「お前はモンスターを大事に育てているか?」
少し間があいて友が俺に尋ねてきた。
そんなこと当然に決まっている。
当たり前だろ、と俺が言うと友は少し表情が和らいだ。
「だよな。 お前ならそうだと信じてたよ。安心した」
「どうかしたのか?」
「いや大事にしてるのならいいんだ」
「いや気になるだろ。なんだよ」
友の言いたいことがわからない。普段は物事をスパッと言い切るのだが今日はなんだか控えめだった。
「……マスター」
今まであまり喋っていなかったイシスが口を開く。俺も友もイシスの方を向いた。
「私たちはもう大丈夫ですから…どうぞ話してください」
「いいのか?」
「はい」
この話にはイシス達が関係しているのだろうか。でもこの雰囲気はあまりいい話ではなさそうだ。
「実はな。お前はどうかわからないけど、金を二つだし彼女たちを手に入れて最高のスタートをきったかにみえた俺は最初は大変だったんだ」
「なんでだ?」
まあ俺はワルキューレを出した時は大変だったけど、金でしかも神タイプの彼女たちの何が困るのだろうか。
神様はわがままだからその扱いが大変だからとかかな? と俺は頭の中で考えたが友から返ってきたことは全然違った。
「彼女たちは《人間》という存在に極度に怯えていたんだ」
「? それは臆病ってことだからじゃないのか?」
「俺も最初はそう思っていたんだ。 だが違った」
友は首を横に振った。
「モンスターの記憶はデータを消してもずっと残り続けるっていうのは知ってるだろう?」
「ああ」
ワルキューレの事例があったのでそのことはよく知っていた。
「それでその彼女たちの過去の記憶が最悪だったんだよ」
「なんで? 強いから優遇されるだろ。 何が最悪なんだ?」
俺はよくわからなかった。銀の卵ならまだしも金の卵でもそういう扱いされるなんてみんなは何だったらいいのだろう。
「いや、強さの面じゃないんだ。 むしろ強さに関しては申し分ない」
「じゃあ、何が原因で?」
「可愛さだ」
「はっ?」
まあ今ここにいるイシスとバステトを見ても分かるが、友が言うには神タイプのモンスター(まあ女の子限定だが)はみんな可愛さも神級らしい。
「そのあまりの可愛さゆえにいろいろとやらかしてしまう奴らが多くてな…」
いろいろというのは言わなくてもわかるだろう。まあ男性が女性にもつ性的な感情のことだ。
「それが原因で金卵であっても精神的ダメージを受けているモンスターが多いんだ。 お前も金が出たらそういうことをきにしたほうがいいぞ」
俺はイシスとバステトを見る。
そうか金でも苦労してきたんだな。
「でももう平気です。今のマスターは私たちにすごく優しく接してくれますから」
「にゃ♪」
「そんなことねーよ、俺は当たり前のことをやっているだけだ」
「ふふ、マスターのそういうところ好きです」
「ったく、最初のお前らは本当に大変だったんだからな?」
〜回想〜
友「おお! 奇跡的にガチャが2回ひけるぞ!! よし!! そいや!!」
ガチャ ガラガラガラ…………ホロッ…ホロッ
友「うおぉぉぉー、金2つ!!!!!まじか!! これは熱い!!!」
パカッパカッ!!
友「しかも両方女の子ときた!!! 超かわいいぃぃぃ!!ひゃっほーい!!!」
イシス「あの…うるさいんで静かにしてもらえませんか」
バステト「………」ブルブル
友「あ、すみません」
イシス「それでは私たちを好きに使って下さい…あなたはマスターですから…」
バステト「………」ブルブル
友「…あ、ああじゃあダンジョンいこっか」
イシス「…それだけでいいのですか?」
友「う、うん」
イシス「わかりました…では行きましょう」
友「……………」スタスタ
イシス「………………」スタスタ
バステト「………………」スタスタ
〜〜〜〜〜〜〜
「こんな感じが1週間ぐらい続いたから参ったよ。イシスは冷たいし、バステトはずっと震えて俺を怖がってたし」
「あの時はすみませんでした」
「悪かったにゃ…」
「いいんだよもうそんなことは」
「「マスター/////」」
友は2人を抱き寄せた。抱き寄せられた2人は顔を赤くする。
あーあ3人とも幸せそうで何よりだ。よかったよかった………
…………つーか途中から俺何も言ってなくね!? なんかこの状況俺いらなくね!?
なんなんだよ友の奴。 結局自分の[仲いいですよ]アピールしたかっただけじゃねーか!
「じゃあ俺そろそろ帰るわ。邪魔しちゃ悪いし」
俺はコタツから出て荷物を持ち、帰る支度をする。
「なんだよもう帰るのかよ。泊まっていけよ。」
「い、いや用事もあるからさ!」
「そっか、じゃあまたな」
「またいつでもお越し下さいね」
「またにゃ」
俺は軽く会釈をして友の家を後にした。
ふん誰が行くかよ。 行ったらまた俺が確実に浮くパターンじゃねーか。 てか泊まってけってなんだよ。 それこそやベーわ。
そんなことをブツブツ言いながら俺はすっかり暗くなった街中を歩く。
「さむっ」
冬恒例の冷たい風が吹いてきて俺は立ち止まる。
そしてふと友の言ってたことを思い出した。
『金卵であっても精神的ダメージを受けているモンスターが多いんだ。お前も金が出たらそういうことをきにしたほうがいいぞ』
「金であってもか………」
ボソッと俺は呟いた。
これは金を当てても楽ではなさそうだった。
彼女たちをこんな目に合わせた奴らに無性に腹が立った。
「帰るか……」
俺は再び家へと続く道を歩き始めた。
またそのうち新モンスターを出したいと思ってます。