心の永住者   作:黒猫withかずさ派

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第74話

 

 

 

 

 

 麻理さんの帰国を知った翌日。俺とかずさは早々に飛行機に乗って日本へと向かった。そして、スケジュール管理をしてる上司たる曜子さんはクリスマスに予定しているニューヨークでの冬馬親子ふたりそろってのコンサートまでに戻ってくれば問題ないと、とくに日本に行きを咎めはしなかった。

 咎めはしないけど、かずさが本番に向けてしっかりと演奏の準備ができる時間を確保するのは俺の仕事だと無言のプレッシャーをかける事だけは忘れてはいない。俺としてもかずさに中途半端な演奏をしてほしくはないし、せっかくかずさのピアノを聴きに来てくれるお客に失礼でもある。

 ましてや、俺がかずさの最高の演奏を聴きたいファン筆頭なのだから、下手な演奏などさせられやしない。

 かずさ本人は練習時間が確保できなくても、最悪本番直前までに会場入りできれば問題ないと言ってくれてはいる。それでもやはり日本に行っても毎日の練習時間を確保できるかだけは心配していた。ただ、かずさが自分でスタジオを用意する事はできないので、そこらへんは美代子さん任せではある。

 といっても、レッスンスタジオも宿泊先も冬馬邸であるわけだから、ピアノの調律の予約を入れてもらっただけでだったが。

 久しぶりに訪れた冬馬邸は記憶の中のままの姿で俺達を出迎えてくれ、季節もちょうど冬ということも俺の中の記憶をさらに強く映し出すことになる。

 まあ、感慨深く玄関前で立っていたら、かずさはさっさと俺の腕を引っ張って中に入ろうとし、センチメンタルな気持ちに浸る余裕さえ持てはしなかった。

 ただ、かずさが家の中に入りたがったのは、外が寒いだけが原因ではないのだろう。

 かずさにとって日本は特別すぎる。そして、日本から逃げているのは現在進行形でもあるのだから、日本国内の数少ない安全地帯に潜り込もうとしたのは、自然な行動だったと思えてくる。

 

「佐和子さんはなんだって?」

 

 冬馬邸についた俺達は、まずは情報収集から始めることにした。となればまずは麻理さんの親友である佐和子さんの電話するのが王道捜査であろう。

 

「なにも聞いていないって。そもそも麻理さんが日本に帰って来ている事自体知らなかったみたいだな」

 

「佐和子さんが麻理さんをかくまってるって事はないのか? 一番の親友なんだろう?」

 

「隠している雰囲気でもなかったと思うけどなぁ。ほんとうに驚いている感じだったし、俺が麻理さんのことを知らない事に怒っている感じでさえあったぞ。佐和子さんも麻理さんの病状を知っているから心配しているわけで、それなのに麻理さんをサポートする俺が麻理さん居所を知らないなんてありえないって、さ」

 

「春希は鈍感だから、隠している事に気がつかないだけって事はないのか?」

 

「それを言われてしまうと疑うしかなくなってしまうけど、でもなぁ……」

 

「……ごめん」

 

「いいって。佐和子さんもなにかわかったら連絡くれるって言ってくれているし、仮に麻理さんをかくまっていたとしても、逆を言えば時期が来たら俺達に麻理さんと会わせてくれるって事だろ?」

 

「すごい前向きな考えだな?」

 

「そんなに呆れた顔をするなって」

 

「感心しているだけだ」

 

 そうは見えないんだけどな。…………ここで言い争っても意味はないし、それこそかずさと喧嘩なんてしたら目も当てられないからこれ以上はやめておくか。

 

「とりあえず開桜社の方に行ってみるよ。そうすれば何かわかるかもしれない。そもそもニューヨーク支部の方でも日本本社に行くって事になってたんだしな」

 

「でも、いつアメリカに戻ってくるかは不明だってことになってたよな?」

 

「まあ、な…………」

 

 本来なら責任ある立場である麻理さんが期日不確定でニューヨーク支部をあけることなどありえない。日本行きの理由さえも曖昧で、下っ端である俺には詳細の理由などは知る事はできなかった。

 嫌な勘ぐりをしてしまえば、麻理さんが意図的に理由を隠したとも考えられてしまう。一方で、本当に内密に処理しなければいけない案件ができて日本に行ったとも考えはできるが、それならば俺に一言くらい日本行きを伝えて欲しいというのが本音でもあった。

 

「やっぱりあたしも一緒に行こうか?」

 

「いや、かずさは家で待ってないと。このあとピアノの調律師が来る予定なんだし、せっかく無理を言って予約を入れてもらったんだ。どのくらい日本にいるかわからないんだから、やれることはしっかりとやっておくべきだぞ。もちろん長期戦も視野にしれてるんだから、かずさの練習環境も整えておくのもマネージャーの仕事なんだよ」

 

「わかってるけどさ、でも…………」

 

「あせっても仕方がないだろ? 佐和子さんも力を貸してくれるって言ってるんだから、まずはできる事からやっていこうな。むやみに突っ走っても目的地には着きはしないぞ」

 

「わかったよ。…………でも、でもね春希」

 

「ん?」

 

「なにかあったらあたしを頼れよ」

 

「わかってる。頼りにしてる」

 

「ピアノの調律が終わったらいつでも行けるんだからな」

 

「何かあったときはすぐに連絡するって」

 

「終わったらメールするから、そしたらいつでもいいんだからな」

 

「俺の方も開桜社に行った後、なにもわからなくても連絡する」

 

「待ってるからな」

 

「ああ、必ず連絡する。…………ただなぁ」

 

「なにか問題でもあるのか?」

 

「いや、な。どうやって開桜社に行こうかと思ってさ」

 

「ここからなら電車じゃないのか?」

 

「たしかに電車で行く事になるけど、それが問題じゃないから」

 

「じゃあ何が問題なんだよ?」

 

 ほんとにわかりませんって顔をしてるよな。きょとんと首を傾げている仕草は可愛くもあるけれど…………まあいいか。こうところにも惚れてしまったんだから。

 

「何笑ってるんだよっ。こっちは真剣にだな……」

 

「悪い、悪い。馬鹿にしてたんじゃないって」

 

「じゃあなんだよ? …………あっ、ほら。また笑った」

 

「違うって」

 

「そりゃあさ。あたしは役には立たないと思うし、こういうときにはお荷物にしかならないってわかっているよ。でもさ、笑う事はないじゃないか」

 

「だから違うんだって」

 

「違わない。だって春希はいつも優しいから」

 

「本当に違うんだ」

 

「だったらさっさと本当の事を言えって」

 

「かずさが可愛いなって思ってただけだよ」

 

「こ、ここここここここここ、こんな時に何言ってるんだよっ」

 

 たしかにこんな大変な時に何を言ってるんだろうとは自分でも思う。だけど、かずさが照れる姿を見せるとなればどうしても愛でたくなるのが男ってものじゃないか。

 まあ、今の事態を理解しているから気持ちはすぐに切り替わってはいるけれど。

 

「とりあえず言わせてくれ」

 

「仕方がないな。でも、手短くにだぞ」

 

「俺が開桜社に行きにくいって言った理由がわかってないみたいだったが、その時の仕草が可愛かった。すれているところがないっていうのかな。まあ曜子さんからしたら世間知らずだって笑うだけだろうけど、俺からすればとても魅力的だったんだ」

 

「母さんの意見はともかく、春希がそう思ってしまうんなら仕方がない、な。…………でも、今は駄目だからな。麻理さんを探さないといけなんだからな。それと、なんで開桜社に行きにくいんだよ。今まで仕事していた編集部だろ?」

 

 今も照れながらも、それを必死に隠そうとする姿がすこぶる愛らしいというのを言うのはやめておこう。俺も今の状況を理解しているし、ここでかずさとじゃれているのも、自分としても情けなすぎると思うし。

 

「俺が麻理さんを追ってニューヨークに行った事は、編集部のみんなも知っているってことは、かずさも知っているよな?」

 

「あぁ」

 

「そうなるとだな。麻理さんが日本に戻ってきたのを追って、さらに俺まで日本に戻ってきた。しかも麻理さんを探してとなると、ゴシップではないけれど、かっこうの話題のネタを提供することになると思わないか? それが事実とずれていたとしてもだ」

 

「たしかにそう思うかもな。しかもそういった記事を書く出版社の連中だったらなおさらかもな」

 

 かずさの出版業界嫌いもわからなくもない。俺もその出版業界の一人だから表だって敬遠することはないが、できる事なら関わりたくないと思っているもんなぁ。曜子さんクラスにまで図太くなれば、あと千晶でもいいけど、自分を追ってくるマスコミをうまく利用して自分を売り込む事ができれば、案外割り切って生活もできるんだろう。

 さすがにかずさにそれを求めるのは無謀だもんな。そもそも高校時代のかずさを知っている奴らなら、絶対自分が取材をしたいだなんて手をあげないはずだ。

 高校時代だったら間違いなく蹴りが飛んでくるはずだよなぁ……。

 

「まあ、悪い人たちじゃないんだけどな」

 

「だったら頑張ってこいよ」

 

「人事だな?」

 

「そりゃあ春希がお留守番を命令したからな。仕方なしなんだぞ」

 

「わかったよ。じゃあ行ってくる」

 

「精々からかわれてこい」

 

 苦笑いしか出てこない。けれど、ここに来るまでの重い空気がないことだけは救いか。

 それを理解してリラックスさせてくれているわけではないだろうが、今はかずさの存在に救われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 開桜社編集部。そこは大学を卒業するまでバイトとして働いていた時と同じように回っており、久しぶりに訪れても違和感なく俺を溶け込ませてくれる。そこまで慣れ親しんだのは編集部の先輩方のおかげでもあるし、俺に仕事を覚えさせてくれた麻理さんのおかげでもあった。

 だから久しぶりに来た編集部で、いきなり仕事を振り渡されても。そして今はニューヨーク支社の人間であるということさえ関係なく仕事をやらせてしまういい加減な所も。

 なによりも俺がどれだけ心配したか説教したくなる相手でもある麻理さんが、一番俺をこき使っていようとも。

 そういった不満は全て今はなかったことにして仕事に没頭できていたのは、ここが俺のホームグランドたる開桜社日本本社編集部であるからだろう。

 

「はぁ~い。浜田さんからの差し入れ入ったわよぉ。一息つける人から休憩入っちゃてぇ~」

 

 元気がいい声を聞き顔をあげると、その声とは裏腹に疲れ切った顔を見せる鈴木さんがコンビニ袋のおにぎりやサンドウィッチを配っている。俺の視線に気がついた鈴木さんは、にこりと営業スマイルを浮かべてペットボトルのお茶を差し出した。

 

「悪いわね手伝って貰っちゃって。……はい、お茶ね」

 

「問題ないですよ。浜田さんの顔を見れば相当困っているってわかりましたから」

 

「これもそれも、すべてまっちゃんが悪いんだから。ほんっと北原君を見習ってほしいところよね。どっちが先輩なのかわかったものじゃないってぇの」

 

「でも、そうとう頑張っているって言ってましたよね?」

 

「ま、ね。問題はたま~にミスをしてしまうってことかしら? でもここ最近は新しい後輩もできて頑張っていたんだけど、やっぱ許容量オーバーって感じだったのかもね。まっちゃんが頑張りすぎたっていうか、麻理さんが北原君をコントロールしていたみたいに浜田さんがまっちゃんをコントロールできていなかったというか。あっ、今のは浜田さんには内緒ね。浜田さん、自分のせいだって落ち込んでいるから」

 

「でしょうね」

 

 鈴木さんの視線を追っていくと、そこには栄養ドリンクがいくつも散乱するデスクが二つ。どちらも関連書類などが山積みになっていて、そのデスクの主の顔色は相当悪い。違いがあるとすれば、年齢差以外をあげると使っている栄養ドリンクの種類くらいだろうか。

 浜田さんの方はリーズナブルなコンビニドリンクがほとんどで、松岡さんのほうにも同じドリンクが置かれている。きっと浜田さんが差し入れたのだろう。ただ、松岡さんの方には薬局に売っているそれなりの値段のドリンク剤が複数置かれており、俺が知っている松岡さんなら買いもしない値段のものからしても、そうとう責任を感じている事が伺えた。

 

「でもね。あんなミス、いつもはしてないのよ」

 

「年末で忙しい時期ですし、小さなミスが大きくなってしまう事もありますよ」

 

「それもあるとは思うんだけど、なんかまっちゃんのくせに後輩のミスをかばっているくさいのよね」

 

「本当ですか?」

 

「全部が全部新人ちゃんのミスではないみたいだけど、まっちゃんもこのまま新人ちゃんにやらせるのはまずいと思って自分が引き受けてみたものの、やっぱり無理だったって感じなのよね」

 

「でも新人に大きな仕事は任せませんよね?」

 

「そうなんだけど、ほら。連絡の行き違いってあるでしょ?」

 

「たしかに」

 

「とまあ、麻理さんと北原君が来てくれたおかげで、ほんとどうにかなりそうよ。というか、麻理さんなんてこのためだけに日本に呼び戻されちゃったんだから、正直申し訳ないのよね」

 

「それは相手先への信用問題で、今まで担当だった麻理さんを呼んでほしいと言われてしまってはしょうがないじゃないですか」

 

「しかも大型案件で、これをよそに持っていかれると大変な事になっちゃうのよねぇ」

 

「でも、うまくおさまってよかったじゃないですか」

 

「その為に何日も打ち合わせのためにあちこち走り回っていたんだから、麻理さんの体調の方が心配よ。ダイエットはしていないって言ってはいたけど、あまり食べていないみたいだし、あきらかに痩せすぎよね」

 

「それは、ほら…………仕事モードで、食事よりも仕事って感じじゃないですか?」

 

「…………そう? 北原君がわざわざニューヨークから麻理さんを追って日本にまで来てくれたんだから、仮に麻理さんが倒れても北原君が面倒みてくれるでしょうし、問題ないか。むしろ喜んで北原君の胸めがけて倒れてくるかもね」

 

「倒れてもらっては困るんですが……」

 

「それもそうね」

 

「そうですよ」

 

「せめて今の仕事が終わるまでは倒れてもらってはこまるもんね」

 

「鈴木さんっ」

 

「わかってるわよ。そんなに怖い顔をしなくても、私だって麻理さんにはお世話になってるし、倒れられては目覚めが悪いわよ」

 

「…………はぁ、……でも、この分なら明日中にはどうにかなりそうですね」

 

「ありがとね。…………ほら北原君。休憩をとっていない麻理さんに差し入れ持っていってあげてね」

 

 俺にミネラルウォーターを渡すと、さっさと麻理さんの所へ行けと視線で訴えかけてくる。しかし、ゆっくりと麻理さんと話をできるだろう初めてのタイミングを目の前に、俺はどう話をすればいいか戸惑ってしまっていた。

 なにせ突然いなくなった麻理さんを連れ戻しに日本までと意気込んできたものの、麻理さんが日本に来た実態は元担当案件の処理のためである。その事実を含めて、麻理さんが俺の帰国をどうとらえているか考えると、どうも落ち着かなくなってしまった。

 

「麻理さぁ~ん。麻理さんも休憩入ってくださいよぉ。まだまだ帰れないんですから、休憩取れるときに休憩とってくださいって」

 

「…………………………んっと、よし。休憩にしようかな」

 

「はぁ~い。…………ほら北原君。麻理さんがお待ちかねよ」

 

「鈴木さんったら……」

 

 ぐずぐずしている俺を見かねて鈴木さんは強硬手段に出てしまう。しかもとどめとばかりに本人は、いまだに休憩に入れない松岡さんに介入すべくここから去ってしまう。

 そうなるとここには俺と麻理さんしかいなくなってしまい、俺も動かないわけにはいかなくなった。

 

「どうぞ」

 

 俺はペットボトルのふたを外し、鞄の中にいつも携帯してあるストローを刺して麻理さんに手渡す。麻理さんの方は俺とは違い、あまり意識してくれてないようで、なおかつ頭の中は仕事でいっぱいいっぱいだったようなので普段通り受け取ってくれた。

 

「ありがと。春希もいきなり仕事にかりだされて大変だったわね。でも、来てくれて本当に助かったわ」

 

「俺で役に立つのであればいつでも大丈夫ですよ」

 

 どうにかいつも通りに会話はできていることにほっとしてしまう。

 やはり俺もずっと緊張していたって事なのだろう。しかも突然の仕事という斜め上の状態にさらされて、変に肩に力を入れっぱなしだった。

 そしてその重圧から解放されると、今まで見えていなかったものも見えてくるわけで…………。

 つまり、麻理さんが俺の事を春希と呼んでいる事とか、麻理さんのドリンクに慣れた手つきでストローを用意するとか、そしてなによりも、何故俺が日本に来ているかとか。

 そういうゴシップ好きの編集部員の巣窟に、かっこうの餌を放り投げてしまことに、今さら思いだしてしまった。

 

「謙遜しないでよ。本当にニューヨークから春希が来て手伝ってくれたらなって、何度も思ったのよ」

 

「いや、俺は謙遜しているわけでは……」

 

 そうじゃなくて、鈴木さんとか松岡さんとか。もっといえば編集部員全員からの視線がきになっているといいますか……。あの死にそうな顔をして浜田さんまで生気を取り戻して見ているんですよ。

 

「そう? じゃあさすがの春希も長旅には勝てないってことかしらね。ボストンから戻ってすぐにこっちに来たのでしょ?」

 

「ニューヨークに戻ってきた翌日ですけどね」

 

「それじゃあ疲れなんて取れないわよ。でもほんと、助かったのは事実よ。ありがと春希」

 

「いえ、こちらこそいつも麻理さんには助けてもらっていますから。それに、いつだって俺は、麻理さんを支えたいと思っていますから」

 

「いつも春希がわたしを支えてくれるって信じてる。でも、それでもお礼はきっちりと言っておきたいものなのよ」

 

「そうですか?」

 

「えぇそうよ」

 

 柔和な頬笑みを俺に見せ、照れる事もなくストローで水を飲み始める。

 いたって普通で、当然の発言なのよと言わんばかりの麻理さんの言動に、俺と麻理さん以外の編集部員が唖然として俺に視線をぶつけてくる。

 なにを心の中で思っているかなんてわかりきっている。

 あのワーカーホリックをこじらせた風岡麻理が、こともあろうかニューヨークまでおっかけて行ってしまった年下男に心を許している。しかも名前を親しげに呼び捨てにし、なおかつドリンクの受け渡しさえ年季が入った意思疎通が確立されている。

 恋愛偏差値50以下の俺であっても、こいつらできているって思えてしまうものだ。もしこの状況を気がつかない人間がいるとしたら、きっと恋愛偏差値40以下の麻理さんくらいだろう。

 あとは、周りの事など気にしないかずさは気がつかないか。そもそも全ての事象を自分に味方につけようとする千晶とか曜子さんがいるけど、そんなのは例外中の例外だし……、恋愛上手とは違っているか。ただ、俺の周りって偏ってるよなぁ。俺自身人の事はいえないけど。

 俺は編集部のみんなになにも説明せずにニューヨークに戻ることなんてできないんだろうな、とため息をつくのをこらえつつ、ひとまず今は仕事に集中するかと、真っ暗になった窓の外を見ながら心を落ち着かすことに努めた。

 

 

 

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