、雪乃は未だ気絶していて、その間にゆまの体に火傷や傷はできてないかなど調べる。まあ何ともなかったからよかった。熱を感じるだけで体に外傷を与えるほどの力はなかったとかか?

 

「けど、さっきの雪乃さんは何だったんでしょうか……?」

「さあな……ただ、嫌な予感がする」

「コナミさん……?」

 

あの闇の力、あんな小さな蜘蛛一匹に宿ってるだけなのに中々強力だった。あの力の本体となると、覇王の時の十代並みじゃないか。だが、あんなに闇の力は強いのに、ゆまや俺の体に傷やダメージが起きたりはしなかった。ならあの力は、見かけ倒しで中身はほぼない、弱い闇だったのかもしれない。

けど、そんな強いのといつか戦うことになると思うと……俺もデュエルをできるようにならないといけないかもしれないな。

 

「ん……」

「お? 目が覚めたか」

「雪乃さん? 大丈夫ですか?」

 

寝てた雪乃が少し動き、その目がゆっくり開いてくる。

きょろきょろと視線が動くが、俺とゆまを捉えると小さく口を動かした。

 

「ボウヤにゆまさん……ここは?」

「覚えてないんですか? さっきここで」

「なんだよ雪乃、忘れたのか? スタジアムの熱気でしんどくなったとか言って外に出て公園を少し歩いてたら、運悪くサッカーボールが頭に直撃して気を失ってたんだぞ」

 

ゆまにかぶせるように言う。まあ闇の力だなんだなんて、信じてもらえなさそうだしな。ここは誤魔化しておく。

 

「そう、だったの……確かに、少し頭が痛いわね」

「あ……そ、そうですよぉ!」

 

我ながら無理のある話だが、どうやら信じてもらえたようだな。

闇に操られていた後遺症か頭痛があった様で助かったな。ゆまも俺の考えに気づいてくれたのかうまく合わせてくれたし。

 

「おっと、もうだいぶ時間が経ってるじゃないか。ほれ、早くスタジアムに戻ってデュエルを見に行くぞー」

「ええ……あっ」

「おいおい、大丈夫か?」

 

時計を見れば、スタジアムを出てからかなり経ってる。中のデュエルも進んでることだろう。

俺に言われて、起き上がってベンチから立ち上がった雪乃だが、急に動いたせいかふらついて倒れそうになった。

それを抱きかかえるように支えたが……まだ体の調子が戻りきってないのか?

 

「よっと」

「えっ、ちょっとボウヤ!」

「ギャーギャー騒ぐなよー? どうせまだ体が言うこと利かないんだろ?」

「むぅ……」

 

少し強引にだが、雪乃をおんぶする。俗に言うお姫様抱っこの形のほうが楽なんだが、さすがにそんなのしたら周りからの視線で殺される。

というか、またゆまが俺を見ている……やめてください、変態じゃないんです。

 

「ボウヤにしては、上出来よ……」

「素直にありがとうって言えよなぁ」

 

雪乃から回される腕の力が少し強ま……え、ちょっ、これ首が絞まるから!

これ以上何か言えば絞め殺すということか、こえー。

 

「ほらほらコナミさん! 早く行かないとですよ!」

「おいおい、子供かお前は」

 

ゆまがいきなり俺の手をつかんだかと思うと、そのまま引いていく。まるで子供に引っ張られる父親のようだ。ならおぶられてる雪乃はその妹とか……?

片手を取られたはいえ、雪乃位なら軽いから片手で支えれるから問題はないんだが。

「えへへー」と笑うゆまに引っ張られるように、背中には雪乃の温もりを感じながら、今なお熱い戦いが繰り広げられているであろうスタジアムへと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「観客席に戻ってデュエルを見てみると、仲間の男が棘のような物で縛られて宙に浮かされていた」

「な、なんでソリッドヴィジョンなのにプレイヤーを縛れてるんですか!?」

 

どうやらちょうどキングであるジャックへの挑戦権をかけた決勝戦が行われているようだ。

片方は予想通り遊星。それに戦っているのは……女性か。おぉー中々の巨乳、明日香やマナに負けず劣らず、むしろトップじゃないかあれは?城之内と共に拝みたかったものである。

 

「むっ、コナミさん目が変なとこを見てますよぉ」

「うえっ? ああ、いやほら……遊星の対戦相手がどんなプレイヤーか見てただけだぞ、うん」

 

危ない危ない、さらにゆまからの評価が下がるところだった。しかしあんなに大胆に谷間をさらすなんて、何でデュエリストはあんなに大胆なのか。

 

「ボウヤも子供ねぇ……私の胸なら、いくらでも見せてあげるけど?」

「おいおい、生徒が教師を誘惑するんじゃないぞったく」

「釣れないわね……けれど、何で観客の人たちはこんなに脅えていたりブーイングを飛ばしているのかしら?」

 

そうなのだ。雪乃の言うとおり、さっきから観客が目に見えておかしい。脅えている人や元気に応援してる人がいるかと思えば「魔女は消えろー!」などブーイングの嵐でもある。

これはまさか……。

 

「魔女って……もしかして、あの人が黒薔薇の魔女かしら?」

「あの魔女がなんでこんなとこに……選ばれたものだけが出場されるのに呼ばれるなんて、何とも怪しいことで」

「そんなこと言ってる場合じゃないですよぉ!」

 

ゆまに言われるんだが……所詮は観客の俺じゃあどうしようもない。それに遊星なら大丈夫だろ、棘に縛られて今目の前で地面に叩きつけられたが大丈夫だ、大丈夫なはずだ。

 

「十六夜アキ、か……黒薔薇の魔女って異名からはかけ離れた名前だな」

 

スタジアムにあるモニターには、戦っているデュエリストの名前とライフが表示されている。

十六夜アキ。どうやらそれが、黒薔薇の魔女の正体らしい。見た目はさっき言った通り巨乳だし目が少し釣り上ってて怖い印象を与えるが、どれを除けば美形だ。雰囲気的にも可愛いよりは綺麗といった感じか。

さてと、デュエルのほうに目を向ければ、さっきから少し変わり……遊星の場には《ジャンク・ウォリアー》がいるな。対する十六夜の場には《コピー・プラント》と《ダーク・ヴァージャー》がいて、永続トラップの《アイヴィ・シャックル》があって遊星のモンスターは全て植物族となってるな。

っと、どうやら十六夜がシンクロするようだな。

 

「シンクロ召喚! 咲き乱れよ、《ブラック・ローズ・ドラゴン》!」

「で、出たわ! きっとあれが、黒薔薇の魔女のエースよ」

「あれが……っ!」

 

俺の腰のデッキホルダーの中でカードが暴れている。きっと、今十六夜の場に出たあのカードに反応してるんだろうな……俺の、月華竜が。

 

「《ブラック・ローズ・ドラゴン》で、《ジャンク・ウォリアー》を攻撃! ブラックローズフレア!」

「墓地の《シールド・ウォリアー》の効果を発動! このカードを墓地から除外することで、《ジャンク・ウォリアー》の戦闘による破壊を無効にする!」

「だが、戦闘ダメージは発生する」

「リバースカード、《スピリット・フォース》! 俺への戦闘ダメージを、一度だけ0にする!」

 

ブラックローズドラゴンから発せられた紫色の炎がジャンクウォリアーを襲う。

だが、遊星が見事にそれをかわした……が、遊星の前に現れた障壁は炎を受け流してしまい、観客席のほうへと流れてくる。

チッ、よりによってなんで俺らアカデミアのほうにくるんだよ!

 

「マナ、いけるか?」

『私は攻撃力2000だよ!? 早く何か防御カード使おうよ!』

「だよなー、これでいいか」

 

適当に取り出したが、出てきたのは《ミスト・ボディ》。これをマナにつけといたらいいか。

 

『え、ちょっとコナミ!?』

「マナ、お前のことは忘れない……」

 

全ての炎をマナに受けてもらう。まあ装備カードのおかげで体が霧状になってるから問題ないだろ。

一瞬体が消えたかと思ったが、すぐに元通りになる。すげぇな、これもしかして最強の防御カードじゃないか。

と思えば霧を貫通してくるから炎はそのまま俺たちの方へ来てしまう。あらら、こりゃ駄目だな……スピリットバリアでダメージ0にしとくか、マナがいるから条件は満たしてるしな。

 

『いったぁ、絶対後で後悔させてやるからね!』

「お前の攻撃力が低いのが悪い、以上」

 

ズバッと言うと、怒ったマナが俺を殴ってくるが霧状の体では俺には当たらぬ、フハハハハハ!

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラップカード、《コズミック・ブラスト》! 俺の場のドラゴン族シンクロモンスターが場を離れたとき、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「今場を離れた《スターダスト・ドラゴン》の攻撃力は2500、これが決まれば!」

「あのボウヤの勝ちね」

 

デュエルは進み、クライマックス、というかトドメだな。

遊星の《スターダスト・ドラゴン》が十六夜の《ブラック・ローズ・ドラゴン》のフィールドを全て破壊するとかいうリセット効果を発動したのを無効にした。そして遊星がトドメとなるトラップを、今発動させた。

 

十六夜LP:1900→0

 

「決まったな、遊星がキングであるジャックとの対決だ」

「すごいですよぉ!」

 

喜んでるゆまとハイタッチ……ん?

……鬱陶しいな、観客がブーイングを始めた。

 

「魔女は消えろ!」

「ざまぁみろ!!」

「……」

『酷い奴らだ。確かに十六夜はオレたちを危険な目に遭わせたが、デュエルの中身はすばらしいものだったぜ』

「ああ……それに、彼女はあの力をうまく使えていないようにも見えるぞ。人を傷つけるために使わなければもしかしたら……」

『あの男は……?』

 

アテムがデュエルリングを指差している。

誰かが十六夜の元へと近づいてる……誰だ、あの男は。

十六夜にコートをかけた辺り、知り合いだろうか。いや、デュエル中は狂ったかのような形相の十六夜アキが安心しきった表情で身をゆだねているあたり、かなり信頼されている人物なんだろうな。

 

「あの男、怪しいな。一筋縄じゃいかないって感じの中身をしてそうだ」

 

俺の直感がそう告げている。あの男、中々に曲者だろう。

まっ、今は何もできないんだし、今は遊星のジャック戦を楽しみにするか。

 

『コナミ、オレは決勝が始まるまで外をうろついてくる』

「お? 分かった……1時間ぐらいしたら始まるからな」

『ああ』

 

アテムがマナを連れて、表へと出ていく。

マナまで連れていくなんて、何かあるのかね?まあ今は、決勝を控えてワクワクして騒いでる生徒たちが何かしないように監視しておかないとな。

 


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