【主人公】戦場駆動【喋らない】 外伝   作:アルファるふぁ/保利滝良

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ヴィッセルとの戦闘の終結を、三人のキャラクターの視点から描いてみました
良かったらご覧ください


アフターストーリー・戦場駆動
それぞれの終結


 

『ヴィッセルの壊滅を確認!繰り返します、ヴィッセルは壊滅・・・我々の勝利です!』

 

 

 

 

 

 

 

狩人と仮の名を付けられていた機械の化物は、その放送が始まる数秒前に動きを止めた

何匹かは様々なところに穴を開けられている その穴の周りは、漏れなくドロドロに溶けている

「・・・終わったか」

ビームガンの銃口を下ろし、ハイパーアリシオンは静かに着陸した 少なくない量の砂埃がその足下から荒く舞う

地には人型機動兵器が残骸の山を築いていた 否、死体の山と言っても差し支えないだろう

なぜなら中のパイロットも機体と運命を共にしていたからだ

その亡骸の群れはそんじょそこらの雑魚機体とは訳が違う

大陸を飛び回り、自由に仕事を戦い、戦場を駆け抜けていた傭兵のものなのだ

それが複数、なんの変哲もない石ころの一つのように転がっているのだ

「終わったのか・・・」

メアリはパイロットスーツの中で目を閉じた

彼女にとっては、彼らは仕事を奪い合うライバルだった 時に明確に敵対したことも無かったわけではない

しかし、同業者には同業者なりに、その死を称えるべきなのだろう

大陸の傭兵は、誇り高き勇者たちなのだ 金と、自由と、そして命で輝き散っていく、儚い勇者たちだったのだ

そしてメアリは、騎士という渾名でその頂に登り詰めた 厳密に言えば登り詰めた後に奪い去られたのだが、今は関係ない

ならば、その頂点として立った者として、何かしらの責任が、あったのかもしれない 仇を討って、それで終わりなど、少々無責任な気もする

だから

だから

だから、三秒弱だけ黙祷しても、良いのだ

目を開き、ほぼ中身の無い黙祷を終えて、メアリは呟いた

「・・・終わったぞ・・・」

全機能を止めたウェナートルが次々と自爆を始めた 爆炎が火柱となりメアリとハイパーアリシオンを照らす

巻き添えになる前にアリシオンは空へと飛んだ ブースターが本体を飛ばせるだけの莫大な焔を出す

戦場の空へと登っていき、メアリは一瞬振り向いた

「ッ!・・・ふっ・・・」

その一瞬だけ、大陸の傭兵達は甦っていた

戦場の炎の中で、彼らは残骸となって尚輝いていた むしろ、燃え続ける彼らは、大陸の傭兵は、この戦場に揺らめく炎こそ生きている証なのかもしれない

振り向くのを止めて前を向く

 

「これで彼らは不死身だ、戦場の炎の中で・・・」

 

ホーネットへ進路を向ける

ハイパーアリシオンは、誇り高く飛び去っていった

傭兵達は、燃え続けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マシンガンが多量の火を吹き、それを食らったプテロプスが一匹、切りもみをしながら墜落する 別の方向にマシンガンを向け、トリガーを引いて弾を出させる 無数の激発音に弾が空気を切り裂く音が乗る

また撃破

別の方向へ

延々と続く蝙蝠狩り しかし終わりは見えてこない

油断すればプテロプスからの攻撃が機体を貫いてくる 今のデストロイア改のダメージは、一体どれくらいなのだろうか

「死、ねるか・・・よォッ!」

レールガンの最後の一発を群れに向ける スパークした左腕兼砲身を、アレックスは憎き蝙蝠へと突き付ける

コクピットの中で、吠える

「食ううううらあああえええええこのクソッタレがぁーッ!」

猛々しい雷はプテロプスの大部隊の中心に突入し、刹那、光の洪水を発生させた

青白い強烈な電気は、たちまちの間にその数を減らす

プテロプスを破砕し、無数の丸焼きへと変貌させていくレールガン その頼り甲斐のある武装の残弾もたった今無くなってしまった

撃っても撃ってもキリがない むしろこちらはどんどん消耗し、あちらを減らすペースが大幅に落ちてきているのがわかる

「も、もうだめなのかよ」

「数が多すぎる!」

「た、弾だ、弾をくれええ!」

味方が次々と弱音を吐いていく中、アレックスはデストロイア改の動きを止めなかった

敵を倒すため、ただ一心不乱に引き金を引き続けた 父も、どんな絶望的な戦闘でも決して諦めなかった

マイケルがそうしたように、アレックスも戦い抜く

マシンガンの銃口はプテロプスを射抜く プテロプスがデストロイア改に駆逐されていく

闘志を失ってなどいない まだ戦えるのだから

 

「俺は戦うッ!まだ戦えるッ!!」

 

端から見ればアレックスは、意地汚く見えるだろう 正しく往生際が悪いとも言えるだろう

しかし諦めないのだ、アレックス・ジョンソンは諦めない

マイケル・ジョンソンから受け継いだ全てを、彼は無駄にするつもりはなかった

だが現実は気合いでどうこうできはしない

マシンガンの弾が切れた どれだけ指を動かしても、弾丸が出てくることはない

マガジンも切れている 他の武器は撃ちきった

そもそも今使っているマシンガンの時点で予備武器だったのだ 残りの火力はあるはずもない

「くっそ!」

引き金に反応しないマシンガンを睨みながらアレックスは毒づいた 戦いようがない

戦えても武器がなければ、戦うことすらできない

「こんなところでぇ!」

プテロプスの群れがデストロイア改を取り囲み、その背中の砲門を一様に向けた トドメを誘うとしているのは明白だった

黒い津波は破壊者を巻き込んで大爆発、それで終わりだ

そのはすだった

プテロプスが突然落ちたのだ

まるで糸の切れた操り人形のように、ひっくり返って地面へ転がる 先までの脅威は何処へやら、殺虫剤を撒かれた蝿か何かのようにプテロプスが機能を停止していく

 

『ヴィッセルの壊滅を確認!繰り返します、ヴィッセルの・・・』

 

声が聞こえた 何かの報告だった

勝利宣言

「え・・・まさか・・・」

誰かがまずそう言った ソイツは多分、左右を見渡したのだろう

しかし、プテロプスは一向に動かない

むしろ、どういう原理かわからないが、雪のように溶け始めているではないか

「ぃ・・・」

「やったあああああああああっ!」

「おおおおおおおっしゃーっ!」

「生きてる、俺は生きてるぞおおおお!」

「ハハハハ!やったやった、やったあああ!」

白虎帝国の兵士達が、割れんばかりの大歓声で勝利を祝う 中には、コクピットから飛び出して走り回る者もちらほら

それを見て、その場の全ての人型機動兵器乗りが自分の愛機から飛び出してきた

ハイタッチをしたり、互いに抱き着いたり、歌を歌い始めたり

ついさっきまでの凶悪且つ終わりの見えなかった死闘が終わり、皆一様に生命の喜びを全力で噛み締めている

デストロイア改のコクピットハッチがゆっくりと開く 操縦席から立ち上がったアレックスの片手には、くしゃくしゃの写真

「親父・・・」

ジャケットを脱ぎ捨て、空を仰ぎ見る その顔は、瞳に写る空よりも澄んでいた

「勝ったぜ・・・俺・・・!」

家族の写真を風に放り、アレックスは機体から滑り降りる

紙一枚を飛ばすのが精一杯の弱い風だったが、幸せそうな笑顔を浮かべる三人家族が写る風景を拐ってしまうには充分だろう

そして彼は、アレックス・ジョンソンは、父の形見を捨てた

彼はもう、家族の力を信じなければいけないほど弱くはない 立派な男として、一人前の傭兵として、成長を終えたのだ

マイケル・ジョンソンも納得するだろう

そして

役目を終えたデストロイアは、陽に照らされて静かに、眠るように佇んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヴィッセルの壊滅を確認!繰り返します、ヴィッセルの壊滅を・・・』

《クソッ!僕はまだ死んではいない!負けてないぞ!貴様らからこの大陸を必ず取り返してやる・・・例えフラグシップ役の『ピラミッド』が殺られても、次の機械を産み出せばいい・・・覚悟しろ、必ず、必ず、必ず・・・!?なんだ、暴走だと!永久機関が故障した!?何故だ、僕はこの大陸の本当の主なんだぞ、言うことを聞け、聞けぇ!そんな、こんなことが・・・僕はまだ取り返してない!まだ、まだ・・・ぎゃあああああ・・・!》

 

 

 

 

 

 

 

 

大陸の地下20㎞地点で、大規模な地震が発生した この場所は空洞があるともともと予測されていたが、この災害で埋まったものと推定される

仮にこの空洞に人間がいたとしても、生きてはいない 何せ、完全にその場所が潰れてしまっているからだ

 

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