『コナミ!』
「ふいぃ……」
昨日何とか止まるホテルを見つけた俺たちは眠りについた。
そして、今は朝……だというのに、のんびり眠る俺をアテムが揺さぶってくる。
『ダメだよ王様ー。コナミを起こすときはー……ていっ!』
「ぐへっ!?」
マナの声が聞こえてきたかと思うと、いきなり俺の鳩尾に衝撃が走る……ってか痛い。
当然そんなのくらって寝てられるわけも無く、俺は起きる羽目になった。
「っつーー……バカマナぁぁぁ」
『起きないのが悪いんだよーだ』
「こんにゃろぉぉ……覚悟!」
ベッドから起き上がって、不意打ちの形でマナへと飛びかかる。
そしてあわよくば……ニヒヒ。
『下心見え見えだよ変態』
「ぐげふっ……」
あわよくばなんて起きるわけが無く、マナの杖に叩きつけられる。
こいつ……さっきも杖でやりやがったな。
『はぁ……コナミのそういうところも変わらないな。だが、お前ももう中身は50はゆうに超えた年寄りだろ?』
「ぐぬっ、痛いとこを……でも俺はピチピチの二十歳だからな!」
『やーいおじいちゃーん』
「マナぁぁぁぁ!!」
『そこまでだマナ』
『いたっ!』
マナにまたもやバカにされてプッツーンと来た俺は再びマナに飛びかかる用意をする。
けどそこに出てきたマハードに頭をペチンと叩かれたマナと左手で見事に押さえつけられた俺。マハードの両手でマナVS俺は始まる前に終わった。
「さぁて、とりあえずはフォーチュンカップに出る方法を探すか」
『ああ、何とか出る方法を見つけるんだ』
朝の一幕が終わり、支度をして外へと出た俺たちの今の目的は、もうすぐ開かれる大きな大会のデュエル・オブ・フォーチュンカップへの出場。けどあれは招かれた人たちだけが参加できる大会……何も持ってない俺たちに出れるかどうか。
『そうだコナミ。カードショップに寄ってくれないか?』
「ショップ? 別に良いけど……この辺りで一番近いのはKURUMIZAWAって店だな。お? しかもここの店長マンション経営までしてるってよ」
ホテルでもらった《ここがおすすめ、シティの案内図!》とかいうシティのガイドマップを見ながらカードショップを探す。
胡桃沢って店長がやってるカードショップが一番近いな。
『なら、そこに行こうぜ』
「おうよ……あれ? 俺のD・ホイールは……?」
ホテルの駐輪場に止めてあったはずの俺のD・ホイールがない。駐輪場がいっぱいだったからはみ出たすぐ隣に置いたとはいえ……え、持ってかれたの?
「……あ、警備員さーん!」
「はい、どうかなさいましたか?」
「昨日あそこにD・ホイールが止めてあったんだけど……どこ行ったか知らない?」
「……あー、あそこにあったやつですか? あれでしたら、セキュリティが確認してどこかへ持って行かれましたよ」
チッ、まさかセキュリティとはな。俺のやつはオリジナルだからセキュリティからすれば怪しいことこの上ないだろうな……番号登録的なのもしてないみたいだし、詳しくは知らないけど。
「そうか……ちなみに、セキュリティに押収されたやつってどこにいくか知ってる?」
「そういった物はたしか……セキュリティ保管庫ですね、ここから徒歩ですと10分ほどの所にあります」
「そうですか、ありがとうございます」
……。
フォーチュンカップのデュエルにはライディング・デュエルもある。D・ホイールがないのは痛すぎる。これは、何とかして取り返すしか無いな。
『取り返すのか、コナミ』
「ああ、中に忍び込むのはカードを使えばできる……あんま使いたくはないけどな、チートすぎてつまんないし。それに、あれがないと移動も不便だしライディング・デュエルもできないからな」
『そうか……なら、今はカードショップとその保管庫に向かうか』
「ああ……運が良いことにカードショップの先に保管庫だ。先にカードショップへ行こうぜ」
残念ながら歩きという形になってしまったが……少しぐらいならいいか。シティの街並みもじっくり見れるし。
やることが一気に増えた気がするが、これはまた楽しいことになりそうな気がするぜ。
少しだけうきうきしながら、俺たちはまずはカードショップKURUMIZAWAに向かって歩を進めた。
『ここが……未来のカードショップか』
「昔と見た目は何も変わらないけどな」
歩くこと5分ほど。カードショップKURUMIZAWAに到着した。
アテムはと言うと、窓越しに見える中のカードを見てテンションが上がってきてるのが目に見えて分かる。
『早く行こうぜコナミ!』
「はいはい……ったく」
おもちゃ屋に行く子供かあいつは。
アテムに急かされて店の中へと入る。
「いらっしゃいませー」
ショーケースの中にはきれいに整頓されてレアカードが並び、カウンターの前にはパックが並ぶ。そしてカウンターには店員……いや、胡桃沢って名札を付けてるから店長か。
「……アテムの奴はパックに夢中だな」
『これにするか……いやこれか……うーん、どれにするか迷うぜ!』
杏子とデートしたときと同じ反応じゃないかあいつ……。
さて、俺も少し見るか……アテムのデッキに合うカードがあれば買いたいし。
「うーん……お? こんなカードが出てるのか」
『こっちの方が汎用カードが多いのか……』
俺とアテムが見続けてる時、店のドアが開く音がした。
チラッと見てみると、女の子が二人……って、あの茶髪の子は。
「あっ、コナミさんですぅ」
「ゆまちゃん、知り合い?」
「よーっす……昨日ぶりだな」
思った通り、片方はゆまだった。その横にはピンクの髪色の女の子。アカデミアの友達か?
「はいっ! コナミさんはお買い物ですか?」
「まあ買うかは分かんないけど……見てるとこかな」
「……」
ゆまと話してると、横のピンク髪の女の子がすごく見てくる。というか目が怖いんですけど……。
「あっ、私の友達のツァンさんですぅ」
「僕はツァン ディレ、あんたは?」
僕っ子だと……!? このご時世にまさかそんな子がいるなんて……コナミ、目の中で小さい波が起きてます。
「ツァンな、俺の名前はコナミ。小さい波でコナミだかんな」
「ふぅん……まあ覚えといてあげる」
「ツァンさんは人の名前は忘れないんで大丈夫ですよぉ!」
「ちょっとゆまちゃん!」
ネタバレ的なのをしてきたゆまに、少し顔を赤らめたツァンがゆまの肩を軽く叩いてる。
「えへへ、ついぽろっと……そうだコナミさん! せっかく会いましたしデュエルしませんか?」
「デュエル、か……」
どうするか……いやどうするも何も今の俺はデュエルはしない。問題はどうやってこの誘いを躱すか。
「へぇ、ゆまちゃんとデュエルするんだ。じゃあ、ボクが審判してあげるよ」
「あっ、ありがとうございますぅ!」
ゲッ、マズいなこれは……やる流れになってる。これはアテムに頼むか。
その時、また入り口のドアが開く音がした。
「いらっしゃ……またあなたたちか」
「お邪魔しますわ庶民」
入ってきたのは少し褐色の肌をして黄色っぽい色の髪をした女の子と二人の黒服を着たSPのような男。
アカデミアの服着てるからあの子もアカデミア生か?
「あっ、メイ喜多嬉さんだ」
「誰だ? 知り合いか?」
「えーっと、喜多嬉コーポレーションの社長の娘さんですよぉ」
「ほぉー……つまりお嬢様ってことか」
お嬢様ともあろう人間が、言っては悪いがこんな普通なカードショップに何の用だろうか。
「今回こそ、こちらに判を押してもらいますわ。この店は頂きます」
「だからその件はお断りしてるでしょうに」
「おほほほ! 今回はそうはいきませんわ。既に不動産、この土地の持ち主やその他には話をつけてありますのよ。後は、あなたの判だけよ」
「そ、そんな……!?」
おっと……これはなにやら穏やかな話じゃ無いな。
この店を奪い取ろうってか。
「前にも言ったとおり、ここの近くにレアカードを取り揃えた新しいカードショップを作るのに、こんなところに庶民向けの店があられては邪魔ですわ。早く判を押してもらえるかしら」
「くっ……」
しかも自分とこの利益のために奪おうなんて……これは許せないな。
「あうぅ、店長さん可哀想ですよぉ」
「ボクもそう思うよ。そうだコナミ、あんた助けてきなさいよ」
「えっ!? ってもなぁ……」
『……コナミ、ここはオレに任せてくれないか?』
いつの間にか俺の近くに戻ってきていたアテム。まあ任せてくれと言うことは、やることは十中八九あれだろう。
「……! っし、任せろ!」
ゆまとツァンにはそう言うが、実際やってくれるのはアテムである。
「……よし、おいお前!」
「……あれ?」
『アテム任せたぜ!』
俺が引っ込みアテムが表へとでる。けどいきなり雰囲気が変わるんだから、すぐ近くにいる二人はまさにあれ?って顔をしてる。
まあこれが終わったら説明してやってもいいか。
「誰ですの、私にはメイ喜多嬉という名前が……何かしら庶民」
「悪いがこの店を、お前にやるわけはいかない!」
「今はこちらの庶民と話してますの。あなたみたいな庶民と話してる暇はありませんの」
「そういうわけにはいかないぜ……ここはオレの行きつけ、それを無くされると困るんだ」
行きつけって……初来店じゃないか。まあそんなツッコミは今は野暮だが。
「なら庶民、もうすぐ近くに出来るカードショップKITAKIに来ればいいですわよ。こんな辺鄙なところのカードよりももっとレアカードを置きますわ」
「ふっ、レアカードだけしか扱わないでステータスが低いからと切り捨てるような奴のカードショップに興味は無いね」
「なんですって……?」
「この店もレアカードを飾ってるが、カウンターにおいてあるカードファイルには単純に効果が強いカード、だが弱くてもこんな使い道があるとポップをつけて一見弱いカードも入れてある。そして初心者に向けた使いやすいカードを収録したオリジナルパックなどもある……」
そんないいファイルがあるのか……後で俺も確認させてもらおっと。
ってかアテムの奴、さっきの間に見まくってるんだな。
「そうですよぉ! それにここの店長さんは、私にカードのアドバイスをくれたりするんですよっ!」
「そうだ! ボクもここで六武衆デッキに合うカードをもらったんだ!」
「つまり……何が言いたいのかしら?」
「店への利益、金のことだけを考えてるあんたらと違って、ここの店はオレたちデュエリストのことを考えてくれている! そんないい店を、お前たちに渡すわけにはいかないぜ!」
「……」
熱弁を奮うアテムに対して、メイとかいうお嬢様は段々と冷めた目になる。
まるで人をバカにするような目だ。
「あなたの考えは分かりましたわ。……なら、こういうのはいかがかしら」
「何だ?」
「……私のデッキを」
手をパンパンと鳴らすと、側に控えていた黒服がデュエルディスクとデッキをメイに渡す。
デッキとかぐらい自分で持てよな……お嬢様ってのは楽で良いな。
「デュエルで決着を着けるというのは?」
「はん、元からオレが望んでた展開だ。そのデュエル、受けて立つぜ!」
アテムがデッキを取り出して、鋭い目でメイを睨みつける。
「ルールは、私が勝てばこの店は私喜多嬉グループの物」
「ならオレが勝てば、この店には二度と手を出さないでもらうぜ。店長、それでいいか?」
「あ、ああ……元はと言えば諦めかけてたところだ、頼む君……勝ってくれ!」
店長がお辞儀をしてアテムに頼む。それを見てアテムは少し笑った。
「安心しな店長……オレは、必ず勝つぜ!」
「大丈夫ですよ! コナミさんはすっごく強いですから!」
「ボクは強さはよく分かんないけど……こいつなら、何か勝つ気がするよ」
「はい……よろしくお願いします!」
「さあ……メイ喜多嬉、表にでな。デュエルだ」
アテムに言われて、俺たち全員が店の外へと出る。
何か最近のデュエル、絶対何かが賭かってるな……。
兎にも角にも、アテム復活第3戦はメイ喜多嬉との、カードショップを賭けた1戦となる。
というわけで、次回はデュエルとなります。今回のデュエルはここ二回のデュエルと比べて最長となることが確定しております。
また、作中登場の店長胡桃沢はタッグフォースにも登場してますが、パック紹介とフィギュアに喜ぶところしかないため、話し方やキャラ、及び店の設定は基本オリジナルですのでご了承を。
追記:アニメを見直してると、アニメにも少し登場して話してました。なので次回以降登場する時はそのキャラの感じにします。今回の話での胡桃沢は初対面の相手だから敬語ということでお願いします。