心の永住者   作:黒猫withかずさ派

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第73話

 

 俺は玄関が開けられた音がするので俺は麻理さんが帰って来たと思い、出迎えに行く。かずさも麻理さんが帰って来たと判断したのか、早々に俺を解放して隣に移動していた。

 だけど、そんなに寂しそうな顔をするなよ。俺のセーターを掴む手を振りほどくのにどれだけの精神力が必要かなんて、きっとわかってないんだろうな。

 ただ、ボストンに行ってからは甘やかし方に磨きがかかったって言われそうなんだよな。…………まあいいか。俺もかずさを甘やかすことが嬉しいんだからさ。

 だから俺は意識を外へと振りほどく。このままだと、ずうっとかずさの虜のままで、駄目なまま腐っていきそうだしな。

 こたつから出ると、ひんやりとした空気が俺を出迎える。かずさに暖められ過ぎた体にはちょうどいい冷たさかもしれない。けれど、なおも温もりを体が欲しがるが、これからしなければいけない事を考えることで意識を保とうとした。

 そういえば買い物に行ってないけど、冷蔵庫には食材入っているのか? 一応冷蔵庫が空でも大丈夫なように緊急用の備蓄はしてあるけど、美代子さんが俺の代りに千晶の面倒をみているから買い物もしてくれているのか?

 でもなぁ、美代子さんも掃除はできても料理はからっきしできないんだよなぁ。ニューヨークに来てからはここに住んでいるから手造りの料理を食べてはいるけれど、日本ではコンビニ弁当が主食という残念な生活を送ってたっていってたし。

 どんな言葉で表現すればいいか迷ってしまうけど、やはり類は類を呼ぶって感じなのか? …………ここの住人の女性比率が圧倒的高いといっても、料理できるのがただ一人の男の住人って言うのが残念さに拍車をかけているよな。俺も女が料理をしろとは言わないけど、やっぱ料理ができるほうが、せめて一緒に料理ができるほうがいいというか。

 …………ただ、かずさにだけは包丁は持たせられないんだよな。

 そういえば、曜子さんの方の仕事が忙しいからハウスキーパーを短期でお願いするって言ってたから、食事の方もなにかしら用意してあるのか?

 まあいいか。俺もかずさもこたつの魔力に負けて…………、俺に関してはかずさの温もりに負けてだろうけど、夕食も取らずにごろごろしてたんだ。いつまでもごろごろしていたら千晶に格好のネタを提供する羽目になってしまうから、しゃんとしないとな。

 そうだな。冷蔵庫の中身を確認して、気持ちを引き締める為にも俺がちょこっと買い出しに行けばいいか。

 となると、千晶の分も用意しておかないとな。本番間近の千晶だとなかなか電話をとってもらえないし、メールだと確認さえしないだろうから、美代子さんに食事はいるか確認してみるか。

 と、ボストンでの二人だけの生活から、ニューヨークでのにぎやかな生活へと意識を切り替えながら玄関へと向かった。

 

「あっ、春希。帰って来てたんだ? おっかえりぃ」

 

「あぁ千晶。ただいま。そっちもおかえり」

 

「うん、ただいまぁっと。……じゃあこれよろしくね」

 

「おっ、おい」

 

 千晶は着ていた毛皮のロングコートを俺に押し付けると、寒い寒いと言いながらこたつへと逃げ込もうとする。

 外の冷気を纏ったコートの内側からは、ほんの数秒前まで千晶がこれを着ていたという温もりが臭い立つ。下に着ている服は稽古用の着古した動きやすい服装なのに、妙に色っぽく感じてしまうのは今やっている役の影響か? 着ている服だけは見れば、いつもの千晶なんだよな。でも、この毛皮のインパクトがすごいっていうか……。

 

「あいかわらずそんなかっこうで出歩いてるんだな」

 

「どうせ稽古場にいくだけだし、いいんじゃない?」

 

「風邪引くなよ」

 

「わかってるわよ」

 

 部屋着のジャージレベルまでいくほどの服装に不釣り合いすぎる毛皮のコートが似合うのは、きっと千晶だからこそなのだろう。ちなみに毛皮のコートの現所有者は和泉千晶ではあるが、旧所有者は、当然というか、あの冬馬曜子である。当然と言えば当然か。

 でも曜子さん。いくらデザインが古くて着なくなったコートだからといって、俺の年収相当の毛皮を気楽に千晶にあげないでくださいよ。それに千晶も千晶で、簡単に貰っちゃうなよな。

 千晶からしてみれば、温かいコートという認識しかないだろうし、曜子さんもクローゼットが整理できてよかったくらいにしか思ってないんだろうな。だけど庶民代表の俺からすれば、とんでもないプレゼントだということを忘れないでほしいよ。

 

「春希ぃ。いつまでも玄関でわたしのコート嗅いでないでこたつに入ろうよ。そんなにも臭いを嗅ぎたいんなら直接でもいいよ? ぎゅっと抱きしめてあげるから、わたしの胸に顔をうずめながら堪能すればいいって」

 

「だぁ……。俺は臭いなんで嗅いでないっつうの」

 

「だってさ。じいっとコート見つけちゃってるから、てっきり、ね」

 

 まあ、たしかにコートを大事そうに持って見つめちゃってはいたけど、けっして千晶が考えているようなことはしてないからな。

 

「はいはい。馬鹿なこと言ってないで手洗いうがいしてこよな」

 

「今やろうとしてたんだって……。帰って来て早々春希なんだから」

 

「わかってるんならやろうな。お前だって大切な本番が迫ってるんだろ? こんなところで風邪ひいたら、せっかくの練習が台無しだぞ?」

 

「まあそうだけど、さ……」

 

「だったら健康管理も女優の大切な仕事なんだ。しっかりやろうな。和泉千晶はプロの女優らしいからな」

 

「もう……、わかったって。ったくぅ……」

 

 一矢報いた俺は、足取り軽くこたつへと戻っていく。

 千晶はやはり千晶であって、俺のお小言があったことなどなかったのごとく手洗いうがいを終えるとこたつにもぐり始める。

 やはりここは落ち着く。二人だけのボストンも心浮かれたが、肩に力を入れなくて済むのはきっとここだけなのだろう。

 ちなみに、こたつに戻ってきた俺の脇腹を、おもいっきりかずさにつねられたのはお愛嬌だ。

 ………………でも、かずささん。爪を立てて引きちぎるように肉を掴むのは、非常に痛いのでやめていただけないでしょうか?

 いや、うん。ごめん。……でも、ほんとうに千晶のコートの臭いは嗅いでないんだって。

 

「さてっと。口うるさい春希が帰ってきたわけだけど、ご飯は?」

 

「お前もせっかく帰ってきた俺にそれか? しかも、頑張ってきたかずさにはおかえりさえ言ってないだろ?」

 

「そだっけ? じゃあ、おかえり?」

 

「あぁ、ただいま」

 

 おい、かずさ。かずさもそれでいいのか? あまり気にした様子でもないみたいだけど、そもそも最初から気になんかしないのか? それとも、千晶との接し方を覚えたってことか?

 

「で、春希」

 

「なんだよ?」

 

「だからご飯は?」

 

「これから準備する予定」

 

「そっか」

 

「でも、まだ冷蔵庫の中をチェックしてないからなぁ……。何か入っていればいいんだけど」

 

「それだったら鍋の材料を美代子さんが用意しておいてくれたはずだよ。春希も疲れているだろうし、鍋だったら簡単ねって、さ」

 

「それは助かるな。それで、食材を用意してくれた美代子さんは?」

 

「美代ちゃんは曜子さんの方でやる事があるから、わたしをここまで送ってくれたあと、そのまま行っちゃったよ」

 

「そっか。今曜子さんも忙しいみたいだからな」

 

「みたいだね」

 

「じゃあ、曜子さんと美代子さんの分はいらないか」

 

「一応用意しておいてだってさ。帰って来てから食べるかもしれないって」

 

「了解。鍋だし、多めに作っておけば問題ないか。……じゃあ、あとは麻理さん次第か。もうじき帰ってくるなら麻理さんが着くまで時間調整して準備するけど、連絡してみるかな」

 

「あっ、麻理さんの分はいらないよ」

 

「遅くなるって?」

 

「ううん」

 

「じゃあなんでだよ?」

 

 食べてくることなんてありえないし…………。

 

「だって麻理さん、もう日本に帰っちゃったから」

 

「…………えっ」

 

 それは突然だった。なんの予兆もなく、当然ながら俺には何も心の準備をする猶予は与えられてはいない。しかも、あまりに千晶が普通すぎる口調で言うものだから、俺は千晶の言葉を理解するのに苦労した。

 ニューヨークにきてから英語ばかり使っている。日本語は、俺が英語に慣れる為に自宅でも使わないようにしていたし、かずさや千晶も同じように英語ばかりつかっている。

 だから千晶が使った言葉が英語以外の言語。それも日本語でさえなくてスペイン語あたりなんじゃないかとさえ思えてしまった。スペイン語ならニューヨークにいても時折遭遇するし、場違いではないから、もしかして千晶ならとさえ考えてしまう。

 だけど、今千晶が話している言語は英語であり、耳に慣れ親しんだ言葉だった。

 

「だからぁ、麻理さんは日本だからご飯いらないんだってば」

 

 もう一度英語で説明しなくても、すでに頭は理解している。理解してるけど、理解しているけど、頭はその事実を拒絶する。

 

「ちゃんと聞いてる、春希?」

 

 ちゃんと聞いてるって。だけど、その……。

 事実は事実として現実に降り注ぎ、俺の目の前に突き付けられる。だから俺の頭が拒絶しても受け入れなくてはならない。でもやはり俺の心は強くはなく、手が震えてきてしまった。

 

「春希?」

 

 心配そうな顔で俺を見るなよ。お前の言葉は理解してるって言ってるだろ。いや、言葉さえでてないか。だったら千晶が心配するのは当然か。

 でも、ここには千晶以上に俺の事を大切にしてくれる人が一名いるわけで、かずさは俺の不安を共有しようとこたつの中で俺の手をそっと握りしめてくれた。

 

「聞いてるよ」

 

 俺はかずさの手を握り返し、声に不安が含まれないように注意して言葉を返す。

 それでもきっと千晶の事だから、俺の強がりなんてお見通しだろうけど。

 

「うん、まあ春希が驚くのは無理はないけどね」

 

「なあ、冗談じゃないんだよな?」

 

「こんな冗談は言わないって」

 

「いつ、日本に?」

 

「春希達がボストンに行ってすぐかな?」

 

「お前、俺達がボストンに行く前から気が付いてたのか?」

 

「わたし? ううん、気が付くわけないじゃない。いきなり日本に帰るって言ってさ。曜子さんも驚いてたんだからね」

 

「だれも止めなかったのか? というよりも、俺に連絡さえしてこなかったよな。止めることはできなくても、電話だけでも、せめてメールだけでもくれていれば…………」

 

「それは無理だって」

 

「なんでだよ」

 

「だって春希は冬馬かずさのマネージャーとしてボストンに行っているわけじゃない?」

 

「だから、それが何だって言うんだ?」

 

「春希の仕事は冬馬かずさが気持ちよくピアノを弾けるようにサポートすることであって、心をかき乱す事じゃない、と思うんだよね」

 

「だけど、大事な仕事があったとしても、伝えるべきことってあるだろ」

 

「そうかもしれない。そうかもしれないけど、このことを春希に伝えたら冬馬かずさのピアノに悪影響が出る」

 

「どうしてそう言い切れるんだよ?」

 

「だって春希。今の春希を見れば誰だって言いきれると思うよ? …………ね、かずさ?」

 

「あっ…………」

 

 俺のことを誰よりも心配してくれるかずさがいるのに、俺の事を愛してくれるかずさがいるのに、誰よりも大切にしようってボストンで決心してきたというのに、……今俺の手を握りしめてくれている愛する人の事を、俺は放り投げようとしていた。

 

「大丈夫だよ、春希」

 

「かずさ、俺……」

 

「春希じゃなくても誰だって驚くよ。たぶん母さんだって春希には伝えるなって言ってるんだと思う。それだけ大切なコンサートだったし、今も母さんは次のコンサートの為に頑張っているんだしさ。ほら、美代ちゃんだって頑張ってるんだから、あたしたちも、さ。……ね、春希」

 

「そうだよな」

 

 俺はやっとのこと力なくかずさの手を握り返し、そしてかずさが俺の手を握り返してきた事で現実に引き止められる事に成功した。

 

「それで、麻理さんは日本本社に戻ったという事なのか?」

 

「んっとね。……多分そうだと思うよ。荷物はここに置きっぱなしだから、あとで送ってくれってことかな? まあ、あの時はみんな自分の事でせわしなかったし、なんというかな。止めるとしてもどうすればいいかわからないしさ。当人の意思を優先するしかないって感じだったかな?」

 

「……そうか」

 

「じゃあ部屋には麻理さんの荷物がそのままあるってことなのか?」

 

「そだね。実際見てみればいいと思うよ?」

 

 かずさの手に引かれて俺も立ちあがるしかない。ここで座っているだけでは解決しないし、なによりもこれ以上かずさを傷つける事は俺自身が許せなかった。だから俺は、かすかに残っている力を込めて立ちあがる。

 しかし、立ちあがる事だけに意識を集中していたせいで、顔の表情までは気がまわらなかったようであった。そのせいでかずさが表情が一瞬曇ったようだが、自分の事だけで精一杯の俺は、かずさの心情など気が付きもしなかった。

 

 

 

「どう、納得した?」

 

 久しぶりに入った麻理さんの部屋は、ボストンに行く前に入った時と同じまま俺を出迎えてくれる。あと1、2時間もすれば麻理さんが帰って来るんじゃないかと思えるほど麻理さんの臭いが残っており、ボストンに行った直後にいなくなったとは、どうしても信じられないでいた。

 

「なんか変な感じだな?」

 

「そう?」

 

「いなくなったなんて思えないというのかな」

 

 俺をよそにかずさと千晶は室内にはいっていき、探している本人のかずさでさえ何を探しているかわからない手がかりを探し始める。

 

「ほんと、綺麗に部屋を使ってるな」

 

「見習いたいところだけど、やっぱわたしには無理かな」

 

「あたしも人の事は言えないけど。………………これ、春希がプレゼントしたペンだよな?」

 

 いまだに室内に足を踏み入れられないでいた俺の脚を動かしたのはかずさの声だった。正確に言うと、かずさが手に持つボールペンに意識を奪われて、ふらふらと吸い寄せられるように動いたという方が正しいのかもしれない。

 

「春希? …………痛いよ、春希」

 

「ごめんっ」

 

 気が付くと俺は、かずさの手ごと麻理さんのボールペンを握りしめていた。視線を横にそらすと、痛さで顔をゆがめたかずさがおり、俺はすぐにかずさの手を解放させる。

 

「はい、春希」

 

「あぁ、うん」

 

 差し出されるボールペンを、俺は今度こそどのような顔で受け取ればいいかと思い悩む。どのような顔でかずさは俺を見ているのだろうか。千晶みたいに表情を作りはしないだろうけど、それでもかずさのことだ。きっと強がって、俺に嫌な顔など見せないだろう。

 むしろ俺の方がかずさを傷つける表情をしてしまって、そのことで心を痛めたかずさが……。

 

「日本に行くからチケットの用意をしてよ。あたしがチケットの準備をすることができればいいんだけど、やっぱりあたしには一般常識が欠如しているみたいなんだよな。だから、春希。あたしの為に日本行きのチケットを準備してほしい」

 

 麻理さんのボールペンさえ手に取れない俺に、かずさは強い意識でそうはっきりと言った。

 同情でも憐れみでもない。ましてや俺を元気づけようと無理をしているわけでもない。それが当然だろって、いつものかっこいい冬馬かずさが俺の目の前にいた。

 真っ直ぐな黒髪は吸い込まれそうなまでに深く、黒い瞳は力強く俺を勇気づけようとしている。

 なにが一般常識が欠如してるだよ。生活能力はまったくというほど持っていないくせに、俺がいないと生活できないとまで言ってくれるくせに、…………俺に一番必要なものを持っていて、俺の方がかずさがいなければ動けないじゃないか。

 

「ほら、春希。かずさが返事を待ったいるみたいだけど? それともわたしが美代ちゃんにお願いしようか?」

 

「俺がやるに決まってるだろ。というか千晶。こういう時まで人任せなんだな」

 

「あったりまえじゃない。適材適所。わたしがやるよりはよっぽど早く正確にやってくれるっての」

 

「まあ、そうだな。下手すれば成田じゃなくてロンドンに行ってそうだしな」

 

「それは飛行機を乗り間違えた春希が悪いんじゃない? いくらチケットを用意したのがわたしでもさ」

 

「だぁっ。こういうときにまで冷静につっこみを入れるんじゃないっ」

 

「だってこれが和泉千晶なんだから、しょうがないじゃない」

 

「ったく」

 

「で、春希。かずさのお願い、どうするの?」

 

「…………かずさ」

 

「大切な友達に会いに日本に行きたいんだけどさ。あたしは飛行機の予約さえできないんだ。だから春希、あたしを助けて欲しい」

 

「いいのか?」

 

「何言ってるんだよ。あたしが行きたいって言ってるんだ。それなのに何がいいのかって聞くのかがわからないよ」

 

「そうだけどさ」

 

「それともあれか? スケジュールがきびいしいとか言うなよ? あたしはしばらく休暇の予定だし、春希だってボストン公演をまとめるんで出社しなくてもいいはずだぞ? だから春希は、悪いんだけど、あたしのお伴として日本まで同行してほしい。大丈夫だよ、春希なら。ボストンのときも列車の中で仕事をしていたじゃないか? それが今度は飛行機に代わるだけ。春希なら期日までにきっちりと仕上げることができるよ」

 

「わかった。でも、今の時間は飛行機がないから、日本に行くのは早くても明日だからな」

 

「それでいい。それに、そのほうが春希には都合がいいだろ?」

 

「いや、とくに何もないと思うけど?」

 

「だってさ、春希だったら、今から徹夜すれば日本でしなくちゃいけなくなる仕事をほとんど終わらせることができるだろ?」

 

 どこまでも俺の事をわかっていらっしゃるパートナーだこと。ほんとうに頼もしいよ。

 今の俺には、嬉しさが混じった苦笑いをうかげるのが精々だった。そして、深く思い悩んでいたことなど既に忘れようとしていた。

 

「というわけで春希」

 

「お土産なんて買ってこないぞ?」

 

「違うって。そもそもお土産ってなんなのよ?」

 

「東京のお土産?」

 

「違うっての」

 

「そうか?」

 

「そうなのっ」

 

「じゃあなんだよ?」

 

「元気をつける為にも、鍋をしっかりと作ってほしいなって、思って。ほら、お腹が空いてると元気でないし、頭も働かないでしょ? しかも、元気がない時ほどネガティブになっちゃうし、ここはしっかりと美味しいご飯、って感じかな」

 

「わかったよ。今準備するから待ってろよ。……かずさも鍋でいいか?」

 

「あぁ、それでいいよ。春希鍋は美味しいからな」

 

「じゃあ、ちょっと待っててくれよ。すぐに用意するからさ」

 

 やっぱ俺って、かずさは当然として、千晶にさえ敵わないんだろうな。……今はそれでいいか。今は俺ができることをやるしかないしな。

 そう心を奮い立たせると、美味しい鍋を作ろうとキッチンへと向かった。

 …………ただ、美代子さんが用意した食材があまりにも肉に偏っていた為に、雪の中スーパーに向かい、寒さのあまり心が折れそうになった事は蛇足だ。そして美代子さんに肉ばかり買わせた真犯人にお小言を言ったはいつもの光景だった。

 

 

 

 

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