赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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因縁の王の復活《後編》

「俺様のターン、ドロー! 《不屈闘士レイレイ》を召喚!」

 

《不屈闘士レイレイ》ATK2300

 

『あいつもスキルドレインのおかげでデメリット効果が消されてるぞ』

「なるほどな……あのデッキはスキルドレインによって効果を無効化して自分を有利にするビートダウンか。その召喚にオレのリバースカードが起動する! 《激流葬》。モンスターが場に出たとき、フィールドのすべてのモンスターを破壊する! 消え去れ!」

「チィッ! めんどくせぇカードを……一枚セットしてターンエンド!」

 

よし、バクラのモンスター陣は一掃できた。今が攻める好機だな。

と言ってもスキドレがやっぱり邪魔だ……あれのせいでアテムがうまく動けないかもな。

 

「オレのターン、ドロー! 《熟練の黒魔術師》を召喚し、ダイレクトアタックだ!」

「トラップ発動、《ドレインシールド》。テメェの攻撃を無効にしてその攻撃力分ライフを回復するぜ!」

 

バクラLP3000→4900

 

「ありがたく頂戴するぜ」

「クッ、躱されたか……カードを伏せて、ターンを終了する」

 

アテム

LP2900

手札:1

場:《熟練の黒魔術師》

  伏せ3枚

 

バクラ

LP4900

手札:3

場:《スキルドレイン》

  伏せ1枚

 

「俺様のターン! さぁて、ちょっと暴れさせてもらうかククッ。《バイス・ドラゴン》を特殊召喚、テメェの場にモンスターがいて俺様の場にいないとき特殊召喚できるが、攻撃力は半分。だがそれもスキルドレインで無効だ。さらに手札から《神獣王バルバロス》を妥協召喚、同じく攻撃力は3000になるぜ!」

 

《バイス・ドラゴン》ATK2000

《神獣王バルバロス》ATK3000

 

「一気に高攻撃力のモンスターが二体……!」

「いけ、バイスドラゴン! 魔術師を噛み潰せ!」

「そうはさせない、《聖なるバリア -ミラーフォース-》! お前の攻撃表示のモンスターをすべて破壊するぜ!」

「悪いがそれぐらい読めてるぜ、《魔宮の賄賂》! このカードで、王様の発動したトラップカードの効果を無効にする!」

「ならばオレはこれだ! 《トラップ・ジャマー》、バトルフェイズ中に発動したトラップカードの発動を無効にする!」

「クソがっ!」

 

罠と罠の応酬。その果てに残ったのは、アテムのミラーフォース。これで、もう一回バクラのフィールドモンスターは一掃できたぞ。

 

「チィッ……2枚伏せてターンエンドだ」

 

悔しさからか、歯ぎしりをしながらターンを終える。

このターンでなんとか大ダメージといきたいどころだな……って、さっきから俺は変なフラグを建てすぎてるか。

 

「オレのターン! 《磁石の戦士α》を攻撃表示で召喚!」

 

《磁石の戦士α》ATK1400

 

「いくぜバクラ、消えたジャッカル岬の痛み、その身で受けるんだな! 磁石の戦士と熟練の黒魔術師でダイレクトアタック!」

 

「ぐうぅぅっ!」

 

バクラLP4900→1600

 

熟練の黒魔術師の魔力弾と磁石の戦士の剣がバクラの体を痛めつける。

っし! これでさっきの回復された分も削れたしボードアドバンテージも有利だ。

 

「……ククッ」

「ん? ……カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

どうしたんだ?バクラの奴、俯いたまま動かない。

いや、わずかに動いてる。肩が小刻みに震えてる。

 

「ククッ、ヒャーハッハッハッ!!」

「……なにがおかしいんだ」

「このターンで俺様を仕留め損ねたことが、テメェの終わりだ。エンドフェイズ、《終演の焰》発動!」

「あのカードは……?」

『確かトークンを二体生み出すカードだ。発動ターンはセット以外の召喚を禁じられるが、速攻魔法だから相手のターンに使えばそのデメリットは回避できる』

 

後は確か闇属性以外にはリリースできないとかだっけな。

だが、あれをバトルフェイズに使っておけばアテムの攻撃を躱せていたのに……。

 

「生け贄素材、か」

『そういうことだろうな。気を付けろよアテム……バクラのデッキトップから、凄まじい力を感じるぞ』

「もうおせぇんだよ。テメェらはここで終わるんだ! 俺様のターン!」

 

バクラがカードをドローした瞬間、あいつの顔がニヤリと歪む。

今引いたカード……なんだこの力は、この感じはまるで――

 

「――神?」

 

そう、神。アテムの持つ三幻神のような、強大な力が感じ取れる。デッキの中に眠っていた時でもわずかに感じ取れたその力は、バクラの手に来た途端さらに増してる。

 

「ククク、俺様はリバースカード《死霊ゾーマ》を発動! これで俺様の場に罠モンスターのゾーマが現れる!」

 

《死霊ゾーマ》DEF500

 

バクラのフィールドに現れたのは効果の強力な罠だけどモンスターのカード。相手に戦闘破壊されるとその攻撃力分のダメージを与えるという中々に強力な効果だが……こんなところで使うなんて、やっぱりリリース要員か。

 

「さぁ、テメェらに見せてやるぜ……邪神をな」

「邪神だと……?」

『なにっ!? まさかそんなわけが……!』

 

邪神。その単語を聞いた瞬間嫌な予感が体を駆け巡る。

だがあのカードは、俺と遊戯たちで旅をしてる時に封印したはずだ……。

 

「フィールドのトークン二体にゾーマを生け贄にささげ!」

「っ!?」

 

バクラの手札にあるたった一枚のカード。それを天高く掲げる。

その力を開放する時を待ちわびていたのか、カード自身が光を放つ。

 

「地面が割れているだと……!?」

『この力、やっぱりそうなのか!』

 

ゴゴゴというでかい音と共に地面にひびが入り、地震が起きたように大気も揺れている。

俺たちの頭上だけで不自然に暗雲が立ち込めてきて、不吉な感じをひきたたせる。

そしてバクラはついに、その召喚するカードの名前を宣言する。

 

「《邪神ドレッド・ルート》、降臨!」

「邪神……ドレッドルート?」

 

ディスクにカードを置いてすぐ、割れた地面からゆっくりと巨大な何かが姿を現してくる。

間違いない……この姿、力は――

 

『まさか、またその姿を見ることになるとはな――邪神さん』

 

邪神。それはアテムの持つ三幻神の対となる存在だ。今出てきた《邪神ドレッド・ルート》に《邪神イレイザー》《邪神アバター》の三体がいて三邪神と呼ばれる。

三邪神とは、過去に俺と遊戯で世界中を旅しているときに戦った。ペガサスが封印していたのを何者かに奪われたらしく、最後には戦って俺の記憶の中でもトップ3レベルの激戦だったが……まあそれはおいておいて。

結果的には、俺と遊戯のコンビで再びペガサスのもとへと返して封印された。

だからこそ、今ここに邪神がいるとかありえないはずなのにな……。

 

《邪神ドレッドルート》ATK4000

 

「この力……オベリスクの様だな」

「クククッ、こっちのほうが、凶悪だと思うぜ? ドレッドルートの効果発動!」

 

その姿を完全に現したドレッドルートから、黒い瘴気のようなものがフィールドを覆う。

そしてアテムのモンスターたちが、怯えているのかその体を小さくして震え上がっている。

 

《磁石の戦士α》ATK1400→700

《熟練の黒魔術師》ATK1900→950

 

「どういうことだ!?」

「ドレッドルートは恐怖を持って場を制圧するのさ! こいつが場にいるとき、テメェのモンスター共は攻守が半減するぜ! 当然、”神”の名をもつこいつに、ほかの効果は効かないぜ」

 

神にはモンスター効果と罠は効かず、魔法は一ターンのみ。そのせいで、バクラのスキルドレインはドレッドルートには無効。その結果、アテムのモンスターは攻撃力が半分になっている。

 

「クッ、これじゃあオレのライフが……!」

「さぁて王様よ。邪神の力を受けて消えちまいな! ドレッドルートで《磁石の戦士α》を攻撃! フィアーズ・ノックダウン!!」

 

ドレッドルートがその巨大な拳を、アテムの場のモンスターへと振り下ろしてくる。

この攻撃を食らえばアテムのライフは……!

わずかな希望を胸に、アテムのセットしてるカードを確認する。

 

『《次元幽閉》と……《永遠の魂》……』

「オレの……負けだ」

『アテム!』

「クッ……コナミ!!」

 

アテムLP2900→0

 

ドレッドルートの攻撃による衝撃で、地面にひびが入っていき、砂埃で辺りが覆われる。

何も見えなくなり、デュエルの終了を告げるピィーという音をかき消すように、大きな声でアテムが俺の名前を呼ぶ。

 

「コナミ! どうやらオレはここで、ゲームオーバーだ。だがお前なら、きっと奴を、バクラを倒せるはずだ!」

『アテム……!』

「信じてるぜコナミ……オレの、相棒」

 

俺の体から、いくつもの黄色い粒が空へと飛んでいく。これはきっと、アテムの魂。

そして魂を失った体は、死人と同じ。立っていることもできず、地面へと倒れこんだ。

 

「ククク、ヒャーハッハッハッハ!!!! ついにやったぜ、あの鬱陶しい王様を消し去ってやったぜ!!」

 

バクラの高笑いが響き渡る。砂埃が晴れて、倒れる俺の体を見てその笑いがさらに大きくなる。

 

「ヒャッハッハッハ!!! どうしたコナミさんよぉ? 早く姿を見せて俺様に挑めよ。俺様に勝てば、俺様のせいで消えていった奴らの魂はみーんな帰ってくるぜ?」

『っ!? ジャッカル岬やアテムの魂が……』

 

だが、今の俺にはデュエルは……無理なんだ。

すまないアテム……お前から信じてもらったってのに。

 

「……っち、デュエルができなくなったってのはまじもんの話かよ。くだらねぇ……お前はまた、別の機会に消してやるよ。じゃあな、根性なし野郎」

 

またしても、あの腹の立つ高笑いをしながら、バクラの体はゆっくりと闇に同化していき、ついにその姿を消した。

 

「……」

 

俺の意識を体へ戻し、もぞもぞと動いて起き上がる。

さっきのダメージが体には残っていて、中々思うように動かず仰向けに倒れてしまう。

 

「根性なし野郎、か……」

 

バクラに言われた言葉が頭の中で繰り返される。

そうだ、今の俺は大事な仲間がやられたってのに、過去のトラウマに負けて何もできなかった根性なし。

こんな俺に、一体何ができるっていうんだ。

 

「うっ……鉄片が腹に刺さってるじゃんかよ」

 

どうやら倒れたときに、運悪く尖ったのが刺さったようだ。っち、体が動かないときに運の悪い。

ジワーッと俺の服が血に染まっていき、地面にも血が流れていく。

このままじゃ死ぬっていうのに、頭は至って冷静。いっそこのまま死んでしまえば楽なのにな……。

 

「コナミ!?」

 

昔から俺の傍でよく聞いてきた女の子の声が聞こえる……マナ、か。

だがその姿を確認する前に、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 




ということで、アテムさん敗北。粘りもなくあっさり負けましたが、当然対バクラの山場はまだ先ということです……ここからはコナミ君に頑張ってもらいましょう。
なお、作中登場の神・邪神は全て原作・漫画・アニメ効果基準です。決してヲーやドジリスにはなりませんのでご安心ください。

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