赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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今回はゆまとのハートイベント1の締めというところです。


シティ初疾走は女の子と

「よっと……D・ホイールも何も問題はなさそうだな」

 

公園のベンチにゆまを寝かせ、俺はD・ホイールに座る。

まあ、サテライトじゃないんだし、このシティで盗られたりなんかそうないか。……あ、けどさっきみたいなチンピラはいるのか。

 

「んぅ……あうっ!?」

「お? 目が覚めたか?」

 

いきなり変な声と共に飛び起きたかと思えば、キョロキョロと辺りを見渡してる。

そして俺の姿を捉えて固まったかと思うと……

 

「こ、コナミさぁぁん!!」

「うえっ!? ゆ、ゆま!?」

 

目が潤みだし、涙が零れてきた。

まさか起きてすぐに泣くとは……こ、これはどうするべきか。

 

「大丈夫だゆま……さっきの奴らはボッコボコにしといたから」

 

少し腰を落として目線をゆまに合わせる。そして自分に出せる一番優しいと思う声音で、ゆまに話しかける。

 

「コナミさぁん……ひうぅ……」

「大丈夫……落ち着け、な?」

 

泣いてるゆまの頭にそっと手をのせて、優しく撫でる。確かあれだ、昔アカデミアでレイが泣いてるときに出くわして、「こういうときは、黙って女の子の頭を撫でるんですよコナミ先輩」みたいなこと言われたからな。

 

それから、黙って頭を撫でてゆまの気持ちが落ち着くのを待っていた。

 

「っ……あうぅ……も、もう大丈夫ですよぅ……」

「えっ? ……ああ、悪い」

 

落ち着いて涙も引いたのか、顔を上げて喋ってくる。

これはあれだな、もう頭から手を離せという。

 

「うぅー……いきなり撫でられたら、照れちゃいますよぅ……えへへっ」

「ふっ、もう大丈夫そうだな」

「わわわ!」

 

ようやく笑顔のでたゆまに、安心した俺はついゆまの頭をくしゃくしゃに撫でた。あっ……レイの時はこれして「先輩! 女の子は髪の毛をセットしてるんですからあんまり乱さないで!」みたいに怒られたんだった……。

 

「あうぅ……ありがとうございましたコナミさん! 助かりました!」

「お、おう……悪いな、もう暗かったし、送ってやるべきだった」

 

あれ? 機嫌悪くなったりするかと思ったけど何ともないな……レイだけだったかあれは。

けど、本当にそうすべきだった……シティだからと安心しすぎた。暗いんだし女の子1人で帰らすんじゃなかったな。

 

「大丈夫ですよっ! 元はと言えば変な道に入り込んだ私が悪いですから……いたっ」

「どうしたゆま?」

「いたた……首の後ろが何か痛いですぅ……」

「首? ちょっと見せてもらうぞ」

「はい!」

 

ゆまの背中側に回って、首を見る。ゆまが見えやすいように髪をかき上げてくれたときに何気にシャンプーの匂いにドキッとしたのは内緒だ。

 

「これは……さっきの奴のナイフが掠ったのかもな、少し切れてる」

「あうっ!? で、でも掠り傷ぐらいなら大丈夫ですよぉ」

「いやダメだ……こういうのはちゃんと治療しないとな。ちょっと待ってくれよ」

「……う? コナミさん何してるですか?」

 

女の子だし傷になっても嫌だろうし、ここはしっかり治療してやろう。

そう思いながら俺は、デッキホルダーの中からカードを1枚取り出す。

 

「それは……《ブルー・ポーション》ですかぁ?」

「そうそう、これで傷もすぐ治るぜ」

「コナミさん、それはカードだからデュエルの時しか使えませんよぉ」

「まあ見てろって」

 

取り出したのは《ブルー・ポーション》。ライフ回復系の魔法カードだ。

不思議そうな顔をしたゆまに、少し意地悪い笑みを浮かべながら、デュエルディスクにこのカードをセットする。

 

「えっ……えっ、ええっ??」

 

俺の手に突然ポンと現れたコップと壺に、ゆまがさっきよりもさらに不思議そうな顔をしてる。

 

「ほれ、飲んでみ?」

「ううー……いただきます」

 

コップに壺の中の液体を注ぎゆまに渡す。怪しそうにコップを見つめていたゆまだが、意を決してその液体を飲んだ。

 

「……あ、美味しいですっ!」

「美味いだけじゃないぞ? さっきの傷口触ってみ?」

「……えっ、ええっ!? 治ってますよぉ!」

 

ライフ回復系の魔法だから味は美味しいようだな。マズかったらどうなってたことやら。

そしてゆまが自分の首を触ってみると、今日一番驚いた顔をしている。

 

「よし、それで治療は終わりだ」

 

効果を終えたからか、ゆまの手の中のコップと俺の持つ壺が消えた。

 

「またいきなりきえました……コナミさんって、マジシャンか何かですかぁ?」

「そんな者じゃない、ただカードを実体化できるだけだよ」

「えっ……あうっ!?」

 

言われた意味を理解できなかったのか、頭に?マークを浮かべたような顔をしていたが、ようやく意味を理解してか、またまた驚きの表情に変わる。

 

「カードの実体化なんてそんなこと……あっ、じゃあ今してたっ!」

「そういうこと、さっきのも、俺が実体化させたってこと」

「わあぁ……すごいですぅ!」

 

さっきの《ブルー・ポーション》のおかげか、すんなりと実体化を受け入れたゆまは、キラキラした瞳で俺のことを見てくる。

……上目遣いにキラキラした瞳。このダブルコンボじゃ悪いこと考えててもやめたくなるな。

 

「まあ使いすぎると俺がへばるんだけどな」

「そうなんですか……」

 

使い終えた《ブルー・ポーション》のカードをホルダーへと仕舞う。

ゆまももう普通になったし、そろそろ帰らせてやらないとな。

 

「さあゆま、そろそろ帰るぞ。早く帰って、今日は休め」

「はい……あうっ!? もう8時ですよぉ……晩ご飯の時間過ぎてますよ!?」

「なら早く帰らないとな、親御さんも心配するぞー」

 

喋りながら俺は、D・ホイールのシートの中から予備のヘルメットをひとつ取り出す。

 

「ほらゆま」

「わわっ……これ、ヘルメットですか?」

「歩いてたら時間かかるだろうし、こいつで送ってくよ」

「えっ、いいんですかぁ!? 私、1回D・ホイールに乗ってみたかったんですぅ」

 

ヘルメットを受け取って俺の方を見てるゆまだったが、D・ホイールに乗れると聞いてまた目がキラキラ輝いてる。

 

「なら、ちょっと走ってから送るか」

 

早く家に帰してやりたいところだが、初めてD・ホイールに乗るなら、少しぐらい楽しませてやった方が良いか。

 

「はいっ! えっと……あうっ」

「……ん? どうしたゆま」

 

ヘルメットを被って、D・ホイールに座る俺の後ろに乗ったゆま。

だが変な声をもらしながらもじもじしてるらしい振動がシート上に伝わってくる。

 

「あうっ……うぅ……失礼しますっ!」

「っと……しっかり捕まっとけよ?」

「はい……」

 

いきなり大きな声を出したかと思えば、俺の前に回される手。背中にもゆまの温もりと何か柔らか……っ!? ダメだ、意識したらアウトだ……。

あっ……乗ってから少しもじもじしてたのは抵抗があったからか。さっきチンピラから助けたとはいえ、まだ出会って2時間ぐらい。見ず知らずだった男に抱きつくようなのは抵抗あるよなそりゃ……でも安全のためだし我慢してもらおう。

 

「よーし、レッツゴーだ!」

 

ゆまがしっかり捕まってるのを確認して、D・ホイールを走らせる。

肌に風を感じながら、シティの街を駆ける。

 

「うわぁ……すごいですっ! 速くて風も気持ちいいですよぉ!」

「すごいだろ? この風を感じながらやるライディングデュエルはさい……」

 

最高なんだぜ! そう言おうと思ったが、その言葉は出なかった。最後にしたライディングデュエルは、最高だったがそれは悪魔でもこの疾走感。デュエル自体は物足りないものだった……その事を思い出して、最高という言葉は俺が言うには相応しくない。そう思って言えなかった。

 

「わあぁ……私もやってみたいですっ!」

「あ、ああそうだな……D・ホイールを手に入れたら、やれるさ」

「その時は、コナミさん相手してくださいねっ!」

「……まあ、気が向いたらな」

「はいっ!」

 

きっと俺の後ろで、ゆまはさっきのようにキラキラした瞳でそのときを楽しみにしてるだろう。

だが俺は……その時には再びデュエルへの楽しさを取り戻せているか分からないから、曖昧な返事を返すことしかできなかった。

 

「よっしゆま! 家に送るから案内してくれ!」

「分かりました!」

 

ゆまの指示を聞きながら彼女家を目指してホイールを走らせる。

あ……そういえばアテム帰ってきてねぇ!?

 

 




というわけで、今回はただのリア充爆発しろ回でした。奇しくもバレンタインデーということで、少しは甘みを…。
上手く書けた自信はありませんが、二人乗りしてるゆまとか恥ずかしがるゆまを想像してニヤけて頂ければ幸いです。
次回はこの時間帯のアテムサイドになります。

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