「コナミ-!」
「うおっと、ラリー。久々だな」
あの後軽く3人で走り回り、クロウのアジトへと着いた。
Dホイールを降りると、恐らく遊星やクロウの到着を待っていたのであろうタカやラリーといった遊星の仲間がいた。
んで、今ラリーに走ってきて抱きつかれた。まあ俺のカード屋によく来てたしなぁ。デュエルも教えてやったし、懐かれてるんだろな。
「遊星、無事だったか」
「ああ。俺とクロウで、セキュリティは倒しておいた」
「ついでにあいつらの車をつぶしておいてやったぞー」
遊星に話しかけた男……あ、雑賀だ。こいつもこっちに来てたんだな。
確か遊星がフォーチュンカップを戦ってる時にラリー達が治安維持局に人質として取られてるのを助けたんだったかな? そのままこっちに居座ってるってとこか。
「セキュリティの車を!?」
「すげー! さすが伝説のチームの暴力野郎だ!」
そして俺の発言に、どこから湧いてきたのかあちこちから子供が押し寄せてきて、純粋な瞳を輝かせながら俺のことを見てくる。というか誰だ俺を暴力野郎なんて物騒な呼び方したのは。その時はデュエルできないのを補うためにひたすら力仕事だったからな。潜入したり襲ったり。そのせいか? 俺がそんな名前で呼ばれてるのは……解せぬぞ、ったく。
っと、まあこいつらからしたらセキュリティは天敵だろうしな……それの車になにかした俺はいい目で見られるのか。それにラリーと同じで俺のとこでデュエルをたまにしてたしな。俺の評価は高いのだろう、きっとそうだ。
子供好きな俺からしたら好かれるのは嬉しすぎる。
「どんなふうにしたのか聞かせてー!」
「コナミこっちー!」
「おいおい、あんま引っ張るなって」
ちょっと心の中でニヤニヤしていると、子供たちに腕を引かれていく。しょうがない、ゆっくりと俺の活躍を聞かせてやろうじゃないか。
遊星とかクロウの話も聞こえる距離だし問題ないだろ。
「あれ? そういや、いつも俺につっかかってくる奴がいないな」
「岬お姉ちゃんのこと? お姉ちゃんならあっちで……あれ? いない、どっか行っちゃったのかな」
ジャッカル岬。こいつも時たま俺の店に来てデュエルをしていたやつで、ある時に沢山の男に襲われてるのを俺が助けてやると、「余計なことすんな」みたいなこと言ってきてそれ以来なぜか敵視されてる。助けたのに解せぬ。
で、そいつは俺を見るとすぐ殴りかかってきたりするから今回も来ると思ってたら……今はいないのか?さっきまではいたみたいなのにな。
まあいいや、とりあえず俺のさっきの活躍を語ろうかな。子供たちから尊敬のまなざしで見てもらえるぞやっほい。
「ふぅむ、シグナーとダークシグナーか」
今は深夜頃。あの後、子供たちと雑談したり、その後には遊星の話を聞いて大体の状況は分かった。
なんでもこの世界では、5000年周期で赤き竜のしもべ的シグナーと、冥界の王とかいう奴のしもべみたいなののダークシグナーというのが戦っているらしい。そして、シグナーが負けると世界が滅びる……。
なんていうどっかの誰かが聞けば「バカバカしい、非ぃ現実的だ!」などと一蹴されそうなことになっているらしい。
そしてそのシグナーの証は、腕に痣としてついている変な模様。それがあるのが分かっている、つまり現状分かっているシグナーは、遊星・ジャック・十六夜アキ、そして龍亜の双子の妹だという龍可。5人いるらしいがもう一人のことはいまだ不明らしい。つまりは俺の可能性も……!
『コナミにこの世界を託すとか嫌だね』
「失礼だなこんにゃろー」
寝転がる俺の横でふわふわと浮いているマナがサラッと俺を罵倒してくる。いやいや、俺のおかげで世界を救ってくれる奴をやる気にさせてたりするからね?アテムとか十代とかさ、俺の活躍も少しはあるはずだ。
「コナミ、起きてるか?」
「んあ?」
ソファで寝転がっているんだが、近くで寝ているクロウが小声で話しかけてくる。
なんなんだ一体……というか寝ろよクロウ。
「遊星の奴、一人で行くはずだ。俺たちも行くぜ!」
グッと拳を握るクロウ。まあそんな気はするな、遊星のことだし。きっと俺たちを巻き込めないとか考えてるはずだ。
でも……
「悪いクロウ。俺はついていけない」
「なっ!? どうしてだよコナミ!」
「静かにしろよ、子供たちが起きるだろ? ……もしダークシグナーが現れたとして、卑怯な手を使う可能性もある。そうなると、ここにいるラリーや子供たちを取られれば遊星が不利になる。だから俺は、ここで皆を守るんだよ」
「そういうことか……その可能性は考えてなかったぜ。コナミ、ガキどもは任せた! 俺は遊星のほうにつく」
「任せとけ、しっかり守ってやる」
もう一度任せたぜ!と言ってクロウは出ていく。
……よし、Dホイールの音もしたし、大丈夫だろう。
「マナ、分かるか?」
『うん……すぐ近くに闇の力があるね。それも、かなり大きい』
俺がここに残った理由はこれだ。日が暮れてからずっと近くに闇の力の気配がある。
こんなのをほって戦力と呼べるのが少ないここを離れるわけにはいかないからな、俺ならこの力にも対抗できるはずだし。
「行くぞマナ」
『うん』
子供たちを起こさないように忍び足で外へと出る。
さて、闇の正体は何なのかね……。
すこし歩いて着いたのは周りに障害物と呼べるものがあんまりない広場のようなところ。
あからさまに闇の気配を放ちやがって……誘ってるのか?
「怪しいぞこれは」
『うん、どう考えても私たちをおびき出してるよ。コナミ、気を付けて』
「わかってる……っ!」
『来た!』
突然、今までゆるやかに吹いていた風が強くなり俺の体に吹き付ける。さらに黒い煙のようなものが辺りを覆う。
この闇の感じ、さっきからのもので間違いない。
そしてゆっくりと煙は俺の前に集まっていき、段々と人の形を作っていく。
「おいおい……嘘だろ? こいつは……」
『そんな、こんなことってあるの?』
煙でところどころ見えにくいが、その人型、この闇の感じ。それら全てから形成される人物を、俺とマナ……もっと言うならばアテムはよく知っている。
だがあいつは死んだはず……なのに、今俺の前でその姿を、ついに見せた。
「なんでお前が……」
『甦ったんだ、バクラ!』
コナミの前で段々と明らかになっていくこの闇の正体。それはオレからすればまさに因縁の相手。
ファラオの時に幾度となくオレの前に立ちはだかった男。
「ヒャハハハハ!! 俺様は甦ったぜ、王様よぉ」
「バクラ……!」
オレを見て高笑いをする盗賊王バクラ。3000年前のエジプトで、オレがファラオとして君臨していた時代に数々の財宝を奪い、7つの千年アイテムを奪おうとしてきた奴だ。だがこいつはオレや相棒が完全に消滅させたはず。なのに、なぜここに……それもあの時からもう何十年も経っているのになぜ今頃。
「王様が甦って俺様が甦ってもおかしくないだろ?」
「……」
『ん? アテム、よく見てみろ! バクラの目を!』
「目? ……っ、それは!」
暗くてあまり見えなかったが月の光にその姿が照らされて、その姿が浮き彫りになる。
目の白目の部分が黒くなり逆に黒目の部分が白目となっている。
つまり、それが意味するものは――
「バクラ、貴様ダークシグナーか!」
「ククク、そんなもののらしいな。だが、俺様からしたらそんなものどうだっていいのさ、テメェをつぶすチャンスを得れたんだからな」
「だが、なぜお前がダークシグナーとして現れた! お前は消えたはずだ」
「ククク、ダークシグナーってのはいいものだぜぇ? 死んだときに誰かに未練があると、邪神とやらが甦らせてくれてダークシグナーとなるのさ」
「その相手は、オレということか」
バクラにとってオレは恨んでも恨んでも許せない存在だろう。そんなオレが甦り、そのことに気づいて再び憎しみの炎を燃やしたバクラを冥界の王が利用した……そんなところか。
だが、こいつがまたこの時代に出たとなれば、やることは一つ。
「バクラ、デュエルだ! オレが勝って、お前を消し去るぜ!」
「上等だ、俺様もお前を倒すために甦ったんだからな!」
デッキをセットしてデュエルディスクを展開する。
この戦いに負けるわけにはいかない……バクラを、ここで止める!
「デュエル!」
「デュエルだ!」
始まったアテムVSバクラ。
バクラが甦ったのはダークシグナーとして、冥界の王とやらも厄介なことをしてくれたもんだ。
だが、負ければ当然死ぬことになるだろう。いや、もしかしたら死なさず生き地獄を見せるなんてこともあるかもな。
とりあえずは、アテムが勝つのを祈るしかない。
「わかってるだろうが、これは闇のデュエルだ。負けた方の魂は冥界の王の元へ還元されるぜ」
「そんなことは百も承知だ!」
「ならいい。俺様の先攻だ、ドロー! 手札から《可変機獣 ガンナードラゴン》を攻撃表示で召喚! このカードはレベル7だが、攻守を半分にして妥協召喚できる」
《可変機獣 ガンナードラゴン》ATK:1400
バクラの場に、機械でできたドラゴンだ現れるが、その効果によってその大きさは元のよりも半分のサイズになっている。
にしても、バクラがあんなカードを使うなんてどういうことだ?
「どうしたバクラ。前のお前のデッキと違うみたいだな」
「俺様のデッキはまだ手元にねぇのさ。だから、さっき不良っぽい銀髪女を消してデッキを拝借したのさ」
『ん? 銀髪……ガンナードラゴン……まさか!?』
「どうしたコナミ」
『あいつ、もしかしたら俺の仲間を消したかもしれない』
銀髪に不良、この時点でかなり絞られるのにそこにデッキを奪ってその中から出てきたのがガンナードラゴン。間違いない……さっきどこかに消えたって言われてたジャッカル岬のデッキだ。あいつのデッキを奪ったのかバクラめ……ただ恐らく、一部のカードを入れてるだろうがな。
「なんだと? ……バクラ、どうやらお前は、オレらの仲間を消したようだな」
「あぁ? それはすいませんねぇ、ククク。俺様を倒せば、戻ってくるかもなぁ! カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
できるものならやってみなと言わんばかりにニヤッと笑う。チッ、アテムがギャフンと言わせてやるからな。
「許さないぜバクラ……オレのターン! 場には1400のモンスター……なら、これでいくぜ! 《磁石の戦士β》、攻撃表示!」
《磁石の戦士β》ATK1700
アテムのフィールドには磁石の形をしたモンスター。α、γと揃えるとそれはそれは強いのになるんだが、それが中々できないんだよなぁ。
さて、攻撃力なら余裕で勝ってるが……岬のデッキなら伏せは恐らくあのカード。
「バトル! 磁石の戦士でガンナードラゴンを攻撃!」
「かかったな、リバースカード《スキルドレイン》! このカードは、フィールド上のモンスターの効果をすべて無効にする!」
「なにっ!? ということは……」
「そう、ガンナードラゴンは元の攻撃力2800になるぜ!」
《可変機獣 ガンナードラゴン》ATK1400→2800
バクラLP4000→3000
スキルドレインによって、ガンナードラゴンのサイズがみるみる内に大きくなっていく。
やっぱり、スキドレかよ……大抵のデッキに刺さるが、アテムのデッキなんてモロにその被害がでるな。
「ぐあっ!? くっ、やはり痛みは実体化してるか」
アテムLP4000→2900
「オレはカードを三枚伏せてターンを終了する」
先手を奪ったのはバクラ。ただ、これは闇のデュエルだ……ライフが残っていても体にダメージが来るから、肉体的にも堪えるからライフだけを見てたらダメだ。
現在アテムのフィールドはがら空き、スキドレで効果が無効にされる……これは、予想以上に厄介なデュエルになりそうだな。
バクラのカードを引く姿を見ながら、俺は流れてくる冷や汗を軽く拭った。
ということで、過去にDMキャラより登場と言っていた(元々はGXキャラと書いてましたがミスしてました)キャラは盗賊王バクラです。
ダークシグナー編のボス的キャラなので頑張ってもらいます。
ただ問題はバクラのデッキ……orz