赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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たくさんのご感想ありがとうございます。
これからも頑張らしていただきます。
今回は、デュエルシーンはなしです。


いざシティへ

アテムの勝利。それはすなわち、高橋秀行への罰ゲームが確定したことでもあった。

 

「まさか、わしがコナミなんぞに負けるとは…」

「……」

 

吹き飛ばされた時に背中を打ったためか高橋は動かず倒れたまま呟いた。そこにアテムがゆっくりと近づいていく。

 

「さあ高橋、約束通り……罰ゲームを受けてもらうぜ」

「罰ゲームじゃとお…?」

『まあアテム、あんま酷いのはやめてやれよ? グリードぐらいのあんま害のない…』

 

俺の言うグリードとは、その昔牛尾という高校生にかけた、葉っぱやゴミがお金に見えるという罰ゲームだ。

 

「いや、こいつへの罰ゲームはもう決めてある…」

『……そうか、なら任せるよ』

「ああ…さて高橋。お前に、罰ゲームだ」

「……?」

 

アテムがゆっくりと手を上げて、人差し指を高橋に向ける。ここで、いつもなら額にウジャト眼が浮かび上がり何らかの罰ゲームが起きるが──

 

「今壊したあの店のショーケースの修理、それとあの店で無償で働いてもらうぜ」

『……ひょ?』

「は?」

 

アテムから飛び出た思わぬ提案についどこぞの虫野郎のような反応になってしまったが……つまり、

 

『バイトってことか?』

 

しかも無償でときた。これはさらに言えば──

 

「わしにあの店でただ働きせえってことか」

「ああ、オレはもうすぐしたらあの店をしばらく離れる。その間のお守りだ」

『……なるほど』

 

なるほど考えたな。このサテライトで長期間店をガラ空きにするなんてことをすれば、泥棒に入られて荒らされて大変なことになるのは目に見えてる。そこで、腕っぷしあり、デュエルの腕も立つ奴を置いておければ気兼ねなく動けるってもの。

 

「ふん、わしがあの店をさらにボロボロにさせたらどうするじゃ」

「いや、お前はそんなことをしない…デュエルをすれば、相手がどんな奴か何となく分かるもんだ。お前、根は良い奴だろ」

「……」

 

デュエルってそんなことまで分かるのか…ただ戦ってるだけの俺には分からん。ただこの高橋、確かに良い奴という見方もできる。サテライトで飢え死にしそうな奴に食料を分けて子分にしたり、子分の喧嘩に仲裁したり。そのおかげか子分が結構いて小さな派閥になってるぐらいだ。

 

「それにお前が、デュエルの前に決めた約束を破るとも思えない…罰ゲームをちゃんと受けてもらうぜ?」

「……分かった。男に二言はない、わしがあの店を、われらが留守の間しっかり守ってやる」

『ほへぇ』

 

思いの外あっさりと高橋の折れたことについ変な声が漏れたが…え、なにこいつさっきの要素と合わせたら良い奴にしか見えないんだけど。なんで俺のことだけ目の敵のように嫌ってんの?

 

「頼んだぜ高橋」

 

倒れてる高橋を起こすためにアテムが手をさしのべる。

その手を取って起き上がり、背中についた砂埃を払いながら高橋が何かを喋り出した。

 

「いつもの無言の気持ち悪いコナミならお断りだが、今日のわれからは違う何かを感じたわ…」

『えっ?』

 

何俺、普段喋んないから嫌われてたの?実際はこんな喋るのに…って今日アテムと会うまではしゃべり相手いないから基本無言、おまけにやっときたと思ったらこいつだから喋る気にならず顔だけで反応。声を出そうとすれば喋らなさすぎて声が急には出ずパクパク口が動くだけ…あ、無言野郎だわ。

 

「普段は喋らないのは相変わらずか」

「あ?」

「いや何でもない。さて高橋。さっきも言ったが、もうすぐ…予定では明日からオレはしばらくあの店を離れる。留守は頼んだぜ」

「任せとけい、わしと他の奴らできっちり守ったるわ」

 

軽く高橋の肩をポンとして、アテムは店へと、高橋はどこかへと歩いていく。俺は当然アテムの後ろをついていく。

 

「コナミ、身体は返すぜ。いきなり入れ替わってもらって悪かったな」

『気にすんなって、代わりにデュエルしてもらったしお互い様だ』

 

アテムが千年パズルを軽く握る。すると少し輝いたかと思うと、俺は俺の身体に戻っていた。

 

「ふぅ、でだアテム…」

『どうした?』

 

店の中に入り、いつもの俺の席であるイスに座って、デッキを眺めているアテムに問いかける。

 

「明日から店を離れるってどういうこった?」

『簡単だ、シティに行く』

「シティ? あそこへ行ってどうするんだ」

『これに出るんだ』

「……これは」

 

アテムがテーブルに広がってる1枚のチラシを取り出した。

 

「フォーチュンカップ開催…?」

『読んでみたら、でかいデュエルの大会だ。そこには各地から選りすぐりのデュエリストもいるし、今のキングのジャック・アトラスも戦うようだ。そこなら、コナミの求める心燃えるデュエルができるんじゃないか?』

「……ってもなぁ、シティに行くのも一筋縄じゃいかねーぞ?」

 

シティに行くとなると、パイプラインとかいうとこをD・ホイールで短時間で駆け抜けなくちゃならない。さらには向こうに着いたとしても、過ごす場所がなかったりセキュリティにバレたら速攻で終わりな状況がずっと続くんだ。

2日前に俺の昔の仲間の不動遊星は行ったらしいが…無事なのかなあいつ。

 

『それでもだ、行かなくちゃならない。それにオレには、なぜオレが蘇ったのか、それを突き止める必要があるんだ』

「……確かに、謎でしかないお前のことを調べるにはサテライトじゃ難しいな。シティなら、前で言う博物館もあるしやりやすいか」

『ああ、頼むコナミ。シティに行こう!』

 

シティとサテライトの情報量など、雲泥の差にもほどがある。どう考えてもシティの方が情報は手に入りやすいしここにいるよりよっぽどいい。店を守るっていう使命もアテムのおかげで解決している。

となると……。

 

「……っへ、分かったよ。いつ出発する? なんなら、今すぐでも出れるぜ」

 

当然答えはイエスだ。それに何より──シティなら、アテムのする心が燃えるような、二転三転する勝負が見れるかもしれない。

 

『コナミ…ありがとう。いつ出るか……今すぐなんて、そんなすぐに行けるのか?』

「普通は無理だけど…俺はカードの力を使えるからな」

 

少しだけニヤッとしながら、1枚のカードを取り出す。

 

『そのカードは?』

「《ポジションチェンジ》。実際の効果はモンスターの位置を変える物なんだが…」

 

喋りながら俺はディスクを展開し《ポジションチェンジ》をセットする。

そして次の瞬間、俺の姿は店の中ではなく、表に出ていた。

 

『っ……すごいな、簡単に言えば、テレポートか?』

「ま、そういうことだな。これを5枚ぐらい使えばシティにはあっという間だ」

 

本当なら《緊急テレポート》っていうカードを使いたいんだが…如何せん最近でた【サイキック】てカテゴリーのサポートカードのせいでサテライトじゃ入手困難だ。

 

『よしコナミ、行こうぜ! シティでオレの復活した理由を見つけ出し、再びコナミにデュエルの楽しさを思い出してもらう!』

「ああ、その2つがテーマってとこかな」

 

アテム復活の謎・俺のデュエルへの熱を再び……これが、今回のシティ突撃の目的となる。後者はまだできそうだが、前者は長い道のりになりそうだ。

 

「っと、一応あれに乗ってテレポートするか」

『あれ?』

 

店の横にあるガレージ。その中へと俺は入る。

中には俺の拾ってきたガラクタやら工具やら色々と散乱してる。

でもそんな中で、ガレージの丁度真ん中だけは、絶対不可侵領域を使ったかのように周りに何もなく1つのバイクだけがあった。

 

『こ、これは……バイクなのか!?』

 

けどそのバイクを見てアテムが驚きの声を上げる。

まあ宇宙に飛んでいくこともできるしその他諸々の特別な効果を着けてたら段々ごつくなって……今じゃバイク要素は2輪てことぐらいか。

 

「バイクっぽくないけどカテゴリーはバイクだよ。それにこいつは、D・ホイールっていうのさ」

『D・ホイール……』

「って言っても、これでシティなんか言ったら目立つから他ので行くけど」

 

ガレージの隅っこにおいてある布をかぶせたD・ホイール、そっちならまだ普通のだし問題ないだろう。

現在作成中だったが、基本的なところは完成してるしな。

 

「っし……じゃあ行きますか」

『ああ!』

 

布をどかしてD・ホイールに座る。アテムは俺の後ろにちょこんと座ってる……完全に精霊の状態にしてるから風の影響も受けなさそうだな。まあそうしてくれる方が俺も体力使わなくてすむから助かるが。

D・ホイールに乗って、俺は展開したままのディスクにまたカードをセットする。

 

「《ポジションチェンジ》発動!」

 

ヒュン、そんな音と共に俺とD・ホイールはガレージの中から姿を消した。


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